税金(一般的な内容)
生命保険料控除の計算方法|令和8年分からの上限6万円と年末調整で迷いやすい点

生命保険料控除では、1年間に支払った生命保険料などに応じて、所得から一定額を差し引けます。
所得税の控除額は、平成24年1月1日以後の契約の場合、原則として3つの区分ごとに最大4万円、合計で最大12万円です。
令和8年分と9年分の所得税では、23歳未満の扶養親族がいると、一般生命保険料控除の上限が6万円に上がります。
この記事では、所得税と住民税の計算方法と、年末調整や確定申告で迷いやすい点を、国税庁などの情報をもとに紹介します。
生命保険料控除の3つの区分と、新制度・旧制度の違い
生命保険料控除は、一般・介護医療・個人年金の3つの区分ごとに計算し、契約日が平成24年1月1日より前か後かで、新制度と旧制度に分かれる仕組みです。
一般・介護医療・個人年金の3つの区分
一般生命保険料控除は、生存または死亡を理由に一定額の保険金が支払われる生命保険などのうち、保険金の受取人のすべてが、保険料を払う人かその配偶者、その他の親族である契約が対象になります。
ただし、保険期間が5年未満の契約のうち、いわゆる貯蓄保険や貯蓄共済は対象になりません。
介護医療保険料控除は、病気やけがで医療費の支払いが生じたことを理由に保険金が支払われる、医療保険などが対象です。
また、個人年金保険料控除は、年金の受取人が保険料を払う人かその配偶者で、保険料を10年以上にわたって定期に払い、原則60歳から10年以上または終身で年金を受け取ることなどが条件になります。
個人年金保険料控除の要件は、次の記事も参考にしてください。
出典:国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」
契約日で決まる新制度と旧制度
控除の区分は、平成22年度の税制改正により、平成24年分から介護医療保険料控除が加わって3つになりました。
平成24年1月1日以後に結んだ契約は新制度、それより前に結んだ契約は旧制度で計算し、旧制度の契約では医療保険の保険料も一般の生命保険料に含まれます。
出典:国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」
旧制度の契約でも、平成24年以後に更新や転換、特約の中途付加をすると、その契約全体の保険料が新制度の対象となる扱いです。
保障のない特約は例外で、リビング・ニーズ特約などを付けても新制度には切り替わりません。
出典:生命保険文化センター「新旧両制度で対象契約がある場合の生命保険料控除は?」
控除額の計算方法|所得税と住民税で計算式が違う
控除額は、その年に支払った保険料から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた「支払保険料等」をもとに、区分ごとに計算式に当てはめて求めます。
新制度(平成24年1月1日以後の契約)の計算式
所得税の控除額は、年間の支払保険料等に応じて次のとおりです。
・2万円以下:支払保険料等の全額
・2万円超4万円以下:支払保険料等×1/2+1万円
・4万円超8万円以下:支払保険料等×1/4+2万円
・8万円超:一律4万円
一方、住民税は、所得税より低い上限で計算します。
・1万2,000円以下:支払保険料等の全額
・1万2,000円超3万2,000円以下:支払保険料等×1/2+6,000円
・3万2,000円超5万6,000円以下:支払保険料等×1/4+1万4,000円
・5万6,000円超:一律2万8,000円
出典:箕面市「平成25年度からの個人住民税(市・府民税)の主な改正点」
旧制度(平成23年12月31日以前の契約)の計算式
旧制度の所得税の控除額は、次のとおりです。
・2万5,000円以下:支払保険料等の全額
・2万5,000円超5万円以下:支払保険料等×1/2+1万2,500円
・5万円超10万円以下:支払保険料等×1/4+2万5,000円
・10万円超:一律5万円
住民税の計算式も、旧制度では上限が高く設定されています。
・1万5,000円以下:支払保険料等の全額
・1万5,000円超4万円以下:支払保険料等×1/2+7,500円
・4万円超7万円以下:支払保険料等×1/4+1万7,500円
・7万円超:一律3万5,000円
各区分の控除額を合計した上限は、新制度・旧制度をあわせて所得税が12万円、住民税が7万円です。
出典:箕面市「平成25年度からの個人住民税(市・府民税)の主な改正点」
出典:生命保険文化センター「新旧両制度で対象契約がある場合の生命保険料控除は?」
新制度と旧制度の両方の契約がある場合
一般と個人年金で新旧の両方の契約がある場合、国税庁の説明では、旧契約の保険料が年6万円を超えると、旧契約だけで計算した額(最高5万円)が控除額になります。
旧契約の保険料が年6万円以下なら、新旧それぞれで計算した額の合計(最高4万円)が控除額です。
住民税で新旧を合計する場合も、上限は2万8,000円に抑えられています。
出典:生命保険文化センター「新旧両制度で対象契約がある場合の生命保険料控除は?」
令和8年分・9年分は、一般生命保険料控除の上限が6万円
23歳未満の扶養親族がいる人は、令和8年分と9年分の所得税で、新制度の一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に上がります。
当初は令和8年分だけの措置でしたが、令和8年度の税制改正で期限が1年延長され、令和9年分も対象です。
