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任意継続被保険者とは?加入条件・保険料・国保との比較・退職後の健康保険の選び方をわかりやすく解説

退職後の健康保険は、任意継続被保険者・国民健康保険・家族の扶養の3つから選ぶことになります。任意継続被保険者制度は、退職前の健康保険に最長2年間加入し続けられる制度で、保険料は全額自己負担(在職中の約2倍)ですが、協会けんぽの場合は標準報酬月額の上限が32万円に設定されているため、在職中の給与が高かった方ほど有利になる場合があります。
一方、国民健康保険は前年所得に基づいて保険料が決まるため、退職翌年に所得が下がれば保険料も下がるという特徴を持っています。この記事では、任意継続の仕組みから国保との比較、退職後の健康保険を選ぶ際の判断基準まで解説します。
任意継続被保険者制度の仕組みと加入条件

任意継続被保険者制度は、退職後も最長2年間、それまで加入していた健康保険を継続できる仕組みで、加入するには2つの条件を満たす必要があります。
加入するための2つの条件
1つ目の条件は、退職日の前日までに継続して2か月以上の被保険者期間があることです。2か月は「通算」ではなく「継続」である点に注意が必要となります。ただし、退職した事業所だけで2か月以上の期間がなくても、協会けんぽや健康保険組合に1日の空白もなく継続して加入していれば条件を満たせます。
2つ目の条件は、退職日の翌日から20日以内に「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出することです。この20日間の期限を過ぎると申請できなくなるため、退職前から手続きの準備を進めておくことが重要でしょう。
加入期間と資格を失う場合
加入期間は最長2年間で、原則として保険料は2年間変わりません。ただし、以下のいずれかに該当すると2年を待たずに資格を喪失します。
・保険料を納付期日までに納めなかった場合(納付期日の翌日に喪失)
・就職して新たに健康保険の被保険者となった場合
・後期高齢者医療制度の被保険者となった場合
・本人が任意継続をやめることを申し出た場合(翌月1日に喪失)
・被保険者が亡くなった場合
2022年1月の制度改正により、本人の申出だけで任意継続をやめられるようになった点は見落としがちなポイントです。改正前は原則として2年間の途中脱退ができませんでしたが、現在は国保の保険料が下がったタイミングなどで柔軟に切り替えることが可能になっています。
任意継続の保険料の仕組みと計算方法

任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額に都道府県ごとの保険料率を掛けて算出されます。在職中は会社と折半でしたが、退職後は全額が自己負担になるため、保険料は在職中の約2倍となります。
標準報酬月額の上限と保険料率
協会けんぽの場合、任意継続の標準報酬月額には上限が設けられています。令和7年4月分からの上限は32万円(令和7年3月分までは30万円)で、退職時の標準報酬月額がこれを超えていた場合でも32万円で計算されます。つまり、在職中に高い給与を得ていた方は、実際の標準報酬月額よりも低い金額で保険料が計算される仕組みになっています。
保険料率は都道府県によって異なり、令和7年度の協会けんぽの場合は全国平均10%で、各都道府県ごとに異なる率が設定されています。40歳から64歳までの方は、これに全国一律の介護保険料率1.59%が加わります。
保険料の具体的な試算例
たとえば、退職時の標準報酬月額が36万円、東京都在住(令和7年度保険料率9.91%)、40歳以上の場合を考えてみましょう。標準報酬月額は上限の32万円が適用されるため、保険料は次のようになります。
・健康保険料:32万円 × 9.91% = 31,712円/月
・介護保険料:32万円 × 1.59% = 5,088円/月
・合計:36,800円/月(年間約44万2,000円)
在職中であれば会社が半額を負担していたため本人負担は約1万8,400円でしたが、任意継続では全額を自己負担することになります。
前納制度による割引
協会けんぽの任意継続では、保険料をまとめて前払いすると割引が適用される「前納制度」が利用できます。割引率は年4%(複利現価法)で計算され、半年分または1年分をまとめて納付することが可能です。毎月の納付忘れによる資格喪失を防ぐ効果もあるため、まとまった資金がある場合は検討する価値があるでしょう。
任意継続と国民健康保険の比較

