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iDeCoの投資信託は「低コスト」で選ぶ|信託報酬が長期リターンに与える影響

iDeCo(個人型確定拠出年金)で老後資金を準備する際、運用商品の中心となるのが投資信託です。投資信託には「信託報酬」という運用コストが毎日かかっており、このコストの差が長期運用では数百万円の差になる場合があります。iDeCoは原則60歳まで引き出せない長期運用が前提であるため、コストの影響は特に大きいでしょう。この記事では、信託報酬が長期リターンに与える影響を具体的な数字で示したうえで、コストを重視したファンド選びのポイントを解説します。
信託報酬が長期リターンに与える影響|数%の差が数百万円の差に

信託報酬は、投資信託の運用・管理にかかる費用として、保有期間中に毎日資産から差し引かれます。「毎日引かれる」という仕組みのため、日々の影響は小さく感じられますが、長期運用では複利効果を通じて影響が拡大します。
シミュレーション:毎月2万円を30年間積立・年率5%運用の場合
・信託報酬0.1%のファンド:最終資産額 約1,644万円
・信託報酬1.0%のファンド:最終資産額 約1,489万円
・信託報酬2.0%のファンド:最終資産額 約1,353万円
信託報酬0.1%と2.0%の差は約291万円。同じ積立額・同じ運用利回りであっても、信託報酬の差だけでこれだけの差が生じます。コストが低ければより多くの利益が再投資に回り、複利効果が加速する一方、コストが高ければ複利の恩恵が削がれてしまう仕組みです。
※上記は積立投資の複利計算式(将来価値)を用いた概算であり、将来の運用成果を保証するものではありません。実際の運用成果は市場環境により変動します。
信託報酬以外の「隠れたコスト」も確認する

投資信託のコストは信託報酬だけではありません。以下の費用も確認し、全体としてコストの低いファンドを選びましょう。
信託財産留保額
投資信託を換金(売却)する際にかかる費用で、売却代金から差し引かれる仕組みです。投資家間の公平性を保つ目的で徴収されるもので、iDeCoでスイッチング(運用商品の変更)を行う際にも発生します。信託財産留保額がゼロまたは低いファンドを選ぶと、スイッチング時の負担を抑えられます。
その他の費用(実質コスト)
信託報酬とは別に、監査費用や有価証券売買手数料などが発生します。これらは毎年変動するため、信託報酬だけでは実際のコストを把握しきれないでしょう。投資信託の「運用報告書」に記載されている「実質コスト」を確認すると、信託報酬を含めた実際の年間コストがわかります。
購入時手数料
iDeCoで提供される投資信託のほとんどは購入時手数料が無料(ノーロード)ですが、念のため確認しましょう。
コストを重視したファンド選びのポイント

iDeCoの長期運用では、以下のポイントを重視してファンドを選びましょう。
インデックスファンドが低コストの基本
特定の株価指数(全世界株式・S&P500など)に連動する運用成果を目指すインデックスファンドは、銘柄選定や売買の頻度が少ないため、信託報酬が低い傾向にあります。市場平均を上回るリターンを目指すアクティブファンドは信託報酬が高く、長期的にインデックスファンドのパフォーマンスを上回り続けることが難しいという研究結果も多いため、まずはインデックスファンドから検討するのが堅実です。
出典:金融庁「新しいNISA」(つみたて投資枠の対象商品の考え方も参照)
全世界株式型かS&P500型が代表的な選択肢
・全世界株式インデックスファンド:先進国から新興国まで世界中の株式に分散投資。1本で地域分散が完結する。信託報酬は年0.05〜0.15%程度の商品もある
・S&P500インデックスファンド:米国の主要500社に投資。過去の成長実績が高い一方、米国に集中するリスクがある。信託報酬は全世界株式型と同程度
どちらを選ぶかは投資方針次第ですが、信託報酬が業界最低水準であることを確認したうえで選ぶことが重要です。
金融機関のラインナップを事前に確認する
iDeCo口座を開設する金融機関によって、選べる運用商品のラインナップが異なります。口座管理手数料が無条件で無料であることを前提に、低コストの主要なインデックスファンドが揃っているかを確認してから金融機関を選びましょう。金融機関を一度選ぶと変更手続きに手間がかかるため、最初の選択が重要です。
まとめ|iDeCoの長期運用では「低コスト」が成果を左右する
iDeCoの投資信託選びで最も重要なのは、コストを意識することです。
・信託報酬の差は30年間で数百万円の差になる。毎月2万円・年率5%運用の場合、信託報酬0.1%と2.0%で約291万円の差
・信託報酬だけでなく信託財産留保額・実質コストも確認する
・インデックスファンドが低コストの基本。全世界株式型またはS&P500型が代表的な選択肢
・金融機関によってラインナップが異なるため、低コストのファンドが揃っているかを事前に確認してから口座を開設する
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象であり、運用益も非課税です。この税制優遇の恩恵を最大限に引き出すためにも、運用コストを最小限に抑えて複利効果を活かすことが、老後資金を着実に増やす鍵となります。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



