生命保険
生命保険の「保険金額」の決め方:いくら必要?計算シミュレーション

生命保険を検討する際、最も悩むのが「保険金額」の決め方です。多すぎれば保険料の無駄になりますし、少なすぎれば万が一の際に大切な家族が困ってしまいます。保険金額を適切に設定するには、ご自身の家庭に必要となるお金を具体的に計算することが不可欠です。
この記事では、生命保険の保険金額をどう決めるか、その計算方法を徹底解説します。遺族の生活費や子どもの教育費など、必要保障額の算出要素を明確にし、遺族年金などの公的保障を考慮した計算シミュレーションを提示。さらに、ライフステージに応じた保障額の変化まで、後悔しない生命保険の選び方を提案します。
死亡保障の必要額を計算する要素

生命保険の保険金額は、万が一の際に「遺族が今後必要となるお金」から「遺族が今後得られるお金」を差し引いて算出します。
遺族が今後必要となるお金(支出)
以下の項目を洗い出して、合計額を計算しましょう。
1.遺族の生活費:
・契約者の収入がなくなった後、遺された家族(配偶者、子ども)が、それまでの生活水準を維持するために必要な生活費です。
・子どもが独立するまでなど、必要な期間を想定して計算します。
2.子どもの教育費:
子どもが幼い場合は、幼稚園から大学までの教育費を考慮します。公立か私立かによって大きく変動するため、ご自身の希望する進路に合わせて計算しましょう。
3.住宅ローンの残債:
住宅ローンを契約している場合、その残高です。多くの場合は団体信用生命保険(団信)でカバーできますが、団信の保障内容や加入状況を確認しましょう。
4.葬儀費用など:
葬儀費用や墓地代、相続手続き費用など、万が一の際に必要となる一時的な費用です。
遺族が今後得られるお金(収入)
次に、万が一の際に遺族が受け取れるお金を合計します。
1.遺族年金:
公的年金制度から支給される遺族年金です。遺族基礎年金や遺族厚生年金などがあり、受給額は家族構成や年金加入期間によって異なります。
2.死亡退職金:
勤務先から支給される死亡退職金や弔慰金です。
3.配偶者の収入:
遺された配偶者が今後も働き続ける場合の収入です。
4.現在の貯蓄・資産:
預貯金や株式、iDeCo、NISAといった、現在の金融資産です。
公的保障を考慮した計算シミュレーション

ここでは、具体的なシミュレーションを通して、必要な死亡保険金の金額を算出してみましょう。
【シミュレーションの前提】
・夫(契約者):35歳、年収500万円
・妻(遺族):35歳、年収300万円
・子ども:5歳(大学卒業まで18年)
・住宅ローン残高:2,000万円(団信でカバーされるとする)
このケースで、夫に万が一のことがあった場合に必要な保障額を計算します。
1. 必要な支出の合計
妻と子どもの生活費:
・月30万円の生活費が必要と仮定。
・子どもが独立する18年後まで、30万円 × 12ヶ月 × 18年 = 6,480万円
子どもの教育費:
子どもの大学費用として1,000万円が必要と仮定。
葬儀費用など:
300万円が必要と仮定。
支出合計: 6,480万円 + 1,000万円 + 300万円 = 7,780万円
2. 得られる収入の合計
遺族年金:
・遺族基礎年金(子がいる配偶者向け)と遺族厚生年金を合計して、年間約150万円受け取れると仮定。
・子どもが独立する18年後まで、150万円 × 18年 = 2,700万円
妻の収入:
・妻の年収300万円が今後も継続すると仮定。
・30年間働くと仮定し、300万円 × 30年 = 9,000万円
貯蓄・資産:
現在の貯蓄や運用資産が500万円あると仮定。
収入合計: 2,700万円 + 9,000万円 + 500万円 = 1億2,200万円
3. 必要な保障額の計算
- 必要な保険金額: 7,780万円 (支出) − 1億2,200万円 (収入) = −4,420万円
- このケースでは、公的年金と妻の収入、貯蓄だけで必要な支出をカバーできるため、死亡保険金は不要という結果になります。
ただし、これはあくまで一例です。妻が働き続けられない場合は、9,000万円が得られない計算になりますし、子どもが複数いる場合、教育費の目標が高い場合など、ご家庭の状況によって必要な保障額は大きく変わります。
ライフステージに応じた保障額の変化

生命保険の必要保障額は、人生の段階によって変動します。
・子育て期:
子どもが幼い時期は、将来の教育費や養育費が多く必要になるため、保障額が最も大きくなる時期です。
・子どもの独立後:
子どもが独立し、教育費や養育費の負担がなくなれば、必要な保障額は減少します。
・定年後:
定年退職し、公的年金が収入の中心となれば、遺族の生活費も減り、必要な保障額はさらに少なくなります。
このように、ライフステージに応じて必要な保障額は変化するため、定期的に生命保険の見直しを行うことが重要です。
まとめ:死亡保険は「目的」と「計算」で賢く選ぶ
死亡保険の保険金額は、なんとなく決めるのではなく、ご自身の家庭に合わせた具体的な計算で決定することが重要です。
・死亡保障の目的を明確にし、必要な支出と得られる収入を具体的に計算しましょう。
・遺族年金や配偶者の収入など、公的・私的保障を考慮することで、過剰な保険金を設定する無駄をなくせます。
・ライフステージに応じた見直しを定期的に行い、常に最適な保障を維持しましょう。
この記事を参考に、あなたに最適な死亡保険を選び、安心して日々の生活を送りましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。