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雇用保険の失業給付(基本手当)とは?受給条件・給付額の計算方法・手続きの流れ・2025年法改正をわかりやすく解説

雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)は、離職して次の仕事を探している期間の生活を支えるための給付制度で、ハローワークインターネットサービスによると、離職前の賃金日額の50〜80%(60歳以上65歳未満は45〜80%)が所定給付日数分にわたって支給されます。厚生労働省の発表では、令和7年8月1日から基本手当日額が改定され、下限額は2,411円、上限額は年齢区分に応じて7,255円〜8,870円となっています。
また、2025年4月の雇用保険法改正により、自己都合退職の給付制限期間が従来の2か月から1か月に短縮され、教育訓練を自主的に受講した場合は給付制限が解除される仕組みも新設されました。
この記事では、基本手当の受給条件、給付額の計算方法、自己都合退職と会社都合退職の違い、ハローワークでの手続きの流れ、そして再就職手当との比較まで解説します。
雇用保険の基本手当(失業手当)とは

雇用保険の基本手当は、働く意思と能力がありながら就職できない「失業の状態」にある方の生活を安定させ、再就職活動を支援するために支給される給付金です。ここでは制度の基本的な仕組みと受給の条件を確認しましょう。
基本手当の受給条件
基本手当を受給するためには、次の2つの条件を両方満たす必要があります。
・ハローワークで求職の申込みを行い、働く意思と能力があるにもかかわらず就職できない「失業の状態」にあること
・離職の日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あること(特定受給資格者または特定理由離職者は、離職の日以前1年間に6か月以上で可)
被保険者期間は、離職日から1か月ごとに区切った期間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上または賃金支払基礎時間数が80時間以上ある月を「1か月」として計算します。単に「勤続○か月」ではなく、実際に賃金が支払われた日数・時間数がカウントの基準になる点に注意が必要です。
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
雇用保険の対象者と今後の適用拡大
雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがある労働者であれば、正社員・パート・アルバイトの雇用形態を問わず原則として加入対象となります。事業主に雇用される労働者は、本人の意思にかかわらず加入が義務づけられている点が特徴です。
なお、2028年10月からは適用対象が週10時間以上の労働者にまで拡大されることが決まっており、これまで雇用保険に加入できなかった短時間勤務のパート・アルバイトの方も新たに対象に加わる見込みです。
自己都合退職と会社都合退職の違い

離職理由が「自己都合」か「会社都合」かによって、給付制限の有無と所定給付日数が大きく異なります。退職時に交付される離職票に記載される離職理由が、その後の給付内容を左右する重要なポイントになります。
自己都合退職の場合
転職や自分の意思による退職など、「自己都合」に該当する場合は、7日間の待期期間に加えて給付制限期間が設けられます。
2025年4月の法改正後は、給付制限期間が従来の2か月から原則1か月に短縮されました。これにより、ハローワークでの手続きから約1か月半で最初の給付を受け取れるようになっています。ただし、過去5年以内に2回以上、自己都合退職により受給資格決定を受けている場合は、給付制限期間が3か月に設定される点に注意が必要です。
また、同じく2025年4月から、離職前1年以内に教育訓練給付の対象講座を受講していた場合、または離職後に受講する場合は、給付制限が解除される新たな仕組みも導入されました。自主的にスキルアップに取り組んだ方は、待期期間7日間を経ればすぐに給付を受けられるようになった点は、注目すべき改正ポイントといえるでしょう。
会社都合退職(特定受給資格者)の場合
倒産や解雇など、労働者の責によらない理由で離職した場合は「特定受給資格者」に区分されます。特定受給資格者には給付制限期間がなく、7日間の待期期間が終わればすぐに基本手当の受給が始まる仕組みです。
加えて、所定給付日数も自己都合退職より手厚く設定されており、離職時の年齢と被保険者期間に応じて最長330日まで受給できる場合があります。自己都合退職の所定給付日数が被保険者期間に応じて90日〜150日であるのに対し、会社都合退職では年齢と被保険者期間の組み合わせで90日〜330日と幅が広い点が特徴です。
「特定理由離職者」にも注目
有期雇用契約の期間満了(本人が更新を希望したが更新されなかった場合)や、正当な理由のある自己都合退職(病気、家族の介護、配偶者の転勤に伴う転居など)に該当する場合は「特定理由離職者」に区分されることがあります。特定理由離職者は受給条件が緩和され、離職前1年間に被保険者期間6か月以上で受給資格を得られるほか、所定給付日数が特定受給資格者と同等に扱われるケースもあります。
基本手当日額の計算方法

