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区分マンション投資とは?メリット・デメリット・新築ワンルームの落とし穴と購入前に確認すべき5つのポイント

区分マンション投資とは、マンションの一室(区分所有権)を購入し、入居者に貸し出して家賃収入を得る不動産投資の手法です。国土交通省の統計によると、2024年末時点の全国のマンションストック総数は約713.1万戸に達しており、そのうち築40年以上のマンションは約148万戸を占めています。
区分マンション投資は一棟投資と比べて少額から始められる点が注目されやすい一方で、修繕積立金の不足が計画に対して生じているマンションが全体の36.6%にのぼり、管理費・修繕積立金の値上がりリスクは購入者個人の意思では回避できない構造的な問題です。この記事では、区分マンション投資の仕組みとメリット・デメリットに加え、とくに注意すべき新築ワンルームマンション投資の構造的リスクについて、公的データに基づきながら解説します。
区分マンション投資の基本的な仕組み

区分マンション投資は不動産投資の中でも参入しやすい手法とされていますが、一棟投資との構造的な違いを正しく理解しておくことが判断の出発点になります。ここでは、区分マンション投資の仕組みと、一棟投資との違いを確認しましょう。
区分所有権とは何か
区分マンション投資で購入するのは、マンション全体ではなく一室分の「区分所有権」です。区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)に基づき、購入者は専有部分(室内)の所有権と、廊下やエレベーターなどの共用部分に対する持分を取得します。
この仕組みにより、購入価格は一棟投資と比べて低く抑えられますが、建物全体の管理方針は管理組合の多数決で決定されるため、修繕の時期や内容、修繕積立金の値上げといった重要な事項について、区分所有者個人の意思だけでは変更できない点に注意が必要です。
一棟投資との違い
一棟アパートや一棟マンションを購入する場合は、建物全体の所有者として修繕や家賃設定を自由に決められます。これに対し、区分マンション投資は以下の点で異なります。
・投資金額:区分は数百万円〜数千万円程度から可能で、一棟は数千万円〜数億円が必要になることが多い
・管理の自由度:区分は管理組合の決定に従う必要があり、一棟はオーナーが裁量を持てる
・分散効果:区分は一室のみのため空室=収入ゼロだが、一棟は複数室で空室リスクを分散できる
・出口戦略:区分は個人投資家への売却が中心で、一棟より流動性が高い傾向がある
区分マンション投資のメリット

区分マンション投資が選ばれる理由には、初期投資額や管理面でのハードルの低さがあります。ここでは主なメリットを整理しつつ、それぞれの限界についても触れておきましょう。
少額の自己資金から始められる
区分マンションは物件価格が一棟投資と比べて低いため、自己資金が限られている場合でも不動産投資ローンを活用して参入しやすい点がメリットとして挙げられます。中古のワンルームマンションであれば数百万円台から購入できる物件も存在します。
ただし、「少額で始められる」ことと「リスクが小さい」ことは同義ではない点に注意が必要です。物件価格が低くても、空室や修繕費の負担、金利上昇の影響は同様に発生するため、家計全体のバランスを考慮した判断が欠かせません。
管理の手間が比較的少ない
区分マンションでは、建物全体の管理は管理組合が管理会社に委託するケースが一般的です。共用部分の清掃やエレベーターの保守点検などは管理会社が担うため、一棟投資と比べて日常的な管理業務の負担は軽減されます。
一方で、管理の手間が少ないということは「管理に関与しにくい」ことの裏返しでもあります。管理会社の選定や管理委託費の見直しは管理組合の決議で行われるため、個人の判断で変更できない点も認識しておくべきでしょう。
立地の良い物件を選びやすい
都心部や主要駅の徒歩圏内にある物件でも、一室単位であれば購入できる価格帯に収まる場合があります。立地条件は空室リスクに直結する要素であり、入居者が見つかりやすい物件を選びやすいのは区分マンション投資の利点といえるでしょう。
区分マンション投資のデメリットとリスク

