損害保険
親の家の火災保険を子が手続きできる?契約者と被保険者の違いから考える

遠方の実家の火災保険を、子である自分が管理したい。手続きはできるのか。
結論から言えば、手続きに関わることはできます。ただし建物の所有者が親なら、補償を受ける人(被保険者)は親のままです。
ここを取り違えると、いざというとき保険金が受け取れない事態になりかねません。
この記事では、契約者と被保険者の違いを軸に、確認すべき点を説明します。
まず押さえたい3つの立場
火災保険には、役割の違う3つの立場があります。
混同しやすいので、最初に分けておきます。
契約者・被保険者・手続きをする人
日本損害保険協会の説明では、契約者と被保険者は次のように定義されています。
・契約者:保険会社に契約の申込みをして保険料を支払う人。契約の当事者
・被保険者:保険の補償を受ける人、または保険の対象になる人
この2つは同一人物のこともあれば、別人のこともあります。
そして実際に書類を書いたり窓口とやり取りしたりする人は、また別です。
被保険者には「経済的な利益」が必要
ここが最も重要な点。
同協会は、被保険者について次のように述べています。
被保険者は、原則として金銭に見積もることができる経済的な利益を有している必要があります。
損害保険そのものについても、同様の説明があるところです。
損害保険は、原則として金銭に見積もることができる経済的な利益がない場合には、契約することができません。これがないのにも関わらず保険金が支払われるとなると、犯罪を助長することにつながるおそれがあるためです。
建物の所有者が親なら、その建物について経済的な利益を持つのは親。子が自分を被保険者にすることはできません。
出典:日本損害保険協会「損害保険Q&A 共通」(Ⅳ.損害保険の契約について)
契約者は別人でもよい
一方、契約者については同一人物である必要がありません。
同協会も、契約者と被保険者は同一の人であることもあり、別人であることもある、としています。
つまり建物の所有者である親を被保険者としたまま、契約者を子にする形は制度上ありうるということです。
ただし実際に認められるかは、保険会社ごとの取り扱いによります。
契約者を子に変えると何が変わるか

では、契約者を子にすると具体的に何が変わるのか。
権利と義務の両面から見ておきます。
契約者が持つ権利と義務
同協会によると、契約者は次の義務と権利を持ちます。
・保険料の支払義務
・告知義務
・契約解約権(契約を解除する権利)
・保険料返還請求権(契約が解除された場合に返還保険料を受領する権利)
保険料を払い、契約内容を変えたり解約したりできる立場です。
実家の保険を管理したいという目的には、この立場が対応します。
被保険者が持つ権利と義務
一方、被保険者が契約者でない場合はどうなるか。
同協会によると、被保険者が契約者でないときは契約の当事者ではありません。
そのため事故発生の場合の保険金請求権を除いては、契約解約権や保険料返還請求権はないとされています。
ただし告知義務、通知義務、損害防止義務は負う立場です。
まとめると、次のような形。
・保険金を受け取るのは被保険者(親)
・契約を解約したり内容を変えたりできるのは契約者(子)
・告知義務は、契約者と被保険者の両方が負う
保険金は親に支払われる
子が保険料を払っていても、火災が起きたときに保険金を受け取るのは親。
被保険者だからです。
この点を理解しないまま「自分が契約者だから自分が受け取れる」と考えていると、事故のときに困ります。
お金の流れは、払うのが子、受け取るのが親という形になります。
手続きを代わりに行うこと自体は可能
次に、実務的な手続きの話です。
契約者を変えなくても、手続きに関わる方法があります。
申込みの窓口は代理店
火災保険の申込みは、多くの場合、代理店を通じて行われるもの。
同協会によると、代理店は契約締結権、保険料領収権および告知・通知受領権を有しています。
つまり代理店と契約を締結した時点で、契約が成立したことになります。
実家の保険について相談する相手は、まずこの代理店でしょう。
ただし告知は本人の責任
注意したいのが告知です。
同協会は、告知義務を契約者または被保険者が事実を告げる義務と説明しています。
建物の構造や用途、過去の事故歴など、告知すべき内容を正確に知っているのは親のはずです。
子が代わりに書類を書く場合でも、内容は親に確認してください。
誤った内容を告知すると、告知義務違反として契約を解除されることがあります。
この場合、解除前に発生した事故による損害にも保険金は支払われません。
具体的な方法は保険会社に確認する
ここは正直にお伝えします。
委任状の要否、代理人として手続きできる範囲、必要な書類。これらはいずれも保険会社ごとの取り扱いで、公的な資料では確認できません。
ネット上には手順を具体的に書いた情報もありますが、根拠が示されていないものは一例。
実家の保険を扱っている代理店か保険会社に、直接尋ねてください。
家財の扱いも確かめる