基本手当として1日あたりいくら受給できるかは、離職前の賃金から算出される「賃金日額」と、年齢に応じた「給付率」によって決まります。
賃金日額の計算
賃金日額は、離職前6か月間に毎月決まって支払われた賃金の合計額を180で割った金額です。ここでいう賃金にはボーナス(賞与)は含まれず、毎月の基本給や諸手当(通勤手当、残業手当など)が対象になります。
たとえば、離職前6か月間の賃金合計が180万円であれば、賃金日額は180万円÷180=1万円となります。
給付率と基本手当日額
基本手当日額は、賃金日額に給付率を掛けて算出されます。給付率は50〜80%の範囲(60歳以上65歳未満は45〜80%)で、賃金日額が低い方ほど給付率が高くなる仕組みです。
厚生労働省の発表による令和7年8月1日改定後の基本手当日額の上限額・下限額は以下のとおりです。
・下限額:2,411円(全年齢共通)
・上限額(30歳未満):7,255円
・上限額(30歳以上45歳未満):8,055円
・上限額(45歳以上60歳未満):8,870円
・上限額(60歳以上65歳未満):7,623円
出典:厚生労働省「令和7年8月1日からの基本手当日額等の適用について」
具体的な受給額のシミュレーション
月収30万円(離職前6か月の賃金合計180万円)の35歳の方が自己都合退職した場合を例に、受給額の目安を試算してみましょう。
・賃金日額:180万円÷180=1万円
・基本手当日額:おおむね5,600円〜6,000円程度(給付率約56〜60%)
・所定給付日数:被保険者期間10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日
・受給総額の目安:日額5,800円×90日=約52万円、日額5,800円×120日=約70万円
月額に換算すると約16万〜17万円程度となり、在職中の手取り収入(月収30万円の場合、手取りは約24万円前後)と比較すると、およそ3割〜4割の収入減が生じる計算です。失業給付だけで在職中と同水準の生活を維持することは難しいため、生活防衛資金の事前準備が欠かせません。
ハローワークでの手続きの流れ

基本手当を受給するためには、離職後にハローワークで所定の手続きを行う必要があります。手続きは本人が行わなければならず、代理人による申請はできません。
必要書類と手続きの手順
離職後、まず会社から「雇用保険被保険者離職票(1・2)」が届くのを待つことになります。離職票は退職後10日前後で届くのが一般的ですが、届かない場合は会社に早めに催促しましょう。離職票を受け取ったら、以下の書類を持参して住所地を管轄するハローワークで手続きを行う流れです。
・雇用保険被保険者離職票(1・2)
・本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
・マイナンバー確認書類(通知カードまたはマイナンバー記載の住民票)
・顔写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
・振込先の預金通帳またはキャッシュカード
受給開始までのスケジュール
ハローワークで求職申込みと受給資格の決定を行った日から、すべての離職者に共通して7日間の待期期間が設けられます。この7日間は、離職の事実を確認するための期間であり、基本手当は支給されません。
待期期間満了後、会社都合退職の場合はすぐに支給が始まりますが、自己都合退職の場合は2025年4月以降の制度で原則1か月の給付制限期間を経て支給が開始されます。その後は4週間に1回の「失業認定日」にハローワークに出頭し、失業の状態にあることの認定を受けることで、認定された日数分の基本手当が指定口座に振り込まれる仕組みです。
認定を受けるためには、原則として認定対象期間中に2回以上の求職活動実績が必要となります。求職活動実績には、ハローワークでの職業相談、企業への応募、企業説明会やセミナーへの参加などが含まれます。
再就職手当の仕組みと受給の判断

基本手当の受給期間中に早期に再就職が決まった場合、残りの給付日数に応じて「再就職手当」を受け取れる場合があります。「基本手当をもらい切ってから就職するべきか、早く就職して再就職手当を受け取るべきか」は、退職後によく検討されるテーマです。
再就職手当の支給額
再就職手当の支給額は、基本手当の支給残日数に応じて以下のとおり計算されます。
・所定給付日数の3分の2以上を残して再就職した場合:基本手当日額×支給残日数×70%
・所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合:基本手当日額×支給残日数×60%
たとえば、基本手当日額5,800円で所定給付日数120日の方が、30日受給した時点(残り90日=3/4)で再就職した場合、再就職手当は5,800円×90日×70%=約365,400円となります。この方が基本手当を満額受給した場合の総額は5,800円×120日=696,000円ですから、早期再就職をした場合の合計受給額(基本手当30日分174,000円+再就職手当365,400円=539,400円)は満額受給に比べて約15万円少なくなります。
それでも早期再就職が合理的な理由
金額だけを見れば満額受給のほうが有利に見えますが、再就職先での給与収入がすぐに得られる点を加味すれば、トータルの収入は早期再就職のほうが上回るのが一般的です。また、離職期間が長くなるほど再就職の選択肢が狭まるリスクも考慮に入れる必要があるでしょう。
基本手当の「もらい切り」を前提に求職活動のペースを落とすことは、結果として再就職後の収入やキャリアに影響を及ぼしかねない点を意識しておくことが重要です。
失業給付と他の公的保障との関係

