公的年金制度
老後の生活費はいくら必要?平均額ではなく自分の数字で見積もる

総務省の家計調査によると、2025年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、消費支出が月263,979円、可処分所得が221,544円となっています。
ただしこの数字は世帯主の平均年齢が77.6歳の世帯を平均したもので、65歳以上の無職世帯(二人以上)の持家率は95.5%です。
65歳で賃貸に住んでいる人が、この数字をそのまま自分に当てはめることはできません。
この記事では、平均が何を指しているのかを確かめたうえで、自分の数字に置き換える手順を解説します。
「平均」が指している世帯を知る

よく引かれる老後の生活費の平均には、前提となる世帯像があります。
世帯主の平均年齢は77.6歳
家計調査の2025年平均によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、世帯人員2.00人、世帯主の平均年齢77.6歳、有業人員0.09人という世帯を平均したものです。
65歳になったばかりの家計の数字ではない、という点を押さえておく必要があります。
持家率は95.5%
同じ調査では、二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の持家率は95.5%となっています。
夫婦のみの無職世帯の住居費は月17,739円で、消費支出に占める割合は6.7%です。
家賃を払い続ける世帯であれば、この部分がまるごと変わります。
収入の約9割は社会保障給付
夫婦のみの無職世帯では、実収入254,395円のうち、社会保障給付が228,614円で、89.9%を占めています。
働いて得る収入がほとんどない世帯の平均だという点も、前提として知っておきたいところです。
年齢によって支出は変わる

同じ65歳以上でも、年齢階級によって消費支出は違います。
65〜69歳と75歳以上では月4万円以上の差
二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の消費支出を年齢階級別にみると、65〜69歳が296,997円、70〜74歳が285,844円、75歳以上が248,460円となっています。
65〜69歳と75歳以上では、月あたり48,537円の差です。
収入も年齢で変わる
実収入も、65〜69歳が290,110円、70〜74歳が287,725円、75歳以上が252,798円と年齢階級で異なります。
老後をひとつの期間としてまとめるのではなく、動ける時期と落ち着く時期を分けて考えるほうが実態に近づきます。
毎月いくら足りないのか

平均の姿を押さえたうえで、収入と支出の差を見ます。
夫婦の世帯は月42,434円の差
家計調査は、実収入と、消費支出および非消費支出の合計との差を「差額分」として示しています。
65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、この差額分が月42,434円です。
単身の世帯は月29,980円の差
65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得(実収入から税や社会保険料を差し引いた額)118,465円に対し、消費支出が148,445円で、差額分は月29,980円となっています。
平均消費性向は、夫婦の世帯が119.2%、単身の世帯が125.3%です。
この差額に年数を掛けるだけでは足りない
差額に老後の年数を掛けて必要額を出す計算をよく見かけますが、前提となる世帯像が自分と違えば、出てくる金額も変わります。
持ち家か賃貸か、何歳の家計か、単身か夫婦かで、差額そのものが動きます。
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
自分の数字に置き換える

平均を出発点にするなら、自分の条件で置き換える作業が要ります。
いまの家計から減る支出を引く
子どもの独立で教育費が、完済で住宅ローンが、退職で通勤にかかる費用がなくなります。
いまの家計簿から、老後になくなる項目を引いていくほうが、平均を持ってくるより実態に近い数字になります。
増える支出を足す
一方で、保健医療費は夫婦のみの無職世帯で月17,941円、消費支出の6.8%を占めています。
医療や介護にかかる費用は健康状態によって動くため、余裕を見ておく部分になります。
住居費は自分の条件で入れ替える
持ち家なら修繕や維持の費用を、賃貸なら家賃を、平均の17,739円と入れ替えます。
ここを置き換えるだけで、必要額の見え方は変わります。
出典:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
年金の見込額は自分の記録で確かめる
収入の側も、平均の社会保障給付228,614円ではなく、自分の加入記録にもとづく見込額を使います。
ねんきん定期便やねんきんネットで確かめられます。
まとめ:平均が誰の数字かを知るところから
老後の生活費は、平均を知ることより、平均が誰の数字かを知ることから始まります。
要点は次のとおりです。
・2025年の65歳以上の夫婦のみの無職世帯は、消費支出263,979円、可処分所得221,544円
・その平均は、世帯主の平均年齢77.6歳、有業人員0.09人という世帯の姿
・二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の消費支出は、65〜69歳296,997円、75歳以上248,460円と年齢で異なる
・差額分は、夫婦のみの無職世帯で月42,434円、単身無職世帯で月29,980円
・住居費は夫婦のみの無職世帯で月17,739円(消費支出の6.7%)、65歳以上の無職世帯(二人以上)の持家率は95.5%
平均の金額をそのまま目標にするのではなく、世帯主の年齢・持ち家か賃貸か・単身か夫婦かという前提を自分の条件に置き換え、いまの家計から増える分と減る分を出すことが、老後の生活費を見積もる出発点になります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した内容です。
当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。
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