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年金と失業保険は同時にもらえる?64歳11ヶ月退職で受給総額を最大化する方法|2025年改正対応

年金と失業保険は、65歳以降であれば老齢年金と「高年齢求職者給付金」を同時に全額受給できますが、60〜64歳で基本手当を受給すると、特別支給の老齢厚生年金は全額支給停止となります。最も有利な選択肢として知られているのが、65歳の誕生日の前々日までに退職する「64歳11ヶ月退職テクニック」です。65歳未満で退職すれば長期間の「基本手当(最大150日分)」を受給でき、その後65歳に到達すると老齢年金との併給調整が外れ、両方を満額受け取れる仕組みになっています。
この記事では、年金と失業保険の同時受給ルールを年齢別に整理し、退職タイミングの最適解、2025年4月の制度改正(高年齢雇用継続給付の縮小)の影響、障害年金・遺族年金との併給可否まで、日本年金機構・厚生労働省・ハローワークの公開情報に基づいて解説します。
年金と失業保険の併給ルールを一覧で整理

年金と失業保険の併給可否は、年齢と給付の種類によって異なります。まずは全体像を整理しましょう。
年齢・給付別の併給可否
・60歳未満:老齢年金の受給資格がないため、そもそも併給の問題は発生しない
・60〜64歳:基本手当を受給すると、特別支給の老齢厚生年金が全額支給停止
・65歳以上:老齢年金と「高年齢求職者給付金」を同時に全額受給可能
・在職中(60〜64歳)の高年齢雇用継続給付:老齢厚生年金の一部が支給停止(最大4〜6%)
・障害年金・遺族年金:失業保険との調整なし、年齢を問わず併給可能
2025年度時点で「特別支給の老齢厚生年金」の対象者
特別支給の老齢厚生年金は、男性が昭和36年4月1日以前生まれ、女性が昭和41年4月1日以前生まれの方に支給される経過的な制度です。2025年度以降に新たに60歳を迎える男性は対象外となり、対象者は女性のみとなります。多くの読者にとっては、64歳以下で受け取れる老齢年金は「繰上げ受給」が中心となるでしょう。
失業保険(雇用保険)の基本:基本手当と高年齢求職者給付金の違い

失業保険の正式名称は「雇用保険」で、退職時の年齢によって受け取れる給付の種類が変わります。
65歳未満が対象の「基本手当」
65歳未満で離職した方が対象となる給付です。受給要件と給付内容を整理しましょう。
・受給要件:原則として離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上
・倒産・解雇等(特定受給資格者)や有期雇用更新拒否等(特定理由離職者)の場合は、離職前1年間に通算6ヶ月以上
・基本手当日額:離職前6ヶ月の賃金日額の45〜80%(60〜64歳は45〜80%、上限あり)
・所定給付日数:自己都合退職90〜150日、会社都合退職90〜330日(年齢・被保険者期間で変動)
・受給期間:離職日の翌日から原則1年
2025年4月1日以降の離職者については、自己都合退職の給付制限期間が原則1ヶ月に短縮されました(過去5年に2回以上の自己都合離職がある場合などは3ヶ月)。
出典:厚生労働省「Q&A〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)〜」
65歳以上が対象の「高年齢求職者給付金」
65歳以上で離職した方には、基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」が支給されます。基本手当との違いは以下のとおりです。
・受給要件:離職前1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6ヶ月以上
・支給額:被保険者期間1年未満で基本手当日額の30日分、1年以上で50日分(一時金として一括支給)
・受給期限:離職日の翌日から1年
・老齢年金との併給調整なし(同時に全額受給可能)
・受給回数の上限なし(条件を満たせば再就職後の離職でも再受給可)
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
60〜64歳で退職する場合:年金が全額支給停止

