社会保障
教育訓練給付金とは?3種類の違い・受給要件・支給額・申請方法をわかりやすく解説

教育訓練給付金は、雇用保険に加入している(または加入していた)方が厚生労働大臣の指定する講座を受講・修了した場合に、受講費用の20〜最大80%が支給される制度で、キャリアアップや資格取得を経済的に後押しする仕組みとして活用されています。
令和6年10月の法改正で特定一般教育訓練・専門実践教育訓練の給付率が引き上げられ、資格取得や賃金上昇に連動した追加給付が新設された点も注目すべきポイントです。この記事では、3種類の教育訓練給付金の違いや受給要件、申請手続きの流れに加えて、「受講費用に見合うリターンがあるか」を判断するための考え方まで取り上げていきます。
教育訓練給付金の制度概要と目的

教育訓練給付金は、雇用保険制度の一つとして、働く方の主体的な能力開発やキャリア形成を支援する目的で設けられた制度です。厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講・修了した場合に、受講費用の一部がハローワークから支給されます。
対象となる講座は約15,000講座以上あり、簿記検定やTOEICのような比較的短期間で取得できる資格から、看護師・社会福祉士・介護福祉士のような中長期の専門資格まで幅広くカバーしています。指定講座は厚生労働省の「教育訓練給付制度検索システム」で確認できるため、受講を検討する際はまず対象講座かどうかを調べることが重要になります。
教育訓練給付金の3種類と支給額の違い

教育訓練給付金は、訓練のレベルに応じて「一般教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」の3種類に分かれており、それぞれ給付率や上限額が異なります。
一般教育訓練給付金
雇用の安定や就職の促進に資する基礎的な教育訓練が対象で、受講費用の20%(上限10万円)が訓練修了後に支給される仕組みです。対象となる資格・講座の例としては、簿記検定、TOEIC、ITパスポート、FP技能検定などがあり、比較的短期間かつ低コストで受講できるものが中心となっています。
特定一般教育訓練給付金
速やかな再就職や早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象となり、受講費用の40%(上限20万円)が訓練修了後に支給されます。令和6年10月以降に開講する講座では、資格取得かつ修了後1年以内に雇用された場合、さらに10%が追加され、最大50%(上限25万円)まで引き上げられました。対象講座は、大型自動車免許、税理士、介護職員初任者研修などの業務独占資格・名称独占資格を中心とした講座が含まれます。
専門実践教育訓練給付金
中長期的なキャリア形成に資する専門的な教育訓練が対象で、3種類の中で最も手厚い給付を受けられます。訓練受講中は6か月ごとに受講費用の50%(年間上限40万円)が支給される仕組みです。
さらに、資格取得かつ修了後1年以内に雇用された場合は70%(年間上限56万円)に引き上げられ、令和6年10月以降の開講講座では、賃金が受講前と比較して5%以上上昇した場合に最大80%(年間上限64万円)まで支給されます。最長3年間の訓練が対象となるため、3年間の総支給額は最大192万円に達する計算です。対象は看護師、社会福祉士、保育士、介護福祉士のほか、第四次産業革命スキル習得講座(AI・データサイエンス・クラウド等)なども含まれます。
教育訓練給付金の受給要件

教育訓練給付金を受給するには、雇用保険の加入期間に関する要件を満たす必要があり、在職者と離職者で条件が異なります。
在職者の場合
受講開始日時点で雇用保険の被保険者であり、支給要件期間が3年以上あることが条件です。ただし、初めて教育訓練給付金を受給する場合は、一般教育訓練・特定一般教育訓練では1年以上、専門実践教育訓練では2年以上の加入期間があれば受給できます。転職経験がある場合でも、離職期間が1年以内であれば前の勤務先での被保険者期間を通算できる点は見落としやすいポイントでしょう。
離職者の場合
被保険者資格を喪失した日(離職日の翌日)から受講開始日までが1年以内であり、かつ支給要件期間が3年以上(初回は一般・特定一般で1年以上、専門実践で2年以上)あることが条件となっています。妊娠・出産・育児・疾病・負傷などにより30日以上受講を開始できない期間がある場合は、ハローワークへの申出により適用対象期間を最大20年まで延長できる仕組みも設けられています。
再利用する場合の注意点
過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合、前回の給付金支給日から今回の受講開始日の前日までに3年以上経過している必要があります。前回の受講開始日より前の被保険者期間は通算されないため、再利用時には受給要件を改めて確認することが欠かせません。
教育訓練支援給付金とは

教育訓練支援給付金は、専門実践教育訓練を受講する離職者を対象とした生活支援制度で、教育訓練給付金とは別に支給されます。受講開始時に45歳未満で、初めて専門実践教育訓練(通信制・夜間制を除く)を受講する方が対象となっています。
支給額は、雇用保険の基本手当日額に相当する額の60%(令和7年3月31日以前の受講開始分は80%)で、訓練期間中の生活費を補う位置づけです。ただし、基本手当の受給期間中は教育訓練支援給付金は支給されず、基本手当の支給終了後に受給できる仕組みとなっている点に注意が必要でしょう。
教育訓練給付金の申請手続きの流れ

