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住宅ローンの借り換え・繰上げ返済はすべき?判断基準と注意点をわかりやすく解説

住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」(2026年1月調査)によると、住宅ローン利用者の75.0%が変動金利を選択しています。日銀のマイナス金利政策解除と4度の利上げを受け、今後の金利上昇を見込む利用者は73.7%に達しました。
こうした金利環境の変化を背景に、住宅ローンの借り換えや繰上げ返済を検討する方が増えています。ただし、借り換えには諸費用が発生し、繰上げ返済は手元資金を減らすことになるため、「得になるケース」と「損になるケース」の分岐点を正確に把握した上で判断することが重要です。
この記事では、借り換えと繰上げ返済のそれぞれの判断基準、住宅ローン控除との兼ね合い、さらに「繰上げ返済せずに運用に回す」選択肢まで、家計全体のバランスから解説します。
住宅ローンの借り換えとは?基本の仕組み

住宅ローンの借り換えとは、現在利用している金融機関の住宅ローンを一旦完済し、別の金融機関で新たな住宅ローンを組み直すことを指します。借り換えの主な目的は、より低い金利のローンに切り替えることで総返済額を減らすことにあります。
借り換えの基本的な流れ
借り換えの手続きは、新しい金融機関での事前審査・本審査を経て、融資実行日に現在のローンを一括返済する形で進みます。同じ金融機関内での借り換えは原則としてできず、別の金融機関を選ぶ必要があるでしょう。
借り換えで発生する主な諸費用
借り換えに伴う諸費用は、一般的にローン残高の1%前後が目安とされています。
具体的には、事務手数料(融資額の2.2%程度、または定額3〜5万円程度)、抵当権の抹消・設定に伴う登記費用、司法書士報酬、印紙税、保証料(保証会社を利用する場合)などが挙げられます。
借り換えで金利が下がっても、これらの諸費用を差し引いて総返済額が減らなければ意味がない点を忘れてはなりません。
借り換えを検討すべき「3つの条件」とは

住宅ローンの借り換えを検討する目安として、「残高」「残期間」「金利差」の3つの条件が広く知られています。ただし、これらはあくまで目安であり、諸費用を含めた総返済額の比較が最終的な判断材料になります。
借り換えの3条件の目安
一般的に、住宅ローンの残高が1,000万円以上、残りの返済期間が10年以上、借り換え前後の金利差が1%以上ある場合に借り換えのメリットが出やすいとされてきました。
ただし、昨今の低金利環境では、金利差が0.3%程度でも借り換え効果が出るケースがあります。残高や残期間が大きいほど、少ない金利差でも利息軽減効果が見込めるためです。
3条件を満たしても損になるケース
注意が必要なのは、3条件を満たしていても諸費用が高い場合には借り換え効果が打ち消されてしまう点でしょう。
たとえば、事務手数料が融資額の2.2%の金融機関で2,000万円を借り換えると、手数料だけで44万円が必要になります。登記費用や印紙税を合わせると、諸費用の合計は50万〜70万円程度に達する場合もあるのが実情です。
借り換えを検討する際は、必ず諸費用を含めた総返済額でシミュレーションを行いましょう。
借り換え時に見落としがちな3つの注意点