もうひとつ、見落としやすい点があります。
建物と家財は、保険の対象として分かれているためです。
家財も所有者が被保険者
建物と同じく、家財についても被保険者になるのは所有者です。
実家の家財を所有しているのは親なので、この点は建物と変わりません。
ただし家財の補償には、商品ごとに条件が設けられていることも。
その内容は加入している保険の約款やパンフレットで確かめる形になります。
建物と家財は別々に契約する
火災保険では、建物と家財を別々に保険の対象とします。
建物だけ契約している場合、家具や家電の損害は補償されません。
実家の保険を見直すなら、建物と家財の両方が契約されているかを確認するところから始めてください。
親の代わりに手続きするときの確認事項

ここまでを、実際の手順にまとめます。
保険証券を手元に用意してから進めてください。
5つのステップ
次の順で進めると、必要な情報がそろいます。
・保険証券で、契約者・被保険者・保険の対象(建物か家財か)を確認する
・建物の登記内容を確認し、所有者が誰かをはっきりさせる
・保険会社か代理店に連絡し、契約者を変更できるか、手続きを代わりに行えるかを尋ねる
・告知が必要な内容を親に確認する
・手続き後、保険証券の記載が意図どおりになっているかを確認する
2つ目を飛ばさないでください。
所有者が誰かによって、被保険者を誰にすべきかが決まります。
親の判断能力にも目を向ける
高齢の親の契約を管理する場合、契約時の意思確認が問題になることがあります。
認知機能の低下が進むと、契約の変更や解約そのものが難しくなる場合もあります。
そうした状況が想定されるなら、成年後見制度や家族信託といった仕組みも視野に入るでしょう。
ただしこれらは火災保険の枠を超える話なので、司法書士や弁護士など専門家への相談が必要です。
積立型かどうかも確認する
子が保険料を負担し、親が保険金を受け取る形になります。
掛け捨てタイプであれば、保険料を払った人と受け取る人が違っても、やり取りは保険金のみです。
一方、積立型の火災保険には満期返戻金があります。
この場合、誰が受け取るかによって税金の扱いが変わることがあります。
加入している保険が積立型かどうかを、証券で確認してください。
まとめ
親の家の火災保険を子が管理する場合、押さえるべき点は次のとおりです。
・契約者は保険料を払う人、被保険者は補償を受ける人。別人でもよい
・被保険者には、金銭に見積もることができる経済的な利益が必要
・建物の所有者が親なら、被保険者は親のまま
・保険金を受け取るのは被保険者。子が保険料を払っても、受け取るのは親
・契約者になれば、保険料の支払義務と告知義務を負い、解約権を持つ
・代理店には契約締結権があり、手続きの窓口になる
・委任状の要否や代理手続きの範囲は保険会社ごとの定めで、公的資料では確認できない
「自分が契約したい」という希望は、契約者を変えることで実現できる可能性があります。
ただし被保険者は所有者のままで、保険金を受け取るのも所有者です。
まず保険証券で契約者・被保険者・保険の対象を確認し、そのうえで保険会社か代理店に相談してください。
建物の所有者が誰かによって、できることとできないことが分かれます。
そこを確かめずに動くと、手続きのやり直しになりかねません。
本記事の執筆者は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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