税金(一般的な内容)
年末調整とは?確定申告との違い・適用できる控除・2025年改正をわかりやすく解説

年末調整は、会社員や公務員が1年間に源泉徴収された所得税と本来の年税額との差額を精算する手続きで、多くの給与所得者にとって唯一の税額確定の機会となっています。令和7年(2025年)の年末調整では、基礎控除が最大95万円に引き上げられ、給与所得控除も65万円に拡大されるなど、過去に例のない規模の改正が適用されます。ただし、医療費控除や雑損控除など年末調整では処理できない控除もあり、確定申告と組み合わせなければ税金を取り戻せないケースも少なくないのが実情です。この記事では、年末調整の仕組みから確定申告との使い分け、よくある間違いと修正方法まで整理していきます。
年末調整の仕組みと還付・徴収が発生する理由

年末調整がなぜ必要なのかを理解するには、毎月の源泉徴収と年間の税額確定の関係を押さえておく必要があります。
毎月の源泉徴収は「概算」にすぎない
給与から天引きされる所得税は、国税庁が定める「源泉徴収税額表」に基づく概算額にすぎません。扶養親族の人数や社会保険料の金額をもとに毎月計算されるものの、その年の給与総額が確定するまでは正確な税額を算出できないため、年末に改めて精算する必要が生じます。
差額が還付・徴収される仕組み
年末調整では、その年の給与総額をもとに正確な年税額を計算し、すでに源泉徴収された合計額との差額を調整します。源泉徴収の合計が年税額より多ければ差額が還付され、逆に少なければ不足分が徴収される流れです。国税庁のタックスアンサーNo.2662では、年末調整の計算順序として「給与所得控除後の金額の算出→所得控除の差し引き→税率の適用→税額控除→復興特別所得税の加算→精算」という6つのステップが示されています。
多くの人で還付が発生する理由
年の途中で生命保険に加入した場合や、扶養親族が増えた場合など、年末時点の控除額が毎月の源泉徴収に反映しきれていないケースでは、源泉徴収の合計額が年税額を上回り、還付が発生します。特に12月の賞与と合わせて年末調整が行われるため、12月の手取りが普段より増えるのは、この差額精算によるものです。一方、年の途中で扶養親族が減った場合などは逆に追加徴収となることもあります。
年末調整の対象となる人・ならない人

年末調整を受けるには「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出していることが前提です。提出していない場合は「乙欄」の税額が適用され、年末調整の対象外となります。
年末調整の対象者
1年を通じて同じ会社に勤務している人、または年の途中で就職して年末まで勤務している人が対象です。正社員だけでなく、パートやアルバイトも扶養控除等申告書を提出していれば対象となります。ただし、2か所以上から給与を受けている場合は、主たる給与の支払者(扶養控除等申告書の提出先)でのみ年末調整が行われます。
年末調整の対象外となるケース
給与の年間収入金額が2,000万円を超える人は年末調整の対象外で、確定申告が必要です。また、災害減免法の適用を受けて源泉徴収の猶予を受けている人も対象外となります。年の中途で退職し、その後再就職していない場合も年末調整は行われないため、自分で確定申告をして税額を精算することになります。
年末調整で適用できる控除・できない控除の整理

所得控除は全部で16種類ありますが、年末調整で処理できるのはそのうち13種類であり、残り3種類は確定申告でしか適用できません。この区別を正確に把握しておくことが、税金の取りこぼしを防ぐ第一歩となります。
年末調整で適用できる13の所得控除
年末調整で適用できる所得控除は次の通りです。
・基礎控除(令和7年分は合計所得金額に応じて最大95万円)
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・特定親族特別控除(令和7年新設)
・扶養控除
・障害者控除
・寡婦控除
・ひとり親控除
・勤労学生控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除(iDeCoの掛金を含む)
・生命保険料控除
・地震保険料控除
これらの控除を受けるには、対応する申告書を勤務先に提出する必要があります。令和7年分からは、基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・所得金額調整控除申告書が1枚の兼用様式に統合されました。
年末調整では適用できない3つの所得控除
以下の3つの控除は年末調整で処理できず、確定申告をしなければ適用を受けられません。
・雑損控除:災害・盗難・横領による資産の損害が対象
・医療費控除:年間の医療費が10万円(総所得200万円未満は5%)を超える場合に適用。セルフメディケーション税制との選択適用
・寄附金控除:ふるさと納税や特定公益法人への寄附が対象。ふるさと納税のワンストップ特例を利用する場合は確定申告不要だが、6か所以上に寄附した場合などは確定申告が必要
これらの控除がある場合、年末調整を受けた後に還付申告として確定申告をすることで、払いすぎた税金を取り戻せます。
住宅ローン控除(税額控除)の扱い
住宅ローン控除は所得控除ではなく税額控除ですが、初年度のみ確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で適用可能です。初年度に確定申告をすると、翌年以降は税務署から「住宅借入金等特別控除証明書」が交付され、金融機関の年末残高証明書と合わせて勤務先に提出するだけで控除が受けられます。
年末調整と確定申告の使い分け判断フロー

