社会保障
雇用保険料率の仕組みと推移|2028年10月の適用拡大で変わる対象者・保険料・給付内容をわかりやすく解説

雇用保険料は、失業した際の基本手当や育児休業給付金などの財源として、労働者と事業主が負担する社会保険料の一つです。
令和7年度の一般事業における労働者負担は給与の0.55%(5.5/1,000)で、月収30万円の場合は月額1,650円の負担となります。
コロナ禍で急増した雇用調整助成金の支出により一時的に引き上げが続いていましたが、令和7年度からは8年ぶりの引き下げとなりました。
さらに2028年10月からは雇用保険の加入要件が「週20時間以上」から「週10時間以上」に変更され、週20時間未満で働く約506万人(2023年)の多くが新たに加入対象に加わる見込みです。
この記事では、雇用保険料率の仕組みから保険料の推移、2028年の適用拡大による影響と家計への備え方までを整理していきます。
雇用保険料率の仕組みと計算方法

雇用保険料がどのように決まり、どのように負担するのかを確認しておきましょう。
雇用保険料の計算式
雇用保険料は「賃金総額×雇用保険料率」で算出されます。
ここでいう賃金総額には、基本給だけでなく残業代や各種手当、賞与も含まれる点が特徴です。
一方、退職金や結婚祝い金など一時的な性質のものは対象外となっています。
労働者負担と事業主負担の違い
雇用保険料は労働者と事業主の双方が負担しますが、負担割合は均等ではありません。令和7年度の一般事業を例にすると、労働者負担は5.5/1,000(0.55%)、事業主負担は9/1,000(0.90%)で、事業主の方が多く負担する構造となっています。事業主負担が多い理由は、失業等給付や育児休業給付に加え、「雇用保険二事業(雇用安定事業・能力開発事業)」の保険料3.5/1,000を事業主のみが負担するためです。
業種ごとの保険料率の違い
雇用保険料率は業種によって3区分に分かれています。令和7年度の労働者負担率でみると、一般の事業が5.5/1,000であるのに対し、農林水産・清酒製造の事業と建設の事業は6.5/1,000と高めに設定されています。季節的な雇用変動が大きく、失業給付の受給率が高い業種特性を反映した料率設定です。
雇用保険料率の推移と引き下げの背景

雇用保険料率は、雇用情勢や保険財政の状況に応じて毎年度見直しが行われます。
近年の推移を振り返ると、コロナ禍の影響が料率変動の主要な要因となりました。
コロナ禍による急激な引き上げ
令和元年度(2019年度)から令和3年度までは労働者負担3/1,000で推移していましたが、令和4年度後半には5/1,000、令和5年度以降は6/1,000へと段階的に引き上げられました。
背景にあるのが、雇用調整助成金の支出急増です。
コロナ禍で休業した企業への支援として支給が膨らみ、雇用保険の積立金が急速に減少したことが料率引き上げの主因となりました。
令和7年度・令和8年度の引き下げ
景気回復に伴う雇用環境の改善により、保険財政が持ち直しつつあります。令和7年度は労働者負担・事業主負担がそれぞれ0.05%引き下げられ、8年ぶりの保険料率引き下げが実現しました。令和8年度もさらに引き下げが決定しており、一般事業の合計料率は13.5/1,000まで低下する見通しです。
「弾力条項」による料率調整の仕組み
雇用保険料率の変動は、労働保険徴収法に定められた「弾力条項」に基づいて行われます。
前年度の決算による積立金残高と翌年度の収入見込みの合計が、翌年度の支出見込みの1.2倍を超える場合に料率を引き下げることができる仕組みです。
逆に財政が悪化すれば引き上げも可能で、コロナ禍ではこの条項が引き上げ方向に適用されました。
月収別の保険料負担シミュレーション

令和7年度の一般事業における保険料負担を、月収別に確認してみましょう。
・月収20万円の場合:労働者負担 月額1,100円(年間約1.3万円)
・月収30万円の場合:労働者負担 月額1,650円(年間約2.0万円)
・月収40万円の場合:労働者負担 月額2,200円(年間約2.6万円)
健康保険料(協会けんぽで約5%)や厚生年金保険料(9.15%)と比較すると、雇用保険料の負担はかなり軽微です。ただし、雇用保険料だけを単独で見るのではなく、社会保険料全体の負担額を把握しておくことが家計管理の基本となります。なお、雇用保険料は全額が社会保険料控除の対象であり、所得税・住民税の計算で差し引くことができます。
2028年10月の適用拡大|週10時間以上で加入対象に

