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学資保険とNISAどちらで教育資金を貯める?返戻率・利回り・リスクを徹底比較

子どもの大学進学にかかる費用は、国公立大学で4年間約481万円、私立文系で約690万円にのぼります(日本政策金融公庫「令和3年度 教育費負担の実態調査結果」)。
教育資金の準備方法として代表的な「学資保険」と「NISA(つみたて投資枠)」には、それぞれ異なる特徴があり、家庭の状況やリスク許容度によって最適な選択肢は異なるのが実情です。
ここでは、両者の仕組みと数字を比較しながら、教育資金準備の判断基準を整理していきましょう。
教育費の目安:いくら準備すれば足りるのか

教育資金の準備を始める前に、まずどのくらいの金額が必要になるのかを確認しておくことが重要です。
幼稚園から高校までの学習費
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校卒業までの15年間にかかる学習費総額は、すべて公立に通った場合で約596万円、すべて私立の場合は約1,976万円となっています。
高校までの教育費は、児童手当や毎月の家計から捻出するのが基本的な考え方でしょう。
大学4年間にかかる費用
日本政策金融公庫の調査では、大学4年間の入学費用と在学費用の合計は、国公立大学で約481万円、私立大学文系で約690万円、私立大学理系で約822万円となりました。
自宅外通学の場合はさらに住居費や生活費が加わるため、教育資金として200万〜500万円程度を18歳までに準備しておくことが一つの目安になります。
学資保険の仕組みと現在の返戻率

学資保険は、毎月一定額の保険料を払い込み、子どもが18歳(または17歳)を迎えた時点で満期保険金や学資年金を受け取る貯蓄型の保険商品です。
教育資金準備と親の万一の保障を兼ね備えている点が特徴でしょう。
返戻率の実態
返戻率とは、払込保険料総額に対して受け取れる金額の割合を示す指標で、100%を超えれば払い込んだ金額より多く受け取れることを意味します。
現在の主要な学資保険の返戻率は、条件によって概ね103〜118%程度というのが実態です。
払込期間を短くしたり、保障特約を付けない「シンプルなプラン」にすることで返戻率を高められる仕組みになっていますが、特約を付けると返戻率が100%を下回るケースもあるため注意が必要でしょう。
学資保険のメリット
学資保険には、投資にはない独自のメリットがあるのも特徴の一つです。
・保険料払込免除特約:契約者(親)が死亡または高度障害状態になった場合、以後の保険料払込が免除され、満期保険金は予定通り受け取れる
・強制的な貯蓄効果:途中解約すると元本割れするため、安易に使い込むことを防げる
・生命保険料控除の対象:一般生命保険料控除として、所得税で最大4万円、住民税で最大2.8万円の控除を受けられる(他の一般生命保険と枠を共有)
学資保険のデメリット
一方で、以下のような注意点も押さえておく必要があります。
・インフレリスクに対応できない:契約時に確定した満期金額は変わらないため、物価や教育費が上昇した場合に実質的な価値が目減りする
・途中解約で元本割れ:払込期間中に解約すると、解約返戻金は払込保険料を下回るケースがほとんどである
・資金の拘束期間が長い:原則として満期まで引き出せないため、急な資金需要に対応しにくい
NISAつみたて投資枠の仕組みと期待リターン

NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得た利益に対する約20.315%の税金が非課税になる制度です。
2024年からの新NISAでは、つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用でき、非課税保有限度額は1,800万円、非課税保有期間は無期限となりました。
出典:金融庁「NISAを知る」
つみたて投資枠の期待リターン
金融庁のデータによると、国内外の株式・債券に分散して20年間保有した場合の運用利回りは、年率2〜8%の範囲に収まる実績が示されています。
ただし、これは過去の実績であり、将来の成果を保証するものではありません。
教育資金目的のシミュレーション
子どもが0歳の時点から毎月一定額をつみたて投資枠で積み立て、18年後に大学入学資金として使う場合のシミュレーションは以下の通りです(金融庁「つみたてシミュレーター」による試算)。
・毎月1万円 × 18年(元本216万円)→ 年利3%で約286万円、年利5%で約349万円
・毎月2万円 × 18年(元本432万円)→ 年利3%で約573万円、年利5%で約699万円
・毎月3万円 × 18年(元本648万円)→ 年利3%で約859万円、年利5%で約1,048万円
NISA口座であれば、これらの運用益はすべて非課税で受け取れるのが最大のメリットです。
NISAで教育資金を準備するリスク
一方で、投資信託は元本保証がないため、子どもが18歳を迎えるタイミングで相場が下落していれば、元本割れの可能性もあります。
教育資金は「必要な時期」が決まっているため、株式市場の暴落と入学時期が重なった場合に計画通りの金額を引き出せないリスクは見過ごせません。
学資保険とNISAの比較ポイント

両者を主要な5つの観点から比較すると、それぞれの特徴が明確になります。
元本保証の有無
学資保険は、保険会社が経営破綻しない限り、契約時に確定した満期保険金を受け取れる仕組みです。
NISAで購入する投資信託には元本保証がなく、市場環境によって資産額が変動します。
「確実に一定額を準備したい」というニーズには学資保険が向いているでしょう。
期待リターン
学資保険の返戻率は現在103〜118%程度(18年間で3〜18%の利益)であるのに対し、NISAでの積立投資は年利3〜5%の運用で18年後に元本の1.3〜1.6倍程度が期待できます。
資産を増やす効率としてはNISAに優位性があるものの、その分リスクを伴う点に注意が必要です。
万一の保障
学資保険には保険料払込免除特約があり、親の死亡・高度障害時でも満期保険金は確保されます。
NISAにはこうした保障機能がないため、別途生命保険で死亡保障を準備する必要があるでしょう。
ただし、遺族基礎年金(年間831,700円+子の加算239,300円:令和7年度)や住宅ローンの団体信用生命保険など、公的保障と合わせて判断することが重要です。
流動性(換金しやすさ)
NISAはいつでも売却して現金化できるため、急な資金需要にも対応可能です。
学資保険は途中解約すると元本割れするリスクがあり、資金の自由度は低くなります。
一方、この流動性の低さが「使い込み防止」になるという面もあるでしょう。
税制上のメリット
学資保険は生命保険料控除(一般枠:所得税最大4万円、住民税最大2.8万円)の対象ですが、他の生命保険と枠を共有するため、すでに生命保険に加入している場合は追加の控除効果がないケースもあります。
NISAは運用益が非課税になるため、利益が大きいほど節税効果も高まるでしょう。
学資保険が向いている家庭の特徴

すべての家庭にとって「学資保険が最善」とも「NISAが最善」とも言い切れません。
学資保険が合理的な選択肢となるのは、以下のような家庭です。
投資経験がなく元本割れに不安がある場合
投資信託の値動きに慣れていない場合、相場下落時にパニック売りしてしまうリスクがあります。
学資保険なら満期まで保有すれば確定した金額を受け取れるため、精神的な安心感を重視する家庭には適しているでしょう。
家計管理に不安があり強制力が必要な場合
NISAは自由に解約できる反面、生活費が苦しくなった際に積立を中断したり取り崩してしまう可能性があります。
学資保険の「途中解約すると損をする」という仕組みが、結果的に教育資金を守る強制力となる場合もあるのです。
片働き世帯で死亡保障を兼ねたい場合
片働き世帯で、収入のある親に万一のことがあった場合に備えたいケースでは、保険料払込免除特約のある学資保険に合理性があります。
ただし、すでに十分な死亡保障を確保している場合は、保障と貯蓄を分けて考えた方が効率的です。
NISAが向いている家庭の特徴

