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介護費用はいくらかかる?公的制度の活用と老後資金との両立を解説

生命保険文化センターの2024年度調査によると、介護費用の総額は平均約542万円(一時費用47.2万円+月額9.0万円×55か月)にのぼります。
ただし、公的介護保険制度を活用すれば自己負担は原則1〜3割に抑えられ、高額介護サービス費による月額上限も設けられています。介護費用の備えを考える際は、まず公的制度でカバーできる範囲を正確に把握し、そのうえで不足額を見積もることが合理的な順序でしょう。
この記事では、介護費用の実態と公的制度の仕組み、親の介護と自分の老後資金を両立させるための考え方を解説します。
介護費用の平均額と介護期間の実態

介護に備えるうえで最初に確認すべきは、「どれくらいの期間」「どれくらいの費用」がかかるのかという実態です。公的な調査データをもとに見ていきましょう。
介護費用の平均額
生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護に要した費用の平均は以下のとおりです。
・一時費用(住宅改修・介護用ベッド購入など):平均47.2万円
・月々の費用(介護サービスの自己負担含む):平均9.0万円
・介護期間:平均55か月(4年7か月)
これらを合計すると、介護費用の総額は平均約542万円(47.2万円+9.0万円×55か月)になります。
ただし、介護を行った場所によって月額費用には差があり、在宅介護の月額平均は5.3万円、施設介護の月額平均は13.8万円と、約2.6倍の開きがある点に留意が必要です。
出典:生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」
介護期間のばらつきに注意
平均55か月という数字はあくまで平均値であり、実際の介護期間には幅があります。同調査では、4年を超えて介護した人が約4割を占めています。
平均寿命の延びに伴い、今後さらに介護期間が長期化する可能性も考慮に入れておくべきでしょう。
公的介護保険制度の自己負担割合と判定基準

介護保険制度では、要介護認定を受けた方が介護サービスを利用する際、費用の1割〜3割を自己負担する仕組みです。自己負担割合は、65歳以上の方の所得状況に応じて毎年判定されます。
自己負担割合の判定フロー
1割負担:本人の合計所得金額が160万円未満の場合、または住民税非課税の場合が該当します。65歳以上の約8割はこの区分です。
2割負担:本人の合計所得金額が160万円以上220万円未満で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で280万円以上(2人以上世帯で346万円以上)の場合に該当します。
3割負担:本人の合計所得金額が220万円以上で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身で340万円以上(2人以上世帯で463万円以上)の場合が対象です。なお、合計所得金額が220万円以上でも、この収入基準を満たさない場合は2割または1割負担となります。
自己負担割合は毎年8月1日に判定が更新され、「介護保険負担割合証」として通知される仕組みです。
また、40〜64歳の第2号被保険者は所得に関係なく1割負担となります。
居宅サービスの支給限度額
在宅で介護サービスを利用する場合、要介護度に応じた月額の支給限度額が定められています。1単位10円で換算した場合の目安は以下のとおりです。
・要支援1:約50,320円 ・要支援2:約105,310円
・要介護1:約167,650円 ・要介護2:約197,050円
・要介護3:約270,480円 ・要介護4:約309,380円
・要介護5:約362,170円
限度額の範囲内であれば1〜3割の自己負担でサービスを利用できます。
限度額を超えた分は全額自己負担となるため、ケアマネジャーと相談しながら限度額内に収まるケアプランを組むことが重要でしょう。
高額介護サービス費で月額の自己負担に上限がある

