家計管理
国民健康保険料の軽減・減免制度とは?7割・5割・2割軽減や非自発的失業者軽減の条件と申請方法をわかりやすく解説

国民健康保険(国保)には、所得が低い世帯の保険料を自動的に軽減する「法定軽減」、倒産・解雇などで離職した方の保険料を大幅に引き下げる「非自発的失業者軽減」、さらに各市区町村が独自に設ける「申請減免」の3つの負担軽減制度があります。令和7年度は5割軽減・2割軽減の所得基準が引き上げられ、対象世帯が前年度より広がった点も注目です。
制度を知らずに利用していない方も少なくないため、それぞれの仕組みと利用条件を整理して紹介します。
国民健康保険料の仕組みと負担軽減制度の全体像

国保の保険料は「所得割(前年所得に応じた金額)」と「均等割(加入者1人あたりの定額)」を中心に構成されており、自治体によっては「平等割(1世帯あたりの定額)」や「資産割」が加わることもあります。会社員時代は勤務先と折半だった健康保険料が、国保では全額自己負担となるため、退職後や独立直後は保険料の高さに驚くケースが少なくありません。
こうした負担を和らげる仕組みとして、国保には大きく分けて次の3つの軽減・減免制度があるのが特徴です。
・法定軽減(7割・5割・2割):所得が一定以下の世帯に自動適用される制度
・非自発的失業者軽減:倒産や解雇で離職した方向けの特別な保険料軽減
・申請減免:災害や所得急減などの事情がある場合に市区町村へ申請する制度
これらは併用できるものもあり、知っているかどうかで年間の保険料負担が数万〜数十万円変わる可能性があります。
法定軽減(7割・5割・2割軽減)の仕組みと令和7年度の基準

法定軽減は、世帯の前年所得が一定基準以下の場合に均等割と平等割が自動的に軽減される制度で、申請は不要です。ただし、世帯全員の所得が判明していることが条件となるため、収入がなかった方も所得の申告を済ませておく必要があります。
令和7年度の軽減判定基準
令和7年度(2025年度)の軽減判定は以下の基準で行われます。世帯主と国保加入者全員の前年の総所得金額等の合計で判定します。
・7割軽減:総所得金額等が43万円以下(+給与所得者等の数が2人以上の場合は10万円×(給与所得者等の数−1)を加算)
・5割軽減:総所得金額等が43万円+30.5万円×被保険者数以下(令和6年度は29.5万円)
・2割軽減:総所得金額等が43万円+56万円×被保険者数以下(令和6年度は54.5万円)
令和7年度は5割軽減の基準が被保険者1人あたり1万円、2割軽減が1.5万円引き上げられ、軽減の対象世帯が拡大しています。
法定軽減の注意点
法定軽減で注意すべきポイントは、世帯主が国保に加入していなくても世帯主の所得が判定に含まれる点です。たとえば世帯主が会社員で健康保険に加入していても、その世帯主の所得は軽減判定の対象に含まれます。
また、確定申告や住民税申告をしていない家族がいると、所得不明扱いとなり軽減が適用されません。収入がゼロでも「収入なし」の申告が必要になるため、忘れずに手続きを行うことが重要です。
非自発的失業者に対する国民健康保険料の軽減制度

倒産・解雇・雇い止めなどで離職し、国保に加入した場合、届出により保険料が軽減される制度が平成22年4月から設けられています。対象者の前年の給与所得を100分の30(約7割減)として保険料を算定する仕組みで、在職中に近い水準の保険料で医療保険に加入できるようにすることが目的です。
対象となる方と軽減期間
対象となるのは、離職時に65歳未満で、雇用保険の特定受給資格者または特定理由離職者に該当する方です。雇用保険受給資格者証または受給資格通知に記載された離職理由コードが「11・12・21・22・23・31・32・33・34」のいずれかであれば対象となります。
軽減期間は、離職日の翌日が属する月から翌年度の3月末までです。たとえば令和7年6月15日に離職した場合、翌日の6月16日が属する月は6月なので、令和7年6月分から令和9年3月分まで軽減が適用されます。
軽減の具体的な効果
この軽減では、給与所得のみが100分の30に減額されて算定されます。事業所得や不動産所得は軽減対象外となる点に注意が必要です。
たとえば前年の給与収入が600万円(給与所得436万円)の場合、通常はこの436万円をもとに保険料が計算されますが、軽減適用後は436万円×30/100=約130.8万円として算定されます。この差により、年間の保険料が数十万円単位で下がるケースも珍しくありません。
さらに、高額療養費の所得区分判定にも同様に給与所得を100分の30として計算するため、医療費の自己負担上限額が引き下がる可能性もあります。法定軽減(7割・5割・2割)の判定においても、給与所得を30/100として算定するため、均等割の軽減が上乗せされることもあります。
届出に必要なものと手続き
軽減を受けるには、市区町村の国保窓口への届出が必要です。届出の際は「雇用保険受給資格者証」または「雇用保険受給資格通知」の原本を持参してください。自治体によっては郵送や電子申請にも対応しています。
出典:厚生労働省「倒産などで職を失った失業者に対する国民健康保険料(税)の軽減措置の創設及びハローワーク等での周知について」
申請減免(市区町村独自の減免制度)