教育訓練給付金の申請は種類によって手順が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
一般教育訓練給付金の場合
受講修了後、修了日の翌日から1か月以内に、住所地を管轄するハローワークに支給申請書と教育訓練修了証明書などを提出します。事前手続きは不要で、修了後の申請のみで完結する点が特徴です。受給資格があるか事前に確認したい場合は、ハローワークで「支給要件照会」を行うことも可能となっています。
特定一般・専門実践教育訓練給付金の場合
特定一般教育訓練と専門実践教育訓練は、受講開始の原則1か月前までにハローワークで受給資格確認の手続きが必要です。この事前手続きを行わないまま受講を開始すると、後から給付金を申請できなくなるため、申込みのタイミングには十分な注意が求められます。専門実践教育訓練の場合はキャリアコンサルティングを受けることも要件の一つとなっています。
受講費用に見合うリターンがあるかの考え方

教育訓練給付金は「使えるからとりあえず使う」のではなく、受講費用とキャリアへのリターンを冷静に比較検討することが大切です。
費用対効果の判断基準
たとえば受講費用30万円の講座で一般教育訓練給付金(20%)を利用する場合、自己負担は24万円です。この24万円の投資に見合うだけの収入増加やキャリアの選択肢の拡大が見込めるかどうかが判断の分かれ目になります。資格を取得しても活用できなければ、給付金を受け取っても費用と時間の損失につながりかねないためです。
一方で、専門実践教育訓練の場合は給付率が最大80%まで引き上がるため、自己負担が小さくなる分、費用面のハードルは下がります。ただし、2〜3年の訓練期間を要する講座が多く、在職中に受講する場合は仕事との両立、離職して受講する場合は収入減少のリスクも考慮すべき要素でしょう。
家計全体での優先順位
教育訓練への投資を検討する際は、家計全体の資金バランスも重要な判断材料になります。生活防衛資金(生活費の3〜6か月分)が確保されていない状態での受講は、万一の失業や病気のときに家計が行き詰まるリスクを高めます。まずは公的な社会保険(傷病手当金や失業給付など)でカバーされる範囲を把握し、その上で余裕資金の範囲内で自己投資を検討するという順序が、家計を安定させながらキャリアアップを目指す現実的な方法です。
また、会社員の場合は雇用保険料を毎月の給与から負担していることを忘れがちですが、教育訓練給付金はその保険料を原資とした給付です。使える制度は正しく活用することが、保険料を払っている意味を最大化することにもつながります。
自営業者・フリーランスは対象外という注意点

教育訓練給付金は雇用保険制度の一部であるため、雇用保険に加入していない自営業者やフリーランスは原則として利用できません。会社員から独立した場合でも、離職日の翌日から1年以内(延長申請をした場合は最大20年以内)に受講を開始すれば受給できる可能性があるため、退職前に受給要件を確認しておくことが重要です。
自営業者がスキルアップを目指す場合は、経費として研修費用を計上する方法や、自治体独自のリスキリング支援制度を活用する方法など、別のアプローチを検討する必要があります。会社員と自営業者では利用できる公的制度に差があるため、自分の働き方に応じた制度の使い分けを意識することが、無駄のないキャリア投資につながるでしょう。
教育訓練給付金と他の公的制度を組み合わせるポイント

教育訓練給付金を活用する場面では、他の公的制度との組み合わせを意識すると、より効率的にキャリアの転換や収入アップを実現しやすくなります。
たとえば、離職して専門実践教育訓練を受講する場合は、教育訓練給付金に加えて教育訓練支援給付金で生活費を補いながら学ぶことが可能です。また、資格取得後に転職して収入が増えた場合、そのぶんNISAやiDeCoでの積立額を増やすといった、キャリア投資と資産形成を連動させる視点も持っておきたいところでしょう。
逆に、受講費用を捻出するために民間の医療保険や生命保険を見直し、公的な社会保険(高額療養費制度や傷病手当金)でカバーされている範囲を確認した上で保険料を削減するという方法もあります。「公的保障の把握→固定費の見直し→浮いた資金で自己投資」という流れは、家計全体を改善しながらスキルアップを進める合理的な考え方です。
まとめ
教育訓練給付金は、雇用保険に加入している(または加入していた)方が活用できる、キャリアアップのための公的支援制度です。一般教育訓練(受講費用の20%・上限10万円)、特定一般教育訓練(40%・上限20万円、追加給付で最大50%)、専門実践教育訓練(50〜最大80%・年間上限64万円)の3種類があり、令和6年10月の法改正で給付率がさらに拡充されています。特定一般・専門実践は受講開始前の事前手続きが必要なため、スケジュールに余裕を持って準備することが重要です。受給要件の確認は住所地のハローワークで「支給要件照会」を無料で行えるため、受講を検討する段階で早めに確認しておくことをおすすめします。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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