2024年5月に成立した改正雇用保険法(令和6年法律第26号)により、2028年10月1日から雇用保険の加入要件が「週の所定労働時間20時間以上」から「10時間以上」に引き下げられることが決まりました。
この改正は、短時間労働者の雇用セーフティネットを拡充する重要な制度転換です。
新たに加入対象となる方
現行制度では、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満のパート・アルバイトは雇用保険に加入できませんが、改正後は加入対象になります。総務省の労働力調査では、週の労働時間が20時間未満の雇用者は約506万人(2023年)です。このうち週10時間以上で働く方が、新たに加入対象に加わります。31日以上の雇用見込みがあるという要件は現行と変わりません。
算定基準の見直し
加入要件が半分になることに合わせて、各種の算定基準も見直されます。
被保険者期間の算定において、賃金支払基礎日数が「11日以上」から「6日以上」に、労働時間は「80時間以上」から「40時間以上」にそれぞれ引き下げです。
また、失業認定の基準も「1日の労働時間4時間未満」から「2時間未満」に変更されるため、短時間労働者でも給付を受けやすい設計になっています。
新規加入者が受けられる給付
新たに加入対象となる短時間労働者も、既存の被保険者と同じ給付を受けることが可能です。
具体的には、失業時の基本手当(失業給付)、育児休業給付金、介護休業給付金、教育訓練給付金などが該当します。
特に育児休業給付金については、2025年4月から出生後休業支援給付が新設され、夫婦ともに育休を取得した場合の実質給付率が手取り10割相当まで引き上げられており、短時間労働者にとっても活用の意義は大きいといえるでしょう。
適用拡大が家計に与える影響

雇用保険への新規加入は保険料の負担増を伴いますが、それ以上の給付メリットが期待できるケースも少なくありません。
保険料の負担増
週15時間・時給1,200円で働く場合を想定すると、月収は約7.2万円(1,200円×15時間×4週)となります。令和7年度の一般事業の料率(0.55%)で計算すると、月額約396円、年間でおよそ4,750円の保険料負担が新たに発生します。手取りへの影響は限定的な水準です。
給付によるメリット
一方で、雇用保険に加入することにより受けられる給付は多岐にわたります。
仮に離職した場合、被保険者期間の要件を満たせば基本手当を受給でき、求職活動中の生活を支える原資になります。
育児休業を取得する場合には育児休業給付金を受給でき、休業中の収入減少をカバーできる仕組みです。
また、教育訓練給付金を活用すれば、資格取得やスキルアップにかかる費用の一部が支給されます。
年間4,750円程度の保険料負担で、失業時・育休時・スキルアップ時の公的保障を受けられるようになることを考えると、加入のメリットは保険料負担を大きく上回る可能性が高いでしょう。
2025年4月からの段階的な制度改正

2028年10月の適用拡大に先行して、雇用保険制度にはすでにいくつかの改正が順次施行されています。
家計への影響を理解するうえで、主要な改正点を確認しておきましょう。
自己都合退職の給付制限短縮
2025年4月から、自己都合退職者の給付制限期間が原則2か月から1か月に短縮されました。
さらに、自ら職業訓練を受講すれば給付制限が解除される仕組みも導入されています。
ただし、5年以内に3回以上自己都合退職した場合は3か月の給付制限が維持される点に注意が必要です。
教育訓練支援の拡充
教育訓練給付金の給付率上限が受講費用の70%から80%に引き上げられたほか、2025年10月からは教育訓練休暇給付金が新設されます。
教育訓練のために休暇を取得した労働者に対し、失業給付と同水準の給付金を支給する制度です。
リスキリングへの公的支援が一層充実した形となっています。
育児休業給付の拡充
2025年4月から出生後休業支援給付が新設され、夫婦ともに14日以上の育児休業を取得した場合は、最大28日間の実質給付率が手取り10割相当になりました。
また、2歳未満の子を養育するために時短勤務をする被保険者には、育児時短就業給付金として賃金額の10%相当が支給される制度も始まっています。
雇用保険と他の社会保険の負担を一体的に把握する

雇用保険料は社会保険料全体の中では小さな割合ですが、家計管理においては雇用保険・健康保険・厚生年金・介護保険の保険料を合計した「社会保険料負担の全体像」を把握することが重要です。
月収30万円の会社員(40歳以上・協会けんぽ加入・東京都)を例にとると、概算の本人負担は以下のようになります。
・厚生年金保険料:約27,450円(9.15%)
・健康保険料:約14,865円(4.955%)
・介護保険料:約2,385円(0.795%)
・雇用保険料:約1,650円(0.55%)
・合計:約46,350円(給与の約15.5%)
社会保険料は全額が社会保険料控除の対象となるため、所得税と住民税の軽減効果もあります。
手取り額を正確に把握するには、額面給与から社会保険料と税金を差し引いた金額を確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
まとめ
雇用保険料率は雇用情勢に応じて変動する仕組みであり、コロナ禍の影響で一時的に上昇した後、令和7年度からは引き下げ局面です。
2028年10月からの適用拡大により、週10時間以上働く短時間労働者も雇用保険の対象に加わり、失業給付や育児休業給付金などの公的保障を受けられるようになります。
年間数千円の保険料負担で公的セーフティネットに加わることができるため、パートやアルバイトで働く方にとっても制度のメリットは小さくありません。
まずは公的な雇用保険制度でカバーされる範囲を正確に理解したうえで、民間の就業不能保険や所得補償保険が本当に必要かどうかを判断することが、合理的な家計管理の第一歩です。
出典:厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律等の概要」
出典:全国健康保険協会「令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)」
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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