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介護休業給付金とは?支給額・対象者・申請方法・介護離職を防ぐ公的制度の活用法をわかりやすく解説

厚生労働省の「雇用動向調査」(令和6年)によると、介護・看護を理由に離職した人は年間約9.3万人にのぼり、その約63%を女性が占めています。介護離職は収入の途絶だけでなく、将来の年金額の減少や再就職の困難さなど、長期的な家計への影響が深刻です。
こうした状況に対し、雇用保険には「介護休業給付金」という制度があり、休業前賃金の67%が対象家族1人につき通算93日まで(最大3回に分割可能)支給されます。さらに介護保険サービスや高額介護サービス費といった公的制度を組み合わせることで、介護にかかる経済的負担は想定より軽減できるケースも珍しくないのが実情です。
この記事では、介護休業給付金の支給額・対象者・申請手続きに加え、介護離職を防ぐために知っておきたい公的制度の全体像を整理して解説します。
介護休業給付金の支給額と計算方法

介護休業給付金の支給額は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」で算出され、休業中に賃金が支払われない場合は休業前の月収のおおむね67%が目安となります。ここでは計算の仕組みと具体的な金額の目安を確認しましょう。
計算式と月収別の支給額の目安
介護休業給付金の計算式は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%」です。休業開始時賃金日額は、原則として介護休業開始前6か月間の賃金総額(賞与を除く)を180で割った金額で求めます。
厚生労働省のQ&Aでは、介護休業期間中に賃金の支払いがない場合の月額支給額の目安として、以下の金額が示されています。
・月額平均15万円程度の場合:支給額は月額10万円程度
・月額平均20万円程度の場合:支給額は月額13.4万円程度
・月額平均30万円程度の場合:支給額は月額20.1万円程度
支給限度額と賃金が支払われた場合の調整
介護休業給付金には上限額が設定されており、令和7年8月1日以降の支給対象期間では上限額が356,574円に改定されています。休業前の賃金がどれだけ高くても、この上限を超える金額は支給されません。
また、介護休業期間中に勤務先から賃金が支払われた場合は、支給額が調整される仕組みです。具体的には、支払われた賃金が休業前賃金の13%未満であれば67%分の全額が支給されます。13%以上80%未満の場合は、賃金と給付金の合計が休業前賃金の80%になるよう差額が支給される計算です。賃金が80%以上支払われている場合は、介護休業給付金は不支給となります。
出典:厚生労働省「令和7年8月1日から支給限度額が変更になります」
介護休業給付金の対象者と支給要件

介護休業給付金を受給するには、雇用保険の加入要件と介護休業の取得要件の両方を満たす必要があります。要件を正しく把握しておくことが、スムーズな申請の第一歩となるでしょう。
雇用保険の加入要件
受給するための基本的な要件は以下のとおりです。
・雇用保険の被保険者であること(日雇い労働者は対象外)
・介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12か月以上あること
・介護休業後に職場復帰する意思があること(退職が前提の場合は対象外)
正社員・契約社員・パートタイマー・派遣社員など、雇用形態は問いません。65歳以上の「高年齢被保険者」も支給の対象です。
有期雇用労働者の追加要件
契約社員など有期雇用労働者の場合は、上記の要件に加えて「介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までに、労働契約が満了することが明らかでないこと」が求められます。また、労使協定が締結されている場合は、入社1年未満の労働者が介護休業の対象外とされていることがあるため、勤務先の就業規則を確認しておくとよいでしょう。
対象となる家族の範囲
介護休業給付金の対象となる「対象家族」は、配偶者(事実婚を含む)・父母(養父母を含む)・子(養子を含む)・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫の7区分です。同居や扶養の要件はありません。
対象家族が「2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態」であることが条件ですが、これは対象家族の状態に関する基準であり、実際の休業期間が2週間以上でなくても給付金は支給されます。
介護休業の取得ルールと分割取得の活用法

介護休業は対象家族1人につき通算93日を上限に、最大3回まで分割して取得できます。93日という日数は「自分が介護をする期間」ではなく、介護と仕事を両立するための体制を整える期間として設計されている点を押さえておきましょう。
93日・3回分割の使い方
93日を一度にまとめて取得することも、3回に分けて取得することも可能です。たとえば、1回目に30日間取得して介護保険サービスの手配や施設探しを行い、2回目に40日間取得して在宅介護の体制を構築し、3回目に23日間で施設入所の手続きを進めるといった使い方が考えられます。
ただし、休業期間には土日祝日も含まれるため、実際に介護に使える平日の日数は通算93日より少なくなります。この点を踏まえて計画的に分割取得を検討することが重要でしょう。
介護休業中の就労に関する注意点
介護休業期間中に就労すること自体は可能ですが、1支給単位期間(1か月)あたりの就労日数が10日を超えると、その期間の給付金は支給されません。また、休業期間が1か月未満の場合は、就業日数が10日以下で、かつ全日休業した日が1日以上あることが条件です。
介護休業給付金の申請手続きと注意点

