公的年金制度
遺族年金はいくらもらえる?2028年制度改正の内容と必要保障額の考え方をわかりやすく解説

遺族年金は、一家の働き手が亡くなった際に残された家族の生活を支える公的年金制度で、令和8年度の遺族基礎年金は年額847,300円(子1人の加算243,800円)、中高齢寡婦加算は年額635,500円となっています。
2025年6月には「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部改正法」が成立し、2028年4月から遺族厚生年金の給付体系が見直されることが決まりました。
この記事では、遺族年金の現行制度の支給額に加え、2028年改正の具体的な内容、会社員と自営業者の保障格差、そして遺族年金を踏まえた民間生命保険の必要額の考え方を整理します。
遺族年金の種類と令和8年度の支給額

遺族年金には国民年金から支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」の2種類があり、亡くなった方の加入状況と家族構成によって受け取れる年金が異なります。
遺族基礎年金の支給額と対象者
遺族基礎年金は、18歳になった年度の3月31日までの子(または20歳未満で障害等級1級・2級の子)がいる配偶者、または子に支給される年金です。令和8年度の支給額は以下のとおりとなっています。
・基本額:847,300円(年額)
・子の加算:第1子・第2子 各243,800円
・子の加算:第3子以降 各81,300円
配偶者と子2人の世帯では、年額1,334,900円(月額約111,000円)を受け取れます。注意が必要なのは、18歳年度末までの子がいない場合、遺族基礎年金は支給されない点でしょう。子のいない配偶者や、子が成長して要件を満たさなくなった場合は、遺族基礎年金の受給権が消滅します。
出典:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
遺族厚生年金の支給額と中高齢寡婦加算
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた方が亡くなった場合に、その遺族に支給されます。支給額は亡くなった方の報酬比例部分の年金額の4分の3で、被保険者期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算される仕組みです。
受給できる遺族の範囲は、配偶者・子・父母・孫・祖父母の順に優先度が定められています。ただし、夫・父母・祖父母については55歳以上であることが条件で、実際の支給開始は60歳からとなっている点に留意が必要です。
また、子のいない40歳以上65歳未満の妻には中高齢寡婦加算として年額635,500円が加算されます。これは遺族基礎年金を受給できない期間の生活を支えるための制度で、65歳以降は妻自身の老齢基礎年金に切り替わります。
2028年4月施行|遺族厚生年金の制度改正の内容

2025年6月13日に成立した年金制度改正法により、2028年4月から遺族厚生年金の給付体系が見直されます。改正の背景には、共働き世帯の増加や男女の働き方の変化があり、従来の「妻は終身給付・夫は制限あり」という男女差を解消する方向で制度が再設計されました。
5年間の有期給付への移行と対象者
改正後は、18歳年度末までの子がいない遺族への遺族厚生年金が、原則として5年間の有期給付に変更されます。ただし、すべての受給者に一律に適用されるわけではなく、対象となる範囲は限定的です。
女性の場合、施行直後に有期給付の対象となるのは、2028年度末時点で40歳未満かつ子がいない方に限定されています。厚生労働省によると、新たに対象となる30代の女性は推計で年間約250人です。一方、2028年度に40歳以上の女性はこれまでと同様の取り扱いとなり、影響を受けることはありません。
男性の場合、現行制度では55歳未満で子がいない夫は遺族厚生年金を受給できませんが、改正後は60歳未満の夫も5年間の有期給付を受けられるようになります。対象者は推計で年間約1万6千人に上り、男性にとっては給付の拡充となる側面もあるでしょう。
有期給付加算と継続給付の仕組み
有期給付の期間中は、現行の遺族厚生年金額に「有期給付加算」が上乗せされ、給付額は現行の約1.3倍に増額されます。5年間の集中的な支援により、生活再建や就労準備を後押しする趣旨です。
5年間の有期給付が終了した後も、障害年金の受給権者や収入が十分でない方は「継続給付」として引き続き遺族厚生年金を受給できる仕組みとなっています。単身の場合、就労収入が年間122万円(2025年度税制改正を反映すると132万円見込み)以下であれば継続給付が全額支給され、収入の増加に応じて年金額が調整される仕組みになっています。
なお、以下に該当する方は今回の改正の影響を受ける対象外です。
・すでに遺族厚生年金を受給している方
・60歳以降に受給権が発生する方
・18歳年度末までの子を養育している間の給付内容
・2028年度に40歳以上の女性
子の加算額の増額
改正では遺族基礎年金の子の加算額も見直され、現行の年間約23.5万円(第1子・第2子)から年間約28万円に増額されます。第3子以降についても同額に引き上げられ、子の数に関係なく一律の加算額となる方向です。18歳年度末までの子がいる期間の給付内容は現行制度と変わりませんが、加算額の増額により年間の受給額は上がることになります。
会社員と自営業者で異なる遺族年金の保障格差