60〜64歳で退職し、ハローワークで求職の申込みをすると、特別支給の老齢厚生年金(および繰上げ支給の老齢厚生年金)は基本手当受給期間中、全額支給停止となります。
支給停止のしくみ
日本年金機構の公開情報によれば、ハローワークで求職の申込みをした日の属する月の翌月から、基本手当の受給期間が経過した日の属する月(または所定給付日数を受け終わった日の属する月)まで、年金が全額支給停止される仕組みです。
基本手当を1日でも受給した月があると、その月分の年金は1ヶ月分支給停止される取り扱いとなります。ただし、基本手当の受給終了後に「事後精算」が行われ、年金が必要以上に停止されないよう調整される仕組みです。
繰上げ受給と基本手当の関係
老齢年金を繰上げ受給している場合も、基本手当との併給はできません。ただし、基本手当との併給調整の対象は繰上げ支給の老齢厚生年金(および特別支給の老齢厚生年金)のみに限られます。繰上げ受給では老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に請求する必要がありますが、繰上げ受給した老齢基礎年金は基本手当との調整対象に含まれず、基本手当受給中も引き続き受給可能です。
どちらを選ぶべきかの判断基準
基本手当日額は、離職前6ヶ月の賃金で決まります。一方、年金は加入期間や報酬で決まるため、所得水準が高かった方ほど基本手当のほうが日額が大きくなる傾向です。在職時の給与水準と年金見込額をハローワーク・年金事務所でそれぞれ試算し、総額で比較することが推奨されます。
65歳以上で退職する場合:年金と失業保険を満額併給可能

65歳以上で離職した方は、雇用保険上「高年齢被保険者」として扱われ、失業給付は基本手当ではなく高年齢求職者給付金に切り替わります。この給付金は老齢年金との併給調整がなく、両方を全額受給可能です。
高年齢求職者給付金のメリット
・老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)と完全併給可能
・自己都合退職でも給付制限期間なし(待期7日のみ)
・一時金として一括支給されるため、まとまった資金を早期に確保
・受給年齢の上限・受給回数の制限なし
・再就職後に再び離職した場合も、要件を満たせば再受給可
高年齢求職者給付金のデメリット
支給日数が30日分または50日分にとどまるため、基本手当(最大150日分の自己都合退職、最大330日分の会社都合退職)と比べると、総支給額は少なくなります。
「64歳11ヶ月退職テクニック」で受給総額を最大化

退職時期を工夫することで、年金と失業保険の総受給額を増やせます。最も知られているのが、65歳の誕生日の前々日までに退職する方法です。
退職タイミングのしくみ
労働法・雇用保険上、65歳到達日は「65歳の誕生日の前日」と扱われます(年齢計算ニ関スル法律)。たとえば1月2日が65歳の誕生日の場合、1月1日に65歳到達となります。基本手当の対象は「65歳到達日の前日まで(=64歳まで)」に離職した方です。
そのため、1月2日生まれの方は、12月31日(誕生日の前々日)までに退職すれば、基本手当の対象となります。1月1日(65歳到達日)に在籍していると65歳到達者扱いになるため、高年齢求職者給付金しか受け取れません。
このタイミングでの退職メリット
・基本手当(最大150日分・自己都合退職)の受給対象となる
・基本手当の受給開始後、65歳に到達しても残りの給付日数は継続して受給可能
・基本手当の受給終了後は、老齢年金が満額支給される
・基本手当の受給期間中、特別支給の老齢厚生年金が支給停止になっても、後日事後精算で過剰停止分が戻る
注意点
・勤続年数に応じた退職金規程によっては、65歳到達後の退職と比べて退職金が減額される可能性
・基本手当の受給にはハローワークでの求職活動・失業認定が必要(4週間に1回)
・自己都合退職の場合は給付制限期間(原則1ヶ月)あり
・健康保険の任意継続や国民健康保険への切替手続きが必要
2025年4月の制度改正:高年齢雇用継続給付が縮小

60歳以上65歳未満で在職中の方が対象の「高年齢雇用継続給付」が、2025年4月1日に大きく改正されました。
支給率の縮小
高年齢雇用継続給付は、60歳以上65歳未満の方で、賃金が60歳到達時の75%未満に低下した場合に支給される給付です。改正内容を整理します。
・2025年3月31日以前に60歳到達した方:支給率最大15%(経過措置)
・2025年4月1日以降に60歳到達する方(昭和40年4月2日以降生まれ):支給率最大10%
老齢厚生年金との調整額も変更
高年齢雇用継続給付を受け取ると、特別支給の老齢厚生年金や繰上げ支給の老齢厚生年金が一部支給停止となります。停止額は以下のとおりです。
・2025年3月31日以前60歳到達者:最大で標準報酬月額の6%相当
・2025年4月1日以降60歳到達者:最大で標準報酬月額の4%相当
出典:日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」、厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」
将来的な廃止の方針
高年齢雇用継続給付は、65歳までの雇用確保が義務化され、雇用環境が改善したことを背景に、段階的に縮小されてきました。厚生労働省の方針では、今後さらなる縮小・最終的な廃止も視野に検討が進められています。
障害年金・遺族年金は失業保険と完全併給可能

