自動車保険
無過失事故特約とは?もらい事故で車両保険を使っても等級が下がらない仕組みを解説

信号待ちで追突されるような、自分に過失がまったくない「もらい事故」でも、自分の車両保険を使うと通常は3等級ダウンとなり翌年の保険料が上がります。
この不利益を防ぐのが「車両無過失事故に関する特約(無過失事故特約)」で、条件を満たすもらい事故ならノーカウント事故として扱われ、車両保険を使っても等級に影響しません。
ただし、もらい事故ではそもそも相手に全額を請求できるのが原則で、この特約の出番は相手が無保険などの限られた場面です。
この記事では、もらい事故の全体像から特約の仕組み・出番までを、法令などの情報をもとに解説します。
もらい事故では「相手に全額請求」が原則

もらい事故とは、停車中に追突された場合のように、自分の過失が0(過失割合10対0)となる事故のことです。
まず、もらい事故のときにお金がどう動くのかの全体像から確認しましょう。
修理費は相手の対物賠償から全額支払われる
過失が0であれば、車の修理費などの損害は、相手(加害者側)の対物賠償保険から全額支払われるのが原則です。
自分の保険を使う必要がなければ、等級にも保険料にも影響はありません。もらい事故の典型例には、停車中の追突のほか、相手のセンターラインオーバーや信号無視による衝突があります。
自分の保険会社は示談交渉を代行できない
注意したいのは、もらい事故では自分の保険会社が相手との示談交渉を代行できないという点です。
保険会社が示談交渉を代行できるのは、契約者にも過失があり、保険会社自身が相手へ保険金を支払う当事者になる場合に限られます。過失0の事故では保険会社に支払義務がなく、代行すると他人の法律事務を扱うことになり、弁護士法72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)に抵触するためです。そのため交渉は自分で行うか、弁護士費用特約などを使って弁護士に依頼することになります。
車両無過失事故に関する特約とは|ノーカウントになる仕組み

もらい事故で自分の車両保険を使う場面に備えるのが、車両無過失事故に関する特約です。
名称と仕組みを確認します。
もらい事故でも車両保険を使うと通常は3等級ダウン
意外に思われがちですが、もらい事故であっても、自分の車両保険を使えば通常は3等級ダウン事故として扱われます。
等級が下がるだけでなく事故有係数も適用されるため、翌年以降の保険料が無事故の場合より高くなる点が悩ましいところです。
特約があれば「ノーカウント事故」として等級に影響しない
車両無過失事故に関する特約が適用されると、そのもらい事故はノーカウント事故として扱われます。
車両保険で修理費を受け取っても等級は下がらず、事故有係数の対象にもならないのが特徴です。翌年の等級は、無事故の場合と同じように1つ上がります。
車両保険に自動付帯される会社が多い・名称は会社で異なる
この特約は、車両保険を付けると自動的にセットされる会社が多く、追加保険料なしで付いているケースが一般的です。
名称は「車両無過失事故に関する特約」のほか、「無過失事故特約」「車両無過失事故の特則」などと呼ばれ、会社によって表記が異なります。自分の契約に付いているかは、保険証券や契約者ページで確認できます。
適用には条件がある
特約が適用されるのは、過失が0であることが明確な事故に限られる仕組みです。
一般的には、相手の車とその運転者または所有者が確認できることに加え、停車中の追突、相手のセンターラインオーバーや信号無視による衝突など、所定の事故類型に当てはまることが条件とされています。細かい条件は会社によって異なるため、約款や公式サイトでの確認が欠かせません。
特約の出番はいつか|相手から回収できないケース

相手に全額請求できるのが原則なら、この特約はいつ役立つのでしょうか。
主な出番は、相手からの回収が難しい次のような場面です。
・相手が対物賠償保険に入っていない(無保険)、または支払い能力が不足している
・相手が賠償に応じず、示談交渉が長引いている
・修理を急ぎたいが、相手からの支払いを待てない
こうした場面では、先に自分の車両保険で修理し、保険会社が支払った分を相手へ請求する形が取れます。
特約があれば、この使い方をしても等級に傷が付かないため、「泣き寝入りか、等級ダウンか」の二択を避けられるのが実質的な価値です。
もらい事故への備えは3つの組み合わせで考える

もらい事故対策は、この特約だけで完結するものではありません。
役割の違う3つの備えを組み合わせると、全体をカバーしやすくなります。
・車両保険+車両無過失事故に関する特約:相手から回収できないときに、等級に影響なく車を直せる
・弁護士費用特約:自分の保険会社が代行できない示談交渉を、弁護士に依頼できる(利用してもノーカウントが一般的)
・人身傷害保険:ケガの治療費などを過失割合や示談の成立を待たずに受け取れる(単独利用はノーカウント)
いずれも「使っても等級に影響しない」タイプの備えのため、もらい事故ではためらわずに活用できるのが共通点です。
まとめ|原則は相手に請求、特約は「使える保険」にする備え
無過失事故特約(車両無過失事故に関する特約)のポイントをまとめます。
・もらい事故は相手の対物賠償から全額回収が原則(自分の保険を使わなければ等級への影響なし)
・過失0の事故では自分の保険会社は示談交渉を代行できない(弁護士法72条)
・もらい事故でも自分の車両保険を使うと通常は3等級ダウン
・特約があればノーカウント事故となり、車両保険を使っても等級に影響しない
・車両保険に自動付帯の会社が多い。適用条件(相手の確認・所定の事故類型)は約款で確認
・出番は相手が無保険・支払いに応じないケース。弁護士費用特約・人身傷害保険と組み合わせて備える
もらい事故で損をしないコツは、「まず相手に全額請求」という原則と、「特約があれば等級を気にせず車両保険を使える」という例外の両方を知っておくことです。
自分の契約に特約が付いているか、この機会に保険証券で確認してみてはいかがでしょうか。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司による執筆です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムでご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズにお調べいただけるでしょう。