出典:金融庁「令和9年度税制改正要望事項(生命保険料控除)」
この場合の控除額は、年間の新制度の一般の保険料に応じて、次の計算式で求めます。
・3万円以下:保険料の全額
・3万円超6万円以下:保険料×1/2+1万5,000円
・6万円超12万円以下:保険料×1/4+3万円
・12万円超:一律6万円
なお、介護医療保険料控除と個人年金保険料控除の上限は4万円のままで、3つの区分の合計の上限12万円も変わりません。
新旧の両方の契約がある場合も、23歳未満の扶養親族がいて新制度の一般の保険料を払っていれば、一般生命保険料控除の最高額は6万円です。
たとえば、新制度の一般の保険料を年10万円払っている場合、控除額は通常4万円ですが、23歳未満の扶養親族がいると10万円×1/4+3万円で5万5,000円になります。
上乗せは所得税での措置で、生命保険文化センターの計算例でも、住民税の控除額は子育て世帯かどうかで同じです。
出典:生命保険文化センター「新旧両制度で対象契約がある場合の生命保険料控除は?」
TKCの年末調整の資料でも、令和8年分のポイントとして、この上限の拡充が挙げられています。
年末調整と確定申告で迷いやすい点
会社員は年末調整、個人事業主は確定申告で控除を受け、どちらも保険会社から届く控除証明書をもとに申告する流れです。
契約者でなくても、保険料を払った人が控除を受けられる
国税庁のQ&Aによると、生命保険料控除では、契約者が誰であるかは要件とされていません。
たとえば妻が契約者の保険でも、夫が保険料を払い、保険金の受取人がすべて夫や妻などの親族であれば、夫の控除の対象になります。
年の途中で解約した場合も、解約までに払った保険料は控除の対象です。
このとき受け取った解約一時金は原則として一時所得になるため、保険料の金額から差し引く必要はありません。
控除証明書をなくしたとき、申告し忘れたとき
年末調整では、控除証明書を、勤務先から配られる保険料控除の申告書に添付して提出します。
給与天引きで保険料を払っている場合は証明書の添付が不要で、証明書をなくしたときは保険会社に再発行を頼むことが可能です。
年末調整で控除を受けていない場合は、確定申告で控除を受けることになります。
出典:生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる『生命保険料控除』」
なお、払いすぎた税金を取り戻す還付申告であれば、確定申告の期間とは関係なく、翌年1月1日から5年間が提出できる期間です。
個人事業主は確定申告で控除を受ける
私自身も個人事業主なので、生命保険料控除は毎年の確定申告で申告しています。
個人事業主やフリーランスの場合は、翌年2月16日から3月15日までの確定申告で、控除証明書をもとに控除を受けます。
出典:生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる『生命保険料控除』」
e-Taxで申告する場合は、証明書の記載内容を入力して送信すれば、証明書の提出を省略できる仕組みです。
ただ、省略した証明書は5年間保存しておく必要があります。
出典:国税庁 e-Tax よくある質問「生命保険料控除証明書の添付」
控除には上限がある|保険は控除額より必要な保障から考える
新制度では、一般の保険料が年8万円を超えると控除額は4万円で頭打ちになり、23歳未満の扶養親族がいる場合も年12万円を超えると6万円で止まります。
住民税も、3つの区分の合計は7万円が上限です。
そのため、控除額を増やす目的で保険料を増やしても、上限を超えた分は控除になりません。
保険は、控除額より先に、必要な保障の大きさと家計に合った保険料から考えることが、無理なく続けられる入り方だと考えています。
旧制度の契約は、所得税の上限が区分ごとに5万円と新制度の4万円より高く、見直しで新しい契約に切り替えると控除額が下がる場合もあるため、注意が必要です。
相談の現場では、加入している保険の内容を把握していない方に出会うことがあり、毎年届く控除証明書は、どの保険にいくら払っているかを確かめるきっかけにもなります。
保険の種類と選ぶ前に確かめることは、次の記事をご覧ください。
まとめ:区分と契約日で計算し、令和8年分からの上限6万円を確かめる
生命保険料控除は、3つの区分と、契約日で決まる新制度・旧制度ごとに計算式が決まっています。
要点は次のとおりです。
・3つの区分:一般・介護医療・個人年金(旧制度の契約は一般と個人年金の2区分)
・新制度の上限:所得税は各4万円・合計12万円、住民税は各2万8,000円・合計7万円
・令和8年分・9年分:23歳未満の扶養親族がいると、所得税の一般生命保険料控除は最高6万円
・年末調整:契約者でなくても保険料を払った人が控除の対象、証明書をなくしたら保険会社に再発行を依頼
・申告し忘れ:確定申告で控除を受けられ、還付申告は翌年1月1日から5年間
23歳未満の扶養親族がいる場合は、今年と来年の年末調整で一般の上限が6万円になるため、控除証明書の金額と扶養親族の年齢をあわせて確かめておくと、控除の漏れを防ぎやすくなると考えています。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した内容です。
当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。
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