社会保障
児童扶養手当とは?支給額・所得制限・一部支給の計算方法・申請手続きをわかりやすく解説

児童扶養手当は、ひとり親家庭の生活の安定と自立を支援するために国が設けた制度で、令和7年度の全部支給額は子ども1人の場合で月額46,690円となっています。
令和6年11月からは3人目以降の加算額が2人目と同額に引き上げられ、所得制限限度額も拡大されました。
ただし所得に応じて支給額が段階的に減る「一部支給」の仕組みがあり、パート収入や養育費の額によって受け取れる金額が変動する点には注意が必要です。
この記事では、児童扶養手当の支給要件・支給額・所得制限の計算方法・公的年金との併給ルール・申請手続きに加え、児童手当や遺族年金など他の公的支援と合わせた家計全体の見通し方を整理しています。
児童扶養手当の対象者と支給要件

児童扶養手当は、離婚や死別などにより父または母と生計を同じくしていない子どもを育てている方に支給される制度で、ひとり親家庭だけでなく、父母に代わって子どもを養育している方も対象です。
支給対象となる7つのケース
児童扶養手当の対象となるのは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子ども(一定以上の障害がある場合は20歳未満)を監護・養育している方で、以下のいずれかに該当する場合に受給資格が生じます。
・父母が婚姻を解消(事実婚の解消を含む)した子ども
・父または母が死亡した子ども
・父または母が政令で定める重度の障害の状態にある子ども
・父または母の生死が明らかでない子ども
・父または母から1年以上遺棄されている子ども
・父または母が配偶者からの暴力(DV)で裁判所から保護命令を受けた子ども
・父または母が1年以上拘禁されている子ども
なお、事実婚(内縁関係)の状態にある場合は受給できません。
同居していなくても、定期的な訪問や生活費の援助がある場合は事実婚と判断されることがあるため注意が必要です。
父子家庭も対象
児童扶養手当は当初、母子家庭のみが対象でしたが、平成22年8月からは父子家庭にも支給が拡大されています。
受給要件に性別による差はなく、子どもを監護し生計を同じくしている父親も同じ条件で申請できる仕組みです。
令和7年度の児童扶養手当の支給額

児童扶養手当の金額は毎年の物価スライド制によって改定され、令和7年度(2025年4月分以降)は前年度から2.7%の増額となっています。
以下では全部支給と一部支給それぞれの金額を確認しましょう。
全部支給の金額
所得が全部支給の限度額未満の場合、以下の金額が支給される仕組みです。
・子ども1人:月額46,690円(年額560,280円)
・子ども2人目の加算:月額11,030円
・子ども3人目以降の加算:月額11,030円(1人につき)
たとえば子どもが3人いる場合の全部支給額は、46,690円+11,030円+11,030円=月額68,750円(年額825,000円)となります。
令和6年11月の改正で3人目以降の加算額が2人目と同額に引き上げられたことで、多子世帯への支給額は従来より手厚くなりました。
一部支給の金額
所得が全部支給の限度額以上、一部支給の限度額未満の場合は、所得に応じて10円きざみで手当額が決まる仕組みです。
・子ども1人:月額11,010円〜46,680円
・子ども2人目の加算:月額5,520円〜11,020円
・子ども3人目以降の加算:月額5,520円〜11,020円
一部支給の具体的な計算式は以下のとおりとなっています。
・第1子の手当月額=46,680円−(受給者の所得額−全部支給の所得制限限度額)×0.0256619
・第2子以降の加算額=11,020円−(受給者の所得額−全部支給の所得制限限度額)×0.0039568
カッコ内の計算結果は10円未満を四捨五入して算出します。
この係数は物価変動により改定される場合があるため、最新の金額はお住まいの市区町村の窓口で確認するとよいでしょう。
出典:久留米市「児童扶養手当」
所得制限の仕組みと計算方法

児童扶養手当には所得制限が設けられており、受給者本人の所得だけでなく、同居している扶養義務者(親や兄弟姉妹など)の所得によっても支給の有無が判定される仕組みです。
ここでは所得の計算方法と限度額の目安を整理します。
所得の計算方法
児童扶養手当における「所得」は、一般的な所得とは計算方法が異なり、具体的には以下の式によって算出されます。
所得額 = 年間収入 − 必要経費(給与所得控除等)+ 養育費の8割 − 8万円(社会保険料相当額)− 諸控除
ここで注目すべきは「養育費の8割」が所得に加算されるという点です。
たとえば月5万円の養育費を受け取っている場合、年間60万円の8割にあたる48万円が所得に上乗せされます。
養育費の金額によっては、全部支給から一部支給に区分が変わったり、支給停止になるケースもあるため、事前に市区町村の窓口で試算してもらうと安心でしょう。
所得制限限度額の目安
令和6年11月から所得制限限度額が引き上げられています。
扶養親族が1人の場合、受給者本人の所得ベースで全部支給の限度額は107万円(給与収入の目安で約190万円)、一部支給の限度額は246万円(給与収入の目安で約385万円)に拡大されました。
扶養親族の数が増えるごとに限度額も38万円ずつ加算され、特定扶養親族(16歳以上19歳未満)がいる場合は1人あたり15万円、老人扶養親族がいる場合は1人あたり10万円がさらに加算される仕組みです。
また、同居の扶養義務者の所得が限度額以上の場合は、受給者本人の所得が低くても手当が全額支給停止になります。
親との同居を検討する際は、この点も踏まえて判断する必要があるでしょう。
公的年金との併給ルール

