生命保険
健康診断で指摘があると生命保険に入れない?有所見率59.4%と放置しない手順

指摘を受けただけで保険に入れなくなることはありません。
健康診断で何かを指摘される人は、令和6年で59.4%。約6割が該当しており、めずらしい状態ではないからです。
保険会社が見るのは、指摘があったかどうかではありません。その中身と、今の状態です。
この記事では、指摘を受けた後にやるべきことを順番に説明します。
指摘を受ける人は約6割
まず、自分の状況が特別なのかを確かめます。
結論から言えば、指摘を受けること自体は多数派に近い状態です。
20年で12ポイント近く増えている
健康診断を受けた人のうち、何らかの異常を指摘された人の割合を有所見率といいます。
厚生労働省の統計では、次のように推移しています。
・平成7年:36.4%
・平成16年:47.6%
・平成26年:53.2%
・平成30年:55.8%
・令和5年:58.9%
・令和6年:59.4%
平成7年の36.4%から令和6年の59.4%まで、23.0ポイントの上昇。
指摘を受けた状態は例外ではなく、むしろ標準に近い分布です。
多いのは血中脂質・血圧・肝機能
どの項目で指摘されているのか。全国の割合は次のとおりです。
・血中脂質:31.2%
・血圧:18.4%
・肝機能:16.2%
・血糖:13.1%
・心電図:10.9%
・尿検査(蛋白):3.8%
血中脂質は約3割と、項目別で最も高い水準。
生活習慣に関わる項目ほど該当者が多く、指摘の内容によって意味合いは変わります。
出典:厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査(令和6年)」第7表 定期健康診断実施結果(年次別)
「指摘があると入れない」は不正確
ここが質問の核心です。
結論を言えば、指摘の有無だけで加入の可否が決まる仕組みにはなっていません。
見られるのは指摘の中身
健康に問題があっても、加入できる場合があります。
治療を受けるほどでもない症状の人や、病気が完治して一定の年数が経った人などです。
判断されるのは、指摘があったかどうかではなく、その中身と現在の状態。
有所見率が約6割という水準を考えれば、指摘だけで一律に断る運用はそもそも成り立ちません。
「入れる」「入れない」の二択ではない
条件を付けたうえで加入できる場合もあります。
保険料を通常より高くする、一定期間は保険金を減らすといった形です。
医療関係の特約では、特定の部位や病気だけを保障の対象から外す条件が付くこともあります。
生命保険文化センターが挙げている例は、こうです。
3年前に胃かいようで入院したが今は完治している人。特約は付けられるものの、胃の病気で入院した場合の給付金は、契約から一定期間支払われない。
条件を調整して引き受ける仕組みが用意されているということです。
出典:生命保険文化センター「健康上問題があると、生命保険は契約できないの?」
断定的なネット情報に根拠はない
それでも「入れない」と書かれた記事を見かけるのはなぜか。
加入を認める基準は生命保険会社ごとに決まっていて、公表されていないからです。
基準が非公開である以上、「この指摘があれば必ずこうなる」という記述には裏づけが取れません。
具体的な保険会社名や判定結果を挙げて断定している記事は、実務の一例か書き手の推測と受け止めてください。
判定区分より大事なのは検査値と医師の指示
結果票には、要経過観察・要再検査・要精密検査・要治療といった区分が書かれます。
この見方を確かめたうえで、次にやることを考えます。
区分の呼び方は統一されていない
厚生労働省の統計が集めているのは、項目ごとに異常があった人の割合です。
結果票にどの言葉で区分を表示するかまでは、統計にも法令にも決まりがありません。
だから区分の名前だけで判断せず、結果票の検査値そのものと、医師の指示内容を確認することが出発点になります。
同じ数値でも、受けた健診機関によって表記が違う場合があるためです。
放置している状態が最も不利
ここが実務上いちばん重要な点です。
再検査や精密検査を指示されたまま受けていない状態。これが最も判断しにくい状況になります。
健康なのか病気なのかを誰も判断できない状態は、保険会社にとってリスクを見積もれない状況だからです。
再検査を受けて問題がなければ、その結果を伝えられる。
治療が始まっていれば、病名と経過を伝えられる。
いずれも判断材料が増えますが、放置している間は「異常の可能性がある」という情報だけが残ります。
結果は保険会社に直接伝える
保険に入るとき、契約者や被保険者には告知義務があります。
職業や現在の健康状態、過去の病歴などを、事実のまま伝える義務です。
