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家計簿のつけ方を初心者向けに解説|続けるコツ・費目の分け方・家計改善につなげる活用法

家計簿は、収入と支出を記録して家計の現状を「見える化」するための基本ツールです。総務省「家計調査(2025年平均)」によると、二人以上世帯の消費支出は月額平均約31.4万円で、前年から名目4.6%増加しています。一方、J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」では二人以上世帯の24.0%が金融資産を保有しておらず、単身世帯では32.8%に達しています。
家計簿をつけることで支出の偏りや無駄を発見し、生活防衛資金の確保や将来の資産形成につなげることが可能です。この記事では、家計簿を始めるための基本的な手順から、挫折しないためのコツ、そして記録したデータを家計改善に活かす方法までを解説します。
家計簿をつける目的とメリット

家計簿は「つけること」自体が目的ではなく、記録をもとに家計を改善することに意味があります。ここでは、家計簿を始める前に知っておきたい目的とメリットを確認しましょう。
支出の「見える化」が家計改善の第一歩
毎月の収支が把握できていないと、どこにいくら使っているかが分かりません。総務省「家計調査(2025年平均)」によると、二人以上世帯の消費支出は月額平均約31.4万円で、そのうち食料が約9.5万円と最も高い割合を占めています。交通・通信費や教養娯楽費なども含め、10の費目にわたって支出が分散しているため、家計簿をつけなければ全体像をつかむことは困難でしょう。
家計簿がもたらす3つのメリット
家計簿をつけることで得られるメリットは、支出の把握だけにとどまりません。
1つ目は無駄な支出の発見です。使っていないサブスクリプションサービス、頻度の高いコンビニ利用、必要以上の保険料など、記録することで初めて気づく支出は少なくありません。
2つ目は貯蓄目標の設定と進捗管理になります。毎月の手取り収入から支出を差し引いた金額を把握することで、「月にいくら貯められるか」が明確になり、具体的な貯蓄計画を立てられるようになるでしょう。
3つ目はライフプラン全体の見通しです。家計簿のデータが蓄積されると、年間の支出パターンが見えてきます。ボーナス月の支出増、年払いの保険料や税金の発生月など、季節変動を含めた資金繰りの見通しが立てやすくなります。
家計簿の種類と選び方

家計簿には手書きのノートタイプからスマートフォンアプリまで、さまざまな選択肢があります。続けやすさを重視して、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
手書きノート・市販の家計簿
市販の家計簿やノートに手書きで記録する方法は、最もシンプルな手段です。書く作業そのものが支出を意識するきっかけになり、金額の感覚が身につきやすいという特徴があります。一方で、集計や分析に手間がかかるため、数字の管理が苦手な場合は負担になりやすい面もあるでしょう。
表計算ソフト(エクセル・スプレッドシート)
エクセルやGoogleスプレッドシートを使う方法は、自分好みの費目や集計方法を自由にカスタマイズできる点が強みです。合計や平均の自動計算、グラフの作成も容易なため、データを分析したい方には適しています。ただし、毎回パソコンを開いて入力する必要があるため、外出先でのリアルタイム記録には不向きといえます。
家計簿アプリ
スマートフォンの家計簿アプリは、レシート撮影で自動入力できる機能や、銀行口座・クレジットカードとの連携機能を備えたものが多く、入力の手間を最小限に抑えられるのが最大のメリットです。ただし、金融機関との連携にあたっては、セキュリティ面の確認が欠かせません。アプリを選ぶ際は、運営会社の信頼性や暗号化対応の有無を事前に確認しましょう。
家計簿の費目の分け方と記録のポイント

