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育児休業給付金とは?支給額の計算方法・上限額・支給期間・申請手順・2025年新制度をわかりやすく解説

育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が育児休業を取得した際に、休業前賃金の67%(育休開始から181日目以降は50%)が支給される制度です。厚生労働省の資料によると、2025年8月改定後の支給上限額は67%適用時で月額323,811円、50%適用時で月額241,650円に設定されています。
さらに2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が創設され、一定の条件を満たすと最大28日間は給付率80%(67%+13%)となり、社会保険料の免除と非課税を合わせて手取り10割相当を受け取れる仕組みが整いました。一方で、この「手取り10割」が適用されるのは出産直後の最大28日間に限られ、29日目以降は67%、181日目以降は50%へと段階的に引き下がるため、育休期間全体の家計への影響を正確に把握しておくことが重要です。
この記事では、育児休業給付金の計算方法から申請手順、2025年の新制度、育休中の家計管理のポイントまで解説します。
育児休業給付金の基本的な仕組み

育児休業給付金は雇用保険の給付の一つで、原則として1歳未満の子を養育するために育児休業を取得した被保険者に支給されます。ここでは受給要件と支給期間の基本を確認しましょう。
育児休業給付金の受給要件
育児休業給付金を受け取るには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・雇用保険の被保険者であること(自営業者やフリーランスは対象外)
・1歳未満の子を養育するために育児休業を取得していること
・休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある完全月が12か月以上あること
・一支給単位期間中の就業日数が10日以下(または就業時間が80時間以下)であること
有期雇用の場合は、子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでないことも求められます。なお、2022年10月の法改正により、育児休業は2回まで分割して取得できるようになりました。
支給期間は原則「子が1歳になるまで」
育児休業給付金の支給期間は、原則として子が1歳に達する日の前日までです。ただし、次のケースでは延長が認められています。
・パパ・ママ育休プラス:両親がともに育児休業を取得する場合、子が1歳2か月に達する日の前日まで延長可能(ただし1人あたりの支給上限は1年間)
・保育所に入れない場合:子が1歳の時点で保育所等に入所できない場合は1歳6か月まで、さらに1歳6か月時点でも入所できなければ2歳まで延長が可能
2025年4月からは、保育所に入れないことを理由とする延長手続きについて、市区町村が発行する「入所保留通知書」などの提出が必要になるなど、手続き方法が変更されています。
育児休業給付金の計算方法と支給額

育児休業給付金の支給額は「休業開始時賃金日額×支給日数×給付率」で計算されます。休業前の月収からおおよその受給額を把握しておくことで、育休中の家計計画を立てやすくなります。
給付率は180日まで67%、181日以降は50%
育児休業給付金の計算式は次のとおりです。
・育休開始〜180日目:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
・181日目以降:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
「休業開始時賃金日額」とは、育児休業開始前の直近6か月間に支払われた賃金の総額を180で割った金額です。支給日数は原則30日間ですが、育休終了日を含む最後の支給単位期間については休業終了日までの日数で計算されます。
上限額と下限額(2025年8月〜2026年7月)
育児休業給付金には上限額と下限額が設定されており、毎年8月1日に改定されます。厚生労働省の発表によると、2025年8月1日から2026年7月31日までの支給限度額は次のとおりです。
・休業開始時賃金日額の上限額:16,110円(賃金月額換算で483,300円)
・休業開始時賃金日額の下限額:3,014円(賃金月額換算で90,420円)
・67%適用時の月額上限:323,811円
・50%適用時の月額上限:241,650円
つまり、休業前の月収(額面)が約48万円を超える場合は上限額が適用され、実際の給付率は67%を下回ることになります。年収の高い方ほど育休中の収入減が大きくなる点は、事前に認識しておく必要があるでしょう。
出典:厚生労働省「令和7年8月1日からの基本手当日額等の適用について」
月収別の支給額シミュレーション
休業前の月収(額面)ごとの育児休業給付金の目安は次のとおりです(2025年8月〜2026年7月の上限額適用)。
・月収20万円の場合:67%適用時 月額約13万4,000円、50%適用時 月額約10万円
・月収30万円の場合:67%適用時 月額約20万1,000円、50%適用時 月額約15万円
・月収40万円の場合:67%適用時 月額約26万8,000円、50%適用時 月額約20万円
・月収48万円以上の場合:67%適用時 月額323,811円(上限)、50%適用時 月額241,650円(上限)
子が1歳になるまで育休を取得した場合、180日間(6か月)×67%と、残りの期間×50%の合計が受給総額の目安になります。月収30万円であれば、おおよそ180日間で約120万6,000円、残り約185日間で約92万5,000円、合計で約213万円程度を受け取れる計算です。
2025年4月創設「出生後休業支援給付金」で手取り10割相当に

