税金(一般的な内容)
障害者控除・特別障害者控除とは?控除額の3段階・対象者の範囲・要介護認定との違い・障害年金との組み合わせをわかりやすく解説

障害者控除とは、納税者本人や扶養親族が所得税法上の障害者に該当する場合に、一定額を所得から差し引ける所得控除の制度です。
国税庁(No.1160)によると、控除額は障害者27万円・特別障害者40万円・同居特別障害者75万円の3段階に分かれており、障害の程度や同居の有無によって金額が変わります。
一方、介護保険法の要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象にはならず、65歳以上の方は市区町村から「障害者控除対象者認定書」の交付を受ける必要がある点は見落とされがちでしょう。
この記事では、障害者控除の対象となる人の範囲から、要介護認定との違い、障害年金・特別障害者手当との組み合わせまでを整理し、障害のある方やそのご家族が活用できる公的支援の全体像をまとめました。
障害者控除の仕組みと控除額の3段階

障害者控除は、障害の程度と同居の有無によって控除額が3段階に分かれています。まずは基本的な仕組みと控除額を確認しましょう。
所得税の障害者控除額
国税庁(No.1160)によると、所得税における障害者控除額は以下の3段階となっています。
・障害者:27万円
・特別障害者:40万円
・同居特別障害者:75万円
同居特別障害者とは、特別障害者に該当する同一生計配偶者または扶養親族のうち、納税者本人・配偶者・その納税者と生計を一にする親族のいずれかと同居を常況としている方を指します。
一時的な入院であれば「同居」の要件は失われませんが、老人ホームへの入所は「同居」に該当しない点に注意が必要でしょう。
住民税の障害者控除額
住民税にも障害者控除があり、所得税とは控除額が異なります。
・障害者:26万円
・特別障害者:30万円
・同居特別障害者:53万円
年末調整や確定申告で所得税の障害者控除を申告すれば、住民税にも自動的に反映される仕組みです。
さらに、障害者本人の前年の合計所得金額が135万円以下(給与収入のみなら年収約204.4万円未満)であれば、住民税が非課税となります。
住民税が非課税になると、高額療養費の自己負担限度額が月35,400円(2026年8月以降は36,900円に変更予定)に下がるほか、国民健康保険料の軽減や各種福祉サービスの利用料減免にも影響するため、税額以上のメリットが生まれることがあるでしょう。
障害者控除の対象となる人の範囲

障害者控除の対象者は所得税法施行令第10条に限定列挙されており、障害者手帳の有無だけで判断されるわけではありません。
対象となる方の範囲と、「障害者」「特別障害者」の区分を正確に把握しておくことが重要です。
障害者手帳の種類と控除区分の対応
障害者手帳には身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の3種類があり、手帳の種類と等級によって控除区分が決まります。
・身体障害者手帳:手帳に記載がある方は「障害者」、1級・2級の方は「特別障害者」
・精神障害者保健福祉手帳:手帳の交付を受けている方は「障害者」、障害等級1級の方は「特別障害者」
・療育手帳:児童相談所等の判定により知的障害者とされた方は「障害者」、重度と判定された方(手帳の表示がAやマルAなど)は「特別障害者」
ここで注意すべき点があります。
精神障害者保健福祉手帳の2級・3級は「障害者」(控除額27万円)であり、「特別障害者」には該当しません。
身体障害者手帳の1級・2級が特別障害者になるのとは基準が異なるため、混同しないよう確認が必要でしょう。
手帳を持っていない方が対象になるケース
障害者手帳を持っていなくても、障害者控除の対象となる場合があります。
・精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある方(特別障害者に該当)
・6か月以上にわたり身体の障害で寝たきりの状態にあり、複雑な介護を必要とする方(特別障害者に該当)
・65歳以上で、障害の程度が身体障害者等に準ずるものとして市区町村長の認定を受けた方
特に3つ目の「市区町村長の認定」は、要介護認定を受けている高齢者にとって見落としやすい制度です。次のセクションで詳しく取り上げます。
出典:国税庁「No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について」
要介護認定と障害者控除の違い

