医療保険
タトゥーで生命保険・医療保険は入れる?告知・なぜばれるか・公的保障を解説

タトゥーがあると生命保険や医療保険への加入のハードルは高くなりますが、絶対に加入できないわけではなく、加入できない場合でも公的保障で備えられる範囲は想像以上に広いのが実情です。
保険会社が慎重に審査する背景には、感染症リスクや反社会的勢力との関連という観点があります。
一方で、仮に民間保険に加入できなくても、遺族年金(令和8年度:子1人の配偶者で年額約109万円)や高額療養費制度(自己負担の月額上限は年収約370万〜770万円で約8万円台)など、公的保障で備えられる部分は少なくありません。
この記事で扱うのは、タトゥーがあると保険加入が難しくなる理由と告知の注意点、加入を目指す場合のステップ、そして加入できない場合に頼れる公的保障制度と保険の必要性を見極める考え方です。
いずれも公的機関の情報をもとに整理しています。
タトゥーがあると保険加入が難しくなる理由

保険会社がタトゥーのある方の加入を慎重に判断する背景には、医学的リスク・社会的リスク・保険制度の公平性という3つの要因があります。
感染症リスクの観点
タトゥーの施術では、針を使って皮膚にインクを注入するため、施術環境が不衛生な場合は血液を介した感染症のリスクが指摘されています。
日本赤十字社では、6カ月以内にいれずみを入れた方は、肝炎等のウイルス感染の可能性が否定できないことを理由に献血を制限しています。
この献血制限は、施術時にB型肝炎やC型肝炎などのウイルスに感染するリスクがあることを示しています。
保険の引受審査でも、感染症の既往歴だけでなく将来的な発症リスクが考慮されるため、タトゥーがあること自体が審査上の不利要因となる場合があります。
反社会的勢力との関連性
日本では歴史的に、和彫りの入れ墨が反社会的勢力の象徴として認識されてきた経緯があります。
生命保険業界は反社会的勢力との関係を遮断する方針を掲げており、保険会社もこの方針に沿った引受審査を実施しています。
ファッション目的のタトゥーであっても、審査では慎重な判断がなされる傾向にある点は知っておきたいところです。
デザインがワンポイントか和彫りかによって判断が分かれるケースもありますが、対応は各社で異なります。
保険制度の公平性
生命保険は、加入者が保険料を出し合って万が一の際に支え合う「相互扶助」の仕組みで成り立っています。
保険会社は加入者間のリスクを均一に保つことで制度の公平性を維持しており、統計的にリスクが高いと判断される場合に加入を制限することがあります。
タトゥーがある方は、前述の感染症リスクなどの観点から、通常の加入者と同等のリスク水準とみなすことが難しいと判断される場合があり、これが加入制限の根拠の一つです。
告知義務と告知義務違反のリスク

保険に加入する際、タトゥーの有無は正確に告知する必要があります。
告知義務は保険法に定められた法律上の義務であり、違反した場合には深刻なペナルティが課される可能性があるためです。
告知義務違反が発覚した場合のペナルティ
タトゥーがあることを隠して保険に加入した場合、以下のリスクがあります。
・契約解除:保険会社が告知義務違反を把握した場合、保険契約を解除できる(保険法第55条・第84条)
・保険金の不払い:契約解除前に保険事故が発生していても、告知義務違反に関連する保険金は支払われない場合がある
・契約の取消し:悪質な場合は詐欺として契約自体が取り消され、支払済みの保険料も返還されない
「ばれなければ大丈夫」という考えは禁物です。保険金請求時には保険会社が医療機関への照会や調査を行うため、告知義務違反が発覚する可能性は低くありません。
特にタトゥーは身体の外見的特徴であり、入院時の診察や手術時に医師が確認するケースも考えられます。
告知の際に伝えるべき情報
告知では、タトゥーの有無だけでなく、以下の情報もできる限り具体的に伝えることが、審査を進めるうえでのポイントとなります。
・タトゥーのサイズ(ワンポイントか広範囲か)
・施術を受けた時期
・施術場所(衛生管理が行き届いた環境であったか)
・デザインの傾向(ファッション系か和彫りか)
・施術後に受けた血液検査の結果があれば、その結果
告知義務の詳細や違反時の具体的なリスクについては、以下の記事で解説しています。
生命保険の「告知義務」の重要性:正しく申告しないとどうなる?
タトゥーがあっても保険加入を目指す場合のステップ