退職後の健康保険選びで最も悩むのが、任意継続と国民健康保険のどちらを選ぶかという点でしょう。それぞれ保険料の算出方法が異なるため、同じ人でも保険料に差が出る場合があります。
保険料の決まり方の違い
任意継続の保険料は退職時の標準報酬月額を基準に2年間ほぼ一定で推移します。一方、国民健康保険の保険料は前年の所得をもとに毎年度計算し直されるため、退職翌年に収入が減少すれば保険料も下がる傾向にあります。
このため、退職1年目は任意継続の方が安く、2年目は国保の方が安くなるというパターンが多くみられます。2022年の改正で任意継続の途中脱退が可能になったことで、1年目は任意継続に加入し、2年目から国保に切り替えるという選択もしやすくなりました。
非自発的失業者の国保軽減制度
倒産や解雇などの非自発的失業に該当する場合、国民健康保険料の負担が軽減される制度があります。前年の給与所得を100分の30として算定するため、実質的に保険料が約7割軽減される計算になります。
軽減期間は離職日の翌日が属する月から翌年度末までで、65歳未満の特定受給資格者(倒産・解雇等)および特定理由離職者が対象となります。この軽減措置が適用される場合は、任意継続よりも国保の方が保険料負担が少なくなるケースが多いため、まず市区町村の窓口で保険料の見積もりを取ることをおすすめします。
出典:厚生労働省「非自発的失業者に対する国民健康保険料(税)の軽減措置の創設について」
給付内容の違いに注意
保険料の安さだけで判断すると見落としがちなのが給付内容の違いです。任意継続は原則として在職中と同様の給付を受けられますが、任意継続期間中に新たに発生した傷病手当金と出産手当金は支給されないという制約があります。在職中から継続して支給されていた傷病手当金や出産手当金は引き続き受給できますが、任意継続加入後に新たに病気やけがで働けなくなった場合には傷病手当金の対象にはなりません。
国民健康保険にはそもそも傷病手当金の制度がないため、この点では任意継続も国保も条件は同等と考えてよいでしょう。医療費の自己負担割合(原則3割)や高額療養費制度の仕組みはどちらも同じです。
家族の扶養に入るという第3の選択肢

退職後に配偶者など家族が会社員や公務員として働いている場合、その健康保険の被扶養者になるという選択肢もあります。被扶養者の保険料は追加負担が不要なため、条件を満たせば最も経済的な選択となります。
被扶養者の認定には、年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)かつ被保険者の年収の2分の1未満という条件があります。退職後に雇用保険の基本手当(失業給付)を受給する場合、日額3,612円以上であれば年間収入に換算すると130万円を超えるため、受給中は扶養に入れない点に注意が必要です。
失業給付の受給期間が終了してから扶養に入る方法や、失業給付を受けずにすぐ扶養に入る方法など、退職後の予定に応じて判断することが大切でしょう。
退職後の健康保険を選ぶ際の判断基準

3つの選択肢を比較する際は、保険料の金額だけでなく、退職後の家計全体を見渡した判断が重要になります。
保険料の比較は必ず具体的な金額で行う
任意継続の保険料は協会けんぽや健康保険組合に問い合わせることで事前に確認でき、国保の保険料は市区町村の窓口で試算してもらえます。被扶養者になれるかどうかは、家族の勤務先の健康保険組合に確認が必要です。退職前にこの3つの金額を揃えて比較することで、判断材料が明確になります。
退職後の収入見通しも考慮する
任意継続は2年間ほぼ一定の保険料ですが、国保は翌年度から前年所得に連動して変動します。早期に再就職する予定がある場合は国保の加入期間が短いため影響は限定的ですが、しばらく仕事をしない予定であれば2年目の保険料低下を見込んで判断することも選択肢の一つです。
また、退職金は国保の保険料算定の対象外(退職所得は分離課税)ですが、退職後に行う確定拠出年金の一時金受取や不動産売却などがあれば所得に影響するため、退職前後の収入全体を整理しておくことが重要でしょう。
扶養家族がいる場合の判断
任意継続では被扶養者に追加の保険料がかかりません。一方、国保には扶養の概念がないため、家族全員分の保険料が発生します。配偶者やお子さんがいる場合は、国保に切り替えると世帯全体の保険料が増加する可能性があるため、家族構成も含めて比較することが重要です。
任意継続の保険料は社会保険料控除の対象

任意継続で支払った保険料は、全額が社会保険料控除の対象となります。退職した年は年末調整を受けられないため、確定申告で控除を申告する必要があります。協会けんぽでは口座振替で納付した方に対して12月中旬に「保険料納付証明書」を送付しており、領収書の紛失時にも各支部で再発行が可能です。
納付した保険料を所得控除に反映させることで、所得税・住民税の負担を軽減できるため、確定申告は忘れずに行うことが大切でしょう。
まとめ
退職後の健康保険は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養の3つから選択します。任意継続は保険料が2年間ほぼ一定で、扶養家族がいても追加負担がないという利点がありますが、全額自己負担のため在職中の約2倍の保険料が必要です。国保は前年所得に連動するため、退職2年目以降に保険料が下がる可能性がある一方、家族全員分の保険料が発生する点に注意が必要でしょう。
2022年の制度改正で任意継続の途中脱退が可能になったことで、1年目は任意継続・2年目から国保という柔軟な切り替えも選択しやすくなりました。退職前に3つの選択肢の保険料を具体的に比較し、退職後の収入見通しや家族構成も踏まえて判断することが、退職後の家計を守る第一歩になります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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