国税庁(No.1185)は、介護保険法の要介護認定を受けただけでは障害者控除の対象にならないことを明確にしています。要介護認定と障害者控除は別の制度であり、両者の関係を正しく理解しておくことが欠かせません。
障害者控除対象者認定書の仕組み
65歳以上で障害者手帳を持っていない方でも、市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」があれば、障害者控除を受けられます。この制度のポイントは以下の通りとなっています。
・対象は65歳以上で要介護1〜5の認定を受けている方(要支援1・2は対象外となるのが一般的)
・申請先は住所地の市区町村の福祉担当窓口
・認定基準は市区町村ごとに定められ、要介護度だけでなく障害の程度で判定される
・認定書は控除を受ける年ごとに必要
・過去5年分まで遡って発行できる場合がある
認定基準の一例として、「身体障害者1級・2級に準ずる方(寝たきり高齢者を含む)」は特別障害者、「身体障害者3〜6級に準ずる方」は障害者、「認知症高齢者」は障害者または特別障害者として認定する自治体もあります。
申請していない方は控除を取りこぼしている可能性がある
障害者控除対象者認定書の制度は、自治体から積極的に案内されるケースが少なく、申請しなければ認定書は発行されません。
要介護認定を受けている家族がいる場合は、住所地の市区町村に認定書の発行が可能かどうか問い合わせてみましょう。
過去の年分についても遡って発行してもらえる場合があるため、還付申告(5年以内)で税金の還付を受けられる可能性もあります。
16歳未満の扶養親族にも障害者控除は適用される

扶養控除には年齢制限があり、16歳未満の扶養親族には適用されません。
しかし、障害者控除には年齢制限がなく、16歳未満の子どもが障害者に該当する場合にも適用を受けられます。
扶養控除の適用がないことと障害者控除が使えないことは別問題であり、見落としやすいポイントの一つでしょう。
年末調整で申告する場合は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の障害者欄に必要事項を記入し、勤務先に提出するだけで手続きは完了します。
確定申告の場合も、申告書の障害者控除欄に記入するだけで手続きは完了です。
いずれの場合も、障害者手帳のコピーの提出を求められることがありますが、法律上の添付義務はありません。
障害年金との組み合わせで把握すべきポイント

障害のある方が受けられる公的支援は障害者控除だけではなく、障害年金を含めた全体像を把握することが家計管理の上で欠かせません。
障害基礎年金の金額(令和7年度)
政府広報オンラインによると、令和7年度の障害基礎年金の年間支給額は以下の通りです。
・1級:1,039,625円(月額約86,635円)
・2級:831,700円(月額約69,308円)
生計を維持している子がいる場合は、第1子・第2子に各239,300円、第3子以降に各79,800円の加算が上乗せされます。
厚生年金の加入者であれば、障害等級1級・2級の場合は障害厚生年金と障害基礎年金が併せて支給され、さらに65歳未満の配偶者がいる場合は配偶者加給年金(239,300円)も加算される仕組みとなっています。
障害年金は非課税かつ所得に含まれない
障害年金は所得税・住民税ともに非課税であり、確定申告の必要もありません。
所得税法上の「所得」に含まれないため、障害年金を受給していても合計所得金額には影響しないという点が重要でしょう。
つまり、障害年金を受給しながらパート収入がある方の場合、合計所得金額の計算に含まれるのはパート収入(給与所得)のみとなります。
この仕組みにより、障害年金受給者は住民税非課税の判定でも有利に働きます。合計所得金額が135万円以下であれば住民税非課税となり、高額療養費や国民健康保険料の負担が軽減される効果が期待できるでしょう。
特別障害者手当・年金生活者支援給付金の活用

障害者控除や障害年金に加えて、さらに上乗せできる給付制度もあります。それぞれの概要と受給要件を確認しておきましょう。
特別障害者手当
厚生労働省によると、特別障害者手当は精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活で常時特別の介護を必要とする在宅の20歳以上の方に支給される手当です。
令和7年4月以降の支給月額は29,590円(年額約35万5,080円)となっています。
ただし、以下のいずれかに該当する方は対象外です。
・障害者支援施設等に入所している方
・病院や診療所に継続して3か月を超えて入院している方
有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅、グループホームに入居している場合は「施設入所」には該当せず、支給対象となる点を覚えておくとよいでしょう。
また、所得制限があり、受給者本人や配偶者・扶養義務者の前年所得が一定額を超えると支給が停止されます。
年金生活者支援給付金
障害基礎年金の1級または2級を受給しており、前年所得が一定基準以下の方には、年金生活者支援給付金が上乗せ支給されます。
令和7年度の月額は1級で6,813円、2級で5,450円です。
障害年金とは別に手続きが必要なため、未申請の方は年金事務所に確認してみてください。
障害のある方の公的支援を積み上げた全体像

