社会保障
第3号被保険者とは?年金額・届出の注意点・離婚時の年金分割・制度縮小の動向をわかりやすく解説

第3号被保険者とは、会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、年収130万円未満であれば国民年金保険料の自己負担なく老齢基礎年金を受給できる制度です。厚生労働省の統計によると、令和5年度末時点の第3号被保険者数は686万人で、前年度から36万人(4.9%)減少しており、社会保険の適用拡大に伴い縮小傾向が続いています。
保険料負担がないメリットがある一方で、将来の年金額が老齢基礎年金のみになる点や、届出漏れによる未納期間の発生、離婚時の経済的リスクなど、事前に理解しておくべき注意点があります。
第3号被保険者の要件と該当するケース

国民年金の被保険者は第1号(自営業者・学生等)、第2号(会社員・公務員)、第3号(第2号の被扶養配偶者)の3種類に分かれています。第3号被保険者に該当するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
第3号被保険者の4つの要件
まず、配偶者が厚生年金保険に加入している第2号被保険者であることが前提となります。自営業者(第1号被保険者)の配偶者は第3号には該当しません。次に、年齢が20歳以上60歳未満であること、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)であること、そして原則として日本国内に居住していることも要件です。事実婚の配偶者も対象に含まれますが、健康保険の被扶養者と異なり、子や親などの親族は第3号被保険者にはなれません。
第3号から外れるケース
収入が130万円以上になった場合のほか、配偶者が退職・独立して第2号被保険者でなくなったとき、離婚したとき、配偶者が65歳に達して老齢年金の受給権を取得したときなどに、第3号の資格を喪失します。失業給付を日額3,612円(月額108,334円)以上受給している期間や、出産手当金・傷病手当金を受給している期間も原則として第3号には該当しない点に注意が必要です。
第3号被保険者の年金額と保障の限界

第3号被保険者は保険料を負担せずに老齢基礎年金の受給資格を得られる反面、将来の年金額には構造的な上限が存在します。
受け取れるのは老齢基礎年金のみ
第3号被保険者として40年間加入した場合の老齢基礎年金は、令和7年度で年間831,700円(月額約69,300円)が上限となります。厚生年金の上乗せがないため、配偶者の年金と合算してようやく老後の生活費を賄う設計になっている点を認識しておく必要があります。厚生労働省が公表する「モデル年金」は、夫婦2人分の合算額で月額約23万円(令和7年度)とされていますが、配偶者に先立たれた場合や離婚した場合は、老齢基礎年金のみの生活設計を迫られる可能性があるのです。
傷病手当金・出産手当金の対象外
第3号被保険者は健康保険上も被扶養者の立場にあるため、傷病手当金や出産手当金は受給できません。病気やケガで働けなくなった場合の所得保障が公的制度ではカバーされないことを意味しており、配偶者の収入に依存する度合いが高い状態といえるでしょう。自ら厚生年金に加入して働いた場合は、これらの給付が受けられるうえ、将来の年金額も上乗せされるため、「保険料負担がない=得」とは一概にいえない構造になっています。
届出漏れによる年金未納リスク

第3号被保険者の届出は配偶者の勤務先を通じて日本年金機構に提出しますが、届出が漏れると保険料未納期間が発生し、将来の年金額に影響を及ぼす場合があります。
届出が遅れた場合のペナルティ
届出が遅れても原則として事実発生日に遡って第3号と認定されます。しかし、届出が2年以上遡る場合は、届出月から2年を超える期間が「3号未納期間」として扱われ、老齢基礎年金の計算に反映されなくなることがあります。特に配偶者の転職時に届出が漏れるケースが発生しやすく、転職のたびに新しい勤務先経由で届出が行われているか確認することが重要です。
届出漏れが起きやすいケース
配偶者の転職先で届出手続きが遅れた場合、配偶者が共済組合から厚生年金に移った場合(制度変更に伴う届出漏れ)、海外赴任から帰国した場合などが典型的な例として挙げられます。年金記録に空白期間がないかどうかは、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で定期的に確認しておくことをおすすめします。
離婚時の年金分割と経済的リスク