退職にともなって利用できる公的保障は基本手当だけではなく、健康保険や年金の手続きも同時に発生します。制度間の関係を正確に把握することで、退職後の家計への影響を最小限に抑えられます。
傷病手当金との関係
健康保険の傷病手当金と雇用保険の基本手当は、原則として同時に受給することはできません。退職後に傷病手当金の継続受給を受けている間は、「働く意思と能力がある」という基本手当の受給条件を満たさないためです。
ただし、傷病手当金の受給終了後に求職活動を開始した場合は、基本手当を受給できる可能性があります。その場合、基本手当の受給期間(原則離職日翌日から1年間)を延長する手続きをハローワークで行っておく必要があります。延長は最長で離職日翌日から4年間まで認められており、傷病や育児・介護などの理由で30日以上働けない状態が続く場合に申請できます。
健康保険と年金の手続きも忘れずに
退職後の健康保険については、任意継続(退職後20日以内に申請・最長2年)、国民健康保険への加入、家族の被扶養者になる、のいずれかを選択する必要があります。会社都合退職や雇止めによる離職(非自発的失業者)の場合は、国民健康保険料が給与所得を100分の30に減額して計算される軽減措置が適用されます。この軽減措置が利用できる場合は、任意継続よりも国民健康保険のほうが保険料負担が軽くなるケースが少なくありません。
年金については、退職日の翌日から14日以内に市区町村窓口で国民年金(第1号被保険者)への切替手続きが必要です。保険料の支払いが困難な場合は、免除・納付猶予制度を利用することで、将来の受給資格期間を確保しながら負担を軽減できます。
失業中の家計管理で意識したいポイント

基本手当の受給額は在職中の収入を大きく下回るため、退職前から家計全体を見直しておくことで、失業期間中の経済的な不安を軽減できます。
生活防衛資金の目安
失業期間中の生活費を賄うためには、最低でも生活費の3か月〜6か月分の預貯金を退職前に確保しておくのが安全圏の目安です。自己都合退職の場合は給付制限期間があるため、その分を含めると6か月分程度の備えがあれば安心感が高まります。
基本手当を月額約16万円受給できるとしても、住宅ローンや教育費などの固定支出が大きい家庭では不足が生じやすいため、退職前に固定費の見直しを行っておくことが合理的です。
退職前にやっておくべきこと
退職後の家計を安定させるために、退職前に以下の点を確認・準備しておきましょう。
・生活防衛資金の残高確認(生活費の3〜6か月分)
・固定費(住居費・保険料・通信費など)の見直し
・住宅ローンがある場合は金融機関への事前相談(返済条件の変更等)
・民間保険の見直し(公的保障でカバーできる範囲の再確認)
・iDeCo・NISAの積立一時停止の要否判断
退職後に「想定外の出費」で困らないためには、公的保障(基本手当・高額療養費・傷病手当金など)で受け取れる金額を事前に把握し、不足分を生活防衛資金で補うという逆算の発想が欠かせません。
まとめ:失業給付の仕組みを正確に理解し、退職前から備えを
雇用保険の基本手当は、離職後の生活を支える重要なセーフティネットですが、受給額は在職中の収入のおよそ5〜8割にとどまるため、それだけで生活を維持するのは現実的ではありません。2025年4月の法改正で自己都合退職の給付制限期間が1か月に短縮されたことは前向きな変化ですが、給付開始までの期間に無収入状態が続く点は変わっていません。
退職を検討する段階から、基本手当の受給見込み額を試算し、生活防衛資金の過不足を確認し、健康保険・年金の手続きまで含めた「退職後の家計シミュレーション」を行っておくことが、経済的なリスクを最小限に抑えるための基本的なアプローチです。早期再就職を目指しつつ、再就職手当も活用できる体制を整えておくことで、退職が家計に与える影響をコントロールしやすくなるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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