日常賠償責任保険
自転車事故に備える個人賠償責任特約|加入前に手持ちの保険を確かめる

自転車で歩行者に重いけがを負わせた場合、加害者が数千万円の賠償を命じられた判決があります。
一方、自転車には自動車の自賠責保険にあたる強制保険がなく、備えは任意で加入する保険に委ねられています。
その中心となる個人賠償責任保険は、傷害保険・火災保険・自動車保険などの特約としてセットするのが一般的なため、すでに加入している契約に付いているケースも多いのが実情です。
この記事では、自転車事故の賠償リスクと、新しく契約する前に確かめたい点を解説します。
自転車事故で問われる賠償責任

まず、どのくらいのリスクがあるのかを確かめます。
件数と判例から見ます。
事故件数は交通事故全体の2割超
日本損害保険協会によると、2025年の自転車乗用中の交通事故件数は6万7,470件で、交通事故件数全体に占める割合は23.5%です。
自転車乗用中の死傷者数のうち19歳以下が30.5%、65歳以上が19.0%を占め、この2つの年齢層でほぼ半数にのぼります(いずれも警察庁データをもとに同協会が作成)。
数千万円の賠償を命じられた判決がある
同協会が示す加害事故例には、夜間に自転車で帰宅していた11歳の男子小学生が、歩道と車道の区別のない道路で62歳の女性と正面からぶつかり、女性が頭蓋骨を折るなどして意識の戻らない状態になった事故があり、判決認容額は9,521万円とされています(神戸地方裁判所、平成25年7月4日判決)。
同協会は、この賠償責任は未成年であっても免れることはできないとしています。
なお判決認容額とは判決文で加害者が支払いを命じられた金額で、上訴などにより実際に支払う金額とは異なる可能性のある数字です。
自転車には強制保険がない
自動車事故では被害者救済のための強制保険として自賠責保険がありますが、自転車事故にはこれにあたる強制保険がありません。
損害賠償責任への備えは、個人賠償責任保険など任意で加入する保険に委ねられています。
条例による加入義務化が広がっている

備えを促す動きは、自治体の条例として広がっています。
全国の状況を確かめます。
34都府県が条例で義務化している
国土交通省によると、加入義務化の条例改正は平成27年10月に初めて兵庫県で導入され、その後も多くの地方自治体で義務化や努力義務とする条例が制定されています。
令和6年4月1日現在、34都府県が条例により自転車損害賠償責任保険等への加入を義務化し、10道県が努力義務化しています(公布日ベース)。
求められているのは商品名ではなく賠償への備え
条例が求めているのは自転車損害賠償責任保険等への加入であり、特定の商品名の保険に入ることではありません。
すでに加入している保険の特約で賠償責任が補償されていれば、それで求めを満たす場合があります。
条例の内容は自治体によって異なるため、住んでいる地域や通学先の案内での確認が必要です。
出典:国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」
すでに付いている可能性を先に確かめる

新しく契約する前に、手元の契約を見る順番になります。
理由は特約の付け方にあります。
特約としてセットするのが一般的
日本損害保険協会は、個人賠償責任保険について、傷害保険・火災保険・自動車保険などの特約としてセットすることが一般的だとしています。
自動車保険や火災保険に加入していれば、自転車事故の賠償に使える特約がすでに付いている可能性があるため、新しく契約する前に手元の証券を確かめる順番になります。
特約の名称は保険会社ごとに異なる
同協会は、特約の名称は保険会社ごとに異なる場合があるほか、保険会社によっては取り扱っていない場合もあるとしています。
証券の名称だけでは判断しにくいことがあるため、保険会社や代理店に「自転車で他人にけがをさせたときの賠償が補償されるか」と尋ねるのが確実です。
重ねても受け取れる額が増えるとは限らない
賠償責任の保険は、実際に生じた賠償額に応じて保険金が支払われるのが一般的です。
同じ内容の特約を世帯で複数持っても受け取れる額がその分増えるとは限らないため、重複に気づいたら見直す余地があります。
相談の場でも、自転車保険に入った後で、自動車保険にすでに特約が付いていたと気づく例を見かけます。
特約でも補償されない場面がある

特約があれば何でも補償されるわけではありません。
境目を確かめます。
業務で自転車を使用中の事故は対象外
日本損害保険協会は、業務で自転車を使用中に起こした事故は個人賠償責任保険では補償されないとしています。
配達や営業などで自転車を使う場合は、事業主が事業者用の賠償責任保険に加入する必要があります。
自分のけがは賠償責任の保険では補償されない
個人賠償責任保険が補償するのは相手方への賠償で、自分自身のけがは傷害保険で補償される仕組みです。
自分のけがには公的な医療保険もあるため、どこまで自分で備えるかは相手への賠償とは分けて考えることになります。
日常生活の事故も対象になる
個人賠償責任保険や傷害保険では、自転車事故のほか日常生活における事故も補償の対象です。
同協会は、買い物中に商品を壊した場合や、飼い犬が他人に噛みついてけがをさせた場合を例に挙げています。
まとめ:新しく入る前に手元の契約を見る
自転車事故への備えは、契約を増やす前に手元を確かめるところから始まります。
要点は次のとおりです。
・2025年の自転車乗用中の交通事故件数は6万7,470件で、交通事故件数全体の23.5%
・自転車には自賠責保険にあたる強制保険がなく、備えは任意で加入する保険による
・令和6年4月1日現在、34都府県が条例で加入を義務化し、10道県が努力義務化
・個人賠償責任保険は傷害保険・火災保険・自動車保険などの特約としてセットするのが一般的
・業務で自転車を使用中に起こした事故は個人賠償責任保険では補償されない
自転車保険という商品を新しく探す前に、自動車保険や火災保険に個人賠償責任の特約が付いていないかを確かめ、重複を避けたうえで足りない部分だけを補うことが、無理のない備え方になります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した内容です。
当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。
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