借り換えの判断は金利差だけでは不十分であり、住宅ローン控除や団体信用生命保険(団信)の保障内容、さらに変動金利の金利上昇リスクへの対応も含めて総合的に検討する必要があります。
住宅ローン控除(減税)との兼ね合い
国税庁のタックスアンサー(No.1233)によると、住宅ローンの借り換え後も引き続き住宅ローン控除を受けるには、「新しいローンが当初のローンの返済目的であることが明らかであること」と、「新しいローンの返済期間が10年以上であること」の2つの要件を満たす必要があります。
借り換えによって返済期間が10年未満に短縮されると、控除の残年数が残っていても適用を受けられなくなります。
また、借り換えで借入額が増えた場合(諸費用をローンに含めた場合など)、控除対象となる年末残高は「借り換え直前の残高÷借り換え後の借入額×年末残高」で按分計算されることにも留意しましょう。
出典:国税庁「No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき」
団体信用生命保険(団信)の保障が変わるリスク
借り換え時には、新しい金融機関の団信に改めて加入し直す必要があります。借り換え時の健康状態によっては、団信の審査に通らず借り換えそのものができなくなるリスクがある点は見落とされがちです。
また、現在のローンにがん保障や三大疾病保障などの特約が付いている場合、借り換え先の団信で同等の保障が得られるとは限りません。逆に、最近は上乗せ金利なしで疾病保障付き団信を提供する金融機関も増えており、借り換えによって保障内容が充実するケースもあります。
変動金利から固定金利への切り替え判断
金利上昇局面では、変動金利から固定金利への借り換えを検討する方も増えています。ただし、固定金利は変動金利よりも金利水準が高いため、切り替えた時点で毎月の返済額が増える可能性があるでしょう。「金利上昇リスクの回避」と「当面の返済負担の増加」を天秤にかけ、家計の収支状況やライフイベントの時期を踏まえて判断する必要があります。
繰上げ返済の2つの方法と判断基準

繰上げ返済は、毎月の返済とは別にまとまった金額を元金の返済に充てる方法であり、返済額はすべて元金に充当されるため、その分の利息を軽減できます。全国銀行協会の解説によると、繰上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があり、それぞれ効果の出方が異なります。
期間短縮型:総利息を減らしたい場合に有効
期間短縮型は、毎月の返済額を変えずに残りの返済期間を短くする方法です。
全国銀行協会の試算例では、返済開始から3年後に100万円を期間短縮型で繰上げ返済した場合、軽減される利息は約115万円と、投じた100万円以上の効果が得られています。定年退職までにローンを完済したい場合や、家計に余裕がある時期に有効な選択肢でしょう。
返済額軽減型:毎月の負担を減らしたい場合に有効
返済額軽減型は、返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす方法です。全国銀行協会の同条件での試算では、利息軽減効果は約45万円と期間短縮型の半分以下ですが、毎月の返済額を数千円単位で減らすことができます。
子どもの教育費がかさむ時期や、収入が減少するリスクがある場合には、返済額軽減型で家計の余裕を確保する方が合理的なケースもあります。
繰上げ返済の効果を高める3つのポイント
繰上げ返済の効果は、実施するタイミングと金額によって変わります。元利均等返済の場合、返済初期ほど返済額に占める利息の割合が高いため、早い時期に繰上げ返済を行うほど利息軽減効果が増すのが特徴です。複数のローンがある場合は金利が高いものから優先するのが基本でしょう。
繰上げ返済と住宅ローン控除、どちらを優先すべきか

住宅ローン控除の適用期間中に繰上げ返済を行うかどうかは、多くの方が迷うポイントです。控除率は年末残高の0.7%であるため、住宅ローンの借入金利と控除率の大小関係が判断の分かれ目になります。
借入金利が0.7%以下の場合
借入金利が住宅ローン控除の控除率(0.7%)を下回る場合、理論上はローンを借りているだけで控除額が利息を上回る「逆ざや」の状態になります。
このケースでは、控除期間中は無理に繰上げ返済をせず、手元資金を確保しておく方が家計全体では有利になる可能性があるでしょう。控除期間の終了後にまとめて繰上げ返済する方法も選択肢の一つです。
借入金利が0.7%を超える場合
借入金利が0.7%を超える場合は、利息の負担が控除の恩恵を上回ります。この場合は、繰上げ返済による利息軽減効果の方が期待できるため、余裕資金があれば控除期間中でも繰上げ返済を検討する価値があるといえます。ただし、繰上げ返済によって年末残高が減れば控除額も減るため、「繰上げ返済で減る利息」と「控除額の減少分」を比較して判断する必要があります。
「繰上げ返済せずに運用に回す」という選択肢