法定軽減や非自発的失業者軽減の対象にならない場合でも、災害や所得の急激な減少といった特別な事情があれば、各市区町村が独自に設ける「申請減免」により保険料の一部または全額が差し引かれる場合があります。「減免」とは、保険料を減額または全額免除する措置のことで、本人からの申請に基づいて市区町村が個別に判断する仕組みです。
申請減免の対象となるケース
申請減免の基準は自治体ごとに異なりますが、一般的には以下のような事情がある場合に認められることがあります。
・震災・風水害・火災などの災害により財産に損害を受けた場合
・世帯主の失業、廃業、休業などにより所得が著しく減少した場合
・長期入院や疾病により収入が大幅に減った場合
たとえば大阪市では、所得減少事由が発生した月以降の世帯見込所得が前年比10分の7以下となる世帯に対し、所得割を減免率表に基づいて減免する仕組みを設けています。
申請減免の注意点
申請減免は自治体ごとに基準・減免率・対象期間が異なるため、住んでいる市区町村の国保担当窓口に直接確認する必要があります。申請期限が設けられていることが多く、遅れると適用されない場合もあるため、早めの相談が重要でしょう。
未就学児の均等割軽減と産前産後期間の保険料免除

上記の3制度に加え、子育て世帯向けの負担軽減策も近年拡充されています。
未就学児の均等割5割軽減
令和4年4月から、6歳未満の未就学児にかかる均等割額が5割軽減される制度が始まりました。公費で負担されるため、申請は不要です。法定軽減(7割・5割・2割)と併用でき、法定軽減が適用された後の均等割からさらに半額が軽減される仕組みとなっています。
産前産後期間の保険料免除
令和6年1月からは、出産する国保加入者の産前産後期間にかかる保険料(所得割・均等割)が免除される制度も開始されました。対象期間は出産予定日または出産日の前月から4か月間で、多胎妊娠の場合は3か月前から6か月間に拡大されます。届出が必要で、出産予定日の6か月前から届出が可能です。
退職後の健康保険選びと国保減免制度の活用法

退職後の健康保険の選択肢は、国保のほかに「任意継続被保険者(最長2年)」と「家族の被扶養者」の3つがあります。国保の減免制度を踏まえると、退職理由や家族構成によって最適な選択は変わります。
倒産・解雇の場合は国保が有利になりやすい
特定受給資格者や特定理由離職者に該当する場合、非自発的失業者軽減の適用により国保の保険料が大幅に下がるため、任意継続よりも国保が有利になるケースが多いと考えられます。任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額に基づく固定額で、失業者向けの軽減制度がないためです。
自己都合退職の場合は比較検討が必要
自己都合退職では非自発的失業者軽減の対象外となるため、前年所得が高い場合は国保の保険料も高額になりがちです。任意継続の保険料(標準報酬月額の上限あり)と比較した上で判断する必要があります。退職前に、任意継続の保険料見込額と国保の保険料見込額を市区町村と健康保険組合にそれぞれ確認しておくと安心でしょう。
国保には傷病手当金がない点に注意
国保と任意継続・被扶養者を比較する際に見落としがちなのが、国保には原則として傷病手当金の制度がないという点です。会社員の健康保険であれば、病気やケガで働けなくなった場合に給与の約3分の2が最長1年6か月支給されますが、国保にはこの保障がありません。保険料だけでなく、万が一の保障内容も含めて総合的に判断することが重要です。
国保の保険料負担を軽くするために確認すべきこと

国保の軽減・減免制度はいずれも「知らなければ使えない」ものが多く、特に申請が必要な制度は自分から動かなければ適用されません。退職や収入減少の際は以下の点を早めに確認しましょう。
・離職理由コードを確認し、非自発的失業者軽減の対象になるか調べる
・世帯全員の所得申告が済んでいるか確認する(法定軽減の適用条件)
・市区町村の国保窓口で申請減免の有無を確認する
・任意継続・被扶養者との保険料比較を退職前に行う
・保険料だけでなく、傷病手当金の有無や高額療養費の自己負担額も含めて判断する
公的な負担軽減制度をきちんと活用した上で、それでもカバーしきれない部分がある場合に、はじめて民間の医療保険や所得補償保険を検討するという順序が、家計の優先順位として合理的です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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