医療保険
新社会人に医療保険は必要?入社後に使える公的保障から考える

就職して勤務先の健康保険に加入すると、医療費の自己負担に上限を設ける高額療養費と、働けない期間を支える傷病手当金が使えるようになります。
このうち傷病手当金は、支給を開始した日から通算して1年6か月まで支給される仕組みです。
民間の医療保険を考えるのは、これらで賄えない部分がどれだけあるかを確かめた後になります。
この記事で扱うのは、新社会人が使える公的保障の中身と、保険を検討する前に確かめる順番です。
就職すると公的な保障の中身が変わる

学生のうちは親の扶養に入っていた人も、就職すると自分が被保険者になります。
医療費の自己負担には上限がある
勤務先の健康保険に加入すると、窓口で払う医療費が原則3割になるだけでなく、1か月あたりの自己負担にも上限が設けられます。
70歳未満で標準報酬月額26万円以下の区分の場合、令和8年8月から令和9年7月までの上限は61,500円です。
入社して間もない時期は、この区分に入る人が多くなります。
働けない期間は傷病手当金が支える
業務外の病気やケガで働けなくなったときは、傷病手当金が支給されます。
協会けんぽによると、仕事を休んだ日から連続して3日間の待期の後、4日目以降の仕事に就けなかった日が対象で、支給期間は支給を開始した日から通算して1年6か月です。
金額は、支給開始日以前12か月の標準報酬月額を平均した額を30で割り、その3分の2にあたる額になります。
学生時代との違い
学生のうちは働けなくなっても収入が途切れる心配はありませんが、社会人になると自分の収入が止まるという事態が起こり得ます。
その備えとして最初に働くのが傷病手当金で、民間の保険はその先を埋めるものという順序になります。
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費」
公的保障で賄えない部分もある

上限があるとはいえ、かかった費用のすべてが対象になるわけではありません。
高額療養費の対象にならない費用
差額ベッド代(個室などの室料)や先進医療の技術料、入院中の食事代は、高額療養費の対象になりません。
これらは上限の計算に含まれないため、実際の支出は上限額を超えることになります。
傷病手当金は手取りの満額ではない
傷病手当金は標準報酬月額をもとに計算されるため、残業代や各種手当を含めた手取りより少なくなるのが通例です。
働けない期間が長引くほど、この差は積み上がっていきます。
確かめるのは「差額」
公的保障で賄える額と、実際にかかる支出との差がどれだけあるか。
民間の医療保険で埋めるのは、この差額の部分だけです。
保険を考える前に確かめる3つのこと

勧められてから調べるのでは、比べる材料が手元にありません。
勤務先の健康保険の中身
勤務先が健康保険組合に加入している場合、法律で定められた給付に上乗せする独自の給付を設けていることがあります。
入社時に配られる資料や組合のサイトで、どのような給付があるのかを先に見ておきます。
手元の預貯金
公的保障でカバーされない差額は、預貯金でも埋められます。
保険料を払って備えるのか、同じ金額を貯めて備えるのかという選択であり、貯蓄が少ない時期はまず預貯金を優先するという考え方もあります。
扶養する家族がいるかどうか
扶養する家族がいない新社会人にとって、死亡保障の必要性は基本的に低いものです。
勧められた保障がなぜ必要なのかを説明できないまま契約すると、中身を覚えていない保険料だけが引き落とされ続けます。
相談の場でも、入社直後に加入した保険の中身を答えられない方に出会います。
「若いうちのほうが安い」をどう考えるか

終身型を早く契約するほど得だという勧め方は、よく耳にします。
保険料が変わらないことの意味
終身型の医療保険は契約時の保険料が続くため、若いうちに契約すれば月々の負担は小さくなります。
一方で、払い込む期間はその分長くなるため、生涯に払う総額が少なくなるとは限りません。
保障の中身は時代とともに変わる
入院日数の考え方や治療の方法は変わっていくため、いま契約した保障が何十年も先に合っているとは限りません。
長く持ち続ける前提の契約ほど、途中で見直すことになる可能性も見込んでおく必要があります。
決め手は年齢ではなく必要性
保険料の安さは契約する理由にはならず、公的保障との差額が埋まっていないという事実が理由になります。
差額がないのであれば、若くて保険料が安いことは加入の根拠にはなりません。
まとめ:商品より先に、自分に適用される制度を見る
新社会人が最初に確かめたいのは、商品ではなく自分に適用される公的保障のほうになります。
要点は次のとおりです。
・就職して健康保険に加入すると、高額療養費と傷病手当金が使えるようになる
・傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月
・差額ベッド代や先進医療の技術料、入院中の食事代は高額療養費の対象外
・埋めるべきは、公的保障で賄える額と実際の支出との差額
・扶養する家族がいなければ、死亡保障の必要性は基本的に低い
保険料が安いことではなく、公的保障で足りない差額があることが加入の理由であり、勧められてから考えるのではなく、勤務先の健康保険と手元の預貯金を先に確かめることが、新社会人にとっての順番になります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆した内容です。
当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。
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