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出産・育児にかかるお金はいくら?妊娠から3歳までの費用と公的支援を時系列で解説

出産・育児には妊婦健診や分娩費用、育児用品の購入などまとまった支出が発生しますが、日本には出産育児一時金や児童手当、育児休業給付金など多くの公的支援制度が用意されています。これらを正しく把握し、時系列で積み上げて計算すると、実質的な自己負担は想像よりも抑えられるケースが少なくないでしょう。この記事では、妊娠判明から子どもが3歳になるまでの期間を区切り、発生する費用と利用できる公的支援を整理していきます。
妊娠中にかかる費用と公費助成

妊娠が判明してから出産までの約10か月間には、定期的な妊婦健診の費用や、マタニティ用品の準備費用が発生します。ただし、妊婦健診には自治体からの公費助成があり、自己負担は想像ほど高額にはなりません。
妊婦健診の費用と自治体の助成制度
妊婦健診は出産までに14回程度の受診が推奨されており、全国すべての市区町村で14回以上の公費助成が実施されています。妊婦1人当たりの公費負担額は全国平均で約11.4万円(令和7年4月時点)となっており、健診にかかる費用の多くがカバーされる仕組みになっています。
ただし、公費負担額には最低約8.6万円から最高約14.1万円までの地域差がある点には注意が必要です。国の基準の範囲内の健診でみると、自己負担額が0円のケースが3割超ある一方、約1割は3万円以上と、ばらつきがあります。基準外の追加検査などを受ける場合は、別途自己負担が発生する点も念頭に置いておきたいところです。
出典:厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の成立について」
マタニティ用品・ベビー用品の準備費用
妊娠中から出産後にかけて、マタニティウェア、ベビーベッド、チャイルドシート、衣類、おむつなどの準備費用が必要になります。一般的には10万〜15万円程度が目安とされていますが、第2子以降はお下がりの活用などで抑えられることも多いでしょう。
出産費用と出産育児一時金

出産にかかる費用のうち、最も高額なのが分娩・入院費用です。厚生労働省の調査によると、正常分娩にかかる出産費用の全国平均は令和5年度で約50.7万円、令和6年度には約52万円(いずれも室料差額等を除く)と上昇が続いています。令和5年度の施設別では公的病院で約47.4万円、私的病院で約52.4万円、診療所・助産所で約51.1万円と差があります。
この出産費用に対し、健康保険から出産育児一時金として1児につき50万円が支給されます(令和5年4月以降、産科医療補償制度対象の出産)。全国平均で見ると出産費用の大部分がカバーされる計算ですが、東京都の平均出産費用は約62.5万円(令和5年度)と高く、地域によっては自己負担が発生する点を念頭に置いておく必要があります。
なお、帝王切開など異常分娩の場合は健康保険の療養の給付(3割負担)が適用され、さらに高額療養費制度を利用すれば月の自己負担は所得に応じた上限額に抑えられます。出産育児一時金も別途支給されるため、正常分娩よりも実質的な自己負担が少なくなるケースもあるでしょう。
出典:厚生労働省「出産費用の状況等について」(令和6年11月)
なお、2026年5月29日には、出産費用の給付体系を見直す健康保険法等の一部を改正する法律が成立しました(同年6月5日公布)。国が分娩1件当たりの基本単価を設定して保険者から出産施設へ直接支給し、標準的な出産費用に妊婦の自己負担が生じない仕組みへ移行するほか、すべての妊婦への定額の現金給付も導入される内容です。施行は公布後2年以内とされ、当分の間は施設の選択により現行の出産育児一時金の適用を受けられる経過措置が設けられています。妊婦健診についても、国が標準額を定めるなどの負担軽減策が盛り込まれています。移行期には、出産する施設がどちらの制度を採用しているかを確認するとよいでしょう。
出典:厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)の成立について」
妊娠届出時・出生届出後にもらえる給付金