タトゥーがあっても保険への加入は不可能ではありませんが、一般的な申込方法では断られる可能性が高く、順を追ったアプローチが必要になります。
以下の3つのステップを順に試すことで、加入の可能性を高められます。
ステップ1:対面申込で事情を詳しく伝える
ネット申込よりも対面申込の方が、審査通過率が高くなる傾向にあります。
対面であれば、タトゥーを入れた経緯や施術環境の衛生状態など、書面だけでは伝わりにくい事情を直接説明できるためです。事前に「タトゥーがあるが加入を検討したい」と相談し、対応可能かを確認したうえで申し込むのが効率的でしょう。
ステップ2:複数の保険会社に相談する
保険会社によって引受基準は異なるため、A社で断られてもB社では条件付きで加入できるケースは珍しくありません。
最低でも3~5社に相談することを前提に進めるのが現実的です。
条件付き加入の場合、以下のような特約がつくことがあります。
・部位不担保:タトゥーのある部位に関連する疾病を保障対象外とする
・保険料の割増:通常の保険料よりも高い保険料が設定される
・一定期間の保障制限:加入後一定期間は保障が制限される
ステップ3:引受基準緩和型保険・無選択型保険を検討する
通常の保険に加入できなかった場合の選択肢として、引受基準緩和型保険と無選択型保険があります。
ただし、これらは一般的な保険と比べて保障内容や保険料の面で不利な条件となる点を理解しておく必要があります。
引受基準緩和型保険は、告知項目が少なく簡単な質問に答えるだけで加入できる一方、加入後1年間は給付額が半額に削減される「支払削減期間」が設けられている商品が多く、保険料も通常より割高に設定されている点に注意が必要です。
無選択型保険は告知も医師の診査も求められませんが、免責期間(通常2年間)が設けられており、病気による死亡時は既払保険料相当額のみの支払いとなるなど、保障内容にはかなりの制限がかかります。
引受基準緩和型保険の仕組みや選び方については、以下の記事で解説しています。
【徹底解説】引受基準緩和型保険とは?持病があっても入れる保険の選び方
保険に加入できない場合に頼れる公的保障制度

