税金(一般的な内容)
雑損控除とは?災害・盗難で使える税制優遇と災害減免法との選び方をわかりやすく解説

災害や盗難で住宅・家財に損害を受けた場合、確定申告で「雑損控除」を適用すれば所得税・住民税の負担を軽減できます。
さらに災害の場合は「災害減免法」による所得税の軽減免除も選択肢に加わり、どちらか有利な方を選ぶことが可能です。
ここでは、雑損控除と災害減免法の制度内容・計算方法・選択判断の考え方に加え、被災者生活再建支援制度など公的支援の全体像を整理し、万が一の備えに役立つ情報をまとめています。
雑損控除の基本的な仕組み

雑損控除は、災害・盗難・横領によって生活用資産に損害を受けた場合に、一定額を所得から差し引ける所得控除の制度です。
年末調整では申告できないため、適用を受けるには確定申告が必要となります。
対象となる損害の原因
国税庁のタックスアンサー(No.1110)によると、雑損控除の対象となる損害の原因は次の5つに限定されています。
・震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
・火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
・害虫などの生物による異常な災害
・盗難
・横領
詐欺や恐喝による損害は雑損控除の対象外となる点に注意が必要です。
投資詐欺やオレオレ詐欺などの被害は、雑損控除では救済されません。
対象となる資産の範囲
雑損控除の対象は、納税者本人または生計を一にする親族(総所得金額等が48万円以下、令和7年分からは58万円以下)が所有する生活に通常必要な資産に限られます。
具体的には住宅、家具、家電、衣服、書籍などの生活用財産が該当します。
一方、以下の資産は対象外です。
・事業用の固定資産や棚卸資産(事業所得の必要経費として処理)
・別荘など趣味・娯楽・保養目的の不動産
・1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、書画、骨董品など
雑損控除の計算方法

雑損控除の金額は、次の2つの計算式のうち、いずれか多い方の金額になります。
・計算式①:(損害金額+災害等関連支出の金額−保険金等の額)−総所得金額等×10%
・計算式②:(災害関連支出の金額−保険金等の額)−5万円
損害金額の算定方法
「損害金額」は、損害を受けた時点の直前における資産の時価をもとに計算した損害の額を指します。
住宅や家財については、国税庁が公表している「損失額の合理的な計算方法」を使うこともできるため、必ずしも個別に時価を調べる必要はありません。
また、損害を受けた資産が減価償却資産に該当する場合は、取得価額から減価償却費の累積額を差し引いた金額を基礎として損害金額を計算する方法も選択可能です。
災害等関連支出とは
「災害等関連支出」には、被災した住宅や家財の取り壊し・除去費用、がれきの撤去費用、盗難・横領による原状回復費用などが含まれます。
これらの支出があった場合は領収書を保管しておきましょう。確定申告の際に領収書の添付または提示が求められるためです。
保険金等の差し引き
火災保険や地震保険から受け取った保険金、損害賠償金などがある場合は、損害金額から差し引く必要があります。
保険金等はまず損害金額から差し引き、損害金額を超える部分がある場合に限り災害等関連支出から差し引くという順序が定められています。
保険金が損害金額を上回る場合、雑損控除の金額はゼロとなるケースもあり得るでしょう。
控除しきれない場合の繰越控除

損害が大きく、その年の所得金額から雑損控除の全額を差し引ききれない場合は、翌年以後3年間にわたって繰り越して控除できます。
東日本大震災や、令和5年4月1日以後に発生する特定非常災害による損失については、繰越期間が5年間に延長されています。
また、雑損控除は他の所得控除に先立って控除される仕組みです。
医療費控除や社会保険料控除など他の所得控除よりも優先的に差し引かれるため、翌年以降に繰り越す金額を正確に把握しておく必要があります。
災害減免法による所得税の軽減免除

雑損控除とは別に、災害で住宅や家財に損害を受けた場合は「災害減免法」による所得税の軽減免除を受けることも可能です。
国税庁のタックスアンサー(No.1902)によると、納税者の選択によりどちらか有利な方を選べますが、併用はできません。
災害減免法の適用要件
災害減免法の適用を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・住宅または家財の損害金額(保険金等を差し引いた後の額)が、時価の2分の1以上であること
・災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下であること
・雑損控除の適用を受けないこと
対象となる災害の範囲は雑損控除とほぼ同じですが、盗難・横領は災害減免法の対象外です。
盗難や横領による被害を受けた場合は、雑損控除のみが選択肢となります。
所得金額に応じた軽減・免除の内容
災害減免法では、所得金額の合計額に応じて、所得税が次のように軽減または免除されます。
・所得金額500万円以下:所得税の全額が免除
・所得金額500万円超〜750万円以下:所得税の2分の1が軽減
・所得金額750万円超〜1,000万円以下:所得税の4分の1が軽減
出典:国税庁「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除」
雑損控除と災害減免法の選択判断の考え方