家計簿で最もつまずきやすいのが「費目をどう分けるか」という問題です。細かく分けすぎると続かなくなり、大ざっぱすぎると改善点が見つけにくくなります。
基本の費目分類
総務省の家計調査では消費支出を10の費目に分類していますが、家庭で使う家計簿であれば、以下のように7〜10項目程度にまとめるのが現実的です。
・固定費:住居費(家賃・住宅ローン)、水道光熱費、通信費、保険料
・変動費:食費、日用品費、交通費、被服費、医療費
・その他:教養娯楽費、交際費、こづかい
家計改善の優先度が高いのは固定費です。固定費は一度見直せば毎月の効果が続くため、変動費を節約する前に固定費の見直しから着手するほうが効率的といえます。
記録のルールはシンプルに
家計簿を長く続けるためには、記録のルールを最初にシンプルに決めておくことが重要です。具体的には、次のような方針がおすすめとなります。
・1円単位ではなく100円単位で記録する(端数は切り上げ)
・迷ったときの費目をあらかじめ決めておく(「判断に迷ったらその他」など)
・クレジットカードの支出は「使った日」に記録する(引き落とし日ではなく)
・毎日つける必要はなく、週に1〜2回まとめて記録する方法でも可
完璧を求めるよりも、まず3か月間続けることを最優先にしましょう。3か月分のデータがあれば、自分の支出パターンの傾向がつかめるようになります。
家計の適正バランスを確認する方法

家計簿をつけ始めたら、次のステップとして「自分の家計バランスは適正かどうか」を確認しましょう。総務省の家計調査データを参考にすることで、客観的な判断が可能になります。
手取り収入に対する費目別の目安
家計のバランスを判断するには、手取り収入に対する各費目の割合を確認する方法が有効です。一般的に目安とされている割合は、以下のとおりとなります。
・住居費:手取りの25〜30%以内
・食費:手取りの15〜20%以内
・保険料:手取りの5〜7%以内
・通信費:手取りの3〜5%以内
・貯蓄・投資:手取りの10〜20%
これらはあくまでも目安であり、世帯構成や居住地域、ライフステージによって適正な割合は異なります。重要なのは、自分の家計の数字を把握したうえで、どこに改善の余地があるかを判断することです。
エンゲル係数で食費の割合をチェック
エンゲル係数とは、消費支出に占める食料費の割合のことです。総務省「家計調査(2024年平均)」によると、二人以上世帯のエンゲル係数は28.3%で、前年から0.5ポイント上昇しました。食料品の価格上昇が家計を圧迫していることが数字からも読み取れます。
自分の家計のエンゲル係数を計算してみて、全国平均と比較することで食費の使いすぎに気づけるケースもあるでしょう。計算式は「食費÷消費支出×100」で求められます。
家計簿の記録を家計改善に活かす方法

家計簿は記録して終わりではなく、データを分析して具体的な改善アクションにつなげることで初めて効果を発揮します。ここでは、家計改善につなげるための具体的な活用法を紹介しましょう。
固定費の見直しが最優先
家計改善で最も効果が高いのは固定費の見直しです。毎月必ず発生する支出を削減すれば、その効果は12か月分に積み上がります。具体的な見直し項目と効果の目安は次のとおりです。
・通信費:大手キャリアから格安SIMへの乗り換えで月3,000〜5,000円の削減も可能。年間では3.6万〜6万円の差になります
・保険料:会社員であれば、健康保険から傷病手当金(給与のおよそ2/3、最長18か月)が支給され、高額療養費制度により医療費の自己負担には月額上限(年収約370万〜770万円の場合、80,100円+α)が設けられています。これらの公的保障を把握したうえで、民間の医療保険や就業不能保険が本当に必要かを再検討することが固定費削減の有効な手段になります
・サブスクリプション:動画配信、音楽配信、雑誌読み放題など、利用頻度の低いサービスを解約するだけでも月1,000〜3,000円の削減が見込めるでしょう
「先取り貯蓄」で確実に資産を増やす
家計簿で毎月の収支を把握したら、次に取り組むべきは「先取り貯蓄」の仕組みづくりです。先取り貯蓄とは、給料が入ったら最初に一定額を貯蓄用口座に移し、残りの金額で生活する方法を指します。
J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査(2024年)」によると、二人以上世帯の金融資産保有額の中央値は350万円にとどまっています。平均値は中央値を大きく上回りますが、これは一部の高額保有世帯が引き上げているためで、多くの世帯にとって中央値のほうが実感に近い数字といえるでしょう。
出典:J-FLEC「家計の金融行動に関する世論調査2024年」
先取り貯蓄の目標額としては、まず生活費の6か月分を「生活防衛資金」として確保することを優先しましょう。二人以上世帯の月間消費支出が約31.4万円であれば、目安は約190万円となります。この資金が確保できてから、NISAのつみたて投資枠やiDeCoといった長期の資産形成に進むのが堅実な順序です。
年間の特別支出を予算化する
毎月の収支が黒字でも、年に数回発生する特別支出で赤字に転落するケースは珍しくありません。特別支出の代表例としては、以下のようなものです。
・固定資産税・自動車税(年1回)
・自動車保険・火災保険(年払い)
・冠婚葬祭の祝儀・香典
・家電の買い替え
・帰省・旅行費用
これらの特別支出を年間で見積もり、12か月で割った金額を毎月積み立てておくことで、突発的な出費にも対応できるようになります。家計簿を1年以上続けると、特別支出の年間総額が把握でき、翌年以降の予算が立てやすくなるでしょう。
家計簿を続けるための3つのコツ

