がん保険
女性向けがん保険は必要?高額療養費制度・傷病手当金を踏まえた判断基準

女性の生涯で乳がんに罹患する確率は約9人に1人と推計されており、30代後半から40代にかけて罹患率が急増します(国立がん研究センター がん情報サービス)。がんと診断されたときの経済的な不安に備えてがん保険を検討する方は多いですが、判断の前に公的医療保険制度でどこまでカバーされるかを確認することが欠かせません。高額療養費制度や傷病手当金を把握したうえで、それでも不足する部分にがん保険で備えるのが合理的な考え方です。この記事では、公的制度を整理したうえで、女性向けがん保険が特に有効なケースを解説します。
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」
まず確認すべき公的制度|がん治療費の自己負担はどこまで抑えられるか

がん治療費は高額になるイメージがありますが、公的医療保険制度を活用すれば自己負担は一定額に抑えられます。がん保険の必要性を判断する前に、以下の制度を確認しましょう。
高額療養費制度|月の自己負担に上限がある
健康保険が適用される治療であれば、高額療養費制度により月の自己負担額に上限が設けられます。たとえば69歳以下・年収約370万〜770万円の方の場合、月の自己負担上限は約8〜9万円程度です。がんの手術や抗がん剤治療で月の医療費が100万円かかっても、窓口での最終的な自己負担は約8〜9万円に収まります。事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での一時的な高額支払いも避けられます。
出典:金融庁「公的保険について(民間保険の検討にあたって)」
傷病手当金|治療中の収入減をカバー
会社員や公務員が加入する健康保険には傷病手当金の制度があり、病気やケガで仕事を休んだ場合に給与の約3分の2が最長1年6か月間支給されます。がん治療で長期間休業する場合、この制度で収入の一定部分をカバーできるため、「収入がゼロになる」という事態は避けやすい仕組みです。ただし、自営業者が加入する国民健康保険には傷病手当金の制度がないため、自営業者は別途備えを検討する必要があるでしょう。
公的制度でカバーしきれない部分
高額療養費制度と傷病手当金を活用しても、以下のような費用は自己負担となります。
・先進医療(重粒子線・陽子線治療など):健康保険の適用外で全額自己負担(数百万円になるケースもある)
・差額ベッド代・食事代:入院時の個室料金などは高額療養費の対象外
・通院交通費・ウィッグ・補正下着:抗がん剤治療による脱毛や乳房切除後の生活用品
・傷病手当金でカバーできない収入減:給与の約3分の1は自己負担。自営業者は傷病手当金自体がない
がん保険が真に必要なのは、これらの公的制度でカバーしきれない部分に備える場合です。
女性向けがん保険が特に有効なケース

公的制度を踏まえたうえで、女性向けがん保険が特に力を発揮するのは以下の場面です。
乳房再建手術の費用補填
乳がんの手術で乳房切除を行った場合、乳房再建手術を希望する方は少なくありません。再建手術は公的医療保険の適用範囲であり、高額療養費制度も利用できるため、自己負担は月約8〜9万円程度に抑えることが可能です。ただし、手術に伴う入院期間や通院回数を考慮すると、トータルの自己負担は数十万円に及ぶケースもあるでしょう。女性向けがん保険の中には乳房再建給付金を備えた商品があり、この自己負担の補填に活用できます。
治療の長期化に伴う通院費用
がん治療は手術だけで終わらず、抗がん剤治療やホルモン療法が数年間にわたって続くケースがあります。通院のたびに交通費や差額ベッド代がかかり、高額療養費制度の対象外の費用が積み重なります。通院保障が充実したがん保険であれば、長期の治療期間中の経済的な負担を軽減できるでしょう。
自営業者・フリーランスの収入保障
自営業者やフリーランスは傷病手当金の対象外であるため、がん治療で働けない期間の収入が途絶えるリスクが会社員より高くなります。診断一時金が受け取れるがん保険であれば、診断確定時にまとまった資金を確保でき、治療方針の選択や生活費の確保に充てることが可能です。
家族に乳がん・卵巣がんの病歴がある場合
母親や姉妹が乳がん・卵巣がんを発症している場合、遺伝的なリスク(BRCA遺伝子変異)が高い可能性があります。BRCA1・BRCA2遺伝子の変異は親から子へ50%の確率で受け継がれ、乳がんや卵巣がんの発症率を高めることが知られています。遺伝的リスクが高い方は、若いうちに保険料が安い段階で加入しておくことが選択肢の一つになるでしょう。発症後は加入が困難になるか、条件が制限されるケースが多いためです。
出典:国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん」
まとめ|公的制度を確認したうえで、不足する部分にがん保険で備える
女性向けがん保険の必要性は、公的制度でカバーできる範囲を確認してから判断するのが合理的です。
・高額療養費制度により、健康保険適用の治療は月の自己負担に上限がある(約8〜9万円程度)
・傷病手当金で会社員・公務員は給与の約3分の2が最長1年6か月支給される(自営業者は対象外)
・がん保険が有効なのは、先進医療・差額ベッド代・通院費用・ウィッグなど公的制度の対象外の費用と、傷病手当金でカバーしきれない収入減に備える場合
・乳房再建給付金や通院保障は女性向けがん保険の特徴的な保障
・家族に乳がん・卵巣がんの病歴がある場合は、若く健康なうちの加入を検討する
まずは高額療養費制度の自己負担上限額と、傷病手当金の受給要件を確認したうえで、「公的制度でカバーできない部分がどの程度あるか」を把握するところから始めましょう。
本記事は、CFP資格保有者であり、J-FLEC認定アドバイザーの金子賢司が執筆しました。執筆者「金子賢司」の情報は、CFP検索システムおよびJ-FLECアドバイザー検索システムにてご確認いただけます。北海道エリアを指定して検索いただくとスムーズです。



