生命保険
一時払終身保険は一部解約すれば税金がかからない?減額時の一時所得の計算

「2回に分けて解約すれば非課税」という説明は、期待どおりには働きません。
解約したお金から差し引ける保険料の計算方法が、多くの人が思っているのと違うためです。
ただし別のやり方はあります。受け取った合計が払った保険料に届くまでは、何回に分けても税金がかからないのです。
この記事では、国税庁の見解をもとに、税金をかけずに受け取る方法を説明します。
まずは全部解約したときの税金
減額の話に入る前に、基本を確かめます。
保険料を払った人と受け取る人が同じなら、解約したお金は一時所得という扱いです。
50万円を引いて半分にした額が対象
一時所得の計算は、こうなります。
・解約したお金 − 払った保険料 − 50万円 = 一時所得
・この金額の半分が、課税の対象になる
50万円という控除は、1年に1回使える枠です。
増えた金額がこの枠に収まれば、税金はかかりません。
数字で見るとこうなる
払込1,500万円の契約を、1,600万円で全部解約したとします。
・1,600万円 − 1,500万円 − 50万円 = 50万円
・その半分の25万円が、他の所得と合算される
一時所得は給与などと合算して税率が決まる仕組み。だから実際にいくら払うかは、その人の所得によって変わります。
終身保険なら20.315%の税金はかからない
一時払いの保険では、20.315%が天引きされるタイプもあります。
ただし対象になるのは、養老保険や個人年金保険など、満期のある商品です。
要件には払込方法や保障の倍率もあり、倍率は満期保険金を基準に判定されます。
満期のない終身保険は、この対象商品に含まれていません。
解約の時期にかかわらず、扱いは一時所得です。
出典:生命保険文化センター「満期保険金などが源泉分離課税になる場合は?」
受け取る人が違えば贈与税
ここまでは、保険料を払った人と受け取る人が同じ場合の話です。
この2人が違う場合、受け取ったお金は贈与税の対象になります。
受け取り方を検討する前に、契約者・被保険者・受取人の関係を保険証券で確かめてください。
出典:国税庁「No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」
一部解約では保険料をどう差し引くのか
ここからが本題です。
保険金額を減らすと、その分のお金が戻ってきます。このとき差し引ける保険料の計算方法が問題になります。
国税庁の答えは「受け取った額に達するまで」
国税庁の質疑応答事例に、この論点を扱ったものがあります。
そこでは2つの案が示されました。
・A案:払った保険料のうち、受け取った金額に達するまでを差し引く
・B案:減らした割合に応じて、払った保険料を按分して差し引く
国税庁の答えはA案でした。
つまり受け取った額と同じだけ、保険料の残高から先に差し引いていきます。
受け取った額が保険料の残高より少ないうちは、一時所得は発生しません。
なぜ按分ではないのか
回答が挙げる理由のひとつは、一時所得の性格にあります。
一時所得は臨時・偶発的な所得なので、継続的な収入を前提とした按分方式は馴染まない、という説明でした。
この違いが表れるのは、利益がいつ実現するかという点。
この方式では、払った保険料を使い切るまで税金がかかりません。そのぶん、増えた分の課税は最後の受け取りに集中します。
出典:国税庁 質疑応答事例「一時払養老保険の保険金額を減額した場合における清算金等に係る一時所得の金額の計算」
養老保険の事例だが終身保険にも当てはまる
この質疑応答事例が扱っているのは、一時払養老保険のケース。
終身保険には当てはまらないのでは、と思われるかもしれません。
ただし回答が出発点にしているのは、生命保険の一時金にかかる税金を定めた所得税法施行令の規定でした。
そして、この規定が対象とする生命保険契約に保険の種類の限定はありません。
回答は、規定が減額のケースを直接定めたものではないと断ったうえで、A案が妥当だとする理由を挙げていました。
ただし、注記も添えられていた点に注意が必要でしょう。
質疑応答事例は一般的な回答であり、個別の事案では異なる結果になる場合がある、という内容でした。
実行する前に、契約内容をもとに税務署か税理士に確認してください。
「2回に分ければ非課税」が成り立たない理由
A案を前提にすると、よく紹介される分割解約の効果は変わります。
先ほどの数字で確かめてみましょう。
2回に分けても結果は同じ
払込1,500万円、解約すると1,600万円戻る契約。増えた分は100万円です。
半分に減らして800万円受け取り、翌年に残り800万円を解約したとします。
・1回目:受け取り800万円 − 差し引く保険料800万円 = 一時所得0円
・2回目:受け取り800万円 − 残りの保険料700万円 − 50万円 = 50万円 → 半分の25万円が対象
1回目は非課税ですが、その分の保険料枠を使い切ってしまいます。
