資産運用
戸建て投資とは?メリット・デメリット・築古物件のリスクと購入前に確認すべきポイントをわかりやすく解説

戸建て投資とは、一戸建て住宅を購入して入居者に貸し出し、家賃収入を得る不動産投資の手法です。マンション投資と異なり建物と土地を一体で所有できるため、将来の土地活用や建て替えの選択肢が残る点が特徴といえます。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は約900万戸で空き家率は13.8%と過去最高を更新しており、その中には数百万円台で取得可能な中古戸建てが数多く含まれています。
一方で、築古の中古戸建てには再建築不可物件や建物の構造的劣化といったリスクが潜んでおり、「安いから」という理由だけで購入すると、想定外の修繕費や売却困難に直面する可能性があるため、物件の法的要件と建物の状態を事前に精査することが不可欠です。この記事では、戸建て投資の仕組みとメリット・デメリットに加え、築古物件特有のリスクや購入前に確認すべきチェックポイントについて取り上げていきます。
戸建て投資の基本的な仕組みと特徴

戸建て投資は区分マンション投資や一棟アパート投資とは異なる収益構造を持っています。ここでは、戸建て投資ならではの特徴を整理しましょう。
土地と建物を一体で所有する投資方法
戸建て投資では、建物だけでなく土地の所有権も取得するのが一般的です。区分マンション投資では土地は共有持分にとどまり、建て替えや土地売却の判断を個人では行えませんが、戸建て投資では将来的に建て替え・更地にしての売却・駐車場転用など、土地を含めた出口戦略の選択肢が広がります。
ただし、この「土地を持てる」メリットが成立するのは、その土地が建築基準法上の接道義務を満たしている場合に限られる点に注意が必要です。接道義務については後述しますが、要件を満たさない土地では建て替えができず、資産価値が大幅に下がるリスクがあります。
入居者はファミリー層が中心で入居期間が長い傾向
戸建て賃貸の入居者は、子育て世帯を中心としたファミリー層が多い傾向にあります。ファミリー層は子どもの学校区域や地域コミュニティとの関係から、一度入居すると5年以上の長期にわたって住み続けるケースが多く、頻繁な入退去に伴う空室期間や原状回復費用が発生しにくいのが特徴です。
一方で、単身者向けのワンルームマンションと比べると対象となる入居者の母数は限られるため、空室が生じた場合の次の入居者確保に時間がかかりやすい点は理解しておく必要があるでしょう。
数百万円台から取得できる物件がある
築古の中古戸建てであれば、地方エリアを中心に300万〜800万円程度で取得可能な物件も存在します。一棟アパート投資が数千万円〜数億円の初期投資を要するのに比べると、自己資金の範囲内で購入できるケースもあり、融資に頼らずに始められる可能性がある点が注目されがちです。
ただし、安価な物件には安価である理由が存在します。建物の老朽化、立地条件の悪さ、再建築不可、シロアリ被害など、物件価格だけでは見えないリスクが隠れている可能性を常に想定しておくべきでしょう。
戸建て投資のメリット