2025年4月の改正雇用保険法施行により、「出生後休業支援給付金」が創設されました。子の出生直後に夫婦で育休を取得する場合に、従来の育児休業給付金に13%が上乗せされる仕組みです。
出生後休業支援給付金の仕組みと条件
出生後休業支援給付金は、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給を受ける被保険者が、一定の要件を満たした場合に上乗せで支給されます。具体的な条件は次のとおりです。
・被保険者本人が14日以上の育児休業を取得していること
・配偶者も14日以上の育児休業を取得していること(ひとり親家庭、配偶者が自営業者の場合など、配偶者の育休が要件とならないケースもあります)
・最大28日間が支給対象
給付率は休業開始時賃金日額の13%で、従来の67%と合わせて80%の給付率となります。育休中は健康保険料・厚生年金保険料が申出により免除され、育児休業給付金は非課税のため、額面80%の給付で手取りベースでは休業前のほぼ10割相当を確保できる設計です。
出典:厚生労働省「育児休業等給付について」(令和7年8月1日改訂版)
「手取り10割」は最大28日間のみ
注意すべき点は、出生後休業支援給付金の13%上乗せが適用されるのは最大28日間に限られるということです。28日間は手取り10割相当を受け取れますが、29日目以降は従来どおり67%(181日目以降は50%)に戻ります。
たとえば月収30万円の場合、最初の28日間は額面の80%にあたる約24万円に社会保険料免除を加えて手取り10割相当となりますが、29日目からは月額約20万1,000円(67%)に減少し、181日目以降はさらに約15万円(50%)に下がります。「育休中はずっと手取り10割」という誤解が広がっていますが、実際に手取り10割相当が維持されるのは出産直後の約1か月間だけである点を正確に理解しておくことが欠かせません。
育休中の社会保険料免除と税金の取り扱い

育休中は社会保険料の免除や給付金の非課税措置があり、額面の給付率以上に家計の負担が軽減される仕組みが用意されています。
健康保険料・厚生年金保険料の免除
育児休業期間中は、事業主が日本年金機構に申出を行うことで、本人負担分と事業主負担分の両方の健康保険料・厚生年金保険料が免除される仕組みです。勤務先から給与が支給されない場合は雇用保険料の負担もありません。
月収30万円の会社員の場合、健康保険料(協会けんぽ全国平均10.00%の折半で月額約15,000円)と厚生年金保険料(18.3%の折半で月額約27,450円)を合わせると、本人負担分だけで月額約4万2,000円の免除効果があります。年間に換算すると約50万円の負担軽減です。
育児休業給付金は非課税・将来の年金額にも影響なし
育児休業給付金は所得税・住民税の課税対象外です。このため、額面の67%であっても、手取りベースでは休業前の約8割程度を確保できるケースが多くなります。
また、育休中の社会保険料免除期間は、将来の年金額の計算上「保険料を納付した期間」として扱われます。休業中に保険料を支払っていなくても、休業前の標準報酬月額に基づいて年金額が計算されるため、育休を取得したことで老齢厚生年金が減額されることはありません。
育児時短就業給付(2025年4月〜)

2025年4月から、育児休業から復帰して時短勤務を選択する方を対象とした「育児時短就業給付」も新設されました。2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して働く場合に、時短勤務中に支払われた賃金額の10%相当額が支給されます(ただし時短前の賃金水準を超えないよう調整されます)。育休からの復帰後も収入減をある程度カバーできる仕組みが整ったといえるでしょう。
育児休業給付金の申請手続き

