社会保障
健康保険の付加給付とは?自己負担の上限額の調べ方と、高額療養費の見直し後の計算

付加給付は、健康保険組合が規約で定めて、法律で決まった保険給付に上乗せして行う給付です。
医療費の場合は、高額療養費とは別に、保険者が定めた基準に従って自己負担の一部が払い戻される仕組みになっています。
対象になる給付や金額は、加入している健康保険組合の規約によって違うものです。
一方、高額療養費の自己負担の上限額は2026年8月から見直され、年単位の「年間上限」も新しく設けられました。
この記事では、厚生労働省や札幌市などの資料をもとに、付加給付の仕組みと自己負担の上限額の調べ方、見直し後の上限額を使った計算を解説します。
付加給付とは|健康保険組合が規約で定め、法定の給付に上乗せして行う給付
付加給付は、健康保険法第53条で、保険者が健康保険組合の場合に、規約で定めて行えるとされている保険給付です。
法律上の位置づけと、主な給付の種類
関東信越厚生局のQ&Aは、健康保険組合では法定給付に加えて、組合独自の付加給付を受けられる場合があると説明しています。
例として挙げられているのは、一部負担還元金や訪問看護療養費付加金、傷病手当金付加金、出産手当金付加金、埋葬料付加金、出産育児一時金付加金などで、被保険者や被扶養者が対象です。
ただし、対象になる給付や金額は組合ごとに違うため、同じQ&Aは、加入している健康保険組合に問い合わせるよう案内しています。
出典:関東信越厚生局「健康保険組合に関するよくあるご質問Q&A(一般の方向け)」
高額療養費との違い
高額療養費は、病院や薬局の窓口で払う医療費が上限額を超えたときに、超えた分が支給される制度です。
これに対して付加給付は、高額療養費で戻ったあとの自己負担から、さらに保険者が払い戻す制度だと札幌市は説明しています。
付加給付は、自己負担が高額になったときに、高額療養費とは別に、それぞれの保険者が決めた基準で独自に支給される給付です。
京都市の資料には、自己負担額が一定額を超えた月に、その超えた額を給付する例が載っています。
出典:札幌市「療養費払い・高額療養費・付加給付金の給付を受けたとき」
協会けんぽは付加給付の規定の対象外
健康保険法第53条は保険者が健康保険組合の場合の規定で、全国健康保険協会(協会けんぽ)が保険者の場合は、この規定の対象外です。
札幌市も、保険者によって付加給付の制度があるかどうかが違うため、加入している保険者に問い合わせるよう案内しています。
そのため、同じ会社員でも、勤め先の健康保険によって医療費の自己負担に差が出ることは知っておきたい点です。
高額療養費の上限額は2026年8月に見直され、年間上限が新設された
厚生労働省によると、2026年8月から高額療養費のひと月の上限額が見直され、年単位の上限額である「年間上限」が新しく設けられました。
70歳未満・年収約370万〜約770万円の上限額と年間上限
70歳未満で、健康保険の標準報酬月額が28万〜50万円(年収約370万〜約770万円)の場合、2026年8月からのひと月の上限額は「85,800円+(医療費−286,000円)×1%」です。
直近12か月の間に高額療養費の対象になった月が3か月以上あると、4か月目からは「多数回該当」として、上限額が44,400円に下がります。
年間上限は53万円で、ここでいう年間は8月から翌年7月までの1年間です。
なお、2027年8月からは、所得区分をより細かく分ける見直しが予定されています。
上限額は所得区分ごとに違うため、自分の区分の金額は、厚生労働省の表で調べておきます。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(イメージ)」
マイナ保険証などを使えば、窓口で払うのは上限額まで
マイナ保険証を使うか、事前に用意した限度額適用認定証を提示すれば、ひと月の上限額を超える分を窓口で払う必要はない仕組みです。
付加給付がある場合も、まずは高額療養費の上限額までを払い、そのあとに組合の規約にもとづいて払い戻しを受ける流れになります。
付加給付がある場合の自己負担の計算|1か月と1年間の例
付加給付がある場合の自己負担は、まず高額療養費の上限額を計算し、そのあとで組合の基準による払い戻しを差し引く順番で考えます。
1か月の医療費が100万円の場合
