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譲渡所得とは?不動産や相続財産を売却したときの計算方法と知っておくべき特例

不動産やゴルフ会員権などの資産を売却して利益が出た場合、その利益には所得税がかかります。これが譲渡所得です。譲渡所得の計算では、「いくらで取得したか(取得費)」が税額に直結するため、取得費が不明な場合や相続・贈与で取得した場合には特別なルールを理解しておく必要があります。特に相続した不動産を売却するケースでは、取得費・取得日が被相続人から引き継がれる点や、相続税の取得費加算特例(期限:相続開始から3年10か月以内)を知らないと、本来使える節税策を見逃す可能性がある点にも注意が必要です。この記事では、譲渡所得の基本的な計算方法と、相続・贈与財産の売却時に知っておくべきルールを整理していきます。
譲渡所得の基本的な計算方法

譲渡所得の金額は、以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額
各要素の意味
・譲渡価額:資産を売却して受け取った金額
・取得費:購入代金、購入時の仲介手数料、設備費など、資産の取得にかかった費用。建物の場合は減価償却費相当額を差し引いた金額
・譲渡費用:売却時の仲介手数料、印紙税など、売却のために直接かかった費用
・特別控除額:総合課税の譲渡所得には年間最高50万円の特別控除が適用される
出典:国税庁 No.3152「譲渡所得の計算のしかた(総合課税)」
総合課税と分離課税の違い
譲渡所得は、売却した資産の種類によって課税方式が異なります。
・総合課税:ゴルフ会員権、美術品、貴金属など、土地・建物・株式以外の資産の譲渡所得。給与所得などと合算して課税される
・分離課税:土地・建物の譲渡所得は申告分離課税。他の所得とは分けて、所定の税率で課税される。株式等の譲渡所得も分離課税
所有期間による税負担の違い|短期と長期の判定方法

譲渡所得は所有期間が5年を超えるかどうかで「長期」と「短期」に分かれ、税負担に差が生じます。
所有期間の起算点は課税方式で異なる
所有期間のカウント方法は、課税方式によって異なる点に注意が必要です。
・総合課税:取得日の翌日から譲渡した日までで計算
・分離課税(土地・建物):取得日の翌日から譲渡した年の1月1日までで計算
分離課税の場合は「譲渡した日」ではなく「譲渡した年の1月1日」が基準となるため、実際の所有期間が5年を超えていても、1月1日時点で5年以下であれば短期譲渡所得として扱われます。たとえば2020年4月に取得した不動産を2025年6月に売却した場合、実際には5年2か月所有していますが、2025年1月1日時点では4年9か月のため短期譲渡所得に該当します。
短期と長期の税負担の違い
・短期譲渡所得(所有期間5年以下):譲渡所得の全額が課税対象
・長期譲渡所得(所有期間5年超):総合課税では譲渡所得の2分の1が課税対象。分離課税(土地・建物)では所得税15%+住民税5%の固定税率(短期は所得税30%+住民税9%)
同じ年に短期と長期の両方の譲渡益がある場合、総合課税の50万円特別控除は先に短期譲渡所得から差し引き、残額があれば長期譲渡所得から控除します。短期の方が税負担が重いため、短期から先に控除するルールになっています。
相続・贈与で取得した財産を売却するときの特別ルール

相続や贈与で取得した財産を売却する場合、購入した場合とは異なるルールが適用されます。
取得費と取得日は被相続人・贈与者から引き継ぐ
相続や贈与で取得した資産の取得費と取得日は、被相続人や贈与者がその資産を取得したときの金額と日付をそのまま引き継ぎます。相続や贈与を受けた日ではありません。
出典:国税庁 No.3270「相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期」
これは実務上、所有期間の長期・短期の判定にも影響します。たとえば、親が30年前に購入した不動産を相続して1年後に売却した場合、所有期間は相続した時点からではなく親が購入した時点から起算するため、長期譲渡所得として扱われます。
取得費が不明な場合の「5%ルール」に注意
相続した古い不動産などで、被相続人がいくらで購入したか分からないケースは少なくありません。この場合、売却価額の5%を取得費とすることができます(概算取得費)。ただし、この5%ルールは取得費が著しく低くなるケースが多く、譲渡所得が膨らんで税負担が重くなるリスクがあります。
たとえば、3,000万円で売却した場合、概算取得費は3,000万円×5%=150万円にしかなりません。仮に実際の購入価格が1,500万円であれば、取得費の差額1,350万円がそのまま課税対象の増加につながります。相続した不動産を売却する可能性がある場合は、被相続人の購入時の契約書や領収書を生前のうちに探しておくことが重要です。
相続税の取得費加算特例|3年10か月以内の売却で適用
相続により取得した財産を、相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始から3年10か月以内)に売却した場合、支払った相続税額の一部を取得費に加算できる特例があります。これにより譲渡所得が減少し、所得税を抑えることができます。
この特例は期限を過ぎると一切適用できないため、相続税を支払い、かつ相続財産の売却を検討している場合は、3年10か月の期限を意識して売却時期を判断することが重要です。
まとめ|譲渡所得は「取得費」と「所有期間」の確認が最重要
譲渡所得の税額は取得費の金額と所有期間によって大きく変わります。特に相続・贈与で取得した財産を売却する場合は、一般的な購入とは異なるルールが適用されるため注意が必要です。
・譲渡所得の計算式は「譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額」
・総合課税の特別控除は年間最高50万円。短期譲渡所得から先に控除する
・所有期間5年超で長期譲渡所得。総合課税は2分の1課税、分離課税は税率が軽減される
・分離課税の所有期間は「譲渡した年の1月1日」が基準。実際の所有期間とずれる場合がある
・相続・贈与で取得した資産の取得費・取得日は被相続人・贈与者から引き継ぐ
・取得費不明の場合は売却価額の5%が取得費になり、税負担が重くなる。購入時の契約書を早めに探す
・相続税の取得費加算特例は相続開始から3年10か月以内の売却が条件。期限を過ぎると適用不可
相続した不動産の売却を検討している場合は、取得費の確認と売却時期の判断が税額に直結します。購入時の資料の有無を早めに確認し、取得費加算特例の期限も考慮したうえで判断しましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



