iDeCo
iDeCoを通じた資産形成の全体像:拠出から受け取りまでの一貫戦略

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備するための長期積立投資が基本です。しかし、iDeCoの非課税メリットを最大限に活かすためには、ただ掛金を拠出するだけでなく、拠出から運用、そして受け取りまでを一貫して考える「戦略」が不可欠です。この一貫した戦略を持つことで、市場の変動に惑わされず、着実に資産を増やすことができます。
この記事では、掛金拠出から運用商品選択、スイッチング、そして受け取りまでの一貫した戦略を解説します。長期・積立・分散投資の原則をiDeCoで実践する具体例を通じて、iDeCoを通じた資産形成の全体像を提案。あなたのiDeCo運用をより明確な目的を持って、成功へと導くためのヒントをご紹介します。
iDeCoを通じた資産形成の全体像:4つのフェーズ

iDeCoを通じた資産形成は、以下の4つのフェーズに分けて考えると、一貫した戦略を立てやすくなります。
1.加入・拠出フェーズ:
・iDeCoの口座を開設し、掛金を毎月積み立てていく段階です。
・戦略: 無理のない掛金を設定し、継続的に拠出することが重要です。
2.運用フェーズ:
・拠出した掛金で運用商品を買い付け、資産を育てていく段階です。
・戦略: 長期的な視点で運用し、定期的に運用商品の見直し(スイッチング)を行います。
3.受け取り準備フェーズ:
・60歳が近づき、老後資金としてどう受け取るか、具体的な計画を立てる段階です。
・戦略: リスクを抑えた運用にシフトし、受け取り時の税金が最も少なくなる方法を検討します。
4.受け取りフェーズ:
・60歳以降に、積み立てた資産を受け取る段階です。
・戦略: 一時金、年金、併用といった受け取り方の中から、最適な方法を選択します。
この全体像を意識し、各フェーズで適切な戦略を立てることで、iDeCoの恩恵を最後まで享受できます。
長期・積立・分散投資の原則をiDeCoで実践する具体例

iDeCoの運用を成功させるためには、投資の王道である「長期・積立・分散」の原則を実践することが不可欠です。
長期:時間を味方につける戦略
実践例:
・20代や30代といった若いうちからiDeCoを始め、60歳までの長い期間、掛金を拠出し続けます。
・市場が下落しても慌てて売却せず、長期的な視点で回復を待ちます。
なぜ有効?:
・投資期間が長ければ長いほど、複利効果(利益が利益を生む効果)が最大限に発揮されます。
・一時的な市場の変動を乗り越え、資産を増やすことができます。
積立:リスクを平準化する戦略
実践例:
・毎月、決まった金額(掛金)を自動で積み立てます。
・毎月の拠出以外に、年単位で拠出スケジュールを設定し、特定の月にまとめて拠出する「年単位拠出」も活用できます。
なぜ有効?:
・毎月定額を投資することで、相場が高い時には少なく、安い時には多く買う「ドルコスト平均法」の恩恵を受けられます。
・高値掴みのリスクを避け、平均購入単価を平準化できます。
分散:リスクを抑える戦略
実践例:
・特定の銘柄や資産クラスに集中せず、複数の運用商品を組み合わせます。
・「全世界株式インデックスファンド」など、これ1本で世界の多くの企業や地域に分散投資できる商品を選びます。
なぜ有効?:
・もし一つの資産が不調でも、他の資産がカバーする効果が期待でき、ポートフォリオ全体のリスクを抑えられます。
・「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の鉄則を実践できます。
掛金拠出から受け取りまでの一貫した戦略

各フェーズで、上記3つの原則を意識した一貫した戦略を立てましょう。
加入・運用フェーズ(20代〜50代)
【最新情報】2025年制度大幅拡充: 2025年には大幅な制度改正が予定されており、より多くの資産形成が可能になります。
・掛金上限額の大幅引き上げ(決定済み):企業年金がない会社員は、月額2.3万円から月額6.2万円に引き上げ。自営業者は月額6.8万円から月額7.5万円に引き上げ。
・加入可能年齢の拡大(決定済み):現行65歳未満から70歳未満へ拡大。 これにより節税効果も大幅に拡大し、より手厚い老後資金準備が可能になります。
戦略: 「長期・積立・分散」を徹底する
・掛金: 無理のない範囲で、可能な限り掛金の上限額まで拠出することを目指しましょう。所得控除による節税効果が最大化されます。
・運用商品: 低コストのインデックスファンドを中心に据え、安定的な資産成長を狙います。
・見直し: 運用商品の見直し(スイッチング)は、頻繁に行わず、年に1回など、定期的にポートフォリオのバランスを確認する程度に留めましょう。
受け取り準備フェーズ(50代後半〜)
戦略: 「リスクを抑える」戦略にシフトする
・運用商品: 老後まで期間が短くなるため、個人の状況や市場環境に応じて、株式の比率を減らし、債券や元本確保型商品の比率を増やす「リスク調整」を検討しましょう。
・スイッチングの活用: 運用商品の見直し(スイッチング)を積極的に行い、資産の目減りを防ぐことを優先します。
・出口戦略の検討: 60歳以降の受け取り方(一時金・年金・併用)や、受け取り時期(60歳からか、70歳まで繰り下げるか)を具体的に検討し始めましょう。
受け取りフェーズ(60代以降)
戦略: 「税負担を抑えて、長く受け取る」
【重要】2026年税制改正の大きな影響: 2026年1月1日以降、iDeCoの一時金受け取りに関する税制が変更されます。現在の「5年ルール」が「10年ルール」に変更され、iDeCoと退職金の両方で退職所得控除を最大限活用するには、受け取り時期を10年以上空ける必要があります。 この変更により、受け取り戦略の根本的な見直しが必要になる可能性があります。
・受け取り方: ご自身の退職金や公的年金受給額などを考慮し、最も税金が少なくなる方法を選択します。
・受け取り時期: 60歳以降も運用を継続し、非課税運用益をさらに長く享受することで、資産寿命を延ばす戦略も有効です。
まとめ:iDeCoの一貫戦略で老後資金を確実に築く
iDeCoは、掛金拠出から運用、受け取りまで、一貫した戦略を持つことで、その恩恵を最大限に活かせます。
・「長期・積立・分散」の3原則を愚直に実践することが、iDeCo運用を成功させるための最大の秘訣です。
・ライフステージに応じて戦略を見直し、運用商品の選択や受け取り方を調整しましょう。
・2025年、2026年の制度改正を理解し、「掛金拠出」と「受け取り」の戦略をアップデートすることが、より豊かな老後を築くための鍵となります。
これらのポイントを押さえて、iDeCoを「ほったらかし」ではなく、賢く管理するためのツールとして使いこなし、あなたの豊かな老後への道を着実に築いていきましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。