メリットの一方で、区分マンション投資には構造的に避けられないデメリットが複数存在します。とくに管理費・修繕積立金の値上がりと、一室のみを所有することによるリスクの集中は、購入前に十分理解しておく必要があるでしょう。
空室になると収入がゼロになる
一棟投資では複数の部屋を所有しているため、1室が空室でも他の部屋の家賃収入で補えます。しかし、区分マンション投資では所有しているのは1室のみであるため、その部屋が空室になった瞬間に家賃収入はゼロになり、ローン返済や管理費・修繕積立金の支払いだけが発生する「持ち出し」の状態に陥ります。
退去から次の入居者が決まるまでの空室期間は物件の立地や築年数によって異なりますが、1〜3か月程度の空室が生じることは珍しくないでしょう。この間の負担を手持ち資金でカバーできるかどうかが、資金計画の重要なポイントです。
管理費・修繕積立金の値上がりリスク
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、修繕積立金の月額平均は1戸あたり13,054円(駐車場使用料等からの充当額を除く)、管理費の月額平均は11,503円となっています。合計すると月額約24,500円の固定費が、家賃収入の有無にかかわらず発生し続けることになります。
さらに注意すべきは修繕積立金の増額リスクです。同調査では、現在の修繕積立金の積立方式として「段階増額積立方式」を採用しているマンションが47.1%を占めています。この方式は、新築時の積立額を低く設定し、段階的に値上げしていく仕組みであるため、築年数が経過するほど月々の負担が増加します。
修繕積立金の不足問題
国土交通省の同調査では、長期修繕計画上の積立額に対して実際の積立額が不足しているマンションが全体の36.6%にのぼることも判明しています。修繕積立金が不足すると、大規模修繕工事の際に一時金の徴収が必要になったり、修繕工事そのものが先送りされたりするリスクにつながるでしょう。
国土交通省は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)において、将来にわたり安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点から「均等積立方式」が望ましいとの見解を示しました。段階増額積立方式を採用するマンションについては、計画の初期額は均等積立方式の基準額の0.6倍以上、最終額は基準額の1.1倍以内にすべきという考え方も盛り込まれています。
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の改定について
利回りが一棟投資より低くなりやすい
区分マンションは物件価格に対して管理費・修繕積立金などの固定費が占める割合が相対的に高くなるため、実質利回りは一棟投資と比較して低くなる傾向があります。とくに都心部の物件では、物件価格の上昇に対して家賃の上昇が追いつかないケースも見られ、表面利回りが3〜4%台にとどまることも珍しくありません。
不動産投資の利回りに関する記事でも解説したとおり、表面利回りから管理費・修繕積立金・固定資産税・ローン金利などを差し引いた「手残り(キャッシュフロー)」が月数千円〜1万円程度になるケースでは、1か月の空室で数か月分の利益が消える計算です。収支のシミュレーションは慎重に行う必要があるでしょう。
新築ワンルームマンション投資の構造的リスク

区分マンション投資の中でもとくに注意が必要なのが、新築ワンルームマンション投資です。「節税になる」「年金代わりになる」といった営業トークが多く見られますが、構造的に収益が出にくい仕組みを理解しておくことが判断の前提になります。
新築プレミアムによる購入直後の価格下落
新築マンションの販売価格には、デベロッパー(分譲会社)の開発費や広告費、営業にかかるコストが上乗せされています。この上乗せ分は一般に「新築プレミアム」と呼ばれ、購入者が入居した時点で中古物件として扱われるため、購入直後に物件の市場価格が1〜2割程度下落することが珍しくありません。
この価格下落は、売却時の「出口戦略」に直接影響する要素です。購入価格を下回る価格でしか売却できない場合、家賃収入で回収していた利益がローン残債との差額で相殺される可能性があるでしょう。
「節税になる」の実態と限界
新築ワンルームマンション投資の営業で頻繁に使われるのが「節税効果」ですが、不動産所得が赤字になることで給与所得と損益通算ができるという仕組みを指しています。
しかし、国税庁(No.1391)によると、不動産所得の赤字のうち、土地を取得するために要した借入金の利子に相当する部分は、損益通算の対象外です。つまり、ローンの金利のうち土地部分に対応する利子は損益通算の対象外であるため、期待どおりの節税効果が得られないケースも珍しくありません。
出典:国税庁 No.1391「不動産所得が赤字のときの他の所得との通算」
そもそも、投資の目的は利益を得ることであり、「赤字を出して税金を減らす」ことは、手元の資金が減り続ける状態そのものです。この点を見落としてはいけないでしょう。
「年金代わりになる」の前提条件
「ローン完済後は家賃収入が年金代わりになる」という説明も多く見られますが、ローン完済後の築30〜35年の中古マンションでは、築年数に応じた家賃下落と修繕費用の増加が想定されます。築古物件では空室リスクも高まるため、完済後に安定した家賃収入が得られるとは限りません。
老後の収入を補うことが目的であれば、まずは公的年金の受給見込み額を確認し、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAなど、不動産投資よりも流動性が高く税制優遇のある制度を優先的に検討することが合理的です。
サブリース契約(家賃保証)の注意点

