税金(一般的な内容)
扶養控除とは?2025年改正の所得要件引き上げ・特定親族特別控除・障害者控除との併用をわかりやすく解説

扶養控除は、国税庁のタックスアンサー(No.1180)によると、16歳以上の控除対象扶養親族がいる場合に所得から一定額を差し引ける制度で、扶養親族の年齢や同居の有無によって38万円〜63万円の控除が受けられます。
令和7年度税制改正では、扶養親族の合計所得金額の要件が48万円以下から58万円以下(給与収入のみの場合は103万円から123万円)に引き上げられました。さらに、19歳以上23歳未満の親族については「特定親族特別控除」が新設され、所得が58万円を超えても123万円以下なら最大63万円の控除が段階的に受けられる仕組みです。
この記事では、2025年改正後の扶養控除の全体像に加え、老人扶養親族の同居判定の実務ポイント、障害者控除との併用で得られる節税効果、16歳未満の子が住民税非課税判定に及ぼす影響などを取り上げます。
扶養控除の基本と2025年改正のポイント

令和7年度税制改正により、扶養控除の所得要件が10万円引き上げられ、これまで「103万円の壁」と呼ばれていた基準が「123万円の壁」に変わりました。ここでは改正後の扶養控除の基本を確認していきます。
扶養控除の区分と控除額
扶養控除は、扶養親族の年齢と同居の有無に応じて4つの区分に分かれており、それぞれ所得税と住民税で控除額が異なります。所得税における控除額は次のとおりです。
・一般の控除対象扶養親族(16歳以上):38万円(住民税33万円)
・特定扶養親族(19歳以上23歳未満):63万円(住民税45万円)
・老人扶養親族(70歳以上・同居老親等以外):48万円(住民税38万円)
・同居老親等(70歳以上・直系尊属で同居):58万円(住民税45万円)
特定扶養親族の控除額が63万円と突出して高い理由は、大学進学等で教育費負担が増える年代を想定した設計にあります。
一方、70歳以上の老人扶養親族は同居の有無で10万円の差がつく点に注意が必要でしょう。
2025年改正で所得要件が48万円から58万円に
令和7年度税制改正では、基礎控除の引き上げに連動して、扶養親族の合計所得金額の要件が48万円以下から58万円以下に変更されました。
給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられたため、給与収入のみの場合は65万円+58万円=123万円以下が新たな基準となっています。
この改正の施行日は令和7年12月1日で、令和7年分の所得税が適用対象です。
ただし、2025年11月までの源泉徴収事務には変更が生じないため、実務上の影響が出るのは12月の年末調整からとなります。
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
特定親族特別控除の新設で大学生世代の「壁」が緩和

2025年改正の目玉の一つが、19歳以上23歳未満の親族を対象とした「特定親族特別控除」の新設です。
国税庁のタックスアンサー(No.1177)によると、合計所得金額が58万円を超えて控除対象扶養親族に該当しなくなった場合でも、123万円以下であれば段階的に控除が受けられる仕組みになっています。
控除額は所得に応じて段階的に減少
特定親族特別控除の控除額は、特定親族の合計所得金額に応じて次のように変わります。
・合計所得58万円超〜85万円以下:63万円(扶養控除と同額)
・85万円超〜90万円以下:61万円
・90万円超〜95万円以下:51万円
・95万円超〜100万円以下:41万円
・100万円超〜105万円以下:31万円
・105万円超〜110万円以下:21万円
・110万円超〜115万円以下:11万円
・115万円超〜120万円以下:6万円
・120万円超〜123万円以下:3万円
給与収入に換算すると、年収150万円(所得85万円)までは控除額63万円が維持されるため、大学生のアルバイト収入がこの範囲内であれば、親の税負担は従来と変わりません。
年収188万円(所得123万円)までは段階的に控除が適用されるため、「稼ぎすぎると一気に控除がゼロになる」という従来の問題は解消された形です。
社会保険上の扶養基準も確認が必要
特定親族特別控除によって税制上の「壁」は緩和されましたが、社会保険上の扶養認定基準は別の仕組みで動いています。
健康保険の被扶養者要件は、一般的に年収130万円未満(60歳以上や障害者は180万円未満)が基準です。大学生の子が年収130万円を超えると親の健康保険の扶養から外れ、自身で国民健康保険に加入する必要が出てくるケースもあるでしょう。
税制上は年収188万円まで段階的に控除が受けられる一方、社会保険料の自己負担が発生するラインはそれより低い位置にあるため、「税制」と「社会保険」の両方を確認したうえで働き方を検討することが大切です。
老人扶養親族の実務ポイント:同居の判定と介護費用との関係

高齢の親を扶養に入れている場合、「同居老親等」に該当するかどうかで控除額が10万円変わります。
70歳以上の直系尊属(父母・祖父母など)で、同居を常況としている場合は58万円、それ以外は48万円です。
入院は「同居」、老人ホーム入所は「非同居」
国税庁No.1180の注記によると、病気の治療のために入院している場合は、期間が1年以上の長期にわたっても「同居」として取り扱って差し支えないとされています。
一方、老人ホーム等に入所している場合は、そのホームが居所となるため「同居」には該当しません。
この判定は実務上、高額療養費の自己負担限度額にも影響を及ぼす場面があるため注意が必要です。
親が住民税非課税になれば高額療養費の自己負担限度額区分が下がり、扶養に入れることで医療費の実質負担を抑えられる可能性もあります。
逆に、親を扶養に入れることで世帯合算の所得が上がり、介護保険料や高額介護サービス費の負担が増える場合もあります。
別居の親を扶養に入れる場合の仕送り要件
同居していない親でも、「生計を一にしている」と認められれば扶養控除の対象になります。
別居の場合は、生活費の送金事実が求められます。銀行振込の明細や現金書留の控えなどを保管しておくと、税務署から確認を求められた場合にスムーズに対応できるでしょう。
別居の老人扶養親族が遺族年金のみで生活しているケースでは、遺族年金は所得税法上の非課税所得であるため合計所得金額に含まれません。
遺族年金だけで生活している親は合計所得金額がゼロとなり、扶養親族の所得要件を満たす場合があります。
障害者控除との併用で控除額を最大化する

