社会保障
育児休業給付金の支給額・計算方法・社会保険料免除の仕組みを詳しく解説|2025年改正で手取り10割相当に

育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が育児休業を取得した場合に、休業前賃金の67%(180日経過後は50%)が支給される制度です。2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が創設され、夫婦ともに14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間は給付率が80%となり、社会保険料免除と合わせて手取り10割相当の給付が受けられるようになりました。
一方で、支給には上限額があり、延長手続きも2025年4月から厳格化されるなど、制度の詳細を正確に把握しておかないと想定どおりの給付を受けられない場合もある点に留意が必要です。この記事では、育児休業給付金の計算方法や社会保険料免除の具体的な仕組み、2025年改正のポイント、そして育休中の家計設計で押さえておくべき判断基準について詳しく解説します。
育児休業給付金の支給額と計算の仕組み

育児休業給付金の支給額は休業前の賃金水準によって異なり、上限額も設定されています。ここでは計算方法と、実際にどの程度の金額が支給されるかを具体的に確認していきましょう。
支給額の計算式と給付率
育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額×支給日数×給付率」で算出されます。休業開始時賃金日額とは、育児休業開始前6か月間の賃金総額(賞与を除く)を180で割った金額のことです。
給付率は育児休業の開始からの期間によって2段階に分かれており、開始から180日目までは67%、181日目以降は50%に引き下げられます。1支給単位期間(原則30日)ごとに支給され、原則として2か月に1回の申請が必要となっています。
休業前の月収別の支給額目安
厚生労働省のQ&Aでは、育児休業期間中に賃金の支払いがない場合の支給額目安が示されています。休業前の平均月収が15万円程度の場合、180日目までの支給額は月額約10万円、181日目以降は月額約7万5,000円程度です。
月収20万円程度であれば、180日目までは月額約13万4,000円、181日目以降は月額約10万円となります。月収30万円程度の場合は、180日目までが月額約20万1,000円、181日目以降が月額約15万円です。
ただし、支給額には上限があります。休業開始時賃金日額の上限額は16,110円(2025年8月1日時点、毎年8月1日に改定)で、月収に換算すると約48万円程度を超える場合は上限額での支給となる点に注意が必要でしょう。
2025年4月改正|出生後休業支援給付金で手取り10割相当に

2025年4月の改正雇用保険法施行により、育児休業中の経済的支援が拡充されました。従来の育児休業給付金に加えて、新たに出生後休業支援給付金が創設され、一定の要件を満たせば給付率が実質的に引き上げられています。
出生後休業支援給付金の仕組みと支給要件
出生後休業支援給付金は、既存の育児休業給付金(67%)に13%を上乗せする形で支給される給付金です。育児休業給付金と合わせて休業前賃金の80%が給付され、社会保険料免除や非課税措置を加味すると手取り10割相当の水準になるよう設計されています。
支給要件として、原則として夫婦ともに14日以上の育児休業を取得していることが求められます。父親は子の出生後8週間以内、母親は産後休業後8週間以内に育児休業を取得し、それぞれ通算14日以上の休業が条件です。支給日数の上限は28日間で、29日目以降は従来どおりの67%(181日目以降は50%)に戻ります。
なお、ひとり親の場合や配偶者がフリーランス・日雇い労働者であるなど、配偶者が育児休業を取得できない事情がある場合は、本人のみの育休取得でも支給対象となる例外規定も用意されている点が特徴です。また、被保険者が父親の場合は、子が養子でない限り、母親の育児休業取得の有無は要件になりません。
出典:厚生労働省「出生後休業支援給付金」リーフレット(PDF)
「手取り10割」にならないケースとは
手取り10割相当となるのは、あくまで最大28日間に限られます。29日目以降は給付率が67%に戻り、181日目以降は50%まで下がるため、育休期間全体を通じて手取りが維持されるわけではありません。
また、休業開始時賃金日額には上限額が設定されており、月収が目安として約48万円を超える場合は80%の給付率でも上限額での支給となるため、手取り10割に届かないケースもある点に注意が必要です。さらに、育休中に一定の就労をして賃金を受け取った場合には、その分が給付額から減額される仕組みになっている点にも留意しておきましょう。
社会保険料免除の具体的な要件と注意点