70歳未満・年収約370万〜約770万円の区分で、1か月の医療費が100万円だった場合、高額療養費の上限額は85,800円+(100万円−28万6,000円)×1%=92,940円です。
マイナ保険証などを使えば、窓口で払う額もこの92,940円までになります。
付加給付が、一定額を超えた分を払い戻す仕組みになっている組合なら、この92,940円のうち、その一定額を超える分がさらに払い戻されます。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(イメージ)」
同じ治療が1年続いた場合は、年間上限で止まる
直近12か月に高額療養費の対象になった月がない人が、医療費100万円の治療を8月から翌年7月まで毎月受けた場合、高額療養費だけで計算すると、1〜3か月目は各92,940円、4か月目からは多数回該当で各44,400円です。
12か月分を足すと67万8,420円になりますが、年間上限の53万円を超えるため、この1年間の自己負担は53万円で止まります。
付加給付がある組合なら、毎月の自己負担からさらに払い戻しを受けられるため、1年間の負担がもっと下がる場合があります。
このように、2026年8月からは、付加給付がない人でも、高額療養費の対象になる自己負担に1年単位の上限がかかるようになった点が、これまでとの違いです。
医療保険を考える際は、この上限額と付加給付で医療費の自己負担がどこまで抑えられるかを先に計算し、足りない分だけを見積もると、備える額を決めやすくなります。
自己負担の上限額の調べ方|保険者・所得区分・付加給付の順に確かめる
自己負担の上限額は、加入している保険者、所得区分、付加給付の有無の3つを順に確かめるとわかります。
加入している保険者を確かめる
従来の健康保険証の有効期限は2025年12月1日で終わっていて、今は医療機関でマイナ保険証か資格確認書を提示する決まりです。
マイナ保険証の場合は、マイナポータルの「証明書」から「健康保険証」を選ぶと、加入している健康保険の資格情報を見られます。
保険者から交付される「資格情報のお知らせ」を見たり、保険者に問い合わせたりする方法もあります。
出典:厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問」
所得区分から高額療養費の上限額を確かめる
70歳未満で健康保険に加入している人の場合、高額療養費の所得区分を分ける基準は標準報酬月額です。
たとえば標準報酬月額53万〜79万円(年収約770万〜約1,160万円)の区分は、2026年8月からのひと月の上限額が「179,100円+(医療費−597,000円)×1%」、年間上限が111万円になっています。
自分の標準報酬月額がわからないときは、加入している保険者に問い合わせます。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(イメージ)」
付加給付の有無と支給の基準を確かめる
付加給付があるかどうかや、支給の基準となる金額は、組合の規約で決まる事項です。
健康保険組合のホームページや規約、組合の窓口などで、付加給付の有無と基準となる金額、計算のしかたもあわせて調べておくと、自己負担を見積もりやすくなります。
同じ医療費でも、加入している組合の基準によって、最終的な自己負担は変わります。
付加給付の注意点|対象外の費用と自治体の医療費助成
付加給付は高額療養費のあとに残る自己負担を減らす給付のため、高額療養費の対象外の費用は別に考える必要があり、自治体の医療費助成とあわせて使うときは手続きの順番にも気をつけたいところです。
食費や差額ベッド代、先進医療の費用は高額療養費の対象外
厚生労働省は、入院中の食費・居住費や、本人の希望で受ける差額ベッド代、先進医療にかかる費用などは、高額療養費の支給の対象ではないとしています。
先進医療では、診察や検査、入院料など通常の治療と共通する部分は保険診療と同じ扱いですが、先進医療そのものの費用は全額自己負担です。
付加給付は高額療養費の自己負担からさらに払い戻すものなので、こうした費用は付加給付があっても自分で払う前提で考えておきます。
出典:厚生労働省保険局「医療費の家計負担を軽減する高額療養費制度について」
自治体の医療費助成とあわせて使う場合(札幌市の例)
