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iDeCoは60歳以降も運用継続できる|受取時期の判断と資産寿命を延ばす考え方

iDeCo(個人型確定拠出年金)は原則60歳から受け取りが可能ですが、60歳になったからといってすぐに受け取る必要はありません。受取開始を遅らせて最長75歳まで非課税で運用を継続できるため、公的年金の受給開始時期や退職金との兼ね合いを踏まえて受取タイミングを判断することが重要です。この記事では、60歳以降の運用継続のメリットと注意点、受取時期の判断基準を解説します。
60歳以降も最長75歳まで非課税で運用を継続できる

iDeCoの資産は、受け取りを開始するまで最長75歳まで非課税で運用を継続できます。運用期間中は投資信託の売却益や配当金、預貯金の利息などすべての運用益が非課税のため、受取開始を遅らせるほど非課税運用の恩恵を長く享受できる仕組みです。
掛金拠出と運用継続は期間が異なる
掛金を拠出できる期間は現行制度では原則65歳未満までですが、年金制度改正法(2025年6月公布)により、将来的に70歳未満まで延長される予定です(公布から3年以内に施行)。一方、運用は75歳まで継続可能であるため、65歳(または70歳)で掛金の拠出が終了した後も、受取開始まで非課税で運用し続けることができます。
60歳以降の運用継続で期待できる効果
たとえば60歳時点で1,500万円の資産がある場合、これを受け取らず70歳まで年率3%で運用を継続すると、資産は約2,016万円に増加する計算です(約516万円の増加分が非課税で受け取れる)。もちろん運用成果は市場環境により変動しますが、非課税で運用を続けられる期間が長いほど複利効果の恩恵は大きくなるでしょう。
受取時期の判断基準|公的年金・退職金との兼ね合い

iDeCoの受取時期は「いつ受け取るか」だけでなく、公的年金や退職金との兼ね合いで税負担が変わるため、慎重に判断する必要があります。
公的年金の受給開始時期との関係
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の受給開始は原則65歳ですが、繰下げ受給を選択すれば最長75歳まで遅らせることが可能です。繰下げた場合、年金額は1か月あたり0.7%増額されます。60〜64歳の間はiDeCoの資産を取り崩して生活費に充て、65歳以降は公的年金をメインの収入源とする設計も選択肢の一つでしょう。
出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給」
退職所得控除の「10年ルール」を踏まえて設計する
iDeCoを一時金で受け取る場合、退職所得控除が適用されますが、退職金を先に受け取った後にiDeCoの一時金を受け取る場合、両者の間隔が10年以内だと控除額が調整される仕組みです(2026年1月1日以降の受取分から適用)。60歳で退職金を受け取り、70歳以降にiDeCoの一時金を受け取れば、10年ルールの影響を回避できる可能性があります。
年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」を活用
iDeCoを年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用されます。65歳以上は年間110万円まで非課税枠があり、公的年金と合算して110万円以内であれば課税所得はゼロになります。ただし、公的年金の受給額が多い場合は合算額が控除枠を超え、課税対象となるため、公的年金の見込額とiDeCoの年金受取額の合計を事前にシミュレーションしましょう。
60歳以降の運用で意識すべきポイント

60歳以降は「資産を増やすフェーズ」から「資産を使うフェーズ」に移行する時期です。運用を継続する場合も、以下の点を意識しましょう。
リスクを段階的に引き下げる
受取時期が近づくにつれて、株式型投資信託の比率を減らし、債券型投資信託や元本確保型商品(定期預金など)の比率を高めることで、市場の急落による資産の目減りリスクを抑えられます。iDeCoのスイッチング機能を活用すれば、運用商品の入れ替えは手数料なしで行えます(信託財産留保額が設定されているファンドを除く)。
口座管理手数料は継続して発生する
運用を継続する間も、国民年金基金連合会や信託銀行に支払う口座管理手数料は引き続き発生します。資産が少額の場合、手数料が運用益を上回る可能性もあるため、運用継続のメリット(非課税運用)と手数料のバランスを考慮して判断しましょう。
75歳までに受け取りを開始する必要がある
iDeCoの資産は75歳までに受け取りを開始する必要があります。75歳を過ぎると自動的に一時金として支給されるため、計画的に受取時期を決めておくことが重要です。
まとめ|受取時期は公的年金・退職金との兼ね合いで判断する
iDeCoの60歳以降の運用継続について整理すると、以下のようになります。
・iDeCoの資産は最長75歳まで非課税で運用継続が可能。受取開始を遅らせるほど非課税運用の恩恵が大きくなる
・公的年金の受給開始時期(繰下げ受給で最長75歳まで可能)との連携を考慮する
・退職所得控除の10年ルール(2026年1月適用)を踏まえ、退職金とiDeCoの受取時期を10年以上ずらす設計も検討する
・年金形式で受け取る場合は公的年金等控除(65歳以上は年間110万円の非課税枠)を活用。公的年金の見込額との合算で課税額をシミュレーションする
・60歳以降はリスクを段階的に引き下げ、資産を守る運用にシフトする
60歳到達時に「すぐ受け取るか、運用を続けるか」を判断するには、公的年金の見込額・退職金の有無と受取時期・生活費の見通しを事前に把握しておくことが出発点です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