育児休業中は社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が免除される仕組みがありますが、免除されるためには一定の要件を満たす必要があります。要件を正確に理解しておくことで、育休の取得時期による損得を事前に把握できるようになるでしょう。
月額保険料の免除要件
日本年金機構によると、育児休業を開始した日の属する月から、終了する日の翌日が属する月の前月までの社会保険料が、事業主・被保険者の双方とも免除されます。判断のポイントは、月末日が育児休業期間に含まれるかどうかという点です。
2022年10月の改正により、育休の開始日と終了日が同月内であっても、同月内に14日以上の育児休業を取得していれば、その月の月額保険料が免除されるルールが追加されました。この「14日」には土日祝日も含まれますが、育休中に予定されている就業日は除外して計算する点に注意してください。
出典:日本年金機構「従業員が育児休業等を取得・延長したときの手続き」
賞与にかかる保険料の免除要件
賞与の社会保険料については、月額保険料とは異なる要件が適用されます。賞与を支払った月の末日を含む、連続した1か月を超える育児休業を取得した場合に限り、賞与にかかる保険料が免除される仕組みです。短期間の育休では賞与の保険料免除は受けられないため、賞与支給月に育休を取得する場合は取得期間の設計に注意が必要となります。
免除期間中の年金への影響
社会保険料が免除されている期間であっても、厚生年金保険においては「保険料を納付した期間」として取り扱われます。つまり、免除期間中も将来受け取る年金額には影響がありません。健康保険証もそのまま利用でき、育休中の医療費負担が増えることもなく、在職時と同等の保障が継続する仕組みです。
育児休業給付金の延長と2025年4月からの厳格化

原則として子が1歳になるまでの育児休業給付金ですが、一定の要件を満たせば延長が認められます。ただし、2025年4月から延長手続きに関するルールが変更されており、従来より厳格な運用が行われています。
延長が認められる要件
育児休業給付金の支給期間は、原則として子が1歳に達する日の前日までです。ただし、保育所等に入所できない場合や、配偶者の死亡・負傷等により養育が困難になった場合には、子が1歳6か月になるまで延長でき、さらに同様の事情が続く場合は最長2歳まで再延長が可能となっています。
2025年4月からの手続き変更
2025年4月以降、保育所に入所できないことを理由とする延長手続きが厳格化されました。従来は入所不承諾通知書の提出で足りましたが、改正後は「速やかな職場復帰のために保育所等での保育利用を希望している」とハローワーク所長が認める場合に限定されるようになっています。育休延長を目的とした"落選狙い"の保育所申し込みを防ぐ趣旨の改正であり、復帰の意思が真実であることが確認される運用に変わった点を理解しておく必要があるでしょう。
育休中の家計設計で押さえるべき3つの判断基準

育児休業中の収入減少に対して、公的給付でどこまでカバーできるのかを正確に把握しておけば、民間保険の要否も含めた合理的な家計設計が可能になります。
公的給付の積み上げで実質手取りを把握する
育休中の実質的な手取りは、育児休業給付金の額面だけでなく、社会保険料免除と非課税措置を含めて計算する必要があります。休業前の月収が30万円の場合、180日目までの給付額は月額約20万1,000円ですが、社会保険料(健康保険・厚生年金で月額約4万5,000円前後)が免除され、給付金は非課税のため所得税・雇用保険料もかかりません。結果として、休業前の手取り額と比較した実質的な給付率は約8割程度の水準となります。
出生後休業支援給付金が適用される最初の28日間はさらに手取り10割相当まで引き上がるため、育休期間全体を通じた月ごとの収支を時系列で把握しておくことが重要です。
自営業者・フリーランスとの制度的な差を認識する
育児休業給付金は雇用保険の給付であるため、自営業者やフリーランスは対象外です。国民健康保険には出産手当金や傷病手当金の制度もないため、会社員と比べて出産・育児期間中の収入保障が手薄になります。自営業者の場合は、育休中の収入減少に備えた貯蓄や、就業不能保険などの民間保障を別途検討する必要があるでしょう。
逆に言えば、会社員や公務員の場合は育児休業給付金+社会保険料免除によって一定の収入が確保されるため、育休中の生活費を目的とした民間の就業不能保険や収入保障保険の優先度は相対的に低くなります。加入を検討する前に、まず公的給付で不足する金額を具体的に計算し、住宅ローンや固定費を差し引いた不足額が本当に保険で備えるべき水準かどうかを冷静に判断することが大切です。
育児時短就業給付金による早期復帰も選択肢に
2025年4月からは「育児時短就業給付金」も創設されました。2歳未満の子を養育するために時短勤務を選択した場合、時短勤務中の賃金の10%が支給される制度です。育休を長期間取得するよりも、早めに時短勤務で職場復帰しつつ給付金を受け取ることで、キャリアの継続と収入の確保を両立できる可能性があります。育休期間の長さだけでなく、復帰のタイミングを含めた家計全体の収支で判断する視点が求められるでしょう。
まとめ
育児休業給付金は、休業前賃金の67%(181日目以降は50%)が支給される雇用保険の給付制度です。2025年4月からは出生後休業支援給付金の創設により、最大28日間は給付率80%・手取り10割相当の支援が受けられるようになりました。社会保険料免除の要件(月末日を含むか、同月14日以上か)も正確に把握しておくことで、育休の取得時期による差を事前に計算できます。
一方で、181日目以降は給付率が50%に低下するため、育休後半の収入減少には備えが必要です。公的給付の積み上げで実質手取りを時系列で把握したうえで、住宅ローンや固定費との差額を確認し、民間保険の要否を判断するのが合理的な進め方といえるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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