老齢年金と異なり、障害年金と遺族年金は失業保険との調整がありません。
障害年金との併給
障害基礎年金(初診日が国民年金加入中の方が対象)または障害厚生年金(初診日が厚生年金加入中の方が対象)は、基本手当・高年齢求職者給付金のいずれとも年齢を問わず併給可能です。ただし、基本手当の受給要件は「働く意思と能力があること」のため、症状によっては受給期間延長手続きを利用するケースもあります。
遺族年金との併給
遺族基礎年金・遺族厚生年金は、失業保険との調整がなく、年齢を問わず併給可能です。ただし、本人が65歳以上で老齢年金の受給資格を得た場合、老齢年金と遺族年金の選択・調整が別途発生します。
よくある疑問(Q&A)

Q1:失業保険をもらうと年金額が減るのですか?
A:年金額そのものが減ることはありません。基本手当受給期間中、年金が一時的に支給停止される仕組みで、基本手当の受給終了後は年金が再開される流れです。事後精算で過剰停止分が戻る仕組みもあるため、長期的な年金総額に影響はありません。
Q2:年金と失業保険、どちらを優先すべきですか?
A:個人の年金見込額と基本手当日額の比較が必要です。基本手当日額は離職前6ヶ月の賃金で決まるため、所得水準が高かった方は基本手当のほうが日額で有利な傾向にあります。ハローワークと年金事務所で試算してから判断するのが確実でしょう。
Q3:失業保険は何歳までもらえますか?
A:基本手当は65歳未満が対象です。65歳以上で離職した方は、基本手当ではなく高年齢求職者給付金(一時金)が支給されます。年齢上限はなく、要件を満たせば何度でも受給可能です。
Q4:64歳11ヶ月で退職したら、本当に得をするのですか?
A:基本手当の最大150日分(自己都合退職)と、65歳以降の老齢年金を両方受け取れる可能性があるため、退職金への影響を考慮しなければ有利な選択肢になりやすいでしょう。ただし、勤続年数による退職金加算がある会社では、65歳到達後退職のほうが退職金が増える場合もあるため、社内規程の確認が必須です。
Q5:失業保険を一度受けると、年金が減るというのは本当ですか?
A:誤解です。基本手当の受給期間中は年金が一時停止されますが、受給終了後は元に戻ります。65歳以上で受け取る高年齢求職者給付金については、年金との併給調整が一切なく、両方を満額受け取れます。
Q6:年金受給者ですが、失業保険はもらえますか?
A:65歳以上で雇用保険の被保険者として働いていた方が離職した場合、老齢年金を受け取りながら高年齢求職者給付金も受け取れます。65歳未満の方が基本手当を受け取る場合は、特別支給の老齢厚生年金や繰上げ支給の老齢厚生年金は基本手当受給期間中支給停止です。
Q7:繰下げ受給中に失業保険を受け取ると影響はありますか?
A:65歳以上の老齢年金を繰下げ待機中の方が高年齢求職者給付金を受け取る場合、影響はありません。ただし、繰上げ受給を選んだ方は、64歳以下で基本手当を受給すると、繰上げ支給の老齢厚生年金が全額支給停止となるため要注意です。
まとめ|年齢・退職タイミング次第で受給総額は大きく変わる
年金と失業保険の同時受給は、年齢と給付の種類で扱いが大きく異なります。要点を以下に整理しました。
・65歳以上:老齢年金と高年齢求職者給付金は完全併給可能
・60〜64歳:基本手当を受給すると、特別支給の老齢厚生年金や繰上げ支給の老齢厚生年金が全額支給停止
・64歳11ヶ月退職:基本手当(最大150日分・自己都合)と65歳以降の老齢年金を両方受給できる戦略的タイミング
・2025年4月以降の改正:高年齢雇用継続給付の支給率は最大10%、年金停止額は最大4%に縮小
・障害年金・遺族年金:失業保険との調整なし、年齢問わず併給可能
退職前には、ハローワークで基本手当・高年齢求職者給付金の試算を、年金事務所で老齢年金の見込額を確認し、両方の試算を踏まえてタイミングを決めることが、後悔しない選択につながるはずです。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムでご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズにお調べいただけるでしょう。



