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iDeCoの掛金上限引き上げの可能性は?制度改正の議論状況

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金が全額所得控除になることで、現役時代の節税に大きく貢献する老後資金準備のための制度です。しかし、現在の掛金上限額では、老後資金の目標額に届かないと感じる方もいるかもしれません。近年、このiDeCoの掛金上限額について、政府や専門家の間で大幅な引き上げが検討されています。
この記事では、iDeCoの掛金上限額に関する政府や専門家の議論状況を詳しく解説します。そして、もし掛金上限が引き上げられた場合に、それが加入者や老後資金計画に与える具体的なメリットと影響を掘り下げます。iDeCo制度の最新動向を把握し、あなたの資産形成戦略をアップデートするためのヒントを提供します。
掛金上限額に関する政府や専門家の議論状況

iDeCoの掛金上限額は、働き方や企業の年金制度によって異なりますが、現在の社会情勢や制度の課題を踏まえ、その見直しが議論されています。
現行制度の課題
・NISAとのアンバランス: 新NISAの年間投資枠が360万円(生涯で1,800万円)と大幅に拡大された一方で、iDeCoの掛金上限額は会社員で月2.3万円(年間27.6万円)など、依然として限られています。より多くの老後資金を準備したい場合、この掛金上限が制約となり、十分な節税メリットを享受できないという課題がありました。
・長寿化社会への対応: 人生100年時代と言われる中、老後期間が長くなるため、公的年金だけでは不足する老後資金の自助努力による準備がより一層重要になっています。iDeCoの掛金上限額が低いと、必要な老後資金を十分に準備できない可能性があります。
政府や専門家の議論状況
これらの課題を背景に、政府は「貯蓄から投資へ」の流れを加速させ、国民の老後資金準備を支援するため、iDeCo制度のさらなる拡充を検討しています。
2025年度税制改正大綱:
・会社員(企業年金なし)のiDeCo掛金上限額を、現在の月額2.3万円から月額6.2万円へ大幅に引き上げることが決定済みです。これは、企業型DCの掛金上限とのバランスを取る形での見直しです。
・自営業者(第1号被保険者)の掛金上限も、現在の月額6.8万円から月額7.5万円への引き上げが決定しています。
・これらの改正は、2025年度税制改正大綱で決定されており、国会審議を経て確定します。
掛金上限が引き上げられた場合のメリットと影響

iDeCoの掛金上限が引き上げられると、あなたの老後資金計画に以下のような大きなメリットと影響が生まれます。
「所得控除」による節税メリットが最大化される
iDeCoの掛金は全額所得控除になるため、掛金上限額が増えれば、その分、現役時代の所得税・住民税の軽減効果が格段に大きくなります。
節税額のシミュレーション:
・年収800万円(所得税率20%)の会社員(企業年金なし)が、掛金上限が引き上げられた後、月6.2万円を拠出したと仮定します。
・年間拠出額は74.4万円。
・年間節税額:74.4万円 × (所得税率20% + 住民税率10%) = 22万3,200円
・現在の月2.3万円(年間27.6万円)の拠出では年間8.28万円の節税なので、年間で約14万円も節税額が増える可能性があります。
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運用益非課税の恩恵をより多く受けられる
掛金上限が引き上げられ、iDeCoに拠出できる元本が増えることで、運用益非課税の恩恵をより多く受けられます。
・複利効果の加速: 拠出できる元本が増えれば、運用益が非課税で再投資される金額も大きくなり、複利の効果がさらに加速します。これにより、老後資金の目標額に到達するまでの期間を短縮できる可能性があります。
・老後資金の目標達成: これまでの上限額では老後資金の目標に届かなかった方も、掛金上限の引き上げにより、iDeCoだけで目標額を達成しやすくなります。
老後資金計画の柔軟性と選択肢の増加
・「自分で作る退職金」の額が増える: 退職金制度がない、あるいは退職金が少ない会社員の方にとって、iDeCoを「自分で作る退職金」と捉えることができます。掛金上限が引き上げられることで、この「自分で作る退職金」の額を大きく増やし、より安心できる老後を築けます。
・NISAとの役割分担の明確化: iDeCoの掛金上限が増えれば、老後資金のコア(核)となる部分をiDeCoで手厚くカバーし、NISAは老後資金以外の目的(教育資金、住宅資金など)や、iDeCoの掛金上限を超える分の資金に充てるといった、役割分担がより明確になります。
まとめ:iDeCoの掛金上限引き上げは「追い風」!
iDeCoの掛金上限額の引き上げは、老後資金の準備を加速させる「追い風」です。これが実現すれば、現役時代の節税メリットを大幅に拡大し、より効率的に老後資金を形成できるようになります。
・最新の議論状況を把握し、制度変更に備えましょう。
・掛金上限が引き上げられたら、家計に無理のない範囲で増額を検討し、税制メリットを最大限に活かしましょう。
・所得控除の拡大と運用益非課税の恩恵を享受することで、あなたの老後資金計画は、より現実的で、より豊かなものになるでしょう。
iDeCoの制度改正は、あなたの資産形成のチャンスをさらに広げるものです。ぜひこの機会に、iDeCoの活用を再検討してみてください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。