介護サービスの自己負担が高額になった場合、月額の上限を超えた分が払い戻される「高額介護サービス費」という制度があります。所得に応じた負担上限が設定されているため、際限なく自己負担が膨らむ心配はないでしょう。
所得区分ごとの負担上限額
高額介護サービス費の負担上限額は、世帯の所得状況に応じて以下の区分で設定されています。
・生活保護受給者:月額15,000円(個人)
・住民税非課税世帯(年金収入等80.9万円以下):月額15,000円(個人)/24,600円(世帯)
・住民税非課税世帯(上記以外):月額24,600円(世帯)
・一般的な住民税課税世帯(課税所得380万円未満):月額44,400円(世帯)
・課税所得380万円以上690万円未満:月額93,000円(世帯)
・課税所得690万円以上:月額140,100円(世帯)
たとえば、年金生活の住民税非課税世帯であれば、どれだけ介護サービスを利用しても月額の自己負担は最大24,600円に収まる計算です。
ただし、食費・居住費・福祉用具購入費・住宅改修費などは高額介護サービス費の対象外となる点に注意が必要でしょう。
高額医療・高額介護合算療養費制度
医療費と介護費の両方が発生している世帯では、年間(毎年8月〜翌年7月)の自己負担合計額が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度もあります。
医療保険と介護保険の窓口が異なるため申請が必要ですが、両方の負担が重い世帯にとって家計を守る制度といえるでしょう。
在宅介護と施設介護の費用比較

介護の場所選びは、費用に直結する判断です。在宅と施設それぞれの費用構造を理解し、家計への影響を見積もることが計画の第一歩になります。
在宅介護の費用目安
在宅介護の月額費用は平均5.3万円ですが、要介護度や利用するサービスの内容によって変動します。介護サービスの自己負担に加え、おむつ代や配食サービスなどの保険適用外の費用も別途発生する点に注意が必要です。
住宅改修費は対象費用20万円まで(自己負担1〜3割)、福祉用具購入費は年間10万円まで(同)が介護保険の対象となります。
施設介護の費用目安
施設の種類によって費用構造には差があるため、公的施設と民間施設それぞれの特徴を確認しておきましょう。
特別養護老人ホーム(特養)は原則要介護3以上が入所対象です。厚生労働省が示す自己負担の目安(要介護5・1割負担の場合)は、居住費・食費・日常生活費を含めて多床室で月額約10.7万円、ユニット型個室で月額約14.4万円となっています。
入居一時金は不要で、民間施設と比べて費用を抑えやすい反面、待機者が多く入所までに時間がかかる傾向があります。
介護老人保健施設(老健)はリハビリを目的とした施設で、介護サービス費のほかに居住費・食費の自己負担が必要です。在宅復帰を目指す施設のため、入所期間に制限があるケースが一般的でしょう。
民間の有料老人ホームは、施設や地域によって月額費用の幅が広く、入居一時金が必要な施設もあります。
サービスの充実度は高い傾向にありますが、介護保険施設と比べて費用負担は重くなりやすい点に注意が必要です。
特定入所者介護サービス費(補足給付)
特養や老健などの介護保険施設に入所している場合、所得と資産が一定以下の方は、食費・居住費に負担限度額が設定される「補足給付」の対象となります。
この制度により、低所得の方でも施設入所の自己負担を抑えることが可能になります。市区町村への申請が必要となるため、入所の際はケアマネジャーへの確認が欠かせないでしょう。
介護費用の負担を軽減する税制上の仕組み

公的介護保険制度以外にも、税制面で介護費用の負担を軽くできる仕組みが用意されています。確定申告の際に見落としがちなポイントを確認しておくとよいでしょう。
介護サービス費の医療費控除
居宅サービスのうち、訪問看護や訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション(デイケア)などの医療系サービスは、自己負担額が医療費控除の対象です。
また、これらの医療系サービスと併せて利用する訪問介護やデイサービスの自己負担額も、一定の条件で控除対象となる場合があります。
施設サービスでは、特養の場合は介護サービス費・食費・居住費の合計額の2分の1が医療費控除の対象です。老健や介護医療院では、介護サービス費・食費・居住費の全額が控除対象となっています。
おむつ代も、医師の「おむつ使用証明書」があれば控除に含めることが可能です。
障害者控除対象者認定書の活用
要介護認定を受けている方が、市区町村から「障害者控除対象者認定書」を取得すると、所得税の障害者控除(27万円)または特別障害者控除(40万円)の適用対象となる場合があります。
認定基準は市区町村ごとに定められており、要介護認定を受けていれば自動的に適用されるわけではないため、お住まいの自治体への確認が欠かせません。本人または扶養している家族の税負担を軽減できる、見落としやすい制度でしょう。
親の介護と自分の老後資金を両立させるための考え方