年末調整で税額が確定する人は確定申告が不要ですが、一定の条件に該当する場合は確定申告が義務付けられています。また、義務がなくても確定申告をしたほうが有利なケースも存在します。
確定申告が義務となるケース
国税庁タックスアンサーNo.1900によると、給与所得者で確定申告が必要な人は主に次のような場合です。
・給与の年間収入が2,000万円を超える場合
・給与を1か所から受けていて、給与所得・退職所得以外の所得が20万円を超える場合(副業の所得など)
・2か所以上から給与を受けていて、年末調整されなかった給与と各種所得の合計が20万円を超える場合
・同族会社の役員等で、その会社から貸付金の利子や賃貸料を受け取っている場合
出典:国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
確定申告をしたほうが有利なケース
義務はなくても、確定申告(還付申告)をすることで税金が戻ってくる場合があります。代表的なケースは次の通りです。
・医療費が年間10万円を超えた場合(医療費控除)
・ふるさと納税でワンストップ特例を使えなかった場合(寄附金控除)
・住宅ローン控除の初年度
・年の途中で退職して年末調整を受けていない場合
・災害や盗難で損害を受けた場合(雑損控除)
還付申告は翌年1月1日から5年間提出でき、確定申告期間(2月16日~3月15日)に限定されません。特に年の途中で退職した場合は、源泉徴収が多めに行われていることが多く、還付を受けられる可能性が高いといえます。
副業収入がある場合の注意点
副業の所得が20万円以下であれば所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は別途必要です。所得税の20万円ルールはあくまで確定申告の免除にすぎず、住民税の計算にはすべての所得が反映されます。住民税の申告をしないと、住民税が正しく計算されず、後から追加徴収されるリスクがあります。
令和7年(2025年)年末調整の主な改正ポイント

令和7年分の年末調整は、令和7年度税制改正により複数の控除額が変更されており、例年とは計算結果が大きく異なる可能性があります。
基礎控除の引き上げ(最大95万円)
基礎控除は従来の一律48万円から、合計所得金額に応じて最大95万円に引き上げられました。合計所得金額が132万円以下(給与収入のみの場合おおむね200万円以下)の場合に95万円が適用され、132万円超655万円以下の範囲では段階的な加算措置が設けられています。655万円超2,350万円以下の場合は58万円です。なお、132万円超655万円以下の段階的加算は令和7年・8年分の暫定措置であり、令和9年分以降は一律58万円に戻る見込みとなっています。
給与所得控除の引き上げ(65万円)
給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました。基礎控除の引き上げと合わせると、給与収入のみの場合に所得税がかからないラインは従来の103万円から引き上がり、特に低所得層で減税効果が大きくなっています。
特定親族特別控除の新設
19歳以上23歳未満の親族(特定親族)の合計所得金額が58万円超123万円以下の場合に、最大63万円を控除できる「特定親族特別控除」が新設されました。従来は扶養親族の所得要件(48万円以下)を超えると控除がゼロになっていたのに対し、段階的に控除額が減少する仕組みが導入された形です。年末調整で適用を受けるには「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要となります。
扶養親族等の所得要件の引き上げ
扶養親族の合計所得金額の要件が48万円以下から58万円以下(給与収入で123万円以下)に引き上げられました。配偶者控除の対象となる同一生計配偶者の要件も同様に引き上げられています。この変更により、パートやアルバイトで働く家族の収入上限が実質的に広がった形です。
出典:国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
年末調整でよくある間違いと修正方法