両制度にはそれぞれ特徴があり、損害の大きさや所得の水準によって有利な方が異なります。判断にあたっては、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
雑損控除が有利になりやすいケース
雑損控除には所得制限がなく、損害額が大きい場合は3年間(特定非常災害は5年間)の繰越控除も活用できます。
加えて、住民税にも適用されるため、所得税と住民税の両方で負担軽減を受けられるのが特徴です。
そのため、次のようなケースでは雑損控除を選ぶ方が有利になる傾向にあります。
・損害額が大きく、1年では控除しきれない場合
・所得金額が1,000万円を超える場合(災害減免法は適用不可)
・住民税の負担軽減も含めて考えたい場合
災害減免法が有利になりやすいケース
災害減免法は所得税額を直接軽減・免除する仕組みで、所得から差し引く雑損控除とは効果の出方が異なる点が特徴です。
所得500万円以下であれば所得税が全額免除されるため、損害額が比較的小さくても相当の効果が見込めます。
ただし、繰越控除はできず、住民税には適用されない点がデメリットとなります。
そのため、次のようなケースで有利になりやすいでしょう。
・所得が500万円以下で、その年の所得税を全額免除したい場合
・損害額が所得の10%を下回る程度で、雑損控除では控除額が少額にとどまる場合
判断に迷ったらどちらも試算してみる
実際にどちらが有利になるかは、所得金額、損害金額、保険金の受取額、翌年以降の所得見込みなど複数の要素によって変わります。
確定申告書を作成する際に、両方のパターンで試算してみるのが確実な方法です。
なお、確定申告で一度雑損控除を選択した後でも、更正の請求により災害減免法に変更することも認められています。
出典:国税庁「No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)」
税制以外の公的支援制度も把握しておく

災害で住宅に被害を受けた場合、税制上の優遇だけでなく、複数の公的支援制度を組み合わせることで生活再建の負担を軽減できます。
雑損控除や災害減免法の検討と並行して、以下の制度も確認しておきましょう。
被災者生活再建支援制度
自然災害により住宅が全壊・大規模半壊などの被害を受けた世帯に対して支援金が支給される制度です。
内閣府の公表資料によると、支給額は「基礎支援金」と「加算支援金」の合計で決まります。
・全壊世帯:基礎支援金100万円+加算支援金(建設・購入200万円、補修100万円、賃借50万円)→最大300万円
・大規模半壊世帯:基礎支援金50万円+加算支援金→最大250万円
・中規模半壊世帯:加算支援金のみ→最大100万円
単身世帯の場合は、上記金額の4分の3が支給されます。
この支援金は使途の制限がなく、生活再建に幅広く活用できる点が特徴です。
なお、支援金は非課税であり、雑損控除の計算上「保険金等」には含まれません。
災害援護資金の貸付
災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき、住宅や家財に被害を受けた世帯に対して市町村から低利で貸し付けられる制度です。
貸付限度額は被害の程度に応じて150万円〜350万円で、据置期間を含めた返済期間は最長10年間となっています。
住宅金融支援機構(災害復興住宅融資)
被災した住宅の建設・購入・補修を行う場合に、住宅金融支援機構から低金利で融資を受けることも選択肢の一つです。
建設の場合の基本融資額は1,650万円が上限で、通常の住宅ローンよりも金利が優遇されます。
雑損控除の確定申告で準備すべきもの

雑損控除を適用するための確定申告では、損害の内容や金額を正確に把握し、必要書類を準備しておくことが求められます。
必要書類と手続きの流れ
確定申告書に雑損控除に関する事項を記載したうえで、以下の書類を準備します。
・災害等に関連したやむを得ない支出の金額の領収書(添付または提示)
・被害を受けた資産の取得時期・取得価額がわかる資料(不動産の場合は登記情報なども参考に)
・保険金や損害賠償金の受取額がわかる書類
・罹災証明書(市区町村が発行、損害金額の算定や各種公的支援の申請にも必要)
罹災証明書は、雑損控除の確定申告だけでなく、被災者生活再建支援金の申請や各種減免手続きにも必要となります。
被災後は速やかに市区町村の窓口へ申請することが重要です。
損害金額を合理的に計算する方法
住宅や家財の時価を正確に把握するのが難しい場合、国税庁が公表している「損失額の合理的な計算方法」を活用可能です。
この方法では、住宅の構造(木造・鉄骨造など)や床面積、建築年数から「取得価額×経過年数に応じた減価割合」で損害前の評価額を算出し、被害割合を乗じて損失額を計算する仕組みとなっています。
家財についても、世帯主の年齢や家族構成から「家族構成別家庭用財産評価額」をもとに概算する方法が認められています。
被災直後は混乱しがちですが、被害状況の写真撮影や、修繕・撤去にかかった費用の領収書の保管を最優先で行うようにしてください。
出典:国税庁「災害により被害を受けた住宅や家財、車両の損失額の合理的な計算方法」
まとめ:災害・盗難の被害は税制と公的支援を組み合わせて軽減する
雑損控除は災害・盗難・横領の被害を受けた際に活用できる所得控除で、所得制限がなく、住民税にも適用され、3年間の繰越控除が可能な制度です。
災害の場合は災害減免法との選択適用ができ、所得500万円以下であれば所得税が全額免除される可能性もあります。
どちらが有利になるかは個々の状況によって異なるため、確定申告の際に両方のパターンで試算して判断することが大切です。
加えて、被災者生活再建支援金や災害援護資金の貸付など、税制以外の公的支援制度もあわせて活用することで、経済的な負担を軽減しながら生活再建を進めることができるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