妊娠届出と出生届出のタイミングで、妊婦のための支援給付(旧・出産子育て応援交付金)として合計10万円相当が支給されます。令和7年4月からは子ども・子育て支援法に基づく「妊婦支援給付金」として制度化されました。
支給の仕組みと金額
支給は2回に分けて行われ、妊娠届出時に5万円、出生届出後に5万円の計10万円相当が給付対象となります。所得制限は設けられておらず、すべての妊婦・子育て世帯が対象です。支給形態は自治体によって異なり、現金、電子クーポン、ギフトカードなどの方法で支給されます。
申請にあたっては、自治体の保健師等による面談が必要です。妊娠届出時、妊娠8か月前後、出生届出後の計3回の面談が設定されており、相談支援と経済支援がセットになっています。
産休中の収入を補う出産手当金

会社員や公務員など健康保険に加入している方は、産前42日(多胎妊娠は98日)・産後56日の産休期間中、出産手当金として標準報酬日額の3分の2が支給されます。例えば月給30万円の場合、産前産後98日間で約65万円が受け取れる計算です。
出産手当金は健康保険の被保険者本人が対象であり、国民健康保険には原則としてこの制度がありません。自営業やフリーランスの方は産休中の収入保障がない点が、会社員との制度上の差となっています。
育休中の収入を補う育児休業給付金

育児休業を取得した場合、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。給付率は休業開始から180日目までが賃金の67%、181日目以降は50%です。支給対象は原則として子が1歳に達するまでで、保育所に入れない場合などは1歳6か月・最長2歳まで延長できます。加えて、育休中は所得税がかからず、社会保険料も免除されるため、手取りベースでの減少幅は給付率の数字ほど大きくありません。
出生後休業支援給付金で手取り10割相当に
2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が新設され、育児休業給付金67%に13%が上乗せされ、合計80%の給付率で最大28日間受給できるようになりました。社会保険料免除や非課税のメリットを加味すると、実質的には手取り10割相当が確保されます。
この制度の適用を受けるには、夫婦ともに14日以上の育児休業を取得することが原則要件です(ひとり親世帯など一部例外あり)。夫婦で育休を取得する家庭にとっては、収入面の不安が軽減される制度といえるでしょう。
育休中の社会保険料免除の経済効果
育児休業中は健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。月給30万円の場合、健康保険料(協会けんぽ全国平均10%)と厚生年金保険料(18.3%)の本人負担分は月額約4.2万円ですので、年間に換算すると50万円を超える負担軽減になります。免除期間中も年金の受給資格や受給額には影響しないため、将来の年金が減るという心配も不要です。
出産後に受け取れる児童手当

子どもが生まれると、0歳から高校生年代(18歳到達後の最初の3月31日)まで児童手当が支給されます。2024年10月の制度拡充により所得制限が撤廃され、すべての世帯が対象になりました。
支給額は以下のとおりです。
・3歳未満:月15,000円(第3子以降は月30,000円)
・3歳〜高校生年代:月10,000円(第3子以降は月30,000円)
0歳から3歳までの3年間だけでも54万円(月15,000円×36か月)を受給できる計算になります。高校生年代までの通算では、第1子・第2子で約234万円、第3子以降は最大で約648万円です。なお、第3子のカウントは兄姉が22歳の年度末を過ぎると対象から外れるため、きょうだいの年齢差によって実際の総額は変わります。
乳幼児医療費助成と幼保無償化

