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教育費はいくら必要?幼稚園から大学までの費用総額と公的支援・準備方法をわかりやすく解説

文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校卒業までの15年間にかかる学習費総額は、すべて公立で約596万円、すべて私立で約1,976万円にのぼります。さらに大学に進学する場合、日本政策金融公庫の調査では高校入学から大学卒業までの教育費累計が国公立で約743万円、私立理系で約1,083万円に達しています。
一方で、幼児教育・保育の無償化(2019年10月〜)に加え、高等学校の授業料無償化は2026年3月に改正法が成立し、4月から所得制限が撤廃されて全世帯が対象となりました。高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金+授業料等減免)の対象も拡大されています。教育費の総額だけを見ると不安を感じやすいものですが、公的支援制度を正確に把握し、「実際の自己負担額」を計算したうえで、計画的に準備を進めることが重要です。
この記事では、学校段階ごとの教育費データと公的支援制度、そして教育費の合理的な準備方法を解説します。
幼稚園から高校までにかかる教育費の実態

文部科学省は隔年で「子供の学習費調査」を実施しており、令和5年度の最新データから学校段階ごとの費用を確認できます。ここでは公立と私立の費用差を具体的な数字で整理しましょう。
学校段階別の年間学習費(令和5年度)
令和5年度の調査結果によると、子ども1人あたりの年間学習費総額(学校教育費+学校給食費+学校外活動費)は以下のとおりです。
・公立幼稚園:約18万5,000円/私立幼稚園:約34万7,000円
・公立小学校:約33万6,000円/私立小学校:約182万8,000円
・公立中学校:約54万2,000円/私立中学校:約156万円
・公立高校(全日制):約59万8,000円/私立高校(全日制):約103万円
特に小学校段階での公立と私立の差が顕著で、私立小学校は公立の約5.4倍の費用がかかります。私立小学校では授業料や学校納付金が総額の約7割を占めており、学校選びが教育費に与える影響は極めて大きいといえるでしょう。
15年間の累計:すべて公立で約596万円、すべて私立で約1,976万円
幼稚園3年間+小学校6年間+中学校3年間+高校3年間の15年間で学習費を累計すると、すべて公立に通った場合は約596万円、すべて私立に通った場合は約1,976万円となり、その差は約1,380万円にのぼります。
ただし、すべて私立に通わせるケースは全体の一部にすぎません。「幼稚園は私立、小学校〜高校は公立」という進路パターンでは約647万円、「幼稚園と高校が私立、小・中学校は公立」では約776万円と試算されています。実際の進路パターンに合わせて費用を見積もることが大切です。
見落としやすい「学校外活動費」の負担
学習費調査の内訳をみると、学校に直接支払う「学校教育費」だけでなく、学習塾や家庭教師、習い事などの「学校外活動費」が無視できない金額に達しています。公立中学校の場合、年間の学校外活動費は約29万5,000円で、うち補助学習費(学習塾・通信教育等)が約24万4,000円を占めています。高校受験対策として中学3年間の塾代だけで70万円を超えるケースも珍しくありません。
「公立なら学費が安い」という認識は正しいものの、学校外活動費を含めた総コストで考えると、公立でも相応の支出が発生する点を家計に織り込んでおく必要があるでしょう。
大学にかかる教育費

高校卒業後に大学に進学する場合、入学費用と4年間の在学費用が加わります。日本政策金融公庫の調査データをもとに、大学段階の費用を確認しましょう。
大学の入学費用と在学費用
日本政策金融公庫の「令和3年度教育費負担の実態調査」によると、大学の入学費用(受験費用・入学金・入学しなかった学校への納付金等を含む)は平均約81万円で、1年間の在学費用は国公立大学で約103万5,000円、私立大学文系で約152万円、私立大学理系で約183万2,000円です。
高校入学から大学卒業までの累計教育費は、国公立大学で約743万円、私立大学文系で約952万円、私立大学理系で約1,083万円に達しています。これらの金額には授業料や通学費だけでなく、教科書代やパソコン購入費、学習塾の費用なども含まれています。
自宅外通学の場合はさらに費用が上乗せ
大学進学にあたって自宅を離れて一人暮らしを始める場合、敷金・礼金や家財道具の購入などの初期費用に加え、月々の仕送りが発生します。同調査によると、自宅外通学者への年間仕送り額は平均約90万円で、4年間の仕送り総額だけでも360万円前後に達する計算です。住居費は地域によって異なるため、進学先の地域も踏まえた資金計画が必要となります。
教育費の負担を軽減する公的支援制度