障害のある方やそのご家族が活用できる公的支援を整理すると、税制面・年金面・手当面の3つの柱で構成されていることがわかります。
具体的なケースで見る公的支援の積み上げ
たとえば、身体障害者手帳1級(特別障害者)の方が家族と同居し、障害基礎年金1級を受給しているケースを考えてみましょう。
・障害基礎年金1級:年額1,039,625円(非課税)
・年金生活者支援給付金1級:月額6,813円(年額約81,756円)
・特別障害者手当:月額29,590円(年額約355,080円)※要件を満たす場合
・同居特別障害者控除による節税効果:所得税率20%の場合、75万円×20%=15万円の所得税軽減+住民税53万円×10%=5.3万円の住民税軽減
年金・手当だけで年額約147万6,000円が確保でき、さらに控除による節税効果が加わります。
これらの公的支援を把握したうえで、不足分を民間の保険や貯蓄で補うという順序で考えることが合理的といえるでしょう。
自立支援医療(精神通院医療・更生医療)との併用
障害のある方の医療費負担を軽減する制度として、自立支援医療もあります。
通常3割の医療費自己負担が原則1割に軽減され、さらに所得に応じた月額上限が設定される仕組みです。
障害者控除による住民税非課税化と組み合わせると、自立支援医療の自己負担上限額がさらに引き下がるケースもあるため、税制と福祉制度の両方を視野に入れた検討が重要でしょう。
障害者控除を受ける際の注意点

障害者控除の適用にあたっては、いくつか見落としやすいポイントがあります。
障害者手帳の等級と障害年金の等級は連動しない
障害者手帳の等級と障害年金の等級は、それぞれ別の基準で判定されます。
たとえば、精神障害者保健福祉手帳3級でも障害年金2級に認定されるケース、あるいはその逆のケースもあり得るでしょう。
障害者控除の判定は手帳の等級が基準となるため、障害年金の等級と混同しないことが大切です。
申告しなければ控除は適用されない
障害者控除は、年末調整または確定申告で申告しなければ適用されません。
障害者手帳の交付を受けているだけでは自動的に控除が反映されるわけではないため、扶養控除等申告書への記入を忘れないようにしましょう。
特に、年の途中で障害者手帳の交付を受けた場合は、その年の年末調整から適用対象です。
複数の障害がある場合の控除額
複数の障害者手帳(たとえば身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳)を持っている場合でも、障害者控除は「1人につき」適用されるため、手帳が2枚あるからといって控除額が2倍になるわけではありません。
ただし、最も控除額が高くなる区分で判定すればよいため、いずれか一方が特別障害者に該当すれば特別障害者控除(40万円または同居の場合75万円)が適用される仕組みです。
まとめ
障害者控除は、障害のある方やそのご家族の税負担を軽減する制度であり、障害の程度に応じて27万円・40万円・75万円の3段階で所得控除が受けられます。
・身体障害者手帳1級・2級、精神障害者保健福祉手帳1級、療育手帳Aなどが「特別障害者」に該当し、控除額が大きくなる
・要介護認定だけでは障害者控除の対象にはならず、65歳以上の方は市区町村の「障害者控除対象者認定書」の申請が必要
・障害年金は非課税であり所得に含まれないため、住民税非課税の判定で有利に働く
・特別障害者手当(月額29,590円)や年金生活者支援給付金(1級 月額6,813円、2級 月額5,450円)も併せて活用できる
・障害者手帳の等級と障害年金の等級は連動しないため、控除の判定は手帳の等級で行う
障害者控除・障害年金・各種手当を組み合わせた公的支援の全体像を把握することで、民間保険や貯蓄で備えるべき金額を的確に判断できるようになるでしょう。
まずは障害者控除の適用漏れがないか確認し、要介護認定を受けている家族がいる場合は認定書の申請も検討してみてください。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



