資産運用
不動産投資のリスクとは?空室・修繕・金利上昇・災害・家賃下落の7大リスクと対策をわかりやすく解説

不動産投資は家賃収入による安定したキャッシュフローが魅力とされる一方で、株式や投資信託とは異なる特有のリスクを複数抱えています。総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点の全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を更新しました。また、日本銀行は2024年3月のマイナス金利解除以降、段階的に政策金利を引き上げており、2025年12月には政策金利が0.75%と約30年ぶりの水準に達しています。国土交通省の調査では変動金利を選択する住宅ローン利用者が全体の84.3%を占めており、不動産投資ローンにおいても金利上昇が返済額に与える影響は見過ごせない状況です。この記事では、不動産投資で直面しうる7つの主要リスクを、公的データに基づいて整理していきましょう。
空室リスク:入居者がいなければ収入はゼロになる

不動産投資における最も基本的なリスクが空室リスクであり、入居者がいない期間は家賃収入がゼロになるにもかかわらず、ローン返済・管理費・固定資産税といった固定費は発生し続けます。ここでは空室リスクの実態と対策を確認しましょう。
全国の空き家率は過去最高の13.8%
総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」の令和5年調査結果によると、全国の空き家数は約900万戸で、総住宅数6,502万戸に占める空き家率は13.8%と、前回調査(2018年、13.6%)からさらに上昇して過去最高を記録しました。空き家のうち賃貸用の空き家は約443万戸と全体の約半数を占めており、30年間で空き家数は約2倍に増加した計算になります。
東京都でも賃貸用空き家は増加している
「都心なら空室リスクは低い」と考える方も少なくありませんが、三井住友信託銀行の分析によると、東京都の空き家率は2018年から2023年の間に上昇しており、空き家の約70%が賃貸用とされています。人口が流入し続ける東京都であっても、新築賃貸住宅の供給が需要を上回れば空室は発生するという構造的な問題を抱えているといえるでしょう。
空室リスクを抑えるための判断ポイント
空室リスクの軽減には、「需要のあるエリアを選ぶ」だけでは不十分です。物件の購入判断にあたっては、以下の点を確認することが重要になります。
・周辺の賃貸物件の空室状況(現地確認やポータルサイトでの募集数を調べる)
・人口動態(自治体の人口ビジョンで将来推計を確認する)
・最寄り駅の乗降客数の推移
・競合物件の築年数・家賃帯・設備水準
物件広告に記載されている「想定利回り」は満室を前提に計算されており、空室期間が生じれば実際の収益は大幅に下がります。実質利回りを計算する際には、空室率を5〜10%程度は織り込んでシミュレーションすることが現実的な判断につながるでしょう。
家賃下落リスク:築年数とともに家賃は下がる

空室を避けるために家賃を下げれば収入が減少し、家賃を維持すれば空室期間が長引くという、いわば「二律背反」の構造が不動産投資にはあります。家賃下落のメカニズムを理解しておきましょう。
築年数が経過するほど家賃は低下する傾向にある
新築物件は「新築プレミアム」と呼ばれる割増家賃を設定できるケースがありますが、最初の入居者が退去した時点でこのプレミアムは消失し、周辺の中古物件と同等の家賃水準に収斂していくのが一般的です。築10年を超えると設備の陳腐化や建物の経年劣化が目立ち始め、家賃の引き下げ圧力がさらに強まる傾向にあります。
サブリース(家賃保証)でも家賃は下がりうる
「サブリース契約なら家賃が保証されるから安心」と考える方もいますが、借地借家法第32条に基づき、サブリース会社(借主側)は家賃の減額を請求する権利を持っています。国土交通省は賃貸住宅管理業法に基づいてサブリース事業の適正化を進めており、「家賃保証」という表現が実態と乖離するケースがあることに注意喚起を行っています。
出典:国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」
修繕リスク:想定外の出費が収益を圧迫する

不動産は経年劣化する実物資産であり、建物や設備の修繕費用は避けて通れません。修繕費をどこまで正確に見込めるかが、不動産投資の収支を左右する重要な要素になります。
区分マンションの修繕積立金不足問題
国土交通省が実施した「令和5年度マンション総合調査」によると、長期修繕計画に対して修繕積立金が不足しているマンションが一定数存在することが示されています。修繕積立金が不足すれば、大規模修繕工事の際に一時金の徴収や工事内容の縮小を余儀なくされる可能性があり、建物の資産価値の維持にも影響が及ぶでしょう。
一棟物件・戸建ての修繕は全額オーナー負担
区分マンション投資では管理組合による修繕積立の仕組みがありますが、一棟アパートや戸建て投資では修繕費用のすべてがオーナーの負担となります。具体的には以下のような費用が発生し得ます。
・外壁塗装:築10〜15年ごとに実施(規模によって数百万円単位)
・屋根の防水工事
・給排水管の交換(築20〜30年)
・エアコン・給湯器などの設備交換(10〜15年ごと)
・退去時の原状回復工事
これらの費用を事前に織り込まずに購入判断を行うと、キャッシュフローが赤字に転落する恐れがあるでしょう。表面利回りが高い築古物件ほど修繕費の負担が重くなる傾向があるため、利回りの高さだけに着目するのは危険といえるでしょう。
金利上昇リスク:変動金利の返済額増加に備える

