公的年金制度
自営業・フリーランスの年金の上乗せ方法|付加年金・国民年金基金・iDeCoの違い

自営業やフリーランスの方は国民年金第1号被保険者にあたり、公的年金は老齢基礎年金だけとなるのが原則です。
上乗せの手段としては、月400円で始められる付加年金、国民年金基金、iDeCo、退職金の代わりになる小規模企業共済があります。
このうち付加年金は、納めた保険料の半分が年金額に毎年上乗せされ、2年以上受け取れば納めた額を上回る仕組みです。
この記事では、それぞれの特徴と、検討する順番を解説します。
公的年金は老齢基礎年金だけになる

会社員との違いは、2階部分の有無にあります。
まず、受け取れる年金の水準を確認します。
受け取れるのは1階部分のみ
自営業やフリーランスの方は国民年金第1号被保険者にあたり、厚生年金保険には加入しません。
そのため、将来受け取る公的年金は老齢基礎年金のみとなり、老齢厚生年金が上乗せされる会社員との差が生まれます。
令和8年度の老齢基礎年金は年額847,300円
毎月の定額保険料(令和8年度は17,920円)を40年間納めた場合の老齢基礎年金額は、年額847,300円です(昭和31年4月2日以後生まれの方)。
月あたりにすると7万円ほどで、これだけで生活費を賄うのは難しいため、上乗せの手段を知っておく意味があります。
月400円で始められる付加年金

上乗せの手段のうち、最も少ない負担で始められるのが付加年金です。
仕組みと注意点を確認します。
2年以上受け取れば納めた額を上回る
国民年金第1号被保険者や任意加入被保険者は、定額保険料に上乗せして月額400円の付加保険料を納めることで、将来の老齢基礎年金の額を増やせます。
付加年金額(年額)は200円×納付月数で計算され、2年以上受け取ると、納付した付加保険料以上の年金を受け取れる仕組みです。
20歳から60歳までの40年間納めた場合、年額96,000円が老齢基礎年金に上乗せされ、847,300円と合わせて943,300円になります。
国民年金基金との併用はできない
国民年金基金の加入員である方や、保険料の納付を免除されている方(産前産後免除を除く)は、付加保険料を納付できません。
一方、iDeCoとは同時に加入できますが、iDeCoには拠出限度額があるため、拠出額によっては併用できない場合もあり、金融機関への確認が必要です。
さかのぼって納めることはできない
付加保険料の納付は、申し出をした日の属する月分から始まり、それ以前にさかのぼることはできません。
手続きは市区町村役場や年金事務所で行うため、始めるなら早いほうが納付月数を積み上げられます。
国民年金基金とiDeCo

まとまった額を上乗せするなら、この2つが選択肢になります。
枠の関係を押さえることが要点です。
掛金の枠は合算で月68,000円
国民年金基金とiDeCoは併用できますが、掛金は合算して月額68,000円が上限となります。
両方に加入しても枠が増えるわけではないため、どちらにいくら配分するかという考え方になります。
付加保険料を納めている場合も、この枠の中で調整することになる点は同じです。
確定か運用か
国民年金基金は加入時に将来受け取る年金額が決まる仕組みで、終身年金を基本としています。
iDeCoは自分で運用商品を選ぶため、運用の結果によって受取額が変わり、元本を下回る可能性もあります。
確実性を重んじるなら基金、運用によって増やす可能性を取るならiDeCoという違いです。
途中でやめられるかどうかも異なる
国民年金基金は自己都合による中途解約ができない一方、iDeCoも原則60歳まで引き出せません。
どちらも老後資金として長く動かせない資金になるため、手元の資金に余裕を残したうえで金額を決めることが欠かせません。
出典:iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCoの加入資格・掛金・受取方法等」
退職金の代わりになる小規模企業共済

年金とは別に、廃業や退任のときに受け取る資金を準備する制度もあります。
中小機構が運営する小規模企業共済です。
掛金は月1,000円から70,000円
小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための積み立てによる退職金制度で、国の機関である中小機構が運営しています。
月々の掛金は1,000円から70,000円まで500円単位で設定でき、加入後の増額・減額も可能で、確定申告の際にはその全額を課税対象所得から控除できます。
受け取り方と貸付制度
共済金は退職・廃業時に受け取れ、満期や満額はありません。
受け取り方は一括・分割・併用から選べ、一括は退職所得扱い、分割は公的年金等の雑所得扱いです。
また、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用できる点も、事業を続けるうえでの安心につながります。
出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 制度の概要」
検討する順番

制度が複数あるため、どこから手をつけるかで迷いやすくなります。
負担と効果の関係から順番を考えます。
まず保険料の納付、次に付加年金
土台となるのは国民年金保険料をきちんと納めることで、納付が難しい時期は免除や猶予の手続きをして未納を避けます。
そのうえで、月400円という負担で年金額を増やせる付加年金は、最初に検討したい手段です。
相談の場でも、付加年金を知らないまま民間の個人年金保険を検討している例が見られます。
次に上乗せ制度、余裕があれば運用へ
付加年金のあとは、国民年金基金かiDeCoで年金の上乗せを、小規模企業共済で廃業時の資金を準備するという順序になります。
いずれも長く引き出せない資金になるため、事業の運転資金と生活防衛資金を残したうえで、無理のない金額から始めることが前提です。
まとめ:小さく始めて、枠の関係を確かめる
自営業やフリーランスの方は公的年金が老齢基礎年金だけになるため、上乗せの手段を知っておくことが老後の備えにつながります。
要点は次のとおりです。
・令和8年度の老齢基礎年金は40年納付で年額847,300円
・付加年金は月400円で、2年以上受け取れば納めた額を上回る
・付加年金と国民年金基金は併用できず、iDeCoとは同時加入できる
・国民年金基金とiDeCoの掛金は合算で月68,000円が上限
・小規模企業共済は月1,000円から70,000円で、掛金は全額が所得控除の対象
まずは国民年金保険料を納めたうえで月400円の付加年金から始め、事業資金と生活防衛資金を残せる範囲で、国民年金基金かiDeCo、小規模企業共済を重ねていくことが、無理のない備え方になります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した内容です。
当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。
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