自動車保険
自動車保険の地震・津波特約の必要性と補償範囲|加入前に知っておきたいこと

地震や津波による自動車の損害は、通常の自動車保険では補償されません。この記事では、地震・津波特約の付帯条件や補償の仕組み、費用目安を詳しく解説し、加入前に確認すべきポイントをご案内します。
自動車保険の地震・津波特約とは?補償範囲と仕組みを解説

多くの保険会社では、車両保険(一般型)への加入が前提として、この特約を付帯できるようになっています(エコノミー型などでは付帯不可の場合あり)。
この特約は正式には「地震・噴火・津波危険車両全損時一時金特約」と呼ばれ、地震・津波・噴火で車両が損傷し、修理不能または経済的に修理不可能と判断された場合に、50万円の一時金(または車両保険金額が50万円未満ならその金額)が支払われる制度です。
なお、部分的な損害(ドアのへこみ、ガラス破損等)は対象外であり、この補償は生活再建のための一時金を提供するもので、修理費をすべてカバーするものではありません。
なぜ自動車保険に地震・津波特約が必要なのか

日本は地震多発国であり、巨大地震や津波のリスクは全国に存在します。特に沿岸部や活断層付近にお住まいの方は、自動車が全損になる可能性も否めません。高額な修理費や買い替え費用が発生することで経済的打撃が大きくなるため、備えとして特約の必要性は非常に高いといえます。
過去の地震で発生した自動車被害の事例

具体的な事例を見てみましょう:
・2011年の東日本大震災では、津波によって数十万台の自動車が浸水・流失し、廃車処理となりました。
・2016年の熊本地震では、倒壊物や落下物の影響で駐車中の車両が多数損壊しました。
・2018年の北海道胆振東部地震では、液状化現象により車体が沈下し、使用不能となったケースが報告されました。
これらの被害は通常の車両保険では補償されず、多くの被災者が自己負担で修理や買い替えを余儀なくされました。
地域別にみる自動車被害のリスク

被害リスクは地域特性により異なります。特に注意したい地域は以下のとおりです:
・沿岸部:津波による全損リスクが特に高く、東北太平洋沿岸や南海トラフの想定区域では警戒が必要。
・都市部:高層建物の倒壊・立体駐車場の崩落、ガラスの飛散による被害の可能性がある。
・内陸部:液状化や地盤沈下による車体の亀裂・使用不能のケースがあり、熊本地震のように倒壊建物により被害を受けるリスクもあります。
どの地域であっても、自動車が無傷で済む保証はなく、備えが重要です。
加入しない場合のデメリットと生活再建への影響

特約に加入していない場合、以下のようなデメリットが考えられます:
・自動車が全損となっても、修理・買い替え費用を全額自己負担しなければならない
・住宅の被害と重なれば、生活再建費が急増し家計への影響が深刻化
・通勤や営業など「生活の足」を失うことによる機会損失・収入減が発生
・ローン返済中の車両が廃車になった場合、支払いだけが残ってしまうリスク
災害時には公的支援だけでは十分に再建できないケースも多いため、民間による備えが重要です。
補償範囲と対象になる損害

この特約の補償内容を整理すると:
・地震・噴火・津波で車両が全損となった際に一時金(50万円または車両保険金額が少ない場合その金額)が支給される
・部分的損害は対象外
・補償目的はあくまで生活再建の支援であり、全面的な修理費補償ではない
加入にかかる費用の目安とシミュレーション

保険料の上乗せ額は年間で5,000円前後が一般的です(車種・保険会社・契約条件により異なるため複数見積もりを推奨)。
例:車両保険付きの契約で特約を追加した場合、年間数千円程度の上乗せとなることが多いですが、詳細は見積もりで確認しましょう。
地震保険や他特約との違い

地震保険は住宅と家財のみを対象としており、自動車は補償対象に含まれていません。車を守るには、自動車保険の地震・津波特約を付帯する必要があります。
また、台風・洪水による損害は車両保険でカバーできる場合がありますが、地震・津波は特約を付けなければ対象外です。対策は自宅と自動車それぞれで検討することが重要です。
よくある質問(FAQ)

Q1. この特約は部分的な損害に使えますか?
A. いいえ。多くの商品では全損と判断された場合のみが対象です。ドアのへこみやガラス破損などの部分損害は補償されないため、契約内容を確認してください。
Q2. 通常の車両保険だけで地震被害は補償されますか?
A. いいえ。車両保険のみでは地震・噴火・津波損害は免責(補償対象外)となっていることが多く、この特約の付帯が必要です。
Q3. 地震保険に入っていれば車もカバーされますか?
A. いいえ。地震保険は住宅・家財のみ対象です。自動車を補償対象とするには自動車保険で特約を追加する必要があります。
Q4. 保険料はどれくらい高くなりますか?
A. 年間で5,000円前後が一般的です。ただし、車両価格や契約条件、保険会社により異なるため、複数の見積もりを参考にするのがベストです。
まとめ:加入前に確認すべきポイント
自動車保険の地震・津波特約は、車両保険(一般型)加入が前提で、「全損時に50万円の一時金(車両保険金額が50万円未満ならその金額)」が支給されます。部分損害は対象外で、生活再建の支援を目的とした一時金です。
保険料は年間5,000円前後が目安ですが、詳細は保険会社にご確認を。地域特性やライフスタイルに応じて、ぜひご検討ください。
出典
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。