日本は長らく低金利環境が続いてきましたが、日本銀行の金融政策の転換により、金利上昇が現実のリスクとなっています。不動産投資ローンを利用する場合、金利上昇が返済額に直結する点を理解しておく必要があるでしょう。
日銀の政策金利は約30年ぶりの水準に
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、同年7月に0.25%、2025年1月に0.50%、同年12月に0.75%へと段階的に政策金利を引き上げました。政策金利0.75%は約30年ぶりの水準であり、今後もさらなる利上げの可能性が指摘されています。
金利1%上昇で返済額はどれだけ増えるか
不動産投資ローンの返済額への影響を具体的に確認しましょう。借入額3,000万円・返済期間30年・元利均等返済の場合、金利が1%上昇すると以下のような差が生じます。
・金利2.0%の場合:月額返済約110,885円
・金利3.0%の場合:月額返済約126,481円
・差額:月約15,596円(年間約187,000円の負担増)
返済額の増加分は家賃収入からの手残り(キャッシュフロー)を直接圧迫するため、金利上昇によってキャッシュフローがマイナスに転じるケースは珍しくありません。一般的に「返済比率50%以下」が安全ラインとされており、金利上昇局面ではこの基準を守ることが一層重要になるでしょう。
不動産投資ローンは住宅ローンより金利が高い
住宅ローンの変動金利は2026年3月時点で0.6〜0.9%台が中心ですが、不動産投資ローン(アパートローン)は住宅ローンよりも金利が高く設定されるのが一般的です。金融機関や物件の評価によって異なるものの、変動金利でも2%前後、固定金利では3%を超えるケースもあります。住宅ローン感覚で返済計画を立てると、実際の負担との間にギャップが生じる可能性があることに留意しましょう。
災害リスク:地震・水害・火災は資産価値を一瞬で毀損する

日本は地震・台風・豪雨などの自然災害が多い国であり、不動産という実物資産は災害の影響を直接受けます。2020年8月からは水害ハザードマップの重要事項説明が義務化されるなど、災害リスクに対する法整備も進んでいます。
水害ハザードマップの重要事項説明が義務化
国土交通省は2020年8月28日から、不動産取引時の重要事項説明において水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を説明することを義務化しました。これは水防法に基づく洪水・雨水出水・高潮の3種類のハザードマップが対象であり、市町村が作成した最新のハザードマップを提示して物件の位置を示すことが求められています。
出典:国土交通省「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化」
地震リスクと耐震基準の確認
1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認を受けた建物には「新耐震基準」が適用されていますが、それ以前に建てられた建物は「旧耐震基準」に基づいている可能性があります。旧耐震基準の物件は大規模地震で倒壊するリスクが相対的に高く、地震保険の保険料も新耐震基準の物件より割高になる場合があるでしょう。
投資物件を検討する際には、建築年月日だけでなく、耐震診断の実施状況や耐震補強工事の有無を確認することが重要です。
火災保険・地震保険は必須だが万能ではない
不動産投資において火災保険への加入は事実上必須ですが、保険でカバーされる範囲と実際の損害との間にはギャップが生じることがあります。地震保険は火災保険の保険金額の30〜50%が支払い上限であり、建物が全壊しても再建築費用の全額がカバーされるわけではありません。また、火災保険料は近年値上がり傾向にあり、長期契約の割引制度も縮小されているため、保険コストの上昇も収支に影響を与え得るでしょう。
流動性リスク:売りたいときにすぐ売れない

