家計管理
シングルマザー・シングルファザーが使える支援制度一覧|児童扶養手当・医療費助成・就業支援を総まとめ

厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯の母の平均年間就労収入は236万円、世帯全体の平均年間収入は373万円で、児童のいる世帯の平均収入の5割に満たない水準です。
一方で、ひとり親世帯が利用できる公的支援制度は、現金給付・医療費助成・就業支援・住宅支援・貸付制度と多岐にわたり、制度を組み合わせることで家計の負担を軽減できる可能性があります。
ここでは、ひとり親世帯が利用できる主な公的支援制度を横断的に整理し、制度を「積み上げ」で活用するための全体像を解説していきましょう。
ひとり親世帯の現状と支援制度の全体像

ひとり親世帯を取り巻く経済状況と、利用可能な支援制度の全体像を把握しておくことが、制度活用の第一歩になります。
ひとり親世帯の経済状況
令和3年度の全国ひとり親世帯等調査では、母子世帯数は約119.5万世帯、父子世帯数は約14.9万世帯と報告されています。
母子世帯の母の就業率は86.3%と高い水準にあるものの、雇用形態をみると正規雇用が48.8%、パート・アルバイト等が38.8%という構成です。
母の平均年間就労収入は236万円で、父子世帯の父(496万円)と比べると約半分にとどまっています。
この収入格差の背景には、離婚後に就業形態が変わるケースや、子どもの年齢によりフルタイム勤務が難しい事情があるでしょう。支援制度を適切に活用することで、就労収入だけではカバーしきれない部分を補い、家計全体の安定につなげることが重要です。
支援制度は4つの柱で構成される
ひとり親世帯向けの支援制度は、大きく分けて「現金給付」「医療費助成」「就業支援」「住宅・生活支援」の4つの柱で構成されています。
国の制度として全国共通のものと、自治体独自の上乗せ制度がある点に注意が必要です。
いずれも申請しなければ受けられない制度のため、制度の存在を知り、早めに手続きを進めることが家計改善の鍵を握ります。
現金給付の柱|児童扶養手当と児童手当

ひとり親世帯の家計を支える中核となるのが、児童扶養手当と児童手当の2つの現金給付制度です。
児童扶養手当の支給額と所得制限
児童扶養手当は、ひとり親世帯に対して支給される国の制度で、令和7年度の全部支給額は子ども1人目が月額46,690円となっています。
2人目以降の加算額は全部支給で月額11,030円です。
令和6年11月の改正により、3人目以降の加算額も2人目と同額に引き上げられました。
所得制限があり、受給者本人の所得に応じて全部支給・一部支給・全部停止が決まる仕組みです。
扶養親族が1人の場合、全部支給の所得制限限度額は給与収入ベースで約190万円、一部支給の上限は約385万円となっています。
養育費を受け取っている場合は、その8割が所得に加算される点に注意してください。
支給は年6回(奇数月)で、認定請求をした月の翌月分から開始されるため、対象となる場合は早めの申請が望ましいでしょう。
児童手当との併給
児童扶養手当は児童手当と併給が可能です。
令和6年10月の制度改正により、児童手当は所得制限が撤廃され、18歳到達後の最初の3月31日までの子どもが対象に拡大されています。
第3子以降は月額30,000円に増額されており、ひとり親世帯にとっても家計の支えになる制度です。
子ども2人の世帯であれば、児童扶養手当(全部支給)と児童手当を合わせて月額約7.8万円の現金給付を受けられる計算になります。
医療費の負担軽減|ひとり親家庭等医療費助成制度