年末調整の書類作成で誤りが発生すると、控除の適用漏れや追加徴収につながりかねません。ここでは実務でよく見られるミスと、その対処法を整理します。
配偶者や扶養親族の所得金額の誤記
最も多いミスが、配偶者や扶養親族の「収入金額」と「所得金額」を混同して記入してしまうケースです。申告書に記入するのは「所得金額」であり、給与収入そのものではありません。たとえば給与収入が123万円の場合、給与所得控除65万円を差し引いた58万円が所得金額となります。この金額を正確に計算しないと、扶養控除や配偶者控除の適用判定を誤る原因となるため注意が必要です。
控除証明書の添付忘れ・記載漏れ
生命保険料控除やiDeCoの小規模企業共済等掛金控除は、保険会社や国民年金基金連合会から届く控除証明書をもとに申告書に記入し、証明書を添付する必要があります。証明書が届いていても申告書への転記を忘れたり、複数の保険契約がある場合に一部の記載を漏らしたりするケースが見られます。
提出書類に誤りがあった場合の修正方法
年末調整の書類提出後に誤りに気づいた場合、勤務先の年末調整が完了する前であれば、修正した申告書を再提出することで訂正が可能です。年末調整が確定した後に誤りが判明した場合は、翌年1月31日までであれば勤務先で再年末調整ができるケースもありますが、それ以降は確定申告(還付申告または修正申告)で対応することになります。
年末調整後に扶養親族の異動があった場合
年末調整後から年末までの間に子どもが生まれた場合や、扶養親族の所得が想定と異なっていた場合は、翌年1月末までに「扶養控除等(異動)申告書」を再提出することで対応できるケースがあります。間に合わなければ確定申告で調整する流れとなります。
年末調整だけで終わらせないための確認ポイント

年末調整は多くの控除を一括で処理できる便利な仕組みですが、これだけでは把握しきれない「控除の取りこぼし」が発生しがちです。
医療費・高額療養費との関係を確認する
年間の医療費が10万円を超えそうな場合は、医療費控除の確定申告を検討する価値があります。ただし、高額療養費制度や健康保険の付加給付で補填された金額は医療費控除の対象から差し引く必要がある点に注意が必要です。公的医療保険の給付を受けた場合は、その分を差し引いた自己負担額で医療費控除の該当可否を判断します。
ふるさと納税の控除上限を正確に把握する
ふるさと納税の自己負担2,000円で済む控除上限額は、その年の所得金額と所得控除の合計額で決まります。令和7年の改正で基礎控除額が変わった場合、控除上限額にも影響が出る可能性があるため、年末調整後の源泉徴収票を確認してから寄附額を最終調整するのが安全です。
公的保障を踏まえた控除の優先順位
iDeCoの掛金は小規模企業共済等掛金控除として年末調整で全額所得控除の対象になります。一方で、生命保険料控除には上限(一般・介護医療・個人年金それぞれ最大4万円、合計12万円)があり、保険料をいくら増やしても控除額は頭打ちとなります。公的な遺族年金(遺族基礎年金831,700円+子の加算239,300円)や高額療養費制度(自己負担月額約8~9万円程度)を把握したうえで、控除効果の大きい仕組みから優先的に活用することが、手取りの最大化への近道です。
まとめ
年末調整は給与所得者にとって最も身近な税額確定の手続きですが、すべての控除をカバーできるわけではありません。医療費控除・雑損控除・寄附金控除、さらに住宅ローン控除の初年度は確定申告が必要であり、年末調整だけで完結していると税金を取り戻す機会を逃してしまいます。
令和7年分は基礎控除・給与所得控除の引き上げや特定親族特別控除の新設など改正が多く、例年以上に源泉徴収票の確認が重要です。年末調整後に届く源泉徴収票をもとに、確定申告で追加の控除を受ける余地がないかを確認し、公的保障も組み合わせて家計全体の負担を見直す機会として活用してみてください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