第3号被保険者が離婚した場合の年金額は、年金分割制度の活用次第で変わります。離婚後の経済的リスクを理解するうえで、2つの年金分割制度を把握しておくことが欠かせません。
3号分割と合意分割の違い
3号分割は、平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間について、配偶者の合意なしに厚生年金記録の2分の1を分割できる制度です。一方、合意分割は平成19年4月以降の離婚を対象に、婚姻期間中の厚生年金記録を最大50%まで分割する制度で、当事者の合意または裁判手続きが必要となります。合意分割を請求した場合、3号分割の対象期間も同時に分割されます。
年金分割の請求期限
年金分割の請求期限は、従来は離婚日の翌日から2年以内とされていました。2025年6月に成立した年金制度改正法により、2026年4月1日以降の離婚については請求期限が5年に延長されています。ただし、2026年3月31日以前の離婚については従来どおり2年以内のままである点に注意が必要です。また、年金分割はあくまで婚姻期間中の厚生年金記録(報酬比例部分)を分割するものであり、老齢基礎年金の額自体は変わりません。分割後に受け取れる金額を過大に見積もらないことが、離婚後の生活設計では重要でしょう。
社会保険適用拡大と第3号被保険者の縮小

2025年6月に成立した年金制度改正法により、社会保険の適用拡大がさらに進められることになりました。この流れは第3号被保険者制度にも影響を及ぼします。
適用拡大のスケジュール
2026年10月をめどに、短時間労働者の社会保険加入における賃金要件(月額8.8万円)が撤廃される予定です。さらに、企業規模要件(現行51人以上)も2027年10月から段階的に撤廃され、最終的にはすべての企業が対象となる見通しとなっています。週20時間以上働いていれば企業規模にかかわらず厚生年金に加入する形になるため、パート勤務で第3号にとどまること自体が難しくなる流れが加速するでしょう。
制度廃止の議論と今後の方向性
厚生労働省の社会保障審議会年金部会では、第3号被保険者制度を「将来的に縮小していく方向性」で認識が共有されています。ただし、今回の2025年改正では制度の廃止は見送られ、本格的な議論は次回以降の財政検証(5年後)に持ち越される見通しです。現時点では、まず社会保険の適用拡大を進めることで第3号被保険者を段階的に縮小し、制度のあり方を議論していくという方針が示されています。
第3号被保険者にとどまるリスクと自ら働く場合のメリット

保険料負担のない第3号被保険者には一見メリットが多いようにみえますが、家計全体でとらえると見過ごせないリスクもあります。
第3号にとどまるリスク
老齢基礎年金のみでは月額約69,300円が上限であり、配偶者と死別・離別した場合の経済的リスクが高まります。傷病手当金・出産手当金が受給できないため、病気・出産時の所得保障に公的制度の空白が生じることも問題です。また、社会保険の適用拡大により、将来的に第3号被保険者制度自体が縮小・廃止される可能性がある点は、長期の家計計画を考えるうえで無視できません。
厚生年金に加入して働く場合のメリット
自ら厚生年金に加入すれば、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金が上乗せされ、将来の年金額を増やすことが可能です。仮に月収10万円で20年間働いた場合、老齢厚生年金が年間約13万円上乗せされ、生涯では累計で数百万円の差になるケースもあります。加えて、傷病手当金(給与の約2/3・最長1年6か月)や出産手当金(産前42日・産後56日・給与の約2/3)の受給権が発生し、公的保障の範囲が広がるでしょう。保険料負担は発生しますが、事業主との折半であり、月収10万円の場合の本人負担は月額約1.4万円程度です。保険料負担と将来の給付増加・保障充実を天秤にかけて判断することが重要といえます。
まとめ:公的保障の全体像を把握した家計設計を
第3号被保険者制度は保険料を負担せずに老齢基礎年金を受け取れる仕組みですが、年金額は老齢基礎年金のみ(令和7年度で年間831,700円)が上限であり、傷病手当金や出産手当金の対象外となる点に注意が必要です。届出漏れによる未納期間の発生を防ぐため、「ねんきんネット」などで年金記録を定期的に確認しましょう。離婚時には年金分割制度(3号分割・合意分割)を活用できますが、分割される金額は厚生年金の報酬比例部分に限られるため、過大な期待は禁物です。社会保険の適用拡大が進む中、第3号被保険者にとどまることのメリットとリスクを家計全体で比較し、将来の年金額・公的保障の範囲・保険料負担を総合的に判断することが、長期的な家計の安定につながります。
出典:厚生労働省「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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