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iDeCoの受け取り方と税金|退職所得控除・公的年金等控除の仕組みと2026年「10年ルール」の影響

iDeCo(個人型確定拠出年金)は掛金の所得控除や運用益の非課税といった税制メリットが注目されますが、受け取り時にも税金がかかる点を見落としがちです。受け取り方は「一時金」「年金」「併用」の3パターンがあり、それぞれ適用される控除が異なるため、選択次第で手取り額に数十万円の差が生じる場合もあります。さらに、2026年1月からはiDeCoの一時金と退職金の受取間隔ルールが「5年」→「10年」に変更されるため、退職金がある方は受け取り戦略の見直しが必要です。この記事では、iDeCoの受け取り方ごとの税金の仕組みと、2026年の制度変更が手取りに与える影響を整理します。
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
受け取り方は3パターン|それぞれの税金の仕組み

iDeCoの受け取りは原則60歳から75歳までの間に開始でき、「一時金」「年金」「併用」の3パターンから選択できます。
一時金で受け取る場合→退職所得控除が適用
一時金で受け取る場合は「退職所得」として扱われ、退職所得控除が適用されます。退職所得は他の所得と分離して課税(分離課税)されるため、税率が抑えられるのが特徴です。
退職所得の計算式:(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2
退職所得控除額の計算(iDeCoの場合、勤続年数=掛金拠出期間):
・加入期間20年以下:40万円 × 加入年数(最低80万円)
・加入期間20年超:800万円 + 70万円 ×(加入年数 − 20年)
たとえば加入期間25年・一時金1,200万円の場合、退職所得控除額は800万円+70万円×5年=1,150万円。退職所得は(1,200万円−1,150万円)×1/2=25万円となり、税負担はわずかで済みます。
年金で受け取る場合→公的年金等控除が適用
年金形式で受け取る場合は「雑所得」として扱われ、公的年金等控除が適用されます。老齢基礎年金・老齢厚生年金と合算して控除額が計算される点が重要です。
公的年金等控除額の目安(公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円以下の場合):
・65歳未満:年間60万円まで非課税
・65歳以上:年間110万円まで非課税
60歳から64歳の間は公的年金の受給が始まっていないケースが多いため、この期間にiDeCoを年金形式で受け取れば年間60万円×5年=最大300万円を非課税で受け取れる可能性があります。
出典:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
併用(一時金+年金)で受け取る場合
iDeCoの資産の一部を一時金で、残りを年金で受け取る「併用」も選択可能です。退職所得控除の枠を使い切る分は一時金で受け取り、超過分は年金形式にすることで、両方の控除を活用して税負担を分散できます。退職金が多い方にとっては、この併用が最も合理的な選択肢になることが多いでしょう。
2026年1月の制度変更|「5年ルール」が「10年ルール」に

iDeCoと会社の退職金をどちらも一時金で受け取る場合、退職所得控除の重複調整ルールが適用されます。このルールが2026年1月から大幅に変更されました。
改正の内容
・iDeCoの一時金→退職金の順で受け取る場合:受取間隔が5年→10年に延長。10年以上空けなければ、退職金側の退職所得控除額が調整(減額)される
・退職金→iDeCoの一時金の順で受け取る場合:従来どおり19年ルール(20年空ける必要あり)が適用。変更なし
この改正の影響を受けるのは、主に「65歳定年で退職金を受け取る予定があり、かつiDeCoも一時金で受け取りたい方」です。従来は60歳でiDeCo一時金、65歳で退職金という5年間隔の受け取りでそれぞれフルに控除を活用できましたが、2026年以降はこの戦略が使えなくなります。
影響を受ける場合の対応策
・受取間隔を10年以上空ける(例:55歳でiDeCo一時金、65歳で退職金)
・iDeCoの一部または全部を年金形式で受け取る→年金形式なら退職所得ではなく雑所得のため、10年ルールの影響を受けない
・iDeCoと退職金の併用受取(退職所得控除の枠内は一時金、超過分は年金)で税負担を最適化
会社員と自営業者で判断基準が異なる

iDeCoの受け取り戦略は、退職金の有無によって最適解が変わります。
・会社員(退職金あり):退職金とiDeCoの一時金が合算されるため、退職所得控除の枠を超えやすい。受取時期のずらし、または年金形式の活用が重要
・自営業者(退職金なし):退職所得控除の枠をiDeCoの一時金だけで使えるため、一時金で受け取った方が有利になるケースが多い。小規模企業共済がある場合は合算されるため注意
・公的年金の受給額が多い方:年金形式だと公的年金と合算して控除枠を超えやすいため、一時金の方が有利な場合がある
最適な受け取り方は退職金の額・公的年金の受給見込額・他の所得によって異なるため、受け取り開始の数年前からシミュレーションしておくことが重要です。
まとめ|iDeCoの受け取りは「出口戦略」を事前に設計する
iDeCoは積み立て中の税制メリットが注目されがちですが、受け取り時の税金を見落とすと手取りが大幅に減る可能性があります。
・一時金→退職所得控除(分離課税)。退職金が少ない方に有利
・年金→公的年金等控除(雑所得)。65歳未満は年60万円、65歳以上は年110万円まで非課税
・併用→退職所得控除と公的年金等控除の両方を活用。退職金が多い方に有効
・2026年1月からiDeCo一時金→退職金の受取間隔が「5年→10年」に延長。退職金がある方は戦略の見直しが必要
・退職金→iDeCo一時金の順は19年ルール(変更なし)
・会社員と自営業者で最適解が異なる。退職金の額・公的年金の受給見込額で判断する
・受け取り開始の数年前からシミュレーションしておくことが重要
iDeCoの受け取り方は一度選択すると変更が難しいため、受け取り時期が近づいてから慌てて判断するのではなく、早めに自身の退職金・年金の見込額を確認し、最適な出口戦略を設計しましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