戸建て投資には、区分マンション投資や一棟アパート投資にはない独自のメリットがいくつかあります。ここでは代表的な4つのメリットを確認しましょう。
管理費・修繕積立金が不要
区分マンション投資では毎月の管理費と修繕積立金が固定費として発生し、国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によるとその合計は月額平均約24,500円にのぼります。戸建て投資ではこうした管理組合への支払いがないため、家賃収入に対する固定費の割合を低く抑えやすい構造です。
ただし、建物の維持管理はすべてオーナー自身の判断と負担で行う必要があり、修繕を先送りした結果、一度に高額な費用が発生するリスクがある点には注意しましょう。
土地の資産価値が残る
木造住宅の法定耐用年数は国税庁の耐用年数表で22年とされており、築22年を超えると税務上の建物価値はゼロになります。しかし、土地の価値は建物の築年数に関係なく残るため、建物が老朽化しても土地の評価額分の資産が維持されます。
このメリットが実現するのは、土地の所在地に一定の需要がある場合に限られる点に留意が必要です。人口減少が進む地方エリアでは土地そのものの需要が低く、相場より大幅に安い価格でしか売却できない、あるいは買い手が見つからない可能性もあります。
競合が少ないエリアを狙える
賃貸住宅市場においてワンルームマンションやアパートの供給量は多い一方で、戸建て賃貸の供給は相対的に少ないエリアが存在します。特に郊外のファミリー層が多い住宅地では、「庭付き一戸建てに住みたいが購入するほどの予算はない」という需要に対して、戸建て賃貸の供給が追いついていないケースも見られます。
ただし、「競合が少ない=需要が高い」とは限らない点に留意が必要です。そもそも賃貸需要自体が乏しいエリアでは、競合の少なさがメリットにならない点を見極める必要があるでしょう。
出口戦略の選択肢が多い
戸建て投資では、賃貸継続のほかに「実需向け(マイホーム用)に売却」「更地にして土地として売却」「建て替えて賃貸を継続」など、複数の出口戦略を持てます。区分マンション投資では実需向け売却以外の出口が限られますが、戸建ては土地を含めた処分方法の自由度が高い点が特徴です。
戸建て投資のデメリットとリスク

メリットがある一方で、戸建て投資には区分マンション投資や一棟アパート投資とは異なるリスクが存在します。とくに築古物件を購入する場合は、以下のリスクを十分に理解したうえで判断することが重要です。
空室時は収入がゼロになる
一棟アパート投資では複数戸からの家賃収入があるため、1戸が空室になっても他の入居者からの収入で一部をカバーできます。しかし、戸建て投資は入居者が1世帯のみであるため、退去が発生した時点で家賃収入は完全にゼロになります。ファミリー層は入居期間が長い傾向にあるものの、いったん退去すると次の入居者が見つかるまでに1〜3か月程度かかることも珍しくなく、その間もローン返済・固定資産税・火災保険料などの固定費は発生し続ける点に注意が必要です。
修繕費が予測しにくい
築古の中古戸建てでは、屋根・外壁の塗装、給排水管の交換、シロアリ対策、基礎の補修など、購入後に想定を超える修繕費が発生するリスクがあります。マンションの場合は管理組合が修繕計画を策定し積立金で対応する仕組みがありますが、戸建てではすべてオーナーが単独で対応する責任を負う構造です。
特に築30年以上の木造住宅では、屋根の葺き替えや外壁塗装、給排水管の全面交換など、一般的に数十万〜数百万円規模の修繕費がかかるケースがあり、これらが短期間に重なると投資の収支が大幅に悪化しかねません。
再建築不可物件のリスク
戸建て投資で最も注意すべきリスクのひとつが、「再建築不可」物件を購入してしまうケースです。建築基準法第43条第1項では、建築物の敷地は幅員4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接していなければならない(接道義務)と定められており、この要件を満たさない土地は原則として建て替えが認められず、再建築不可物件に該当することになります。
再建築不可物件は購入価格が安いため表面利回りが高く見えやすいものの、建て替えができないため建物の寿命が来た時点で賃貸としての収益力を失い、売却も困難になるという構造的な問題を抱えた物件です。金融機関も再建築不可物件への融資には慎重な姿勢をとっており、将来の売却時に買い手が融資を受けられないことから、売却価格が大幅に下落するリスクを抱えています。
融資がつきにくい
築古の木造戸建ては法定耐用年数(22年)を超えていることが多く、金融機関の融資審査で「担保価値が低い」と判断されやすい傾向にあります。とくに築30年超の物件や再建築不可物件では、不動産投資ローンの審査がそもそも通らないケースも少なくありません。
このため、戸建て投資は自己資金での購入が前提となることが多く、「レバレッジを効かせて資産を拡大する」という不動産投資の一般的なメリットが享受しにくい点は認識しておく必要があるでしょう。
購入前に確認すべき5つのチェックポイント