教育費の総額は高額に見えますが、近年は公的支援制度が急速に拡充されています。支援制度を正しく把握しておけば、実質的な自己負担額を見積もりやすくなります。
幼児教育・保育の無償化(3〜5歳)
2019年10月から、3歳から5歳までのすべての子どもの幼稚園・保育所・認定こども園の利用料が無償化されています。私立幼稚園の場合は月額上限2万5,700円(年間約30万8,000円)まで無償となるため、前述の私立幼稚園の学習費(年間約34万7,000円)のうち授業料部分は実質負担がかからないケースが多くなっています。
高等学校等就学支援金(高校無償化)
公立高校では授業料相当額(年間11万8,800円)が支給され、実質的に授業料が無償となっています。私立高校についても2026年3月31日に改正法が成立し、4月から所得制限が撤廃されるとともに、支給上限が年45万7,200円に引き上げられました。これは私立高校の授業料の全国平均水準に相当する金額です。
改正前は年収約590万円未満の世帯に最大39万6,000円の支給にとどまっていましたが、2026年4月以降は世帯年収にかかわらず、すべての高校生が年45万7,200円を上限に就学支援金を受けられるようになっています。ただし、授業料が支給上限を超える学校では差額が自己負担となるため、進学先の授業料を事前に確認しておくことが重要です。
高等教育の修学支援新制度(大学等の授業料減免+給付型奨学金)
2020年4月から開始された修学支援新制度では、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生を対象に、授業料等の減免と給付型奨学金の2つの支援がセットで提供されています。国公立大学の場合、第Ⅰ区分(住民税非課税世帯)では入学金約28万円・授業料約54万円が免除され、さらに日本学生支援機構(JASSO)から月額2万9,200円(自宅通学)〜6万6,700円(自宅外通学)の給付型奨学金を受けられます。
2024年度からは多子世帯や理工農学系の中間所得層にも対象が拡大(第4区分の創設)され、さらに2025年度からは多子世帯(扶養する子どもが3人以上の世帯)に対して所得制限なしで授業料等減免の満額支援が開始されています。
日本学生支援機構の貸与型奨学金
給付型奨学金の対象外となる世帯でも、日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金を利用できます。貸与型には無利子の「第一種奨学金」と有利子の「第二種奨学金」があり、第二種の場合は卒業後に利子をつけて返済する必要があります。
貸与型奨学金は「子ども自身の借金」である点を理解しておくことが重要です。月額5万円を4年間借りた場合、返済総額は約240万円(有利子の場合はさらに上乗せ)となり、卒業後15〜20年間の返済が続きます。奨学金の利用は進学の選択肢を広げますが、卒業後の返済計画まで含めて検討する必要があるでしょう。
国の教育ローン(日本政策金融公庫)
日本政策金融公庫が提供する「国の教育ローン」は、子ども1人あたり最大350万円(一定条件で450万円)まで借り入れが可能で、返済期間は最長18年です。こちらは奨学金と異なり「親の借金」として返済義務が保護者に発生するため、住宅ローンや老後資金の計画に影響を及ぼす可能性があります。
世帯年収の上限が設けられており(子ども2人の場合、年収890万円以下が目安)、金利は固定型で年3.55%(2026年2月時点)です。2024年には年2%台だった金利が2025年以降の金利上昇局面で引き上げられており、現在は民間の教育ローン(変動金利型)の方が低金利となるケースもあります。借入前に「返済額が家計の何%を占めるか」を確認し、老後資金の積立に支障が出ないかをシミュレーションしましょう。
児童手当を教育費に充てた場合の試算
児童手当は、第1子・第2子の場合、0歳から高校卒業まで約234万円が支給されます。仮にこの全額を教育費に充てた場合、すべて公立に通った場合の学習費約596万円のうち約39%をカバーできる計算です。児童手当を使い込まずに教育費として積み立てておく計画が有効であることがわかります。
教育費の合理的な準備方法

