ライフプラン
離婚時の財産分与と年金分割とは?養育費を含めた「お金の全体像」を解説

令和6年の離婚件数は18万5,895組で、2年連続の増加となっています。
離婚時に整理すべきお金の問題は、財産分与・年金分割・養育費・慰謝料・公的支援制度と多岐にわたり、いずれかの見落としが離婚後の家計に影響を及ぼす可能性があるでしょう。この記事では、離婚時に確認しておくべきお金の全体像を、公的制度のデータをもとに整理しています。
離婚時に整理すべきお金の5つの柱

離婚に伴うお金の問題は、大きく分けて「財産分与」「年金分割」「養育費」「慰謝料」「離婚後に利用できる公的支援制度」の5つに分類できます。それぞれの制度は手続き先も請求期限も異なるため、離婚前の段階で全体像を把握しておくことが重要です。
財産分与の基本的な仕組み
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を離婚に際して分け合う仕組みです。民法768条に基づく制度で、分与の割合は原則として2分の1とされています。
2024年5月に成立した改正民法では、この2分の1ルールが明文化されました。
対象となるのは、婚姻期間中に得た預貯金・不動産・有価証券・退職金(婚姻期間に対応する部分)・保険の解約返戻金などです。
一方で、結婚前から保有していた財産や相続で取得した財産は「特有財産」として分与の対象外になります。
財産分与の請求期限が5年に延長
従来、財産分与の請求期限は離婚後2年以内でしたが、2024年5月に成立した改正民法により、2026年4月1日以降に離婚した場合は5年以内に延長されました。
DV被害からの回復や、幼い子どもを抱えての生活再建に時間がかかるケースへの配慮が背景にあります。
ただし、2026年3月31日以前に離婚した場合は従来どおり2年以内が適用されるため、離婚日によって期限が異なる点に注意が必要です。さらに改正法では、裁判所が相手方に財産の開示を命じることができる規定も新設されました。
出典:法務省「財産分与」
財産分与にかかる税金の注意点

離婚に伴う財産分与は、金銭で行う場合は受け取る側・渡す側ともに原則として課税されません。ただし、不動産を分与する場合は異なる扱いとなるため注意が必要です。
受け取る側に贈与税がかかるケース
国税庁のタックスアンサー(No.4414)によると、離婚による財産分与は「贈与」ではなく「財産関係の清算」であるため、通常は贈与税の対象にはなりません。ただし、以下の場合は例外的に贈与税がかかります。
・分与された財産の額が婚姻中の協力で得た財産を考慮しても過大な場合(過大な部分に課税)
・離婚が贈与税や相続税を逃れるために行われたと認められる場合(全額に課税)
不動産を渡す側に譲渡所得税が発生する場合
不動産を財産分与として渡す場合、渡す側に譲渡所得税が発生する可能性があります。これは、分与義務の消滅という経済的利益を得たとみなされるためで、最高裁判決(昭和50年)で確立した考え方です。
ただし、居住用不動産であれば「3,000万円の特別控除」が適用できる場合があります。
この特例は「夫婦など特別な関係にある者」への譲渡には使えないため、離婚後に財産分与を行う点がポイントです。
年金分割の仕組みと2つの方法

年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の標準報酬記録を分割して、離婚後にそれぞれの年金額に反映させる制度です。
分割方法には「合意分割」と「3号分割」の2種類があり、対象となるのは厚生年金の報酬比例部分のみで、基礎年金には影響しません。
合意分割と3号分割の違い
合意分割は、婚姻期間中の厚生年金記録を、夫婦の合意または裁判手続きで定めた按分割合(上限50%)で分割する仕組みです。共働き世帯でも利用でき、婚姻期間全体が対象になります。
3号分割は、第3号被保険者(会社員に扶養されていた配偶者)が相手の合意なしに請求できる制度で、分割割合は一律50%になります。
ただし、対象期間は2008年4月1日以降の第3号被保険者期間に限られる点に注意が必要です。
2008年4月より前に第3号被保険者だった期間がある場合は、合意分割を併せて請求することで婚姻期間全体をカバーできます。
合意分割を請求すると、3号分割の対象期間も同時に分割請求があったとみなされる仕組みです。
年金分割の請求期限も5年に延長
年金分割の請求期限は従来2年以内でしたが、2025年6月に成立した年金制度改正法により、2026年4月1日以降に離婚した場合は5年以内に延長されています。
民法改正による財産分与の請求期限延長に合わせた措置で、2026年3月31日以前に離婚した場合は従来どおり2年以内となる点に留意しておきましょう。
年金分割の手続きは、年金事務所に「標準報酬改定請求書」を提出して行う仕組みです。
分割の割合が決まっていても、この請求手続きをしなければ年金は分割されない点に留意しておく必要があります。
養育費の現状と法定養育費の創設

厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯で養育費を「現在も受けている」と回答した割合は28.1%にとどまり、「受けたことがない」が56.0%を占めています。
養育費の取り決め率も母子世帯で46.7%と半数に届いていません。
法定養育費が2026年4月にスタート
2024年5月に成立した改正民法では、養育費の取り決めがない場合でも、子ども1人あたり月額2万円の「法定養育費」を請求できる制度が新設され、2026年4月1日に施行されました。
2026年4月1日以降に離婚した場合に適用され、離婚日に遡って支払いを求めることが可能です。
ただし、法定養育費はあくまで最低限の金額であり、実際の養育費の適正額はこれを上回るケースがほとんどでしょう。
養育費の額が決まっている世帯の平均月額は50,485円(母子世帯)というデータもあり、法定養育費だけに頼るのではなく、きちんと取り決めを行うことが子どもの生活を守る上で欠かせません。
養育費の取り決めを確実にする方法
養育費の不払いを防ぐためには、口約束ではなく書面で合意内容を残しておくことが重要です。
「離婚協議書」を作成した上で、さらに強制執行認諾文言付きの公正証書にしておくと、不払い時に強制執行(給与差押えなど)が可能になります。家庭裁判所の調停で決めた場合も同様に強制力を持ちます。
離婚後に利用できる公的支援制度

離婚後の家計を支える公的支援制度は複数あり、組み合わせて活用することで実質的な収入を底上げできます。制度ごとに所得制限や手続き先が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
児童扶養手当
ひとり親世帯の生活を支える中心的な制度で、子ども1人の場合の全部支給額は月額48,050円(令和8年4月改定)になります。所得に応じて一部支給に減額される仕組みで、2人目以降は加算があります。
ひとり親控除と住民税非課税
ひとり親控除は所得税35万円・住民税30万円の所得控除で、合計所得500万円以下のひとり親が対象です。
合計所得135万円以下であれば住民税が非課税となり、国民健康保険料の軽減や高額療養費の自己負担限度額引き下げなど、複数の制度で優遇を受けられます。
その他の支援制度
・ひとり親家庭等医療費助成:自治体によって内容は異なるが、医療費の自己負担が軽減される制度
・住宅支援:公営住宅の優先入居、母子生活支援施設の利用など
・就業支援:高等職業訓練促進給付金(看護師・介護福祉士などの資格取得を目指す修業期間中、月額10万円・住民税課税世帯は月額70,500円を支給)
離婚前に確認すべきチェックポイント

離婚後の家計を安定させるためには、離婚前の段階でお金の全体像を把握しておくことが欠かせません。以下の項目を確認しておくと、見落としを防ぎやすくなります。
年金分割のための情報通知書を取得する
年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を提出すると、婚姻期間中の年金記録や按分割合の範囲が記載された「情報通知書」が届きます。
離婚前でも請求可能で、一方からの請求であれば相手には通知されません。分割後にどの程度年金額が変わるかを事前に把握するための重要な手続きです。
離婚後の家計シミュレーション
公的支援制度を積み上げると、離婚後の収入がどの程度になるかを事前に試算できます。
例えば、パート収入に加えて児童扶養手当(全部支給)・年金分割による将来の年金増額・ひとり親控除による税負担軽減・医療費助成による負担減を合わせると、想定以上に公的保障で支えられるケースもあります。
逆に、自営業者やフリーランスの場合は厚生年金に加入していないため年金分割の対象外です。
健康保険の傷病手当金や出産手当金も利用できません。会社員と自営業者では離婚後の公的保障に構造的な格差があることを理解しておく必要があります。
まとめ
離婚時のお金の問題は、財産分与・年金分割・養育費・慰謝料・公的支援制度の5つが柱となります。
2026年4月1日施行の法改正により、財産分与・年金分割の請求期限が5年に延長され、法定養育費も新設されるなど、制度面の整備が進んでいます。
ただし、制度が整備されても手続きをしなければ権利は実現しないのが現実です。離婚前の段階で年金分割の情報通知書を取得し、財産の全体像を把握した上で、養育費の取り決めを公正証書にしておくといった「事前の準備」が、離婚後の生活の安定に直結します。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