区分マンション投資では、空室リスク対策としてサブリース契約(家賃保証)が提案されることがあります。しかし、この契約には法的な構造上の注意点が存在しており、「家賃が保証されるから安心」とは言い切れません。
賃料減額請求権は法律で認められている
サブリース契約であっても、借地借家法第32条に基づき、サブリース会社は賃料の減額を請求する権利を持っています。最高裁判所の判例(平成15年10月21日判決)でも、サブリース契約に借地借家法の賃料減額請求権の適用が認められており、「○年間家賃保証」という文言があっても、法的には減額される可能性があるのです。
賃貸住宅管理業法による規制
サブリースに関するトラブルの増加を受け、国土交通省は賃貸住宅管理業法(2020年施行)に基づき、サブリース事業の適正化を推進しています。具体的には、誇大広告の禁止、不当な勧誘の禁止、重要事項説明の義務化が定められました。
「家賃保証」「空室保証」を強調する営業に対しては、契約期間中の賃料減額の可能性、契約解除の条件、免責期間(家賃が支払われない期間)の有無について、契約書の記載を必ず確認することが重要です。
区分マンション購入前に確認すべき5つのポイント

区分マンション投資で失敗しやすいケースの多くは、購入前の調査不足に起因しています。ここでは、購入を検討する際に最低限確認しておくべき5つのポイントを整理します。
長期修繕計画と修繕積立金の推移
購入を検討するマンションの長期修繕計画を必ず確認し、修繕積立金が今後どのように推移するかを把握しましょう。段階増額積立方式を採用している場合は、将来の増額幅と増額時期を具体的に確認する必要があります。修繕積立金が現時点で安いことがメリットとは限らず、将来の値上がりを前提とした「安さ」である可能性を考慮すべきです。
管理組合の運営状況と管理費の滞納状況
マンションの資産価値は管理状態によって大きく左右されます。管理組合の議事録で修繕計画や理事会の運営状況を確認するとともに、管理費・修繕積立金の滞納状況にも注意が必要です。国土交通省の調査では、管理費等を3か月以上滞納している住戸があるマンションは30.1%にのぼっています。
周辺エリアの賃貸需要と家賃相場
物件の所在地における賃貸需要と家賃相場を調査し、想定家賃が周辺相場と乖離していないかを確認しましょう。とくに新築ワンルームの場合、販売会社が提示する「想定家賃」が相場より高めに設定されていないか、複数の不動産ポータルサイトで近隣の類似物件の家賃を確認することが重要です。
出口戦略(売却の見通し)
購入前の段階で「いつ、いくらで売却できるか」を想定しておくことは、投資判断において欠かせないプロセスです。物件の築年数が経過するにつれて売却価格は下がる傾向にあるため、ローン残債を下回らない時期に売却できるかどうかを、購入時に検討しておく必要があります。
生活防衛資金と公的保障の確認
不動産投資は、家計の余裕資金で行うことが前提です。健康保険の高額療養費制度(自己負担上限は年収約370万〜770万円の方で月額80,100円+α)や傷病手当金(給与の約3分の2を最長18か月支給)などの公的保障を把握したうえで、生活防衛資金(生活費の6か月〜1年分)が確保されているかを確認しましょう。これらの前提が整っていない段階での不動産投資は、不測の事態に対応できなくなるリスクを高めます。
区分マンション投資が向いているケースと向いていないケース

区分マンション投資は、すべての人にとって最適な投資手法ではありません。向いているケースと向いていないケースを整理すると、以下のような判断基準が見えてきます。
向いている可能性があるケース
・生活防衛資金を十分に確保したうえで、余裕資金の範囲内で投資できる
・不動産投資の仕組みやリスクを理解し、空室期間の「持ち出し」にも耐えられる資金力がある
・立地や管理状態を重視して物件を選び、利回りだけでなく出口戦略まで検討できる
・すでにNISAやiDeCoを活用しており、さらなる分散投資先として検討している
向いていない可能性が高いケース
・生活防衛資金が十分に確保できていない
・「ローンを組めば自己資金ゼロで始められる」という理由だけで検討している
・「節税になる」「年金代わりになる」という営業トークのみを判断材料にしている
・NISAやiDeCoの非課税枠を活用していないにもかかわらず、不動産投資を優先しようとしている
・管理費や修繕積立金の将来的な値上がりを想定していない
まとめ:区分マンション投資は「始めやすさ」と「リスクの構造」を冷静に比較する
区分マンション投資は、一棟投資と比べて少額から始められ、管理の手間も比較的少ない点が魅力です。しかし、一室のみの所有であるがゆえに空室=収入ゼロになるリスクの集中、管理費・修繕積立金の値上がりに対する個人のコントロールの限界、新築ワンルームにおける新築プレミアムの問題など、構造的なデメリットも存在します。
国土交通省の調査では修繕積立金が計画に対して不足しているマンションが36.6%に達しており、購入時の低い修繕積立金が将来の値上がりを前提としたものである可能性を見落とすべきではありません。投資判断にあたっては、生活防衛資金の確保と公的保障の把握を前提としたうえで、長期修繕計画の確認、出口戦略の検討、そして家計全体のバランスを考慮した冷静な判断が欠かせないでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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