だから2回目に、増えた100万円がまとめて出てくる。
課税される金額の合計は、全部解約したときと同じ25万円です。
50万円の控除を2回使えるわけではない
「2回に分ければ50万円の控除を2回使えるので非課税」という説明は、B案の按分を前提にしたものです。
按分なら1回目も2回目も差引50万円ずつになり、それぞれの年の控除に収まるように見えます。
実際には、1回目の一時所得がそもそもゼロ。控除を使う場面がありません。
控除が働くのは、受け取った合計が払った保険料を超えて、利益が出はじめてからです。
分割の回数を増やしても、この構造は変わりません。
税金をかけずに受け取る方法
それでは、税金を避ける方法はないのか。
A案の構造を逆に読むと、受け取り方は設計できます。
1,500万円までは何回でも非課税
A案の方式なら、こうなります。
受け取った合計が払込保険料1,500万円に届くまで、何回に分けても一時所得は発生しません。
使いたい時期に必要な分だけ減らしていく。この範囲なら、税金を気にする必要はありません。
一時所得がゼロなら、申告すべき所得も発生しない計算です。
受け取り時に保険会社から交付される書類は、差し引いた保険料の累計を確かめる根拠になります。保管しておいてください。
超えた後は年50万円以内に刻む
合計が1,500万円を超えたら、計算が変わります。
その年の受け取りから残りの保険料を引き、さらに50万円を引いた額が一時所得です。
控除は年に最高50万円。だから利益が出る部分の受け取りを複数年に分け、各年50万円以内に収めれば、一時所得はゼロのままです。
先ほどの例なら、1,500万円までを先に受け取り、残る100万円分を50万円ずつ2年に分ける形になります。
注意したいのは、この控除がその年の一時所得全体に対する枠だという点。
同じ年に他の保険の満期金や解約返戻金があれば合算されるので、50万円の枠はその分だけ狭くなります。
商品側の制約も確かめる
税金の計算が立っても、商品の条件で計画どおりに進まないことがあります。
・最低保険金額や、減らせる単位の決まりがある場合
・契約から一定期間内は解約控除が差し引かれる場合
細かく刻むほど手続きの回数も増えます。何回に分けられるかは、保険会社に確かめてください。
また、残した部分が運用で増えていく設計なら、最後に出てくる利益もその分だけ膨らみます。
「年50万円ずつ」の期間が想定より延びる可能性も、見込んでおきたいところです。
解約しないという選択肢もある
税金だけを考えるなら、そもそも解約しないという道もあります。
一時払終身保険は、死亡時の受け取りで税金の扱いが変わるためです。
死亡保険金には非課税の枠がある
被相続人が保険料を払っていた死亡保険金を相続人が受け取る場合、「500万円×法定相続人の数」までは相続税がかかりません。
解約して一時所得の税金を払うか、持ち続けて相続の枠組みで遺すか。
資金の使い道と家族構成によって、答えは変わります。
出典:国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」
先に決めるのは「いつ何に使うか」
順序として先に決めたいのは、そのお金の使い道です。
生きている間に使う予定があるなら、一部解約を組み合わせた受け取り方に意味があります。
使う予定がなく遺すことが目的なら、非課税枠のある死亡保険金のまま持ち続ける選択が候補になります。
税金を最小にする受け取り方と、使いたい時期にお金がある状態。この2つは必ずしも一致しません。
数万円の税金を避けるために受け取りを何年も先送りするのが得かどうか。金額を出して比べてみてください。
まとめ
一時払終身保険の一部解約と税金の関係は、次のとおりです。
・保険料を払った人と受け取る人が同じなら、解約したお金は一時所得(50万円の控除・半分が課税対象)
・終身保険は20.315%が天引きされる商品には含まれず、解約の時期にかかわらず一時所得
・一部解約で差し引ける保険料は、按分ではなく「受け取った額に達するまで」
・そのため利益は最後の受け取りに集中し、「2回に分ければ非課税」は働かない
・受け取った合計が払込保険料に届くまでは一時所得ゼロ。超えた後を年50万円以内に刻めば税金は避けられる
・遺すことが目的なら、死亡保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)とも比べる
質疑応答事例は一般的な回答であり、個別の事案では異なる結果になる場合があると国税庁自身が注記しています。
減らす前に、契約内容と受け取りの計画をもとに、税務署か税理士に確認してください。
そのうえで、税金の見込みと使いたい時期を並べて受け取り方を決める。
この順序なら、数字に振り回されずに済みます。
本記事の執筆者は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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