親の介護費用は、原則として親自身の年金・貯蓄から賄うのが基本的な考え方です。
子どもが自分の老後資金を取り崩して親の介護費用を負担すると、将来的に子ども世代の老後が立ち行かなくなるリスクがあります。
親の資金状況を事前に把握する
介護が始まる前に、親の年金額・貯蓄額・保有する保険の内容を家族間で共有しておくことが望ましいでしょう。確認しておきたい主な項目は以下のとおりです。
・公的年金の受給額(ねんきん定期便や「ねんきんネット」で確認可能)
・預貯金・金融資産の概算額
・民間の介護保険や生命保険の加入状況
・不動産などの資産
親の年金収入だけで月々の介護費用を賄える場合は、貯蓄は一時費用や施設入所時の備えとして確保できます。
年金だけでは不足する場合に、初めて追加の資金準備を検討する順序が合理的です。
介護離職を避けるための制度活用
親の介護を理由に離職すると、自分の収入が途絶えるだけでなく、将来の年金額にも影響します。
介護休業制度(対象家族1人につき通算93日・3回まで分割取得可能)や介護休業給付金(休業開始時賃金日額の67%)を活用し、仕事と介護を両立させる選択肢を優先的に検討しましょう。
介護休業は「介護そのもの」をするための期間というよりも、介護の体制を整えるための準備期間という位置づけです。
ケアマネジャーとの打ち合わせ、施設の見学・契約、在宅介護サービスの調整などに充てるのが効果的な使い方でしょう。
自分の老後資金に手をつけない仕組みづくり
親の介護費用と自分の老後資金を明確に分けるために、以下のような仕組みが役立ちます。
・親の年金を介護費用専用の口座で管理する
・自分の老後資金は、iDeCoのような原則60歳まで引き出せない仕組みを活用し、親の介護費用とは別枠で積み立てる
・親の介護保険施設入所時の費用は、親名義の資産から支出するルールを家族間で決めておく
親の介護にかかる費用を「見える化」しておくことで、感情的な支出を防ぎ、家族全体の資金計画を守ることにつながります。
民間の介護保険は本当に必要か

公的介護保険制度の自己負担上限や補足給付の仕組みを考慮すると、すべての世帯に民間の介護保険が必要とは限らないでしょう。
民間の介護保険の要否は、公的制度でカバーしきれない部分がどの程度あるかで判断するのが合理的です。
民間介護保険の検討が優先される世帯
以下のような条件に該当する場合は、民間の介護保険で備える意義が相対的に高くなります。
・施設介護を希望し、有料老人ホームの入居を想定している場合(公的制度の補足給付は介護保険施設に限られ、民間施設の費用には適用されません)
・親の年金収入が少なく、貯蓄も限られている場合
・子どもが遠方に住んでおり、在宅介護が現実的に難しい場合
公的制度で十分な可能性がある世帯
一方、以下の条件に当てはまる世帯では、公的制度の範囲内で介護費用を賄える可能性が高いといえます。
・住民税非課税世帯で、高額介護サービス費の上限が月24,600円以下に収まる場合
・特養への入所を想定しており、補足給付の対象となる場合
・公的介護保険の自己負担上限+食費・居住費の合計が、年金収入の範囲内に収まる場合
民間の介護保険を検討する前に、まず公的制度で実質的にいくらの自己負担になるのかを試算し、年金収入や貯蓄で賄えるかを確認する手順が欠かせないでしょう。
まとめ:公的制度の「積み上げ」で実質負担を見極める
介護費用の総額は平均約542万円と、まとまった金額に見えるかもしれません。
しかし、公的介護保険の自己負担割合(1〜3割)、高額介護サービス費による月額上限、補足給付による食費・居住費の負担軽減、さらに医療費控除や障害者控除といった税制上の仕組みを積み上げていくと、実質的な自己負担額は想定よりも抑えられるケースが少なくありません。
介護費用に備える手順としては、「公的介護保険の自己負担上限を確認する→親の年金収入で月々の費用を賄えるかを試算する→不足額がある場合に貯蓄や民間保険で備える」という順序が合理的です。
親の介護と自分の老後資金を同時に守るためには、公的制度を正確に把握し、感情ではなく数字に基づいた判断を積み重ねていくことが、家計全体を守る確かな方法になるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



