医療保険
子どもに月1,000円の医療保険や共済は必要?医療費助成と入院データで考える

数万円の急な出費に貯蓄で対応できるなら、無理に加入する必要はありません。
子どもの医療費は全国どこでも助成されていて、入院する確率も日数も低いためです。
ただし貯蓄がまだ薄い時期なら、つなぎとして使う意味はあります。
この記事では、判断に必要な数字を並べて、確かめるべき順序を示します。
子どもの医療費はどこまで助成されるのか
まず、子ども自身の医療費がどれだけかかるのかを確かめます。
結論から言えば、全国どこに住んでいても助成があります。
全1,741市区町村が実施している
こども家庭庁の調査では、令和7年4月1日時点で全国すべての市区町村が、子どもの医療費を助成していました。
対象年齢で最も多いのは、18歳年度末まで。通院で1,576、入院で1,600の市区町村がこれに当たります。
所得制限を設けていないのは通院1,692・入院1,693。自己負担なしとしているのは通院1,319・入院1,410です。
国の制度としても、小学校に上がる前の子どもの自己負担は3割から2割に軽くなっています。
子どもの保険診療の自己負担は、全国的にすでに手厚く助成されている状況です。
出典:こども家庭庁「令和7年度 こどもに係る医療費の助成についての調査」(令和7年12月24日)
助成されない費用もある
この助成が軽くしているのは、健康保険が使える医療費の自己負担分です。
入院にともなう出費は、それだけではありません。
・希望して個室などを使う場合の差額ベッド代
・付き添う親自身の食事代や交通費
・仕事を休むことによる収入の減少
「医療費が無料なのに保険は必要か」という疑問に答えるには、助成される費用と、されない費用を分けて見る必要があります。
後半で確かめるのは、助成されない費用がどのくらいの規模なのかという点です。
子どもが入院する確率と日数
次に、そもそもどれだけ入院するのかを見ます。
データで見ると、子どもの入院はめったに起きません。
1〜4歳では650人に1人
調査日にどれだけの人が入院しているか。厚生労働省が人口10万人あたりの人数で公表しています。
・0歳:1,237人
・1〜4歳:153人
・5〜9歳:86人
・10〜14歳:87人
・全年齢:945人
・65歳以上:2,449人
2歳の子が含まれる1〜4歳では、10万人のうち153人。およそ650人に1人という計算です。
5〜9歳と10〜14歳は全年齢を通じて最も低く、1,000人あたり1人に届きません。
ただし0歳だけは、ほかの年齢より高めに出ています。
入院しても平均7.6日
入院した場合の日数はどうか。
全年齢の平均が28.4日なのに対し、0〜14歳は7.6日と全年齢で最も短くなっています。
病気別に見ると、さらに短くなります。
・喘息:4.8日
・肺炎:5.1日
・けが:2.6日
「喘息で長く入院した」という体験談を耳にすることもあるでしょう。
ただし統計の平均では、喘息の入院は5日弱。個別の経験と全体の傾向は、分けて受け取ってください。
出典:厚生労働省「令和5年患者調査の概況 3 退院患者の平均在院日数等」
通院は多いが、そこは助成が受け止めている
入院とは対照的に、通院は多くなっています。
人口10万人あたりで、0歳が6,467人、1〜4歳が6,291人。0〜14歳の通院は、令和5年が昭和59年以降で最も高い水準でした。
つまり子どもの医療は「よく通院し、めったに入院しない」という形。
頻度の高い通院を医療費助成が受け止めているので、民間の保険で備える余地は、入院まわりに限られてきます。
助成されない費用はいくらか
では、助成の対象にならない費用はどのくらいなのか。
ここが、掛金の総額と比べるべき相手になります。
付き添いの負担は国が調査した課題
子どもの入院では、親が付き添う負担が知られています。
こども家庭庁は「入院中のこどもへの家族等の付添いに関する病院実態調査」を実施。
令和6年4月に、報告書と事例集を公表しました。
国が実態を調べて改善に動くほどの課題。付き添いの負担は、公的に認知されているということです。
出典:こども家庭庁「入院中のこどもへの家族等の付添いに関する病院実態調査」の報告書及び事例集について(令和6年4月12日)
ひとり親の場合、付き添いと仕事の両立には難しさがあります。
実際の負担の中心は、個室代のような支出よりも、仕事を休むことによる収入の減少になりえます。
差額ベッド代は希望しなければかからない
個室を使うと差額ベッド代がかかる、という心配について。
この費用の性質を知っておくと、見え方が変わります。
差額ベッド代は、厚生労働省の制度上「選定療養」に位置づけられています。
これは患者の選択により特別の料金を支払うものという位置づけです。
つまり入院した人全員に自動的にかかる費用ではありません。希望して選んだ場合に支払う費用です。
詳しい取り扱いは厚生労働省の通知に定められているので、説明を受けて納得してから決めてください。