ひとり親世帯の医療費負担を軽減する制度として、各自治体が独自に実施しているひとり親家庭等医療費助成制度があります。
助成内容は自治体ごとに異なる
この制度は、ひとり親家庭の親と子どもが医療機関を受診した際の自己負担額を助成するものです。
ただし、国の統一制度ではなく自治体ごとの実施であるため、助成の範囲や所得制限は住んでいる地域によって異なります。
たとえば東京都の場合、ひとり親家庭医療証(マル親)が交付されると、保険診療の自己負担が1割に軽減されます。
住民税非課税世帯であれば自己負担が発生しないケースもあるでしょう。
対象は18歳到達後の最初の年度末までの子どもと、その親です。
高額療養費制度との組み合わせ
ひとり親家庭等医療費助成制度は、健康保険の高額療養費制度と組み合わせて利用できる場合があります。
住民税非課税世帯であれば高額療養費の自己負担上限は月35,400円となり、さらに医療費助成で実質的な窓口負担がゼロに近づくケースも想定されるでしょう。
入院や手術が必要になった場合の備えとして、加入している健康保険の限度額適用認定証も併せて活用するのが効果的です。
就業支援制度|資格取得と収入アップを目指す

ひとり親世帯の経済的自立にとって、就業収入の向上は根本的な解決策といえます。国と自治体は、資格取得から就職支援まで複数の制度を用意しています。
高等職業訓練促進給付金
看護師・介護福祉士・保育士などの国家資格を取得するために6か月以上養成機関で修業する場合に、住民税非課税世帯で月額10万円(課税世帯は月額70,500円)が修業期間中に支給される制度です。
修業期間の最後の12か月間は月額4万円が増額されるため、非課税世帯であれば月額14万円を受け取れる計算になります。
養成機関を修了した際には、修了支援給付金として非課税世帯に5万円(課税世帯は25,000円)が別途支給されます。
さらに、入学準備金(50万円以内)と就職準備金(20万円以内)の貸付制度もあり、資格取得後5年間の就労継続で返還が免除される仕組みです。
自立支援教育訓練給付金
雇用保険の教育訓練給付の指定講座を受講した場合に、受講費用の60%(上限は一般教育訓練で最大20万円、専門実践教育訓練で修学年数×40万円・最大160万円)が支給される制度です。
雇用保険の教育訓練給付金を受給できる場合は、その差額分が支給対象となります。
受講開始前に自治体から講座の指定を受ける必要があるため、事前相談が欠かせません。
高等職業訓練促進給付金とは異なり、6か月未満の短期講座にも対応しているのが特徴です。
出典:こども家庭庁「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業」
住宅・生活支援|住まいと日常生活を支える制度

住居費は家計支出のなかで多くの割合を占めるため、住宅に関する支援制度を把握しておくことも欠かせません。
住宅支援資金貸付事業
母子・父子自立支援プログラムの策定を受けたひとり親で、児童扶養手当を受給している方を対象に、住居の借り上げに必要な資金として月上限7万円を最大12か月間貸し付ける制度です。
貸付を受けた日から1年以内に就職し、1年間引き続き就労を継続した場合は返還が全額免除されます。
この制度の利用にあたっては、福祉事務所等で自立支援プログラムを策定してもらう手続きが先に必要となります。
母子父子寡婦福祉資金貸付金
ひとり親世帯の経済的自立を支援するために、12種類の資金が無利子または低利子で貸し付けられる制度です。
修学資金・就学支度資金・技能習得資金・転宅資金・住宅資金・医療介護資金・生活資金など、生活のさまざまな場面に対応しています。
たとえば修学資金は、子どもの高校・大学の授業料等に充てることができ、子ども本人が借主となる場合は無利子で借りられます。
返済は卒業後に開始されるため、教育費の準備が間に合わない場合の選択肢として有効でしょう。
公営住宅の優先入居
自治体によっては、ひとり親世帯向けに公営住宅の優先入居枠を設けている場合があります。
収入基準を満たせば民間賃貸よりも低い家賃で入居でき、住居費の大幅な削減が期待できるでしょう。
自治体の住宅課や福祉課に確認してみてください。
税制上の優遇|ひとり親控除と住民税非課税の効果