出産後の子育て期間には、医療費や保育料に関する公的支援もあります。これらを把握しておくことで、日常的な支出の見通しが立てやすくなるでしょう。
乳幼児医療費助成制度
子どもの医療費については、各自治体が独自に助成制度を設けており、未就学児の医療費は自己負担なし(または数百円の一部負担金のみ)としている自治体がほとんどです。自治体によっては中学生や高校生まで助成を拡大しているケースもあります。0〜3歳の間は医療機関にかかる機会が多いため、この制度の恩恵を実感しやすい時期といえるでしょう。
幼児教育・保育の無償化
2019年10月から始まった幼児教育・保育の無償化により、3〜5歳のすべての子どもの幼稚園・保育所・認定こども園等の利用料が無償化されています。0〜2歳については住民税非課税世帯が対象です。認可外保育施設を利用する場合は、3〜5歳で月額3.7万円、0〜2歳の住民税非課税世帯で月額4.2万円を上限に補助が受けられます。
0〜2歳で認可保育所に通う場合の保育料は世帯の所得に応じて決定されますが、国の仕組みとして第2子は半額、第3子以降は無料となる多子世帯の軽減があります。きょうだいの数え方には要件があり、独自に軽減を拡充している自治体もあるため、居住地の制度を確認しておくとよいでしょう。
公的支援を積み上げると実質負担はいくらになるか

ここまで紹介した公的支援を時系列で積み上げて、会社員世帯(月給30万円)のケースで実質的な収支を整理してみましょう。
【妊娠期】
・妊婦健診の自己負担:0〜数万円程度(居住地や受診内容で変動)
・マタニティ・ベビー用品:約10万〜15万円
・妊婦支援給付金(1回目):+5万円
【出産時】
・出産費用の自己負担:0〜数万円程度(出産育児一時金50万円適用後)
・妊婦支援給付金(2回目):+5万円
【産休・育休期間(子が1歳まで休業した場合)】
・出産手当金(98日間):約65万円
・育児休業給付金(約10か月間):約185万円
・社会保険料免除:約50万円以上の負担軽減
【0〜3歳の児童手当】
・月15,000円×36か月=54万円
妊娠から3歳までの約4年間で受け取れる公的支援の合計は、出産育児一時金50万円+妊婦支援給付金10万円+出産手当金約65万円+育児休業給付金約185万円+児童手当54万円=約365万円にのぼります。社会保険料免除や乳幼児医療費助成の経済効果も含めると、公的支援だけで相当な金額になることがわかるでしょう。
もちろん、育休中は給与が満額支払われるわけではないため、生活費全体の収支を見ると赤字になる期間があります。しかし、制度を正しく理解していれば、「育休中は収入がゼロになる」という漠然とした不安は解消できるはずです。
民間の学資保険・医療保険は本当に必要か

出産・育児に備えて学資保険や子ども向けの医療保険への加入を検討する方は少なくありません。しかし、まずは公的支援制度を把握し、実質的な自己負担額を正確に見積もることが先決となるでしょう。
子どもの医療費は乳幼児医療費助成制度により自治体がほぼ全額をカバーしているため、医療費目的で民間医療保険に加入する必要性は低いケースがほとんどです。教育費の準備についても、児童手当の全額を仮にNISAで運用した場合、18年間で元本だけでも約234万円(第1子・第2子の場合)を確保でき、運用益が加わればさらに上積みが見込めます。
学資保険には「強制貯蓄」の効果がある一方、途中解約すると元本割れのリスクがあり、低金利環境ではリターンが限られる点がデメリットとなります。児童手当をそのまま預貯金やNISAに回す方法と比較した上で、自分の家庭の状況に合った方法を選ぶことが重要でしょう。
まとめ
出産・育児には妊婦健診、分娩費用、育児用品、保育料など多くの支出が発生しますが、日本の公的支援制度を正しく活用すれば、実質的な自己負担は想像よりも軽減されます。妊婦健診の公費助成、出産育児一時金50万円、妊婦支援給付金10万円、出産手当金、育児休業給付金、児童手当、乳幼児医療費助成、幼保無償化など、時系列で制度を積み上げていくと、公的支援の総額は数百万円規模に達するでしょう。
民間の保険や貯蓄でどれだけ備えるべきかは、こうした公的支援の全体像を把握してから逆算して判断するのが合理的な手順になります。制度の申請漏れを防ぐためにも、妊娠判明時点から時系列で「いつ・何を・どこに申請するか」を整理しておくとよいでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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