1回の入院で数万円台という見積もり
規模をつかむため、仮の数字で計算してみます。
1日7,000円の個室を、0〜14歳の平均在院日数に近い7日間使ったとすると4万9,000円。
親の食事代や交通費を加えても、1回の入院で追加になるのは数万円台という見積もりが立ちます。
これは特定の病院の料金ではなく、掛金の総額と比べるための仮の計算です。
差額ベッド代は病院や部屋によって幅があるので、実際の金額は入院先で確かめてください。
掛金21万6,000円をどう評価するか
月1,000円を18年間払うと、掛金の合計は21万6,000円です(1,000円×12か月×18年)。
ここまでのデータと並べて考えます。
保険の出番は貯蓄で払えない損失
保険で備えるべきなのは、起きる確率の低さではありません。起きたときに貯蓄で払えない規模かどうかです。
子どもの入院で追加になる費用は、先ほどの見積もりでは1回あたり数万円台。
この規模を予備の貯蓄でまかなえる家計なら、保険という形で備える必要性は下がります。
逆に、貯蓄がまだ薄く、数万円の急な出費が生活に響く時期なら、掛金を払って備える意味もあります。
同じ商品でも、家計の状態によって答えが変わるのがこの問いの特徴です。
「月1,000円だから」で決めない
月1,000円という手頃さは、加入の理由としては弱いところがあります。
21万6,000円を貯蓄に回せば、入院数回分の追加費用に相当する備えが、使い道を限定しない形で残る計算です。
「掛金の元が取れるか」という比べ方も、あまり意味を持ちません。
保険は損得ではなく、起きたときに払えるかどうかで考える仕組みだからです。
加入者の多くが元を取れる設計では、保険そのものが続きません。
加入するなら確かめること
そのうえで加入するなら、次の点をパンフレットや約款で確かめてください。
・給付は入院日額型か一時金型か。日数の短い子どもの入院で、いくら受け取れる設計か
・通院やけがの保障範囲。医療費助成と重なる部分がどれだけあるか
・掛金の割戻しの有無と、保障がいつまで続くか
保障内容や掛金の仕組みは商品ごとに違うので、この記事では個別の商品には踏み込みません。
先に確認したいのは親自身の保障
ひとり親世帯の家計にとって、影響が重いのは子どもの入院ではありません。
親自身が働けなくなる事態です。
子が受け取る遺族基礎年金は月7万円程度
遺族基礎年金を受け取れるのは、子のある配偶者または子です。
ひとり親世帯で親が亡くなった場合に受け取るのは、子になります。
令和8年4月分からの年金額は847,300円に、2人目以降の子の加算を加えた金額。
子どもが1人なら年847,300円、月あたり約7万円です。
ここでいう「子」は、18歳になった年度の3月31日までにある方などを指します。
また子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には支給されません。
支給が終わるのは、原則として子が高校を卒業する年度です。
出典:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
同じ月1,000円なら使う順番がある
親に万一のことがあった場合、月7万円程度で子の生活費と教育費をまかなうのは難しい場合があります。
なお厚生年金に加入して働いていれば、遺族厚生年金の上乗せも見込めます。
それでもひとり親であれば、この不足こそが貯蓄で払えない規模の損失です。
同じ月1,000円を使うなら、子どもの医療より先に、親自身の死亡保障や働けなくなった場合の備えに充てる。
そのほうが、リスクの規模と釣り合います。
子どもの医療費は公的助成が受け止めている一方、親の収入がなくなる事態への公的保障には不足が生じうるからです。
まとめ
月1,000円の子どもの保険や共済について、公的データから言えることは次のとおりです。
・全1,741市区町村が医療費助成を実施し、18歳年度末までが最多
・1〜4歳で入院しているのは、およそ650人に1人
・0〜14歳の平均在院日数は7.6日と全年齢で最短。喘息でも平均5日弱
・差額ベッド代は患者の選択により支払う費用で、自動的にはかからない
・1回の入院で追加になるのは数万円台。貯蓄で払えるかが分かれ目
・ひとり親世帯で影響が重いのは親自身の万一。子1人が受け取る遺族基礎年金は月7万円程度
数万円の出費に貯蓄で対応できるなら、無理に加入する必要はありません。
貯蓄が育つまでのつなぎとして加入するなら、それは合理的な使い方のひとつです。
「入るか入らないか」より先に、予備の貯蓄がいくらあるかと、親自身の保障が足りているかを確かめてください。
この2つがはっきりすれば、迷いは小さくなります。
本記事の執筆者は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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