扶養親族が障害者に該当する場合、扶養控除と障害者控除を重複して適用できます。障害者控除は年齢による制限がなく、16歳未満の扶養親族にも適用される点が扶養控除との違いです。
障害者控除の3つの区分と控除額
障害者控除の所得税における控除額は、障害の程度と同居の有無で3段階に分かれています。
・障害者:27万円(住民税26万円)
・特別障害者:40万円(住民税30万円)
・同居特別障害者:75万円(住民税53万円)
特別障害者に該当するのは、身体障害者手帳1級・2級、精神障害者保健福祉手帳1級、療育手帳で重度(A判定)の方などです。
同居特別障害者は、特別障害者のうち納税者本人・配偶者・生計一親族のいずれかと同居を常況としている方を指します。
扶養控除+障害者控除の合算で得られる節税効果
同居している70歳以上の親が特別障害者の場合、同居老親等の扶養控除58万円に加えて同居特別障害者の障害者控除75万円が適用され、合計133万円の所得控除が受けられます。
所得税率20%の方であれば約26万6,000円、住民税(税率10%)の控除額は同居老親等45万円+同居特別障害者53万円=98万円で約9万8,000円、合わせて年間約36万円の税負担軽減となる計算です。
65歳以上で障害者手帳を持っていない方でも、市区町村に申請して「障害者控除対象者認定書」の交付を受ければ障害者控除の対象となるケースがあるため、要介護認定を受けている親がいる場合は自治体の窓口に確認してみましょう。
特定親族特別控除の対象者には障害者控除が適用されない点に注意
2025年改正で新設された特定親族特別控除の対象者(「特定親族」)は、合計所得金額が58万円を超えており、扶養親族には該当しません。
障害者控除は「扶養親族」を対象とする制度であるため、特定親族として特定親族特別控除を受けている場合、その親族について障害者控除を適用することはできません。
19歳以上23歳未満で障害者手帳をお持ちの子が、アルバイト収入で所得58万円を超えると、扶養親族から外れると同時に障害者控除の適用対象からも外れるという影響が出るため、控除の組み合わせを慎重に検討する必要があるでしょう。
16歳未満の子が住民税や公的給付に与える影響

平成23年(2011年)に16歳未満の扶養控除(年少扶養控除)は廃止されましたが、16歳未満の扶養親族の存在は住民税の非課税判定に影響を及ぼし続けています。
住民税の非課税判定と扶養親族の人数
住民税の均等割が非課税となる所得基準は、自治体ごとに定められていますが、一般的に「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の数)+31万円」という算式で求められます。
この扶養親族の数には16歳未満の子も含まれるため、年少扶養控除が廃止されていても、扶養控除等申告書に16歳未満の子を記載することが重要です。
住民税が非課税となれば、高額療養費の自己負担限度額が下がるほか、自治体の子育て支援制度や保育料の軽減措置にも影響する場合があります。
「扶養控除がないから記載しなくてよい」と考えて申告書への記載を省略してしまうと、住民税非課税の判定で不利になる可能性があるでしょう。
扶養控除を活用する際に確認すべき公的保障との関係

扶養控除は税負担の軽減策として活用されることが多いですが、単に「扶養に入れる」だけでなく、公的保障との組み合わせで家計全体への影響を確認することが欠かせません。
扶養に入れることで変わる公的保障の負担と給付
高齢の親を扶養に入れた場合、住民税の税額が変わることで高額療養費の自己負担限度額区分に影響が出ることがあります。
親を扶養に入れることで親自身は住民税非課税になり、医療費の自己負担が月額約8〜9万円(年収約370万〜約770万円の区分)から35,400円(住民税非課税世帯の区分)に下がるケースも考えられます。
一方、親を同一世帯に入れることで世帯全体の所得が合算され、介護保険料や高額介護サービス費の自己負担割合が上がる場合もあるため、扶養控除による税の軽減額と公的保障の負担増を天秤にかけて判断する視点が重要です。
遺族年金を受給する親の扶養控除判定
遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)は所得税・住民税ともに非課税とされています。
そのため、遺族年金のみで生活する親は合計所得金額がゼロとなり、他に収入がなければ扶養親族の所得要件を満たすことになります。
遺族基礎年金は令和8年度で847,300円に子の加算(第1子・第2子各243,800円)を加えた額が支給されるため、一定の生活基盤がありながらも扶養控除の対象になり得る点は見落としがちなポイントでしょう。
まとめ:扶養控除は「税の計算」だけでなく家計全体で考える
2025年の税制改正により、扶養控除の所得要件が123万円に引き上げられ、19歳以上23歳未満向けの特定親族特別控除も新設されるなど、制度の柔軟性が高まりました。
一方で、特定親族特別控除の対象者は扶養親族ではなくなるため障害者控除が適用できないなど、新制度ならではの注意点も存在します。
扶養控除は単体の節税策として考えるのではなく、高額療養費や介護保険料、住民税非課税判定など公的保障との連動を含めて判断することが、家計の負担を最小限に抑えるポイントです。16歳未満の子を申告書に記載することで住民税非課税の恩恵を受けられる場合もあるため、扶養親族に該当する家族を漏れなく確認してみてください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