戸建て投資で失敗を避けるためには、購入前の調査が不可欠です。ここでは、物件の購入判断において最低限確認すべき5つのポイントを整理します。
接道義務を満たしているか
前述のとおり、建築基準法第43条第1項により、敷地は幅員4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接していなければなりません。この要件を満たしていない場合、原則として建て替えが認められず再建築不可物件となります。
接道状況の確認は、物件所在地の市区町村の建築指導課で行うことが可能です。前面道路が建築基準法上の道路として認定されているか、接道長さが2m以上あるかを必ず事前に確認しましょう。なお、2018年の建築基準法改正で、一定の条件を満たせば接道義務の特例(第43条第2項第1号・第2号)を受けられる制度も設けられていますが、許可には建築審査会の同意等の手続きが必要であり、確実に再建築できる保証はない点に留意すべきでしょう。
建物状況調査(インスペクション)を実施する
2018年4月の宅地建物取引業法改正により、中古住宅の売買を仲介する宅建業者には、建物状況調査(インスペクション)の実施者のあっせんに関する事項を書面で交付することが義務付けられました。建物状況調査は、国の登録を受けた講習を修了した建築士が、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分について目視・非破壊検査で調査を行うものです。
調査費用は物件の規模にもよりますが6万円程度からが目安とされており、投資物件の購入判断材料としてきわめて有用といえるでしょう。特に築古戸建ての場合は、目に見えない基礎のひび割れや雨漏りの痕跡を専門家が確認することで、購入後の修繕費を事前にある程度把握できるようになります。
周辺の賃貸需要を調査する
戸建て賃貸の入居者はファミリー層が中心であるため、周辺に小中学校やスーパーマーケット、病院などの生活インフラが整っているかが入居率に直結します。また、最寄り駅からの距離よりも、車での移動を前提とした駐車場の有無や道路アクセスの方が重視される傾向にある点はワンルーム投資とは異なるポイントです。
人口動態も重要な確認事項であり、市区町村が公開している人口推計や住宅・土地統計調査を活用して、エリアの人口増減傾向と世帯構成を事前に把握しておくことが求められます。
修繕費の見積もりを取得する
築古戸建てを購入する場合は、建物状況調査に加えて、主要な修繕項目の概算費用を事前に把握しておくべきです。具体的には、屋根・外壁の状態、給排水管の材質と交換時期、シロアリ被害の有無、電気設備の状態などが重点チェック項目となります。
物件価格に修繕費を加えた「投資総額」で実質利回りを計算し、その利回りで投資として成立するかどうかの判断が重要です。物件価格500万円の築古戸建てでも、修繕費に200万〜300万円かかれば投資総額は700万〜800万円となり、想定していた利回りが大幅に下がるケースも十分に考えられます。
出口戦略を購入前に想定する
戸建て投資においても、購入前に「いつ・どのように手放すか」を想定しておくことが重要です。賃貸収入を得続ける期間、建物の残存耐用年数、エリアの将来的な需要動向を総合的に考慮し、保有期間と売却方法のイメージを持ったうえで購入判断を行いましょう。
特に再建築可能な物件であれば、「建物が使えなくなった時点で更地にして売却する」という出口が確保できますが、再建築不可物件ではこの選択肢がありません。出口戦略が描けない物件は、入口(購入)の時点で見送る判断も必要です。
戸建て投資と他の不動産投資方法の比較

戸建て投資の位置づけをより明確にするため、区分マンション投資・一棟アパート投資・REIT(不動産投資信託)との比較を整理します。
初期投資額と融資のハードル
戸建て投資は中古物件であれば数百万円台から取得可能で、自己資金のみで購入できるケースもあります。区分マンション投資は新築で2,000万〜3,000万円台が多く、一棟アパート投資は数千万円〜数億円の初期投資が必要です。REITは証券口座を通じて数万円から投資可能であり、初期投資額のハードルは最も低いといえます。
一方で融資の面では、築古戸建ては担保評価が低いため融資がつきにくく、区分マンションや一棟アパートの方が融資を受けやすい傾向にあります。
管理の手間とリスク分散
戸建て投資は1世帯からの家賃収入に依存するため、空室リスクが集中します。一棟アパートは複数戸でリスクを分散でき、REITは運用会社がすべての管理を行うため手間がかかりません。区分マンション投資は管理組合が建物の維持管理を担うため、オーナーの管理負担は戸建てより軽いといえるでしょう。
戸建て投資は「管理費・修繕積立金が不要」というメリットの裏返しとして、「すべての維持管理判断を自分で行う必要がある」というデメリットを抱えている点を理解しておくべきです。
出口戦略の柔軟性
出口戦略の柔軟性は、土地を含めて所有する戸建て投資と一棟アパート投資が有利です。区分マンション投資は実需向け売却が主な出口であり、REITは市場で売却するだけなので流動性は最も高いものの、不動産そのものを所有しているわけではありません。
戸建て投資が向いているケースと向いていないケース