児童扶養手当と公的年金は、かつてはどちらか一方しか受給できない仕組みでしたが、段階的に制度が見直され、現在では併給が可能になっています。
遺族年金・老齢年金との併給
平成26年12月以降、公的年金の額が児童扶養手当の額を下回る場合は、その差額分を児童扶養手当として受給できるようになりました。
たとえば遺族基礎年金を月額6万円受給していて、児童扶養手当の全部支給額が46,690円の場合、年金額のほうが高いため児童扶養手当は支給停止です。
一方、遺族年金の受給額が児童扶養手当の額より低い場合には、差額が児童扶養手当として支給されます。
この併給を受けるには市区町村の窓口での手続きが必要です。
障害基礎年金等との併給
令和3年3月分以降、障害基礎年金等を受給しているひとり親も児童扶養手当を受給できるよう制度が見直されました。
障害基礎年金等の受給者については、児童扶養手当の額と障害年金の「子の加算部分」の額を比較し、児童扶養手当のほうが高い場合はその差額が支給されます。
なお、障害基礎年金等の受給者については、所得判定に非課税の公的年金(障害年金・遺族年金など)も含まれる点に注意が必要です。
5年等経過後の一部支給停止措置

児童扶養手当には、受給開始から5年を経過した場合などに手当額が最大で2分の1に減額される「一部支給停止措置」が設けられています。
ただし、この減額は自動的に適用されるものではありません。
就労していること、求職活動を行っていること、障害や疾病により就労が困難であることなど、いずれかの事由に該当する届出を提出すれば、従来どおりの金額が維持される仕組みです。
毎年の現況届提出時に関係書類を提出する必要があるため、届出を忘れないよう注意しましょう。
児童扶養手当の申請手続き

児童扶養手当を受給するには、お住まいの市区町村の窓口で「認定請求書」を提出する手続きが必要です。
申請に必要な書類
一般的に必要となる書類には以下のものが挙げられます。
・認定請求書
・戸籍謄本(請求者と対象児童のもの)
・マイナンバーが確認できる書類
・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・預金通帳(請求者名義のもの)
・年金手帳または基礎年金番号通知書
離婚の場合は離婚日が記載された戸籍謄本、DV被害の場合は保護命令の写しなど、受給理由によって追加書類が異なります。
事前に市区町村の窓口に確認してから手続きに臨むとスムーズでしょう。
支給開始時期と支払スケジュール
手当は認定されると請求月の翌月分から支給が開始されます。
支払いは年6回(奇数月)で、2か月分ずつ指定口座に振り込まれるスケジュールです。
また、毎年8月に「現況届」を提出する必要があり、届出がないと手当の支給が止まります。
2年間現況届を提出しないと受給資格そのものが失われるため、手続きは忘れずに済ませておく必要があるでしょう。
ひとり親家庭の公的支援の全体像

児童扶養手当は、ひとり親家庭が利用できる公的支援の一つに過ぎず、他の制度と組み合わせた公的保障の全体像を把握しておくことが大切でしょう。
離婚ケースと死別ケースで異なる公的保障の組み合わせ
ひとり親家庭が受け取れる公的保障は、離婚と死別で組み合わせが異なります。
児童手当は所得制限が撤廃されているため、どちらのケースでも受給が可能です。
離婚の場合は、児童扶養手当と児童手当を組み合わせて受給できます。
子ども1人(3歳以上)で全部支給に該当するケースでは、児童扶養手当46,690円+児童手当10,000円=月額56,690円(年額約68万円)が公的保障の柱となるでしょう。
死別の場合は、遺族基礎年金(令和7年度:子ども1人で年額1,071,000円=月額約89,250円)が児童扶養手当より高額になるため、児童扶養手当は支給停止となり、遺族基礎年金+児童手当の組み合わせになります。
遺族厚生年金も受給できる場合は、公的保障の合計額はさらに上乗せされる形です。
このように、ひとり親となった経緯によって利用できる制度と合計額が変わるため、まず公的保障でカバーされる金額を正確に把握し、そのうえで不足する部分だけを民間の生命保険や収入保障保険で備えるという順番で検討することが合理的でしょう。
その他の公的支援制度
ひとり親家庭が利用できる主な公的支援には、このほかにも以下のような制度が用意されています。
・ひとり親家庭等医療費助成:医療費の自己負担が軽減される自治体独自の制度
・国民年金保険料の免除・猶予:所得が基準以下の場合に申請可能
・国民健康保険料の減免:前年所得に応じた7割・5割・2割軽減
・高等職業訓練促進給付金:看護師や介護福祉士などの資格取得中に月額最大14万円を支給
・母子父子寡婦福祉資金貸付:生活資金や技能習得資金などを無利子〜低利で借りられる制度
こうした制度を組み合わせて公的保障でカバーされる範囲を先に確認し、それでも不足する部分に対して民間保険や貯蓄で補うという順番で考えると、家計の負担を最小限に抑えながら必要な備えを確保しやすくなるでしょう。
まとめ
児童扶養手当は、ひとり親家庭にとって家計を支える重要な公的支援の一つです。
令和7年度の全部支給額は子ども1人で月額46,690円、3人目以降の加算額は2人目と同額の月額11,030円に引き上げられています。
所得制限限度額の拡大や公的年金との併給の拡充など、近年の制度改正により、受給しやすい環境が広がっている状況です。
一方で、養育費の8割が所得に加算される仕組みや、同居の扶養義務者の所得による支給停止など、見落としやすいポイントも存在しています。
児童手当・遺族年金・医療費助成・高等職業訓練促進給付金などと合わせた公的保障の全体像を把握し、不足する部分だけを民間保険や貯蓄で補うという考え方が、家計を無理なく守るための基本的な判断基準になるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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