保険への加入が難しかった場合でも、日本の公的保障制度は充実しており、民間保険がなくても一定水準の経済的リスクに備えることが可能です。
ここでは、死亡保障・医療保障・就業不能保障の3つの観点から、活用できる公的制度を確認します。
遺族年金:死亡保障の柱
一家の稼ぎ手が亡くなった場合、残された家族は遺族年金を受け取れます。
遺族基礎年金(国民年金加入者の遺族)の令和8年度(2026年度)の支給額は、基本額847,300円(年額)に子の加算(1人目・2人目各243,800円、3人目以降各81,300円)を加えた金額です。
たとえば子が1人いる配偶者の場合、年額約109万円(月額約9万1,000円)を受け取れます。
会社員や公務員であった場合は、これに加えて遺族厚生年金(報酬比例部分の4分の3相当額)も上乗せされるため、受給額はさらに増えます。
出典:日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」
遺族年金の詳細な受給要件や支給額については、以下の記事で解説しています。
遺族年金とは?種類(遺族基礎・遺族厚生)と受給資格者、支給額を徹底解説
高額療養費制度:医療費の自己負担を抑える仕組み
医療費が高額になった場合でも、公的医療保険に加入していれば高額療養費制度を利用できます。
この制度は、1カ月の医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される仕組みです。
たとえば年収約370万~770万円の方であれば、自己負担の上限額は月額80,100円+(総医療費-267,000円)×1%に抑えられます。
仮に総医療費100万円の手術を受けても、自己負担は約8万7,000円程度で済む計算です。
さらに、直近12カ月以内に3回以上高額療養費に該当した場合は「多数回該当」が適用され、4回目以降の上限額は44,400円まで引き下げられます。
がん治療のように長期化する場合にも、自己負担の増加に一定の歯止めがかかる仕組みです。
なお、高額療養費制度は2026年度予算の成立により、2026年8月から自己負担限度額が引き上げられることが確定しています。年収約370万~770万円の区分では、月額上限が80,100円+1%から85,800円+1%へと引き上げられ、あわせて長期療養者に配慮した年間上限(この区分で年53万円)が新設されます。
長期療養者向けの多数回該当の上限額は据え置かれるため、最新の区分や金額は厚生労働省のウェブサイトで確認しておくと安心です。
傷病手当金:就業不能時の所得保障
会社員や公務員の方が、病気やケガで仕事を休んだ場合には傷病手当金が支給されます。
支給額は、直近12カ月の標準報酬月額の平均額を30で割った金額の3分の2に相当し、最長1年6カ月にわたって受給できます。
たとえば月収30万円の方であれば、1日あたり約6,667円(月額約20万円)が支給されるため、療養中の生活費を一定程度まかなえる計算です。
なお、傷病手当金は健康保険の被保険者(会社員・公務員)が対象であり、国民健康保険の加入者(自営業者など)は原則として対象外である点に注意が必要です。
タトゥーがある場合の保険の「必要性」を見極めるポイント

保険に加入できるかどうかを考える前に、そもそも民間保険がどの程度必要なのかを冷静に見極めることが重要です。
保険比較サイトでは「保険に入る方法」が中心に語られがちですが、割増保険料を払ってまで加入することが本当に合理的なのか、立ち止まって検討してみる価値があります。
割増保険料と貯蓄の比較
引受基準緩和型保険や条件付き加入の場合、保険料は通常の1.5~2倍程度になるケースがあります。
月々の保険料が割増された分を、そのまま貯蓄や投資に回した方が合理的な場合も少なくありません。
たとえば通常の医療保険の月額保険料が3,000円のところ、引受基準緩和型では5,000円になった場合、差額の2,000円を10年間貯蓄に回せば24万円の資金になる計算です。
高額療養費制度の自己負担上限が月8万円台であることを踏まえると、この貯蓄額で約3カ月分の自己負担に対応できます。
公的保障で足りない部分だけを保険で補う
保険の必要性を判断するうえで重要なのは、「公的保障でカバーできない部分」を明確にすることです。
・死亡保障:遺族年金だけでは教育費や住宅ローン残債をカバーしきれない場合、不足分を死亡保険で補う
・医療保障:高額療養費制度の対象外となる個室代(差額ベッド代)や先進医療の技術料に備えたい場合に医療保険を検討する
・就業不能保障:傷病手当金の支給期間(1年6カ月)を超えて働けない場合や、自営業で傷病手当金が出ない場合に就業不能保険を検討する
このように、公的保障を基盤としたうえで「不足する部分のみ」を民間保険で補うと考えれば、タトゥーがあって保険加入が難しくても、経済的に無防備な状態になるわけではないことが見えてきます。
まとめ
タトゥーがある場合、保険加入のハードルが高くなることは事実ですが、絶対に加入できないわけではありません。
対面申込の活用、複数社への相談、引受基準緩和型保険の検討といったステップを踏むことで、加入の可能性を高められます。
そして仮に保険加入が難しかった場合でも、日本には遺族年金・高額療養費制度・傷病手当金といった公的保障が整備されているため、過度に不安を感じる必要はないといえるでしょう。保険に入れない=経済的に無防備、ではありません。
まずは公的保障で何がカバーされるのかを把握し、不足する部分だけを民間保険で補う視点が、合理的な備え方の第一歩になります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司による執筆です。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムでご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズにお調べいただけるでしょう。