繰上げ返済に充てるまとまった資金がある場合、もう一つの選択肢として「その資金をNISAなどで運用に回す」という判断があります。これは家計全体の資産形成を考える上で見逃せない視点です。
繰上げ返済と運用の比較の考え方
住宅ローンの借入金利が年0.5%の場合、繰上げ返済による利息軽減効果は年0.5%分に相当します。一方、NISA口座での長期・分散投資で仮に年3〜5%程度のリターンが期待できるのであれば、手元資金を運用に回した方が家計全体の資産は増える計算になります。
ただし、投資には元本割れのリスクがあるのに対し、繰上げ返済の利息軽減効果は確実に得られる点が決定的に異なります。
判断のフレームワーク
繰上げ返済と運用の選択は、次の優先順位で考えるとよいでしょう。まず、生活費6カ月〜1年分の緊急予備資金が確保されていることが大前提です。
その上で、住宅ローンの借入金利が高い場合(目安として1%以上)は繰上げ返済を優先し、金利が低い場合(0.5%前後)は運用との併用を検討します。いずれの場合も、教育費や介護費用など近い将来に確実に必要になる資金を繰上げ返済や投資に回してしまうのは避けるべきでしょう。
変動金利上昇局面での対応策

日銀は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後4度の利上げを経て政策金利は1.00%に達しました(2026年6月時点)。住宅金融支援機構の2026年1月調査でも、住宅ローン利用者の7割超が「今後1年間で金利は上昇する」と回答しており、変動金利で借り入れている方にとって対策を考える時期に来ています。
5年ルール・125%ルールの仕組みと限界
多くの金融機関の変動金利型ローンには、金利が上がっても5年間は毎月の返済額が変わらない「5年ルール」と、見直し後の返済額が従前の125%を超えない「125%ルール」が設けられています。
ただし、これらのルールは返済額の急激な増加を防ぐ仕組みであり、未払い利息が発生した場合にはその分が元金に上乗せされ、最終的な総返済額が増える可能性があります。返済額が変わらないからといって、金利上昇の影響がないわけではない点に注意が必要です。
金利上昇に備えた家計の見直しポイント
変動金利で借りている場合の対策としては、まず金利が1〜2%上昇した場合の返済額をシミュレーションし、家計で対応可能かを確認することが第一歩でしょう。
その上で、余裕資金を繰上げ返済に充てて残高を減らしておく、固定金利への借り換えを検討する、返済額軽減型の繰上げ返済で将来の返済額増加に備えるといった選択肢を、ライフプラン全体の中で検討することが求められます。
借り換え・繰上げ返済を判断する5ステップ

借り換えと繰上げ返済の判断は、次の5ステップで体系的に進めるのが効果的です。
ステップ1として、現在の金利タイプ・適用金利・残高・残期間・団信の保障内容・住宅ローン控除の残年数を整理します。
ステップ2では、住宅金融支援機構や各金融機関のシミュレーションツールを使い、諸費用を含めた総返済額を比較しましょう。
ステップ3で控除率0.7%と借入金利の大小関係を確認し、繰上げ返済や借り換えのタイミングを判断します。
ステップ4では、生活費6カ月〜1年分の緊急予備資金が確保されているかを確認した上で、教育費やリフォーム費用など将来の支出計画と照らし合わせましょう。
最後のステップ5として、緊急予備資金→公的保障の把握→NISA・iDeCoでの資産形成→住宅ローンの見直しという家計全体の優先順位の中で位置づけることが重要です。住宅ローンの返済を急ぐあまり、資産形成の機会を逃したり、いざというときの備えが不足するのは本末転倒といえるでしょう。
まとめ
住宅ローンの借り換えと繰上げ返済は、正しく活用すれば総返済額を数十万〜数百万円単位で減らせる有効な手段です。
ただし、借り換えには諸費用がかかり、繰上げ返済は手元資金を減らすことになるため、「金利差だけで飛びつく」のではなく、諸費用込みの総返済額・住宅ローン控除の残年数・団信の保障内容・手元資金のバランスを総合的に検討する必要があります。
金利上昇局面にある今こそ、住宅ローンの条件を改めて確認し、家計全体の中で最適な判断を下すタイミングといえるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