教育費は金額が大きいものの、子どもが生まれてから大学入学まで約18年間の準備期間があります。この時間を活かした計画的な準備が重要です。
「いつまでに・いくら必要か」を逆算する
教育費の準備で最も重要なのは、進路ごとの費用を把握し、必要額から逆算して月々の積立額を算出することです。
たとえば大学4年間の費用を500万円と想定し、子どもが0歳から18年間で準備する場合、500万円÷18年÷12か月=月額約2万3,000円の積立が目安となります。児童手当を全額積み立てれば月1万〜1万5,000円が自動的に確保できるため、残りの不足分は月額1万円程度の上乗せで対応できるケースも少なくありません。
NISA(つみたて投資枠)を活用した長期積立
教育費の準備手段としては預貯金が基本ですが、18年間という長期の準備期間がある場合、NISA(つみたて投資枠)の活用も選択肢に入ります。金融庁の資産形成に関する資料によると、20年以上の長期・積立・分散投資では元本割れのリスクが大幅に低下するとされています。
ただし、投資には元本割れのリスクがあるため、大学入学の数年前には段階的に現金化を進めるなど、「使う時期が近い資金」と「長期で増やせる資金」を分けて管理する考え方が重要です。
学資保険は「保険料に見合う保障と返戻率か」を冷静に判断する
学資保険は教育費の準備手段として広く知られていますが、現在の低金利環境では返戻率が100%前後にとどまる商品も多く、18年間かけて積み立てても受取額がほとんど増えないケースがあります。
学資保険には契約者(親)が死亡した場合に保険料が免除される保障機能がありますが、この保障が本当に必要かどうかは、遺族年金や収入保障保険など他の保障との重複がないか確認したうえで判断すべきです。保障機能が不要であれば、預貯金やNISAの方が流動性や利回りの面で有利になる可能性があります。
教育費を家計全体の優先順位の中で位置づける
教育費は子どもの将来に直結する支出ですが、家計全体のバランスを無視して教育費だけに集中すると、生活防衛資金の不足や老後資金の準備不足といった別のリスクを生みかねません。
家計の優先順位としては、まず生活防衛資金(生活費の6か月〜1年分)を確保し、次に公的保障(高額療養費・遺族年金等)でカバーできる範囲を把握したうえで、教育費と老後資金の積立をバランスよく進めるのが合理的な順序です。教育費のために老後資金を取り崩す事態に陥ると、将来的に子どもに経済的負担をかける結果になりかねない点も考慮に入れておきましょう。
まとめ|教育費は「総額」ではなく「自己負担額」で考える
幼稚園から大学卒業までの教育費は、すべて公立+国公立大学でも約1,100万円前後、私立が混在すれば2,000万円を超えるケースもあります。しかし、幼児教育・保育の無償化、高校授業料の実質無償化(2026年4月から所得制限撤廃済み)、高等教育の修学支援新制度、児童手当(約234万円)といった公的支援を正確に差し引いた「実質自己負担額」は、漠然としたイメージよりも小さくなる場合が少なくありません。
教育費の準備で避けたいのは、「1,000万円以上かかる」という総額の印象だけで不安になり、無理な節約や高額な学資保険、家計を圧迫する教育ローンに走ってしまうことです。まず公的支援でカバーされる範囲を確認し、次に児童手当の積立やNISAなど長期的な手段で不足分を補い、それでも足りない部分に限って奨学金やローンを検討するという段階的なアプローチが合理的です。
大切なのは、公的支援を把握したうえで不足分だけを計画的に準備し、教育費の不安から生活防衛資金の取り崩しや過度な保険加入に走らないことです。子どもが生まれてから大学入学まで約18年間の準備期間を味方につけ、児童手当の積立、NISA、預貯金を組み合わせた合理的な資金計画を立てましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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