一方、NISAでの教育資金準備が合理的な選択肢となるのは、以下のような家庭でしょう。
投資経験があり長期運用に理解がある場合
過去に投資信託や株式の値動きを経験しており、一時的な下落に動揺せず保有を継続できる方は、NISAの非課税メリットを最大限に活かせます。
つみたて投資枠の対象商品は金融庁の基準を満たした投資信託に限定されており、長期・積立・分散投資に適した設計となっています。
すでに死亡保障を十分に確保している場合
勤務先の団体保険や個人の生命保険で死亡保障を確保済みであれば、学資保険で保障を重複させる必要はないでしょう。
保障と運用を分けて、「保障は掛け捨て保険で安く」「運用はNISAで効率よく」と役割分担する考え方が合理的です。
インフレリスクに備えたい場合
教育費は過去20年間で上昇傾向にあり、今後もこの傾向が続く可能性があります。
学資保険は契約時に金額が確定するため、物価上昇に追いつけないリスクがある一方、株式を含む投資信託はインフレに連動して価値が上昇する傾向があるため、実質的な購買力を維持しやすい面があります。
「学資保険+NISA」の併用という選択肢

学資保険とNISAは二者択一ではなく、両方を組み合わせて「確実に準備する部分」と「増やす部分」を分ける方法が、リスクとリターンのバランスを取りやすい現実的な選択肢です。
併用の具体的な考え方
たとえば、大学入学時に300万円を準備する目標であれば、学資保険で200万円(入学金や初年度学費を確実に確保)、残りの100万円分をNISAつみたて投資枠で積み立てるという組み合わせが考えられます。
万一の際は学資保険の払込免除で200万円を確保しつつ、NISA部分で運用益を狙える構成です。
併用時の注意点
併用する場合は、毎月の積立総額が家計を圧迫しないよう注意が必要です。
教育資金の準備に力を入れすぎた結果、緊急時の預貯金(生活費の3〜6か月分)が確保できていないケースは避けなければなりません。
まず緊急資金を確保し、その上で教育資金の積立額を決めるのが基本的な順序でしょう。
教育資金準備で見落としがちな公的支援制度

学資保険やNISAの活用を考える前に、公的な教育費支援制度を把握しておくことで、準備すべき金額をより正確に見積もれます。
高等教育の修学支援新制度
住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生を対象に、授業料等の減免と給付型奨学金を組み合わせた支援制度があります。
世帯の所得や資産に要件があるため、すべての家庭が対象になるわけではありませんが、制度の存在を知った上で準備額を検討することが合理的です。
児童手当の活用
2024年10月からの制度改正により、所得制限が撤廃され、支給期間も高校卒業まで延長されました。
第1子・第2子は月1万円(3歳未満は1.5万円)、第3子以降は月3万円が支給されます。
児童手当をそのまま教育資金の積立に回す方法は、最も手軽で確実な準備方法の一つといえるでしょう。
教育資金準備の判断フレームワーク

最後に、教育資金の準備方法を選ぶ際の判断の流れを整理します。
ステップ1:必要額を把握する
子どもの進路希望(国公立か私立か、自宅通学か一人暮らしか)を想定し、準備すべき金額の目安を算出しましょう。
高等教育の修学支援新制度や奨学金の活用可能性も考慮に入れると、過剰な準備を避けられます。
ステップ2:リスク許容度を確認する
元本割れの可能性を受け入れられるかどうかは、家庭の収入の安定性や他の資産状況によって異なります。
共働きで収入が安定している家庭はリスクを取りやすく、片働きで収入源が限られる家庭は安全性を重視した方がよい場合が多いでしょう。
ステップ3:配分を決める
「確実に準備する金額」と「増やすことを期待する金額」を分け、前者は学資保険や定期預金、後者はNISAで準備するのが基本的な考え方です。
どちらか一方に偏らず、家計全体のバランスを見ながら配分を決めることが最も重要といえます。
まとめ
学資保険は「確実性と保障」、NISAは「非課税での運用効率」にそれぞれ強みがあります。
どちらが優れているかではなく、「教育資金のうち、どの部分を確実に確保し、どの部分で運用益を狙うか」という視点で配分を考えることが大切です。
子どもの進路希望や家計の状況は年々変化するため、定期的に見直す柔軟さも持ち合わせておきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



