公的年金制度
老後資金はいくら必要?公的年金から逆算する目標額の決め方

老後資金の目標額は「2,000万円」と語られがちですが、実際に必要な金額は人によって異なります。
総務省の家計調査(2025年)では、65歳以上の夫婦のみ無職世帯で毎月約4.2万円、単身無職世帯で毎月約3.0万円の収支不足が生じていますが、これは全国平均であり、年金額や生活費によって必要額は変わります。
老後資金計画の出発点は、一律の目標額を当てはめることではなく、自分の年金見込み額を確認し、不足額を逆算することです。
公的年金でどこまで賄えるかを起点に必要額を組み立てる進め方は、商品販売を前提とする立場では後回しにされやすい部分でもあります。
本記事では、年金見込み額の確認から、不足額の逆算、毎月の積立額の試算まで、老後資金計画の立て方を3つのステップで解説します。
「2,000万円」を鵜呑みにしない

老後資金として広まった「2,000万円」という数字は、特定のモデル世帯を前提とした試算であり、すべての人に当てはまる金額ではありません。自分にとっての必要額を把握することが計画の第一歩です。
「2,000万円」は特定モデルの試算にすぎない
「老後2,000万円」は、2019年に金融審議会の報告書で示された試算が広まったものです。
これは特定のモデル世帯(高齢夫婦無職世帯)の収支をもとにした例であり、年金収入が多い世帯や生活費を抑えられる世帯では、必要額はこれより小さくなる場合もあります。
必要額は年金と生活費で決まる
老後資金の必要額は、毎月の生活費から公的年金などの収入を差し引いた「不足額」に、老後の年数を掛けて求めます。
年金見込み額と希望する生活水準は人によって違うため、必要額も一人ひとり異なるのが前提です。
ステップ1:年金見込み額を確認する

老後資金計画で最初に行うべきは、公的年金の見込み額の確認です。年金がいくら受け取れるかによって、自分で準備すべき金額が変わります。確認する方法は複数あります。
ねんきん定期便で確認する
ねんきん定期便は、毎年の誕生月に日本年金機構から届く書類で、年金加入記録や将来の年金見込み額が記載されています。
50歳以上の方には、現在の条件で加入を続けた場合の年金見込み額が記載されますが、50歳未満の方には見込み額の記載がないため、次のねんきんネットなどを活用します。
ねんきんネット・公的年金シミュレーターを使う
日本年金機構の「ねんきんネット」では、24時間いつでも年金記録の確認や見込み額の試算ができ、働き方や受給開始年齢を変えた場合のシミュレーションも行えます。
厚生労働省の「公的年金シミュレーター」は、利用登録不要で、ねんきん定期便の二次元コードから入力の手間を省いて試算できます。
ステップ2:不足額を逆算する

年金見込み額が分かったら、希望する生活費との差から不足額を求めます。この不足額に老後の年数を掛けたものが、自分で準備すべき目標額の目安となります。
老後の生活費を見積もる
総務省の家計調査(2025年)によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の消費支出は月額約26.4万円、単身無職世帯では月額約14.8万円です。
ただしこれは全国平均で、持ち家か賃貸か、住む地域によって変わるため、自分の生活実態に合わせて見積もる必要があります。
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年平均結果の概要」
収支の不足額を計算する
同じ家計調査では、夫婦のみ無職世帯の可処分所得が月額約22.2万円であるのに対し消費支出が約26.4万円で、毎月約4.2万円の不足が生じています。
単身無職世帯でも可処分所得約11.8万円に対し消費支出約14.8万円で、毎月約3.0万円の不足です。
不足額に老後年数を掛けて目標額を出す
毎月の不足額が分かれば、老後の年数を掛けて準備すべき総額の目安を求められます。
たとえば夫婦世帯で毎月4.2万円の不足が65歳から90歳までの25年間続くと仮定すると、不足額の合計は約1,260万円となり、これにゆとり費や医療・介護への備えを加えて目標額を設定します。
ステップ3:毎月の積立額を試算する

目標額が決まったら、準備期間から毎月の積立額を逆算します。運用を取り入れるかどうかで、必要な積立額は変わります。
運用の有無で必要な積立額が変わる
仮に40歳から65歳までの25年間で2,000万円を準備する場合、運用しなければ毎月約6.7万円の積立が必要です。
一方、年利3%で運用できた場合は毎月約4.5万円、年利5%なら毎月約3.4万円と、複利効果によって必要な積立額は下がる計算になります。
運用には元本割れのリスクがある
運用を取り入れると毎月の負担は軽くなりますが、投資には値動きがあり、元本割れの可能性もあります。
試算上の利回りはあくまで仮定であり、結果を保証するものではないため、リスクを理解したうえで取り入れることが前提です。
無理のない金額から始める
目標額に対して毎月の積立が足りない場合でも、焦って高い目標を立てて挫折するより、続けられる金額から始めるほうが現実的です。
退職金の見込みがある場合はその分を差し引いて計算し、収入が増えたタイミングで積立額を上げていく進め方もあります。

目標額と積立額が決まったら、それを達成する手段を組み合わせます。支出の見直し・資産運用・収入を増やす工夫の3つが柱です。
家計の見直しで積立額を増やす
毎月の積立額を増やすには、固定費の見直しが効果的です。
通信費・保険料・利用していないサブスクリプション・光熱費などは、一度見直すと節約効果が継続するため、生活水準を保ったまま積立に回す金額を増やせます。
NISA・iDeCoを活用する
運用での準備には、税制優遇のあるNISAとiDeCoを活用できます。
iDeCoは掛金が全額所得控除になる一方、原則60歳まで引き出せないため老後資金専用となり、NISAはいつでも引き出せるため、用途を選ばず使えるのが特徴です。
長く働き、繰り下げ受給も検討する
収入を増やす方法として、定年後も働くことや、年金の繰り下げ受給があります。
年金の受給開始を65歳から70歳に遅らせると年金額は42%、75歳まで遅らせると84%増える仕組みで、長く働ける場合は老後の収入を底上げする選択肢となります。
まとめ:自分の不足額から目標額を決める
老後資金は「2,000万円」という一律の数字ではなく、自分の年金見込み額と生活費から不足額を逆算して目標額を決めることが出発点です。
ねんきん定期便やねんきんネットで年金見込み額を確認し、希望する生活費との差から不足額を求め、準備期間から毎月の積立額を試算する3つのステップで進めます。
目標額を達成するには、家計の見直し・NISAやiDeCoの活用・長く働く工夫を組み合わせることが効果的です。
繰り下げ受給を使えば年金額を増やすこともできるため、自分の状況に合わせて手段を選ぶことが現実的な進め方となります。
一律の目標額を当てはめるのではなく、年金見込み額を確認して不足額を逆算し、無理のない積立額から始めることが、老後資金計画の確かな第一歩となります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した内容です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