株式やETFであれば証券取引所の取引時間中に売却できますが、不動産は売却の意思決定から実際に現金化されるまでに数か月以上かかるのが一般的です。この「すぐに換金できない」という性質が流動性リスクにあたります。
売却には時間とコストがかかる
不動産の売却にあたっては、不動産会社への査定依頼、媒介契約の締結、購入希望者の内覧対応、価格交渉、契約・決済という一連の手続きを経る必要があります。市場環境や物件の立地条件によっては、売却まで半年〜1年以上かかるケースも珍しくありません。
加えて、売却時には仲介手数料(物件価格の3%+6万円+消費税が上限)、譲渡所得税(所有期間5年超は約20%、5年以下は約39%)、抵当権抹消費用などが発生します。購入時だけでなく売却時にも諸費用がかかる点は、株式投資と比較した不動産投資のデメリットの一つでしょう。
「売れない物件」になるリスク
人口減少が進む地方の物件や、築年数が古く大規模修繕が必要な物件は、買い手自体がつかない可能性もあります。購入時には必ず「出口戦略(いつ・いくらで売却できるか)」を検討し、売却困難な物件に投資しないことがリスク管理の基本です。立地条件だけでなく、建物の管理状態、周辺のインフラ整備計画、将来的な需要見込みまで含めた総合的な判断が求められます。
賃借人トラブルリスク:家賃滞納・騒音・原状回復

不動産投資は入居者との関係によっても収益が左右されます。家賃滞納や近隣トラブルなど、「人」に起因するリスクは予測が困難である分、事前の対策が重要になります。
家賃滞納と法的手続きの負担
入居者が家賃を滞納した場合、日本の借地借家法では賃借人の保護が強く、即時の退去を求めることは法的に難しいのが現実です。裁判手続き(明渡訴訟)を経て強制退去に至るまでには半年以上の期間と数十万円の費用がかかるケースもあるでしょう。
このリスクに対しては、入居審査の厳格化や家賃保証会社の利用が有効な対策となります。家賃保証会社を利用する場合は保証料が発生しますが、滞納時の家賃回収や法的手続きの代行が含まれるサービスもあり、オーナーの負担軽減につながるでしょう。
原状回復費用の負担をめぐるトラブル
退去時の原状回復費用をめぐっては、オーナーと入居者の間でトラブルが発生しやすい領域です。国土交通省は「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しており、経年劣化や通常使用による損耗はオーナー負担、入居者の故意・過失による損傷は入居者負担という原則が示されています。このガイドラインを理解しておくことが、トラブルの予防と適切な対応につながるでしょう。
不動産投資のリスクに備えるための4つの基本原則

ここまで7つのリスクを確認してきましたが、重要なのはリスクの存在を知ることだけでなく、リスクに備える具体的な行動をとることです。最後にリスク管理の基本原則を整理しましょう。
原則1:生活防衛資金と公的保障を先に確保する
不動産投資を始める前に、生活費の6か月〜1年分の現金(生活防衛資金)が確保されているかを確認しましょう。会社員であれば傷病手当金(給与の約3分の2、最長18か月)や高額療養費制度(年収約370万〜770万円の方で自己負担上限月額80,100円+α)といった公的保障がありますが、不動産投資では突発的な修繕費や空室による収入減が生じるため、投資資金とは別に手元資金を確保しておくことが欠かせません。
原則2:複数のリスクを同時にシミュレーションする
空室率5〜10%、家賃下落率年1〜2%、金利上昇1〜2%、修繕費用の発生といった複数のリスクが同時に起こった場合のキャッシュフローをシミュレーションすることが重要です。「最悪のケースでも返済が続けられるか」を基準に投資判断を行えば、想定外の事態にも対応しやすくなるでしょう。
原則3:物件購入前にハザードマップと耐震情報を確認する
国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」では、洪水・土砂災害・津波などのリスク情報を地図上で確認できます。物件の所在地のリスク情報を事前に把握し、浸水想定区域や土砂災害警戒区域に該当する物件への投資は慎重に判断すべきでしょう。
原則4:出口戦略を購入前に考える
不動産投資は「買って終わり」ではなく、将来的にいつ・いくらで売却できるか(出口戦略)を購入前に考えておくことがリスク管理の要です。人口減少が進む地域の物件は将来の売却が困難になる可能性があり、「高利回りだから」という理由だけで投資判断を行うと、保有期間中のキャッシュフローが良好でも最終的な収支がマイナスになるリスクがあります。
まとめ:リスクを理解したうえで投資判断を行う
不動産投資には、空室・家賃下落・修繕・金利上昇・災害・流動性・賃借人トラブルという7つの主要リスクが存在します。全国の空き家率が13.8%と過去最高を更新し、日銀の政策金利が約30年ぶりの水準に達している現在、「不動産投資は安定収入が得られる」というイメージだけで始めるのは危険といえるでしょう。
一方で、これらのリスクを正しく認識し、シミュレーションに織り込んだうえで投資判断を行えば、不動産投資は資産形成の有力な選択肢となり得ます。生活防衛資金の確保と公的保障の把握を前提としたうえで、最悪のケースでも返済が継続できる範囲で投資を行うことが、長期的な資産形成につながる基本姿勢でしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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