介護休業給付金は休業期間中ではなく休業終了後に申請・支給される仕組みのため、休業中の生活費は事前に確保しておく必要があります。
申請の流れと必要書類
申請手続きは原則として勤務先を経由して行い、勤務先の事業所を管轄するハローワークに書類を提出する流れです。被保険者本人が希望する場合は、本人が直接申請することもできます。
必要書類は主に以下の2種類とその添付書類です。
・「介護休業給付金支給申請書」
・「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」
添付書類としては、介護休業申出書、対象家族との続柄を確認できる書類(住民票記載事項証明書等)、休業期間中の出勤簿や賃金台帳などが求められます。
申請期限と時効
申請期限は、介護休業終了日の翌日から2か月を経過する日の属する月の末日までです。たとえば介護休業が3月15日に終了した場合、3月16日から5月31日までが申請期間の目安となります。
万が一この期限を過ぎてしまった場合でも、介護休業終了日の翌日から2年間は時効による権利消滅までの猶予がありますが、できるだけ早めに手続きを済ませることが望ましいでしょう。
出典:厚生労働省「介護休業給付の内容及び支給申請手続について」
育児休業給付金との違い|社会保険料の免除がない点に注意

介護休業給付金と育児休業給付金は同じ雇用保険の給付制度ですが、介護休業には育児休業にはない制約がある点を理解しておく必要があります。
最も注意すべき違いは、介護休業中は社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の免除がないことです。育児休業の場合は事業主・本人双方の社会保険料が免除されますが、介護休業にはこの仕組みが適用されません。つまり、介護休業中も健康保険料と厚生年金保険料の本人負担分が発生し続ける仕組みです。
休業前の月収が30万円の場合、介護休業給付金の月額は約20.1万円ですが、ここから社会保険料(月額約4.5万円程度)が差し引かれるため、手元に残る金額は約15〜16万円程度にとどまる可能性があります。なお、介護休業給付金は非課税のため、所得税・住民税はかかりません。
介護離職を防ぐために|公的制度の「積み上げ」で備える

介護休業給付金は通算93日分という限られた給付であり、これだけで長期間の介護費用をまかなうことはできません。介護離職を防ぐためには、介護休業給付金以外の公的制度を組み合わせて活用する視点が欠かせないでしょう。
介護保険サービスと高額介護サービス費の活用
介護保険サービスは原則1〜3割の自己負担で利用でき、さらに月々の自己負担額が一定額を超えた場合には「高額介護サービス費」として超過分が払い戻されます。一般的な所得区分(課税所得380万円未満)の場合、世帯の自己負担上限額は月額44,400円です。
加えて、医療費と介護費の合算が年間の限度額を超える場合は「高額医療合算介護サービス費」による払い戻しも受けられるため、公的制度を正しく活用すれば介護にかかる自己負担には上限がある仕組みになっています。
介護休暇と短時間勤務制度の併用
介護休業(通算93日)とは別に、「介護休暇」として対象家族1人につき年5日(2人以上の場合は年10日)を1日単位または時間単位で取得できます。通院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせなど、短時間の対応が必要な場面で活用しやすい制度です。
さらに、事業主には介護のための短時間勤務制度等の措置を講じることが義務づけられています。2025年4月施行の改正育児・介護休業法では、事業主が介護に直面した従業員への個別周知・意向確認を行うことが新たに義務化されました。勤務先に制度を確認することが両立の第一歩です。
会社員と自営業者の制度的な差に注意
介護休業給付金は雇用保険の制度であるため、自営業者やフリーランスには適用されません。国民健康保険にも傷病手当金や出産手当金に相当する給付はなく、介護のために仕事を休んだ場合の所得補償は原則としてゼロとなるのが実情です。
自営業者が家族の介護に備えるには、預貯金による生活防衛資金の確保が最優先であり、就業不能保険などの民間保険を検討する場合も、まず介護保険サービスの自己負担上限や障害年金の受給要件など公的制度でカバーされる範囲を確認したうえで、不足分のみを補う形が合理的でしょう。
まとめ|介護休業給付金は「体制づくりの期間」を支える制度
介護休業給付金は、休業前賃金の67%が対象家族1人につき通算93日まで支給される雇用保険の制度です。ただし、育児休業と異なり社会保険料の免除がないため、実際の手取りは67%よりも少なくなる点に注意が必要でしょう。
93日という日数は、自分で介護をするための期間ではなく、介護保険サービスの手配や施設探し、勤務先との勤務条件の調整など、仕事と介護を両立する体制を整えるための期間として活用するのが制度本来の趣旨です。介護休業給付金に加えて、介護保険サービス・高額介護サービス費・介護休暇・短時間勤務制度など、複数の公的制度を組み合わせて活用することが、介護離職を防ぐうえで欠かせない視点となります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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