ニーサ
NISAが下落したらどうする?売らずに続けるための家計の見直し方

病気やけがで働けなくなったときは健康保険から傷病手当金が通算1年6か月、会社を離職したときは雇用保険の基本手当が賃金日額のおよそ50〜80%支給されます。
NISAの評価額が下がった局面で慌てて売る前に確かめたいのは、相場の見通しではなく家計が持ちこたえられるかどうかです。
下落そのものより、下落と家計の不調が重なったときに売却は起こります。
この記事では、売るかどうかを決める家計側の確認事項、売却の前に検討したい積立額の見直し、収入が減ったときに使える公的給付、それでも売る場合の注意点を解説します。
下落時に売るかどうかは、相場ではなく家計の状態で決まる

相談の場で見えてくるのは、値動きそのものより家計の余裕のなさが売却の引き金になっている例の多さです。
売却を決める前に、次の2点を確認します。
生活費を投資に回していないかを確認する
生活費や近い将来に使う予定のお金まで投資に回している状態では、下落局面で売る以外の選択肢が残りません。
相場が戻るまで待つという判断そのものが、家計の側から封じられてしまうためです。
生活費の何か月分を現金で持つべきかについて、公的な基準は存在しません。
ただ、収入が途絶えた場合に何か月しのげるかを一度計算しておくと、下落時に慌てずに済みます。
数年以内に使う予定の資金は、下落局面でも現金化が合理的なことがある
住宅の頭金や子どもの入学金など、使う時期と金額が決まっている資金は、相場の回復を待てる資金とは性質の異なるお金です。
回復までの時間を確保できないため、下落局面であっても計画どおり現金化する判断が必要になる場面があります。
損失を確定させることに抵抗を感じるのは自然な反応といえます。
ただ、使う時期が決まっている資金を相場に委ね続けると、必要な金額に届かない事態を招きかねません。
投資を続ける資金と、期限のある資金は分けて考える対象になります。
売却の前に、積立額の見直しという選択肢がある

NISAは、保有している商品を売らなくても、毎月の積立額を減らしたり止めたりできる制度です。
家計が苦しいときに最初に検討したいのは、売却ではなく積立額の調整になります。
NISAには引き出し時期の制限がない
NISAには、いつまで保有しなければならないという制限が設けられていません。
金融庁のNISA特設ウェブサイトによると、2024年からのNISAでは非課税保有期間が無期限となり、保有期間を気にせず長期投資を行いやすくなった設計です。
積立額の変更や停止は、口座を開いている金融機関の手続きで対応できます。
いったん止めても、家計が落ち着いた時点で再開できます。
出典:金融庁「NISAを知る」
iDeCoとの違いを知っておく
同じ税制優遇でも、iDeCoの性質は別です。
iDeCo公式サイトによると、老後の資産形成を目的とした年金制度であるため、原則として60歳にならないと拠出した掛金と運用益を引き出すことはできません。
そのため、家計が苦しくなったときに現金化して生活を支える役割は、NISAが担うことになります。
iDeCoも掛金の停止はできますが、資産そのものは原則60歳まで取り出せない点が違いです。
出典:iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)「iDeCo(イデコ)の特徴」
減額・停止・売却の順で検討する
家計を守る手段には順序があります。
・まず毎月の積立額を減らす
・それでも足りなければ積立をいったん止める
・最後の手段として保有している商品を売る
積立の減額と停止は、これまで積み上げた資産に手をつけずに支出を減らせる方法です。
一方、売却は資産そのものを減らし、非課税で運用してきた期間の効果も途切れてしまう選択になります。
収入が減ったときに先に確認する公的給付

収入が途絶えた場合でも、生活費のすべてを自分の資産だけでまかなう必要はありません。
健康保険と雇用保険には、休業や離職の際に生活を支える給付が用意されています。
離職したときの雇用保険(基本手当)
基本手当は、離職して求職活動をしている期間の生活を支える給付です。
ハローワークインターネットサービスによると、1日あたりの金額は離職前6か月に毎月きまって支払われた賃金をもとに算出した賃金日額のおよそ50〜80%(60歳から64歳は45〜80%)で、賃金の低い方ほど高い率になります。
受け取れる日数は、離職時の年齢・被保険者であった期間・離職の理由によって90日から360日の間で決まる仕組みです。
倒産や解雇などにより離職を余儀なくされた場合は、一般の離職者より手厚い日数になることがあります。
受給には、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算12か月以上あることが必要です。
倒産や解雇などによる離職の場合は、離職の日以前1年間に6か月以上でも受給できます。
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
病気やけがで働けないときの傷病手当金
会社員や公務員が業務外の病気やけがで働けなくなったときは、健康保険から傷病手当金を受け取れます。
協会けんぽによると、支給期間は支給を開始した日から通算して1年6か月です。
1日あたりの金額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2に相当します。
連続する3日間を含み4日以上仕事を休んだ場合に、4日目以降の休んだ日が対象になります。
業務上や通勤中のけがは労災保険の対象となり、傷病手当金の対象からは外れる扱いです。
また、休業した期間に給与が支払われている間は支給されず、給与が傷病手当金より少ない場合はその差額が支給されます。
それでも売却が必要になった場合に知っておくこと

家計の事情で、どうしても売る必要が出る場面もあります。
売却に踏み切る前に確認したいのは、税制上の扱いと非課税枠の扱いです。
NISA口座の損失は他の口座の利益と相殺できない
国税庁のタックスアンサーNo.1535によると、非課税口座で取得した上場株式等を売却したことにより生じた損失は、ないものとみなされます。
そのため、特定口座や一般口座で保有する上場株式等の配当等や譲渡益との損益通算も、繰越控除もできません。
利益が非課税になる代わりに、損失は税制上使えない仕組みです。
売却した分の枠は翌年に復活する
金融庁によると、商品を売却した場合、翌年以降に売却した商品の簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活し、再利用できます。
100万円で購入した商品を80万円で売却しても、翌年に復活する枠は簿価の100万円です。
非課税保有限度額は1,800万円で、そのうち成長投資枠のみの上限は1,200万円とされています。
年間投資枠はつみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、併用した場合の合計は年間360万円です。
家計の事情でいったん売却しても、非課税で投資できる枠そのものが失われるわけではありません。
売却を最後の手段としつつ、必要になった場合は制度の枠内で立て直せると知っておくと、判断に迷いにくくなります。
まとめ
NISAの評価額が下がったときに最初に見るのは、相場の見通しではなく家計の状態です。
生活費や使う時期が決まっている資金まで投資に回していないかを確認し、余裕がなければ売却より先に積立額の減額や停止を検討します。
収入が減った場合に先に確かめたいのは、雇用保険の基本手当や健康保険の傷病手当金で家計を支えられるかどうかです。
公的給付でしのげる期間があれば、資産を取り崩さずに乗り切れる場面も出てきます。
下落局面で売却に追い込まれるかどうかを分けるのは、相場ではなく、それ以前の家計の備えといえます。
売らずに続けられる状態を保つことが、非課税で運用する制度を活かす前提です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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