注意したいのは、生命保険会社の営業職員や保険代理店の担当者には、告知を受け取る権限がないこと。
担当者に口頭で伝えただけでは、告知したことになりません。
伝えるべき内容は、告知書に記載してください。
出典:生命保険文化センター「生命保険の契約にあたっての手引 その2」
再検査を無料で受けられる制度がある
再検査を勧められても、費用を理由に先延ばしにする人は少なくありません。
ここで知っておきたいのが、労災保険の給付です。
4項目すべてに異常があれば対象
職場の健康診断で異常が見つかった場合、脳や心臓の状態を調べる検査と保健指導を、1年度に1回、無料で受けられます。
二次健康診断等給付という制度です。
条件は、次の4つすべてに異常があると診断されたこと。
・血圧
・血中脂質
・血糖
・腹囲またはBMI(肥満度)
担当の医師が異常なしと判断した場合でも、職場の産業医が総合的に見て異常と認めれば、産業医の意見が優先されます。
ただし、すでに脳や心臓の病気の症状があると診断された方、労災保険に特別加入している方は対象外です。
受けられる検査と手続き
検査の内容は、空腹時の血中脂質と血糖、ヘモグロビンA1c、心臓と首の血管を調べる検査などです。
保健指導では、医師または保健師の面接で栄養・運動・生活の指導を受けられます。
受診できるのは、都道府県労働局長が指定した医療機関に限られます。
名簿は厚生労働省が公表しているので、そこで確認してください。
指摘の多い項目と重なっている
先ほどの項目別の割合を思い出してください。
血中脂質31.2%、血圧18.4%、血糖13.1%。この制度の条件に並ぶ項目が、上位を占めています。
指摘を受けた人にとって、費用をかけずに現状を確かめられる選択肢になりえます。
健康状態がはっきりすれば、保険の検討も先に進む。そういう関係です。
指摘を受けた後の進め方
ここまでを、実際の順序に置き換えます。
保険の申し込みは、最後の工程です。
5つのステップ
次の順で進めると、判断材料がそろった状態で申し込めます。
・結果票の検査値と医師の指示内容を確認する
・再検査や精密検査の指示があれば受ける。条件に当てはまれば二次健康診断等給付を使う
・結果が出たら、治療が必要かどうかをはっきりさせる
・そのうえで生命保険を検討し、告知書に事実をありのまま記載する
・条件が提示されたら、内容と期間を確認してから判断する
この順序なら、放置による不利を避けながら、健康状態も同時に確かめられます。
指摘を受けたまま急いで申し込むより、結果的に早く決着することも少なくないでしょう。
すぐに保障が必要な場合
再検査の結果を待てないほど保障が急がれることもあります。
住宅ローンの団体信用生命保険や、扶養家族がいて無保険の期間を作れない場合です。
その場合でも、告知書に事実を書くという前提は変わりません。
加入を認める基準は生命保険会社ごとに違うので、一社で断られても他社では結論が変わる可能性があります。
健康状態が改善すれば選択肢は戻る
指摘を受けた時点の状態が、そのまま固定されるわけではありません。
完治して一定の年数が経てば、無条件で契約できる場合もあります。
血中脂質や血圧のように生活習慣に関わる項目なら、改善の余地もあるでしょう。
いま条件が付いたとしても、それが最終結論とは限りません。
まとめ
健康診断の指摘と生命保険の関係は、次のとおりです。
・有所見率は令和6年で59.4%。指摘を受けた状態は例外ではない
・判断されるのは指摘の有無ではなく、その中身と現在の状態
・加入不可のほかに、保険料や保障範囲を調整する選択肢がある
・加入を認める基準は非公開で、断定的なネット情報には裏づけがない
・再検査を指示されたまま放置した状態が、判断材料が最も少なく不利になりやすい
・血圧・血中脂質・血糖・腹囲またはBMIのすべてに異常があれば、再検査を無料で受けられる
「指摘があると入れない」という説明は、事実の一部を切り取ったものにすぎません。
実際に決まるのは、指摘の中身と、その後どう対応したかです。
先にやるべきなのは保険の申し込みではありません。指示された検査を受けて、自分の状態をはっきりさせることです。
状態が確定すれば、告知に書ける内容が増え、保険会社が判断できる材料も増えます。
健康と保険の両方にとって、それが遠回りに見えて最も確実な順序になります。
なお、告知義務違反があった場合に契約がどうなるか、条件が提示されたときに受け入れるかどうかの判断基準。この2点は、生命保険の診査を扱った記事で詳しく解説しています。
本記事の執筆者は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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