戸建て投資はすべての投資家にとって適切な選択肢とは限りません。ここでは、戸建て投資が適しているケースと避けるべきケースを整理します。
向いているケース
・自己資金で購入できる範囲の物件を検討しており、融資に頼らない投資を希望している場合
・DIYやリフォームに関する知識・経験があり、修繕費を抑える工夫ができる場合
・地元エリアの賃貸需要や物件情報に精通しており、適正価格で仕入れる目利きができる場合
・生活防衛資金が十分に確保され、公的保障の内容を把握したうえで余裕資金を投資に充てる段階にある場合
向いていないケース
・「安いから」という理由だけで物件を選び、建物の状態や法的要件の調査を省略しようとしている場合
・生活防衛資金(生活費の6か月〜1年分)が未確保の状態で、投資で収入を得ることを急いでいる場合
・不動産投資セミナーや勧誘をきっかけに「すぐに始めたい」と考えている場合
・建物の修繕やトラブル対応に時間や手間をかけたくない場合
特に注意すべきは、インターネット上やSNSで「ボロ戸建て投資で〇〇万円の利益」といった情報を目にして始めようとするケースです。こうした情報では成功事例だけが強調され、修繕費の超過・入居者トラブル・売却困難といった失敗リスクが十分に伝えられていないことが少なくありません。
戸建て投資を検討する際の判断の優先順位

戸建て投資に限らず、不動産投資を検討する際には以下の順序で判断することが重要です。
第1段階:生活防衛資金の確保 失業や病気で収入が途絶えた場合に備え、生活費の6か月〜1年分を預貯金で確保することが最優先となります。健康保険の傷病手当金は給与のおよそ3分の2が最長1年6か月支給される一方、自営業者や非正規雇用の方は対象外となる場合がある点にも注意が必要です。
第2段階:公的保障の内容を把握する 高額療養費制度(年収約370万〜770万円の方で自己負担限度額は月額80,100円+α)、遺族年金、障害年金など、公的保障でカバーできる範囲を把握したうえで、過剰な民間保険を見直し、投資に回せる原資を確保しましょう。
第3段階:NISA・iDeCoの活用を検討する 不動産投資は流動性が低く、まとまった自己資金が必要です。少額から始められ、税制優遇のあるNISAやiDeCoを優先的に活用したうえで、それでも余裕がある場合に不動産投資を検討するのが合理的な順序といえます。
第4段階:不動産投資の検討 上記3つの段階をクリアしたうえで、戸建て投資を含む不動産投資を具体的に検討します。物件の選定にあたっては、本記事で解説した接道義務・建物状況調査・修繕費・出口戦略の4点を必ず事前に確認することが大切です。
まとめ
戸建て投資は、土地を含めた所有権を取得でき、管理費・修繕積立金が不要で、ファミリー層の長期入居が期待できるという独自のメリットを持つ不動産投資の手法です。数百万円台から取得可能な築古物件も存在し、自己資金の範囲で始められる点は他の不動産投資と比べたハードルの低さといえるでしょう。
一方で、空室時の収入ゼロリスク、修繕費の予測困難性、再建築不可物件の構造的問題など、戸建て投資特有のリスクも見落とすべきではありません。購入前には接道義務の確認・建物状況調査の実施・修繕費の概算把握・出口戦略の想定という4つのステップを必ず踏み、「安いから」だけで判断しない慎重な物件選びが求められます。
不動産投資を検討する際には、まず生活防衛資金を確保し、公的保障の内容を理解し、NISA・iDeCoの活用を検討したうえで、余裕資金の範囲内で取り組むことが資産形成全体のバランスを保つうえで重要です。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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