札幌市の子ども医療費助成などでは、健康保険組合や共済組合から支給される家族付加給付金に当たる額は、助成の対象外とされています。
医療機関でいったん医療費を払い、高額療養費や付加給付金の対象になる場合に札幌市へ払い戻しを申請するときは、先に保険者へ申請し、保険者から交付された支給決定通知書をそろえる流れです。
子どもの医療費助成などを受けている人は、住んでいる市町村の案内にも目を通しておきます。
出典:札幌市「療養費払い・高額療養費・付加給付金の給付を受けたとき」
退職や転職で健康保険が変わると、付加給付の扱いも変わる
付加給付は健康保険組合が規約で定める給付のため、転職先で別の健康保険に加入したり、国民健康保険に切り替えたりすると、それまでの組合の医療費の付加給付は受けられなくなります。
退職後に任意継続被保険者として同じ組合に残る場合も、付加給付の扱いは組合の規約しだいです。
また、健康保険法第99条は、任意継続被保険者を傷病手当金の対象から除いています。
ただし、退職日まで1年以上続けて被保険者だった人が、退職時に傷病手当金を受けている場合は、退職後も同じ保険者から引き続き受けられる決まりです。
私の場合、会社員時代は健康保険組合に加入し、独立後は国民健康保険に切り替わりました。
相談の現場では、退職や転職で加入する健康保険が変わったあとも、医療保険の内容を見直していなかった方に出会ったことがあります。
健康保険が変わるタイミングは、付加給付や傷病手当金の扱いとあわせて、医療保険の内容を見直す機会です。
付加給付がある人の医療保険の考え方
医療保険を考えるときは、医療費の自己負担に加えて、働けない間の収入を支える傷病手当金もあわせて見ておきます。
病気やケガの療養のために働けない被保険者には、働けなくなった日から3日を過ぎた日以降、健康保険から傷病手当金が支給されますが、給与を受けられる間は対象外で、給与が傷病手当金の額より少ないときは差額が支給されます。
1日あたりの額は、原則として直近12か月の標準報酬月額の平均の30分の1に当たる額の3分の2で、支給期間は支給を始めた日から通算して1年6か月です。
相談の現場では、高額療養費などで自己負担に上限があることを知らずに、入院や手術の医療費を心配している方に出会うことがあります。
私自身、保険販売の仕事で、医療保険の契約や給付金の請求、高額療養費などの公的保障を説明したうえで保障内容を決める相談に関わってきました。
医療保険で備える額を考えるときは、高額療養費と付加給付のあとに残る自己負担、高額療養費の対象外の費用、働けない間の収入の減り方を分けて見積もるのが現実的です。
付加給付がある組合に加入している人は、医療費の自己負担を組合の基準に応じてさらに抑えられる可能性があるため、そのぶん医療保険で備える範囲を絞って考えられます。
まとめ
付加給付は、健康保険組合が規約で定める給付で、医療費の場合は、高額療養費とは別に、保険者が定めた基準に従って自己負担の一部が払い戻される仕組みです。
主なポイントをまとめると、次のようになります。
・付加給付は健康保険法第53条にもとづく給付で、対象や金額は加入している健康保険組合の規約で決まる
・2026年8月から高額療養費の上限額が見直され、年収約370万〜約770万円の区分は「85,800円+(医療費−286,000円)×1%」、年間上限は53万円
・多数回該当と年間上限を入れて計算すると、医療費の高い月が続いても、1年間の自己負担には上限がある
・自己負担の上限額は、保険者、所得区分、付加給付の有無の順に確かめる
・食費や差額ベッド代、先進医療の費用は高額療養費の対象外で、付加給付があっても自分で払う前提で考える
・退職や転職で健康保険が変わると、付加給付や傷病手当金の扱いも変わる
医療保険を検討する前に、加入している健康保険の上限額と付加給付の内容を確かめておくことが、必要な保障を考える出発点になります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した内容です。
当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。
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