ひとり親世帯には税制面での優遇措置も用意されており、これが他の支援制度の利用可否に影響を与える点も見逃せません。
ひとり親控除の概要
ひとり親控除は所得税35万円・住民税30万円の所得控除で、合計所得金額が500万円以下のひとり親が対象となります。
婚姻歴の有無を問わず、未婚のひとり親も対象に含まれるのが特徴です。
性別による区別もなく、シングルファザーにも同じ控除額が適用されます。
住民税非課税の判定とその波及効果
障害者・未成年者・寡婦またはひとり親に該当する場合、合計所得金額が135万円以下(給与収入で約204.4万円未満)であれば住民税が非課税になります。
住民税非課税世帯に該当すると、高額療養費の自己負担上限が月35,400円に下がるほか、ひとり親家庭等医療費助成の自己負担がゼロになる自治体もあります。
さらに、高等職業訓練促進給付金の支給額が月額10万円に増えるなど、他の支援制度でも有利な条件が適用される場合があるでしょう。
住民税の課税・非課税は複数の制度に波及するため、所得の管理と合わせて意識しておきたいポイントです。
その他の支援制度|知っておきたい細かな制度

現金給付や就業支援のほかにも、ひとり親世帯が利用できる制度は複数あります。見落としやすい制度もあるため、確認しておきましょう。
JR通勤定期の特別割引
児童扶養手当の受給世帯は、JRの通勤定期乗車券を通常価格の3割引で購入できる特別割引制度があります。通勤にJRを利用している場合は、年間で数万円の節約につながることもあるでしょう。
ひとり親家庭等日常生活支援事業
一時的に家事や育児が困難になった場合に、家庭生活支援員を派遣してもらえる制度です。
修学や疾病、冠婚葬祭、就職活動などの事由に該当すれば利用できるケースがあります。
実施の有無や利用条件は自治体によって異なるため、居住地の福祉課への問い合わせが必要です。
高校卒業程度認定試験合格支援事業
ひとり親家庭の親または子どもが、高卒認定試験の合格を目指して対策講座を受講する場合に、受講費用の一部が支給されます。
受講開始時・受講修了時・合格時の3段階で給付が受けられ、合計で受講費用の最大6割(通信制は上限15万円、通学制は上限30万円)が支給される仕組みです。
支援制度を「積み上げ」で活用するための考え方

個々の制度を単体で見るだけでなく、複数の制度を組み合わせた「積み上げ」の視点を持つことで、家計全体の改善効果が見えてきます。
制度の積み上げで実質手取りを可視化する
たとえば、子ども2人を養育するひとり親で給与収入が200万円の場合を想定してみましょう。
児童扶養手当(全部支給で月額約5.8万円)+児童手当(月額2万円)+ひとり親控除による税負担の軽減+医療費助成による窓口負担の軽減を合わせると、就労収入だけでは見えない「実質的な可処分所得」が浮かび上がります。
さらに、住民税非課税に該当する場合は高額療養費や国民健康保険料の軽減措置も加わるため、支出面での恩恵も合わせて考えることが重要です。
こうした制度の積み上げを把握しておくことが、民間保険の必要性を判断する際の基礎にもなるでしょう。
収入が増えたときの「壁」に注意する
就業支援を活用して収入が増えると、児童扶養手当が全部支給から一部支給に変わったり、住民税非課税世帯から外れたりする場合があります。
収入増加と給付減少のバランスを意識し、手取り全体が減ってしまう「逆転現象」が起きないかを事前に確認しておくことが大切です。
一般的には、収入が増えても手取りが減少する逆転現象は起きにくい設計になっていますが、住民税の課税・非課税のラインをまたぐ場合は複数の制度に影響が出る可能性があるため、慎重な判断が求められます。
まとめ
ひとり親世帯が利用できる支援制度は、児童扶養手当・医療費助成・高等職業訓練促進給付金・住宅支援資金貸付・ひとり親控除など多岐にわたっており、これらを組み合わせることで家計の安定につなげることが可能です。
制度の多くは申請主義のため、知らなければ受けられないという構造的な課題もあります。
特に就業支援制度は、短期的な給付にとどまらず、資格取得を通じた長期的な収入向上を目指す仕組みであり、活用の効果が持続する点が特徴でしょう。
まずは居住地の自治体窓口やひとり親家庭等就業・自立支援センターに相談し、利用可能な制度の全体像を把握することから始めてみてください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