家計簿が続かない最大の原因は「完璧主義」にあるといわれています。ここでは、無理なく継続するための実践的なコツを紹介します。
ざっくり記録からスタートする
最初から費目を細かく分けたり、1円単位で記録したりすると、すぐに負担を感じてしまいがちです。まずは「食費」「固定費」「その他」の3分類だけで始めても構いません。慣れてきたら徐々に費目を増やしていけば、自然と精度は上がっていきます。
月1回の「振り返り」を習慣にする
家計簿の効果を実感するためには、月末に10〜15分程度の振り返り時間を設けることが効果的です。振り返りでは次の3点を確認しましょう。
・今月の収支はプラスだったか、マイナスだったか
・想定外の支出はあったか
・来月に見直せる項目はあるか
この振り返りを毎月続けることで、家計の改善サイクルが回り始めます。
家族で情報を共有する
二人以上の世帯の場合、家計の情報をパートナーと共有することも継続の鍵となります。どちらか一方だけが家計管理を担うのではなく、月1回の振り返りを一緒に行うことで、支出に対する意識が世帯全体で統一されるでしょう。
家計簿のデータから見直すべき「保険料」の考え方

家計簿をつけ始めると、多くの世帯で見直しの余地が見つかりやすいのが保険料です。公的保障を正しく把握したうえで、民間保険の必要性を判断することが家計改善の重要なポイントになります。
公的保障を把握してから民間保険を検討する
会社員や公務員の場合、すでに充実した公的保障が用意されています。
・高額療養費制度:年収約370万〜770万円の場合、1か月の医療費自己負担の上限は80,100円+α。年収約370万円以下の場合は57,600円が上限
・傷病手当金:病気やケガで働けなくなった場合、給与のおよそ2/3が最長18か月支給される
・遺族基礎年金:子どものいる配偶者には年額831,700円+子の加算(令和7年度)が支給される
・労災保険:業務上の傷病には治療費全額が支給され、休業時は給付基礎日額の80%(休業補償給付60%+特別支給金20%)が受け取れる
これらの公的保障でカバーされる金額を差し引いたうえで、不足する部分だけを民間保険で補うという考え方が合理的です。家計簿に記録されている毎月の保険料が手取り収入の7%を超えている場合は、保障内容と公的制度の重複がないか確認してみることをおすすめします。
自営業・フリーランスは公的保障の「不足」に注意
一方で、国民健康保険に加入している自営業者やフリーランスの場合、傷病手当金の制度は原則として設けられていません。業務上のケガに対する労災保険も、特別加入の手続きをしていなければ適用されないため、会社員と比べて公的保障が薄い構造になっています。
このため、自営業者やフリーランスの方が家計簿をつける際には、就業不能時の収入減少リスクを見積もったうえで、必要な備えの金額を明確にしておくことが重要です。生活防衛資金の目安も、会社員の6か月分より多い「12か月分」を確保しておくと安心でしょう。
まとめ:家計簿は「つける」ことより「活かす」ことが大切
家計簿の本来の目的は、収支を記録すること自体ではなく、そのデータをもとに家計を改善し、将来の資産形成につなげることです。
まずは3か月間、自分に合った方法で記録を続けてみましょう。3か月分のデータが集まれば、支出パターンの傾向が見えてきます。その後は固定費の見直し(特に保険料と通信費)、先取り貯蓄の仕組みづくり、特別支出の予算化と段階的に進めていくのが効果的です。
家計の改善は「生活防衛資金の確保→公的保障の把握→民間保険の見直し→長期の資産形成」という順序で取り組むことが、堅実な家計管理の基本といえるでしょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しています。当記事の執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。
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