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iDeCoは拠出から受取りまで一貫した戦略が必要|2027年の掛金引上げと退職所得控除10年ルールを踏まえた設計

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金の所得控除・運用益の非課税・受取時の税制優遇という3つのメリットが注目されますが、60歳まで原則引き出せないという流動性の制約や、受取時の退職所得控除ルールの変更(2026年1月〜)も含めて総合的に理解しておく必要があります。この記事では、2027年1月から実施される掛金上限の引上げと加入年齢の拡大、2026年1月から適用される退職所得控除の「10年ルール」を踏まえたうえで、拠出から受取りまでの一貫した戦略の立て方を解説します。
2027年1月施行|iDeCoの掛金上限引上げと加入年齢拡大

2025年6月に成立した年金制度改正法に基づき、2026年12月1日施行(2027年1月26日引落分から適用)でiDeCoの制度が拡充されます。
掛金上限額の引上げ
・自営業者・フリーランス(第1号被保険者):月額6.8万円→月額7.5万円(国民年金基金等との合算)
・企業年金のない会社員:月額2.3万円→月額6.2万円(約2.7倍に増加)
・企業年金のある会社員・公務員:企業年金等との合計で月額6.2万円まで(iDeCoの2万円上限が撤廃)
・専業主婦(夫)(第3号被保険者):変更なし(月額2.3万円のまま)
特に企業年金のない会社員の引上げ幅が大きく、年間の所得控除額は最大74.4万円(月6.2万円×12か月)に拡大します。
出典:出典:厚生労働省「令和7年度税制改正に関する参考資料」(PDF)
加入可能年齢の拡大
現行の65歳未満から70歳未満に拡大されます。ただし、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないことが条件です。65歳以降も働き続ける方は、より長期間にわたって掛金の所得控除メリットを受けられるようになります。
2026年1月施行|退職所得控除の「5年ルール」が「10年ルール」に

iDeCoの受取戦略に深く関わるのが、2026年1月1日から適用される退職所得控除のルール変更です。
変更の内容
iDeCoを一時金で受け取った後に会社の退職金を受け取る場合、従来は受取間隔が5年以上あれば、それぞれに退職所得控除をフルで適用できました。改正後は、この間隔が10年以上に延長されます(「前年以前9年以内」にDC一時金を受け取っていた場合、退職金の退職所得控除が調整される仕組み)。
具体的な影響
たとえば、60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳で会社の退職金を受け取るケースでは、改正前は5年以上の間隔があるためそれぞれに控除がフル適用されましたが、改正後は10年未満のため退職金側の控除額が調整(減額)され、税負担が増加します。一方、退職金を先に受け取りその後にiDeCo一時金を受け取る場合は「19年ルール」が適用され、こちらは変更ありません。
受取戦略の見直しが必要
この改正により、iDeCoの受取方法は以下の選択肢を比較検討する必要があります。
・iDeCo一時金と退職金の受取間隔を10年以上空ける(加入年齢が70歳に拡大されたことで現実的になった)
・iDeCoを年金形式で受け取る(公的年金等控除が適用されるが、公的年金と合算して雑所得として課税される)
・一時金と年金の併用で税負担を最小化する
iDeCoの「60歳まで引き出せない」リスクを正しく理解する

iDeCoの税制メリットは大きい一方で、60歳まで原則として資金を引き出せないという制約があります。この点を軽視すると、ライフプランの変化に対応できなくなるリスクがあるでしょう。
流動性リスクが高いケース
・住宅購入や転職など、まとまった資金が必要になる可能性がある場合
・自営業者やフリーランスで収入が不安定な場合(傷病手当金がないため、病気やケガで収入が途絶えるリスクが高い)
・生活防衛資金(生活費の6か月分程度)が確保できていない状態でiDeCoに掛金を拠出している場合
iDeCoとNISAの使い分け
NISAはいつでも売却・引出しが可能であり、iDeCoにはない流動性があります。生活防衛資金が十分でない場合や、60歳までに資金が必要になる可能性がある場合は、まずNISAを優先し、余裕資金でiDeCoに拠出するという順序が合理的です。iDeCoの所得控除メリットは大きいですが、「引き出せないことで生活が苦しくなる」本末転倒な状況は避ける必要があります。
拠出から受取りまでの一貫した戦略

iDeCoの恩恵を最大化するには、拠出・運用・受取りの各段階を一貫した視点で設計することが重要です。
拠出段階:無理のない掛金設定
・生活防衛資金を確保したうえで、無理のない範囲で掛金を設定する
・2027年1月以降の上限引上げ後は、所得控除のメリットを最大化するために可能な範囲で増額を検討する
・掛金は年1回変更可能。ライフステージの変化に合わせて柔軟に調整する
運用段階:低コストのインデックスファンドを軸にする
・iDeCoは長期運用が前提のため、信託報酬の低いインデックスファンドを中心に据えるのが合理的
・運用商品の見直し(スイッチング)は年1回程度にとどめ、頻繁な売買を避ける
・口座管理手数料は金融機関によって異なる(月171円〜数百円)。長期では累計で数万円の差になるため、手数料の安い金融機関を選ぶことも重要
受取段階:退職所得控除の10年ルールを踏まえて設計する
・退職金の支給時期と金額を確認し、iDeCoの受取時期・方法との組み合わせで税負担が最小になる設計を検討する
・年金形式で受け取る場合は、公的年金と合算した雑所得の金額を確認し、公的年金等控除の範囲内に収まるかを試算する
・受取方法の選択は税負担に数十万円〜100万円超の差を生じさせるケースもあるため、退職前に具体的なシミュレーションを行うことが欠かせない
まとめ|iDeCoは「入口」だけでなく「出口」まで設計する
iDeCoは掛金の所得控除という「入口」のメリットが注目されがちですが、受取時の税制(退職所得控除・公的年金等控除)まで含めた「出口」の設計が資産の手取り額を大きく左右します。
・2027年1月から掛金上限が引上げ。企業年金なし会社員は月2.3万円→月6.2万円に拡大
・加入可能年齢は70歳未満に拡大(2027年1月〜)
・2026年1月から退職所得控除の「5年ルール」が「10年ルール」に変更。iDeCo一時金→退職金の受取間隔が10年未満だと控除が調整される
・60歳まで引き出せない制約を踏まえ、生活防衛資金を確保したうえで掛金を設定する
・流動性を重視する場合はNISAを優先し、余裕資金でiDeCoに拠出する順序が合理的
・受取方法(一時金・年金・併用)の選択は税負担に数十万円以上の差を生じさせるため、退職前のシミュレーションが不可欠
まずは自身の退職金の見込み額とiDeCoの資産残高を確認し、受取時期と方法の組み合わせを具体的に検討してみましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した記事です。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