遺族年金の制度設計を理解するうえで重要なのは、厚生年金に加入している会社員・公務員と、国民年金のみの自営業者では、残された家族が受け取れる年金額に構造的な差がある点です。この差を把握することが、民間保険で備えるべき範囲を判断する出発点となります。
会社員の場合:遺族基礎年金+遺族厚生年金の二重保障
会社員や公務員が亡くなった場合、遺族は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給できる可能性があります。たとえば、平均標準報酬月額35万円・加入期間20年の会社員が亡くなり、配偶者と子2人が残された場合を考えてみましょう。
遺族基礎年金は年額1,334,900円(847,300円+243,800円×2人)です。遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3で計算され、加入期間が300月未満のため300月みなしが適用されます。概算では年額40万〜50万円程度が見込まれ、合計で年額170万〜180万円程度(月額約14万〜15万円)を受給できる計算です。
子が18歳年度末を迎えた後も、妻が40歳以上であれば中高齢寡婦加算(635,500円)が65歳まで加算されるため、遺族厚生年金と合わせて年額100万円前後の給付が続きます。
自営業者の場合:遺族基礎年金のみで子なし世帯は原則ゼロ
自営業者(国民年金第1号被保険者)が亡くなった場合、遺族が受け取れるのは遺族基礎年金のみで、遺族厚生年金はありません。さらに、18歳年度末までの子がいない場合は遺族基礎年金も受給できず、遺族年金が一切支給されないケースが発生します。
子がいない妻が受給できる可能性があるのは「寡婦年金」(夫の第1号被保険者期間が10年以上、婚姻期間10年以上の場合に60歳〜65歳の間支給)か「死亡一時金」(保険料納付36月以上で12万〜32万円の一時金)のいずれかに限られ、両方を同時に受け取ることはできません。
会社員と比較すると、自営業者の遺族への公的保障は限定的であり、特に子のいない世帯や子が成長した後の保障が手薄になりやすいのが特徴です。
遺族年金を踏まえた必要保障額の考え方

民間生命保険の必要性や適正な保障額を考える際には、遺族年金を含む公的保障の全体像を把握したうえで、不足する部分を見極めることが重要です。公的保障を考慮せずに生命保険の保障額を設定すると、過剰な保険料負担につながる可能性があります。
公的保障の全体像から逆算する手順
必要保障額を考える際の基本的な手順は、以下の3ステップになります。
・ステップ1:残された家族の今後の生活費・教育費・住居費の総額を見積もる
・ステップ2:遺族年金・高額療養費・遺族の勤労収入・預貯金など、保険以外で確保できる金額を差し引く
・ステップ3:差額が民間生命保険で備えるべき金額となる
ステップ2で見落としがちなのが、遺族年金の受給総額の大きさです。先ほどの会社員の例(配偶者+子2人)で仮に子が2人とも幼い場合、遺族基礎年金+遺族厚生年金を15年以上受給できるケースでは、受給総額が2,000万円を超えることも珍しくありません。さらに中高齢寡婦加算の期間を含めれば、公的年金だけでかなりの保障が確保されていることがわかります。
一方、自営業者の場合は遺族厚生年金がなく、子のいない期間は公的保障がほぼゼロになるため、会社員と同じ感覚で保険を検討すると保障が不足するリスクがあるでしょう。立場によって必要保障額が大きく変わる点を意識することが欠かせません。
遺族年金は非課税であることの意味
見落としやすいポイントとして、遺族年金は所得税・住民税が非課税である点が挙げられます。年額170万円の遺族年金を受給する場合、税金や社会保険料の負担がない分、同額の給与収入よりも実質的な手取りは多くなります。
必要保障額の計算では、遺族年金は額面どおりの手取りとして計算できるため、民間保険の保障額を上乗せしすぎないよう注意が必要でしょう。
2028年改正後の保険見直しで注意したいポイント

2028年の制度改正は、民間生命保険の見直しにも影響を与える可能性があります。改正内容を正しく理解したうえで、過不足のない保障設計を考えることが求められます。
有期給付化の影響を受ける世帯・受けない世帯
改正後も、子が18歳年度末になるまでの給付内容は変わらないため、子育て世帯への影響は限定的です。むしろ子の加算額が増額されることで、子がいる間の保障は手厚くなります。
影響が大きいのは、子が独立した後の40歳未満の配偶者です。従来は終身で遺族厚生年金を受給できた層が、5年間の有期給付に移行するため、5年間で生活を再建する計画が必要になります。ただし、収入が十分でない場合は継続給付の対象となるため、完全に打ち切られるわけではありません。
保険の見直しを検討する際には、「2028年4月以降に遺族厚生年金の受給権が発生するかどうか」「その時点での年齢と子の有無」によって影響度が変わるため、個別に確認することが大切です。すでに受給中の方や、2028年度に40歳以上の女性は影響を受けないため、現在の保障設計を急いで変更する必要はないでしょう。
自営業者は公的保障の薄さを再確認する
今回の改正は主に遺族厚生年金に関するものであり、自営業者の遺族基礎年金の仕組みは変わりません。子がいなければ遺族年金ゼロという構造は今後も続くため、自営業者の世帯では、会社員以上に民間の死亡保障や就業不能保障の必要性が高い状況に変わりはないでしょう。
反対に、会社員の世帯では遺族厚生年金による保障が一定水準確保されています。特に子育て期間中は遺族基礎年金と遺族厚生年金を合算した受給額が大きいため、必要以上に高額な生命保険に加入していないか、定期的な見直しが有効です。
まとめ|遺族年金の全体像を把握して適切な備えを
遺族年金は、令和8年度時点で遺族基礎年金の基本額が年額847,300円、中高齢寡婦加算が年額635,500円となっており、会社員の遺族であれば遺族厚生年金と合わせて相当額の保障が確保されています。2028年4月の制度改正では、子のいない若年配偶者への給付が5年間の有期給付に移行する一方、有期給付加算による増額や男性への給付拡大など、制度全体として男女差の解消と保障の再配分が図られます。
保険の必要額を考えるうえでは、遺族年金が非課税である点も含め、公的保障で確保できる範囲を正確に把握し、不足分だけを民間保険で補うという順序が基本です。会社員と自営業者では遺族年金の構造に差があるため、同じ家族構成でも必要保障額は異なるでしょう。制度改正の内容も踏まえつつ、世帯の状況に合った保障設計を検討してみてください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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