育児休業給付金の申請は、原則として勤務先の事業主が手続きを行います。個人で直接ハローワークに申請するものではないため、まずは勤務先の人事担当部署に育休取得の意向を伝えることが第一歩となります。
申請に必要な書類
事業主がハローワークに提出する主な書類は次のとおりです。
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
・賃金台帳、出勤簿など賃金の額と支払状況を確認できる書類
・母子健康手帳の写しなど、出生日を確認できる書類
出生後休業支援給付金を同時に申請する場合は、配偶者の育児休業取得状況を確認できる書類も必要となります。
申請時期と支給のタイミング
受給資格確認と初回の支給申請は、育休開始日から4か月以内に事業主がハローワークに提出します。その後は原則として2か月に1回、支給単位期間ごとに申請を行い、支給決定から約1週間で指定口座に振り込まれます。希望すれば1か月に1回の申請も可能です。
育休中の家計管理で押さえておくべきポイント

育児休業給付金は休業前の収入を完全に補填するものではないため、育休中の家計をどう管理するかが重要な課題です。公的保障を正確に把握したうえで、不足額を事前に準備するアプローチが合理的といえます。
育休1年間の収入減はどのくらいか
月収30万円の会社員が子が1歳になるまで育休を取得した場合の収支をシミュレーションしてみましょう。
・最初の28日間:出生後休業支援給付金を含めて手取り10割相当(条件を満たす場合)
・29日〜180日:月額約20万1,000円(67%)
・181日〜365日:月額約15万円(50%)
社会保険料免除と非課税効果を考慮しても、育休期間全体では休業前の手取り収入と比較して年間約60万〜80万円程度の収入減が生じます。この金額は賞与の有無や配偶者の収入状況によっても変わりますが、数か月分の生活費を事前に確保しておくことが望ましいでしょう。
育休前に確認しておくべき4つのこと
育休に入る前に、家計全体を見渡して次の4点を整理しておくことをおすすめします。
・生活防衛資金の残高:育休中の収入減に備えて、生活費の3〜6か月分を普通預金に確保しておくと安心です
・住宅ローンの返済額:育休中もローン返済は続くため、固定費と給付金のバランスを事前にシミュレーションしておきましょう
・配偶者の収入と育休取得計画:夫婦で育休を交互に取得すれば、世帯収入のゼロ期間を避けられます
・民間保険の見直し:会社員には傷病手当金などの公的保障もあるため、育休を機に就業不能保険など民間保険の重複がないか見直す機会にもなります
自営業者は育児休業給付金の対象外
育児休業給付金は雇用保険の制度であるため、自営業者・フリーランス・会社役員(雇用保険に加入していない方)は対象外です。国民健康保険には出産手当金や傷病手当金がない点と同様に、自営業者は育休中の所得保障がほぼない状態になります。
自営業者の場合は、出産育児一時金(原則50万円)と児童手当は受給できるものの、育休中の生活費は自己資金で賄う必要があります。出産予定がある場合は、より多めの生活防衛資金を確保しておくことが重要です。
まとめ:育児休業給付金と公的支援の全体像を把握してから家計計画を立てる
育児休業給付金は、育休開始から180日間は休業前賃金の67%、181日目以降は50%が支給される雇用保険の制度です。2025年4月に創設された出生後休業支援給付金により、最大28日間は給付率80%(手取り10割相当)となる仕組みが加わりましたが、この適用は出産直後の限られた期間に限られます。
育休期間全体では収入が3〜4割程度減少するため、事前に生活防衛資金を確保し、住宅ローンなど固定費とのバランスをシミュレーションしておくことが不可欠です。また、出産育児一時金、児童手当、健康保険の給付など、関連する公的支援制度をあわせて把握することで、民間保険の必要性を正確に判断できるようになります。公的保障の全体像を整理してから家計計画を立てることが、育休期間を安心して過ごすための最も確実なアプローチといえるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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